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第60話 当たってます!

今日も1話だけと思っていたのですが、

カクヨムの方でレビュー付きのコメントをいただきまして、

嬉しくって書いてしまいました。

第二部もよろしくお願いします。

『くっくっくっ……。油断しすぎじゃ、ユーリ』


 その声は文字通り闇から聞こえてきた。

 正確には影からだけど、僕が振り返った時には別のことが起こる。


 どん!


 衝撃とともに土煙が舞い上がった。

 煙の中から現れたのは、土にまみれたオークだ。

 しゅるるる、と奇妙な音を立てて、頭を振って被った土を取る。

 その豚鼻からは荒く息を吐いていた。


 アストリアの『風砕(エア)螺旋剣(リーズ)』をまともに食らったはずだ。

 なのに、その目は爛々と輝いていた。


「オーク!!」

「「「!????」」」


 遅れてアストリアと冒険者が反応する。


「くそ! 地中に逃げやがったか!」


 冒険者の1人が悪態を吐く。


「地中……?」


「オークの得意技は穴掘りなんだ。手の爪と牙を使って、信じられないほどの速さで穴を掘るんだ」


 あの巨体で……?

 信じられない。

 でも、あれほどの大きさのオークが、これまで潜伏できていた理由がわかる。

 おそらく地中で生活し、ずっと栄養源を蓄えてきたのだろう。


『ぶもももももももももももおおおおおおおお!!!!』


 オークは雄叫びを上げる。

 巨手が伸びてくると、僕たちに向かって殴りつけてきた。

 それは巨大な隕石が落ちてくるのも、一緒だ。


「散開しろ!!」


 アストリアが叫ぶ。


 直後、オークの拳が地面を叩いた。

 ダンジョンの地面を派手に抉ると、爆発にも似た音が轟く。


 全員散開して、直撃は避けた。

 だが、その衝撃は凄まじい。

 小さな噴石がまるで矢のように飛んでくる。


「くそ! 私の風砕(エア)螺旋剣(リーズ)が通じていないのか?」


「いや、そうじゃないよ、アストリア」


「え?」


 通じていないわけじゃない。

 まして『風砕(エア)螺旋剣(リーズ)』が届く前に、地中に隠れたわけではない。

 おそらくだけど、『風砕(エア)螺旋剣(リーズ)』を受けてから、地中に一旦避難したんだろう。


 僕は指を差した。


「アストリア、よく見て! オークの体肌に焦げ痕や、無数の切り傷がある。『風砕(エア)螺旋剣(リーズ)』は通ってる!」


「しかし、『風砕(エア)螺旋剣(リーズ)』は早々何発も……。しかも、まだ上層だ。魔力の循環効率が……」


「いえ。問題ありません。あいつに魔力が通ることだけはわかったんですから」


「ユーリ……?」


 僕は持っていたナイフを鞘に収める。

 アストリアを背にして、オークに向き直った。

 すでにオークの指向は、僕たちの方に向かっている。


 いや、すでに二撃目が振り下ろされようとしていた。


「坊主、逃げろ!!」

「アストリアさんも!!」

「やべぇ!!」


 退避を始めた冒険者が口々に叫ぶ。

 だが、僕は動かない。

 動く必要はない。


 瞬間、オークの拳打が放たれた。

 僕はそれに向かっていく。

 まるでその巨手を受け止めるように手を広げた。


「全身――――」



 【閉めろ(ロック)】!!



 強烈な風が吹いた。

 それはオークの拳打による風圧だ。

 だが、その拳が僕たちを貫くことはない。


 巨手は止まっていた。

 それだけじゃない。

 オークの本体が、歯を食いしばったままの状態で固まっていた。


「止まった……」

「嘘だろ……」

「あれが、鍵魔法なのかよ」

「やべぇ……」


 冒険者たちは固まったオークを見て、呆然とする。


「ふぅ……」


 僕は汗を拭った。

 鍵魔法が通じるってことは、『風砕(エア)螺旋剣(リーズ)』による損傷具合からして判断できたけど、さすがに緊張する。

 間違いだと判断できたら、すぐに自分の身体を【閉めろ(ロック)】するつもりだったけど、1歩間違えれば大惨事になっていただろう。


「やったな、ユーリ」


 アストリアは脱力した僕に声をかける。

 すると、ギュッと僕を抱きしめた。

 ポスッと音を立て、僕の頭はアストリアの胸に収まる。


 ちょ――――! アストリア!!


 むね! 胸が当たってます。

 すごく! 柔らかくて、いい匂いする胸がががががが!!


 動揺した僕は何も考えられない。

 頭がクラクラする。

 彼女の胸の中で、まるでのぼせたみたいだった。


「それにしたって、ちょっと無茶しすぎだ。奴の注意をこちらで引きつけつつ、君は背後に回って鍵魔法を試す方法もあったはずだろう。……聞いているのか、ユーリ」


 アストリアは僕を抱きしめながら、軽くお説教する。

 だが、僕はもうそれどころじゃない。

 アストリアの胸の中で、もう溺れそうになっていた。


「おーい。アストリアの嬢ちゃんよ。それぐらいにしてやれ」

「嬢ちゃんの胸の中で、死んじまうぞ」

「それはそれで幸せだろうがな」

「やべぇ!」


 冒険者たちが、ニヤニヤしながらからかう。


 そこでようやくアストリアは気付いた。

 ハッと僕を離した時には遅い。

 頬を赤くし幸せいっぱいになりながら、窒息死しかかっていた僕は、まるでなまこみたいにぬるりと倒れる。


「ゆ、ユーリ? しっかりしろ、ユーリ!!」


 こうして僕の第2層での冒険者生活は始まった。

 第2層でクエストをこなし、第3層への通行許可をもらう。


 僕たちの目的は、第10層へ行くこと。

 そしてアストリアの仲間の救出だ。


 まだまだ道のりは長いけど、僕たちは1歩1歩着実にゴールを目指していく。


『くっくっくっ……。相変わらず情けない奴じゃ』


 僕の影に潜む悪魔の声を聞きながら……。


役得! 役得!


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[良い点] おっぱい [気になる点] 書影もおっぱい 実にけしからん
[一言] 最後は、アストリアさんが首を刎ねたりしたのかな。奥義も常に有効とは限らないのか。 魔王は、悪魔と呼んじゃ可哀そうな気がする/w 警告までしてくれたし。
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