第38話 魔砲術
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鎧の隙間から見える白い肌。
まだあどけなさが残る童顔と、綺麗な金髪のツインテール。
武装は胸当てと、ガントレット。
腰には弾帯のようなものを帯びている。
やや傲慢とも呼べる瞳を光らせ、姫勇者エイリナはギルドの入口に立っていた。
「ぐあああああああああああああああ!!」
吠えたのは、死の淵から蘇った冒険者だ。
他の者と同じく頸動脈を切り裂かれ死んだらしく、傷口にはあの黒い膿が瘤のように膨らんでいた。
それも2体同時にだ。
ギルドの入口に立っていたエイリナに襲いかかった。
「魔砲――――」
エイリナが手を掲げ、呪唱する。
その瞬間、現れたのは杖のように細長い武器だ。
だが、杖のように柄を持つのではなく、石突きの先を襲いかかってくる冒険者に向けた。
まるでボーガンのように狙いを定めると、筒状になった石突きの先が、赤く光る。
【炎砲弾】!
タンッ、と乾いた音を立てると、冒険者の頭を打ち抜いた。
高速で打ち出された炎の弾は、冒険者の頭と胸付近を消滅させる。
先ほどまで五月蠅いぐらい吠えていた冒険者は、ついに物言わぬ骸となり、その場に倒れた。
だが、冒険者はもう1人いる。
エイリナは杖を返し、狙いを定めた。
腰に巻いた弾帯から弾を取りだし、杖に込める。
再び冷たい声で呪唱した。
【炎砲弾】!
もう1人も仕留める。
先ほど同じく胸から上が消滅すると、冒険者は沈黙した。
「なんか反射的に撃ったけど、これ何? 冒険者の中には荒くれ者が多いってのは、知ってるけど、一国のお姫様に飛びかかるなんて世も末ね」
「エイリナ、挨拶は抜きだ! その腐死者は任せていいか?」
アストリアは2人組の黒ずくめに視線を向け、剣を構える。
状況はわからないエイリナは、金髪を揺らした。
「腐死者? 王都に腐死者がいるの?」
「わからん! 私も今会ったところでな」
「ふーん……」
エイリナはアストリアが腐死者と呼称する者たちを見据える。
よく観察すると、見覚えのあるものが、腐死者に付着していることを発見した。
つまり傷口の黒い膿だ。
「あれ? もしかして、地下の黒い塊?」
そう。よく似ている。
封印の扉から出てくる黒い塊と色も雰囲気も酷似していた。
「エイリナ、何か知ってるのか?」
「悪いけど、説明は後にさせて……。まさか人を探しにきたら、こんな厄介なことに巻き込まれるなんて」
「お互い……。色々事情を説明する必要がありそうだな」
「そのようね。今はともかく、この気持ち悪いヤツらを倒すしかないわ」
エイリナはアストリアに背中を預け、杖を構える。
アストリアもまた剣を構えた。
「正面は受け持つ。他は任せるが構わないか?」
「何よ。あんた、楽をする気?」
「なら代わるか?」
「いやよ。そっちもすっごくやばそうだし」
「じゃあ、交渉成立だ」
「建物を壊さないでね。あんたの聖霊魔法は、本気出すとこの建物だけで済まないんだから……」
「その言葉、そっくり返すぞ」
タンッ!!
足音が重なる。
先に仕掛けたのは、腐死者の方だった。
一斉にアストリアとエイリナの方に向かって、飛びかかる。
だが、2人は慌てない。
むしろ不敵な笑みすら浮かべていた。
先に呪唱したのは、エイリナだった。
弾帯から数弾の弾を取り出す。
それをすべての杖の中に込めると、天井に向けた。
【炎滅弾】!
ドンッと1発の弾が打ち上がる。
それはギルドの屋根を突き破り、外へと飛び出した。
誤射……。
あるいは動揺による発砲か。
否である。
一旦ギルドを飛び出した弾は、空中で6つに分裂する。
すると、弧を描きながらギルドの方に戻ってきた。
その瞬間、襲いかかってきた腐死者たちの頭上に降り注ぐ。
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」」
断末魔の悲鳴に見た叫びが響く。
すべての弾は腐死者を貫き、その身体を消滅させた。
「こんなもんね」
エイリナは得意げに鼻を鳴らす。
くるりと彼女が砲杖と呼んでいる魔導器を回した。
B級冒険者すらおののかせた腐死者を、一瞬にして消滅させてみせる。
『姫勇者』と呼ばれる彼女だが、その得物は魔法だ。
特にエイリナオリジナルと呼ばれる『魔砲術』は、魔力が薄い第1層でも高火力の魔法を撃つことができる全く新しい魔法体系である。
方法はシンプルだ。
圧縮された魔力が入った弾丸に、魔法を呪唱し撃ち出すだけ。
それでも魔砲を形作る成形魔法と、撃ち出す魔弾の性質、さらに高速で射出するための魔法――少なくとも3つの魔法を同時詠唱しており、やはりそこに『姫勇者』と呼ばれる非凡な才能を示していた。
「さて……」
エイリナは振り返った。
剣を構えたS級冒険者に視線を向ける。
目を向けた瞬間、飛び込んできたのは目映い光だ。
黒ずくめ2人の剣戟を抑えつつ、アストリアは魔力を持った剣に集中させていた。
「ちょっ! アストリア!!」
エイリナは叫ぶ。
だが、遅い。
すでにアストリアの魔力は解放された。
「風よ――――」
【風刃】!
それは風属性の攻性魔法の中でも、初歩レベルにある魔法だ。
比較的に威力も小さく、厚めの鉄盾ぐらいであれば耐えうるほどである。
だが、アストリアは風の聖霊と契約している。
その彼女が生み出す風の刃は、普通の魔法士とは全く異なる。
ジャンッッッッッッッッッッッ!!
斬ったというのには、それはあまりに禍々しい音だ。
まるで溶けた鉄を、鋭い氷の剣で切り裂いたかのようであった。
黒ずくめの男が止まる。
まるで彫像のように。
右に剣を払ったアストリアは、空気を切りつつショートソードを鞘に収めた。
直後、黒ずくめの身体に斬った痕が浮かび上がる。
粉みじんとなり、消滅するのだった。
本日はここまでになります。
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