表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/142

第59話 オーク戦

第2部になってもたくさんの方に読んでいただき感謝!

引き続き頑張ります。

「でけぇ……」


 冒険者の誰かが声を上げた。

 皆がまるで天井を仰ぐように見つめている。

 瞠目し、息を呑んでいた。


 僕もその1人だ。


 以前倒したホブゴブリンよりは、背丈こそ低い。

 だが、それよりも遥かに圧迫感を感じるのは、間違いなくオークが横に広いからだろう。

 腕も足も、胴体も――ホブゴブリンと比べて、まるで肉厚が違う。

 豚鼻から臭気を放ち、口からは大剣のような牙が生えていた。


 そしてこのオークの特徴が……。


「来るぞ!! 散開しろ!!」


 叫んだのはアストリアだった。

 直後、周囲が暗くなる。

 打ち下ろされたのは、巨大なこん棒だった。


 ドォォォォオオオオオオンンンンン!!


 爆裂系の魔法が炸裂したような音が轟く。

 事実、僕たちがいた場所には巨大なクレーターが出現していた。

 放置していたヒドラスネークが四散して、跡形もなくなっている。


「これがオークの力……」


 ホブゴブリンの力も圧倒的だった。

 けれど、単純な膂力ならあのホブゴブリンを圧倒できるかもしれない。


「それだけじゃないぞ、ユーリ」


 一旦開けた場所ではなく、茂みに身を伏せた僕に、アストリアは話しかける。

 その彼女が指差したのは、オークが持っているこん棒だ。


 どうやら巨大な樹木から削り取ったらしい。

 作りは粗いけど、加工した後がある。

 あんな巨大な武器を加工できる職人はそういない。


「オークの特徴は、意外と器用なところだ。簡単な武器なら作れてしまう」


「あの巨体で武器もあるって、反則ですね」


 僕は唾を呑み、カラカラになった喉を何とか潤す。


「昔、A級の冒険者にこてんぱんにされたオークだよ、ありゃ。目の上に傷があるだろ、あれは昔受けた傷だな」


 同じく木の陰に隠れた冒険者が囁く。


 確かにオークの頭には、古傷が残っていた。

 おそらく直接頭蓋を狙った一撃だったのだろう。

 今ではすっかり治っているようだ。


「トドメをささなかったんですか?」


「刺せなかったんだよ。痛みわけでな」

「A級の冒険者も深手を負って、奴も逃げた」


「逃げたって……。あんな巨体、ダンジョンのどこに身を隠して」


「あれが現れたのは、20年前だ」


 ボウガンを構えた老練の冒険者が言う。


「時々、周到にダンジョンに隠れて、ああいう風にでかくなるオークがいるんだ。ここの植物は栄養が豊富で魔物をドンドンでかくする」


「だから、あんなに巨大なんですね」


 ホブゴブリンもそうだけど、今いるオークも規格外のサイズだ。

 本来のオークは精々僕の頭3つか4つ分の大きさしかない。

 あそこまで育つ魔物を、地元の冒険者たちは異常種と呼んでいる。


「アストリア、どうしますか?」


「私が先陣を切る。ユーリはあいつの動きを止めてくれ。他の者は援護を頼む」


「わかりました」


 僕は頷く。

 他の冒険者たちも一斉に頷いた。


 作戦が始まる。

 アストリアが再び風のように駆け出していった。

 巨大オークは目で追う。

 アストリアの銀髪は魔物の目すら幻惑したらしい。

 そちらに注意が向いた瞬間、その背中に向かって矢と魔法が放たれた。


 分厚い肉に何本の矢が刺さる。

 さらに炎弾が叩きつけられ、強力な爆裂系魔法が火を噴き、黒煙が立ち上った。

 だが、オークはぎろりと援護した冒険者の方を向く。

 身じろぎもしないし、悲鳴すら上げていない。


「やっべ! 全然効いてないぞ!!」

「なんだよ! 肉襦袢なんてずるいぞ!!」


 冒険者は抗議の声を上げる。

 その間にもオークはゆっくりと逆襲を始めようとしていた。

 持っていたこん棒を振り上げる。

 それを冒険者たちがいる森の方へと振り下ろした。


「こん棒――――」



 【ロック(ヽヽヽ)】!!



 僕は鍵魔法をかける。

 瞬間、今まさに振り下ろそうとしていたオークのこん棒が止まった。

 突然のことにオークは戸惑っている。

 自分が持っていたこん棒が急に空中で静止したのだ。

 驚くのも無理もない。


 オークはこん棒を動かすことに躍起になっていた。

 だが、無駄だ。

 そのこん棒は内部の結合力を高めた通常の【閉めろ(ロック)】じゃない。


 そして、その隙を逃すほど、S級冒険者(アストリア)は甘くない。


 そのアストリアの姿はオークの頭上近くにあった。

 まるで妖精のように軽やかに飛び上がった彼女の武器には、すでに多量の魔力が収束している。


「くらえっ――――」



 風砕(エア)螺旋剣(リーズ)!!!!



 青白い魔力の波動ががダンジョンに渦巻く。

 横一線に放たれ、オークを貫いた。

 閃光の中に巨大な魔物が消える。

 天地を切り裂くと、大量の塵と砂が舞い上がった。


 聖剣の所有者アストリアが持つ極技だ。

 あのホブゴブリンですら消滅させた技。

 いくら厚い肉の壁に覆われていても、無傷では絶対に済まないはず。


 タッ!


 アストリアが空から下りてくる。

 その視線は光に包まれたオークにあった。


 やがて光が消滅し、砂煙が収まる。

 視界を覆うすべての塵を、アストリアが自ら切り払う。


 そこにあったのは、無だ。

 オークは僕たちの視界から完全に消滅していた。


「「「「おおおおおおおおおおお!!」」」」


 冒険者たちは声を上げる。


「やりましたね、アストリア」


「ああ! 君の援護のおかげだ、ユーリ!」


 僕たちは手を掲げる。

 するとアストリアも笑顔を浮かべて、手を上げた。


 パンッ!


 気持ちの良い音を響かせる。


「それにしても、随分魔力が戻ってきましたね」


「まだまだだよ。出力として少し恰好がついたぐらいだ。ラナンの力はこんなもんじゃない。本人が聞いたら、怒るかもな」


 今ので出力半分か……。

 恐ろしいな。


「本気で撃ち込んだら、階層に穴を空けることだってできるんじゃないですか?」


「そう言えば、考えもしなかったな。やってみるか」


「ええ???」


「冗談だ」


 ふふふ……、アストリアはおかしそうに笑う。

 その美しい笑顔を見て、僕も笑った。


「それよりもオークのこん棒を止めた【ロック】……。いつも違うように見えたが……」


「ああ……。最近ちょっと新しい使い方を覚えたんですよ」


「どんなものだ?」


「まだ秘密です」


「なに? もったいぶるな仲間だろ」


「仲間でも秘密はあるでしょ?」


「むぅ……」


 アストリアは頬を膨らませ、飛びかかる。

 背後に回ると、僕の頭をロック(ヽヽヽ)した。


「教えろ、ユーリ」


「いたたたたた! ちょ! アストリア、痛いって!」


 あとなにげに柔らかものが僕の頭に当たってる。

 当たってます!


 僕はソロンさんに助けを求めたけど、逆効果だ。

 むしろ、僕をからかっていた。

 冒険者たちは僕たちを見て笑っている。


 こうして僕は冒険者という社会に馴染んでいく。

 この後、待ち受けていた第2層で起こっている問題も知らずに……。


いつも感想をいただきありがとうございます。

返信の方、もう少しお待ち下さい。

予想通り1月修羅場っているので……。

でも、とても励みになっております。

引き続き第二部も楽しみにしていただければ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス10巻 11月14日発売!
90万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



シーモア限定で6月30日配信開始です!
↓※タイトルをクリックすると、シーモア公式に飛びます↓
『宮廷鍵師、【時間停止】と【分子分解】の能力を隠していたら追放される~封印していた魔王が暴れ出したみたいだけど、S級冒険者とダンジョン制覇するのでもう遅いです~』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


シリーズ大重版中! 第7巻が10月20日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本7巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


9月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本4巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



8月25日!ブレイブ文庫様より第2巻発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


書影が出ました! 2月10日発売! こちらもよろしくです。
↓※タイトルをクリックすると、カドカワBOOKS公式ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large

ツギクルバナー

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[気になる点] 1章ではロックした武器を振るって闘ってたのにオークの武器はロックしたらその場で動かせなくなるのはなぜ?
[一言] 相手の関節だけをロックとか出来ないんだろうか? 関節固まると動きが悪くなるだけならマシな方だからなあ
[一言] 実力は、ホブより上なのかな? ただ、やっぱり魔力がある分、相手するのも一層より二層の方が楽なのかな。 見た目は、一層の時より楽勝みたいに見えるけど。 自分も強くなって。その分敵も強くなって。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ