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第4話 地層世界

 地層世界エドマンジュには、僕が住む第1層から地下に向かって、9つの地層世界が広がっている。


 即ち――。

 第1層:【人界(じんかい)】ザーバ。

 第2層:【森宮(しんぐう)】テネグ。

 第3層:【裏海(りかい)】ジー。

 第4層:【火塞(かさい)】フレバ。

 第5層:【砂浪(さろう)】ゴダ。

 第6層:【死城(しじょう)】ドマ。

 第7層:【外天(げてん)】ラゴス。

 第8層:【氷宙(ひちゅう)】スカイ。

 第9層:【剣帝(けんてい)】ヴァトル。


 そしていまだ嘗て誰も到達したことがないと言われているのが、


 第10層:【混沌(こんとん)】クリ。


 それらの層は、ダンジョンという回廊で繋がれ、人が行き来している。

 さらに【ウィンドホーン】という大穴が、10層ある層すべてを貫くようにあるけど、名前の通り強烈な風が常時第10層から第1層に向けて吹き上がっており、そこから下の階層に行くのは、実質不可能とされている。


 層間の移動はダンジョンでの移動が基本だ。

 そしてダンジョンには魔物がいる。

 層を降りれば降りるほど、魔力が濃くなるため、強力な魔物が生まれやすい。


 それに各層世界にはそれぞれ国と種族が存在する。

 そこでは政治や常識さえ違う。

 第4層ぐらいまでなら、まだ話が通じるらしいのだけど、第5層以降ともなると、政治体制自体が崩壊していたり、野盗が普通に暴れ回っている層もあるという。


 第8層から知的生命体そのものがおらず、魔物の巣窟となっている。

 おそらく第10層ともなれば、そこはもう人が生命活動できるかすら危ういだろう。

 それでも生粋の冒険者というヤツは、名誉と金のために未踏領域を目指す。


 層に最初に到達したものが、その層世界の王になることができるからだ。


 そしてここにもう1人――自分をS級冒険者と名乗る少女がいた。


「第10層を目指す?」


「ああ……」


「誰と?」


「君と私とでだ」


 アストリアと自己紹介した少女は笑った。

 そして彼女は今、僕に向かって手を差し出している。

 ついさっきまで、宮廷鍵師だった僕にだ。


 むろん、僕に冒険者としての経験はない。

 素人同然だ。


 だから「何を考えているんだ!」と手をはね除けるのは容易い。

 なのに、目の前の銀髪少女と来たら、何故か全く僕が断ると考えていないらしい。

 だって子どものように屈託のない顔を向けて、純真な緑の瞳で、僕の答えを待っているからだ。


 そんな顔されたら、誰だって断れない……。


「あの…………」



 ぐぅぅぅぅうううううぅうぅ……。

 ぐるるるぅぅぅぅううううぅ……。



 盛大に音が鳴った。

 竜の吐息のような腹音が、狭い路地裏に鳴り響く。

 1つは僕だ。

 そしてもう1つは、と僕は顔を上げる。

 アストリアさんの顔が林檎みたいに赤くなっていた。


「えっと……」


「し、仕方ないだろ。もう3日も何も食べてなかったんだ。そ、それに君だって」


「ご、ごめんなさい」


 なんかつい謝ってしまった。


「それで、お腹が空いてるの?」


「君は私がお腹の中にドラゴンでも飼っているとでも思っているのかな?」


 アストリアさんは、ついに居直ってしまった。


「わかった。じゃあ、うちに来る? ……ああ! 大丈夫! うちには母親と5歳の妹がいるから」


「何を断っているのだ、君は? それはともかく……。あ、ありがとう。迷惑でなければ、ご厚意に甘えさせてくれないだろうか」


「迷惑なんて……。助けてもらった礼もあるし」


「そうか。あ? その……ユーリ……くん…………?」


「何?」


「御相伴に与るついでに、もう1つお願いしてもいいだろうか」


「いいですけど……」


「実は、非常に言いにくいのだが……。実はこの襤褸の中身は――――」


 その時、一陣の突風が裏通りを吹き抜けていく。

 随分と悪戯な風だったらしい。

 アストリアさんの着ていた襤褸が、バッと翻る。


 その瞬間――――。


 僕はとてもすごいものを見てしまった。


一体何を見たんだ……。


面白い、役得、と思っていただけたら、

ブックマークと、広告下の☆☆☆☆☆評価をよろしくお願いします。

新作は最初のスタートダッシュが肝心なので、

何卒お願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 何を見たんだ、ユーリくん。気になる [一言] こちらにもお邪魔しました。 鍵師ときましたか! じっくりと読ませてもらいます。 今後の展開も楽しみです。
[一言] 朗報。腹音ドラゴンなハラヘリヒロインだった。
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