表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/133

第6話 新任の鍵師

昨日の夜のハイファンランキングで21位になっていました。

良い滑り出し!

ブックマーク、☆評価をいただいた読者の方ありがとうございます。

 ユーリがアストリアを家に招いているその時、王宮では危急の事態を迎えていた。


 王宮の大深度地下にぽっかりと開いた空間。

 そこには王宮の城門よりも遥かに大きく、魔法鉱石でできた分厚い門があった。

 時おり闇が門の隙間を縫って、火花のように散っている。

 扉より漏れる禍々しい魔力は、恐ろしいと言うよりは、うすら寒い。

 まるで心臓を冷たい手で撫でられているような、気持ちのよい死を想起させた。


 この門の先にいるのは魔王。

 1000年前、勇者と呼ばれるものが辛くも封印した邪悪な生物。

 解き放たれれば、再び世界は滅びの底へと向かうといわれている。


 そして、今――――。

 魔王の封印が破れようとしていた。


「大変だ!」

「魔王の封印が破れるぞ」

「鍵師は何をしている!」

小僧(ユーリ)はどうした?」

「ユーリは追放されたんだろう」


 封印の地を守る近衛たちが集まる。

 だが、魔王の力は強い。

 如何な屈強な近衛とて、立っているのが精一杯だった。


 仮に魔王が現れれば、紙くずのように吹き飛ばされるという認識は、扉から放たれる魔力によって自ずと理解していた。


 今、この事態を収拾できるのは、鍵師の力しかない。


「ギャアアアアアアア!!」


 近衛の1人が悲鳴を上げた。

 尻餅を突き、しきりに扉の方を指差している。

 開いた口が閉まらないのか、ヒーヒーと声なき悲鳴を上げていた。


「どうした?」


「ゆ、指……?」


「指?」


 近衛たちの視線が扉の方に向く。

 半開きになった門の隙間から、手が出ていた。

 如何にも魔物然としたものではない。

 幽鬼のように白く、さらに言えば小さい。

 子どもと言っても差し支えないほどの大きさだった。


「門の内側に、子どもがいるのか?」


 近衛が1歩踏みだした時だった。



「狼狽えるなぁあぁぁぁあぁあぁあぁあぁあああ!!!!」



 声を荒らげたのは、ゲヴァルドだった。

 王宮の、いや第1層の世界の大ピンチ。

 新人鍵師の登場は、実に華々しい。


 だが、ゲヴァルドの顔は赤い。

 口から吐き出す臭気は酒臭く、横で肩を貸していた近衛が顔をしかめていた。

 この危急の事態に、新人鍵師は酒を飲んでいたようである。


 明白だったのは、片手に握りしめた酒瓶であろう。


「狼狽えるな馬鹿者……ヒック……。これぐらいの事態……ヒック……王宮の近衛なら…………しっかり…………しろよ、ヒック」


 思わず顔を覆いたくなるような醜い姿だった。

 現れた救世主が酔っぱらっているのだ。

 何より剣でもなければ、槍でもなく、酒瓶を携えた鍵師に頼らなければならない状況を憂えた。


「ゲヴァルド様、しっかりしてください。早く、早く……封印を――――!」


「横でがなるな。頭がズキズキする、ヒック……」


 そうしてゲヴァルドは近衛に支えられながら、扉に向かって進み出る。

 手をかざし、鍵魔法を使った。



 【閉めれ(ロック)】!



 すると、扉が大きな音を立てて締まった。

 同時に――――!!


『キャアアアアアアアアアア!!』


 子どもの悲鳴のような声が雷鳴のように轟く。

 見ると、両扉の隙間に先ほどの指が挟まっていた。

 ビクビクと悶えた後、無理やり引き抜く。

 血の痕を残して、指は扉の向こうに消えてしまった。


 魔王の魔力の波動が消滅する。

 どうやら、封印に成功したらしい。


「どうだ! オレ様は天才だろ?」


 ゲヴァルドはまるで勝利したかのように、酒瓶を高々と掲げた。


「すごい! 本当に封印した」

「本当に天才かもしれないぞ」

「いや、そもそも鍵師なんてのは大したことなかったんじゃないのか?」

「確かに……。あり得るな」


 近衛たちはホッと安堵する。

 多少難があったが、酒瓶を抱えた新人鍵師に拍手と喝采を浴びせた。


「さすがゲヴァルド様」

「素晴らしい!」

「天才鍵師の誕生だ」


「だろ? だろ? オレ様に任せておけば良かったんだよ。がははははははは!!」


 ゲヴァルドは口を大きく開けて、大笑した。


 その増長がさらなる悲劇を招くとも知らずに……。


今日もドンドン更新していく予定です(こんなん何話あってもいいですからね)


面白い、早くこの息子の泣き叫ぶところが見たい、と思った方は、

ブックマーク、広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シーモア限定で6月30日配信開始です!
↓※タイトルをクリックすると、シーモア公式に飛びます↓
『宮廷鍵師、【時間停止】と【分子分解】の能力を隠していたら追放される~封印していた魔王が暴れ出したみたいだけど、S級冒険者とダンジョン制覇するのでもう遅いです~』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


8月25日!ブレイブ文庫様より第2巻発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


書影が出ました! 2月10日発売! こちらもよろしくです。
↓※タイトルをクリックすると、カドカワBOOKS公式ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large

ツギクルバナー

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[一言] これは痛い…。 ゲヴァルド君には報復で、家具の角に足の指を毎日ぶつける呪いがかけられてもおかしくないな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ