表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/142

第32話 たまにはこういうのも悪くない

「さて……。堅苦しいのは、ここまでだ。そろそろ報酬の話をさせてくれ」


 ようやくアストリアの表情がほぐれる。

 緩んだ襟元を締めて、お金の話を始めた。


「はい。クエストは未達ですが、依頼料の8割をお支払いいたします。また怪我をしたり、破損した武器の修理費用は別途お支払いいたしますので、遠慮なく申し出てください」


「それでホブゴブリンの方だが……」


「依頼はありませんが、ギルドの方で特別褒賞金を出させていただきます。ホブゴブリンの肉体の一部はお持ちですか……」


 アストリアはあらかじめ用意していたホブゴブリンの爪の一部を差し出す。

 受け取ると、マーレイさんは、鑑定魔法を起動した。


「はい。間違いなくホブゴブリンです。しかも、Aランクと出ていますね」


 最後の一言にギルド内は、再び騒然となる。


「Aランク……?」

「ホブゴブリンが……」

「第1層でAランクの魔物が出るなんて」

「おい。魔力が制限された状態で、S級冒険者でも勝てるのか?」

「さすがに難しいんじゃないか?」

「じゃあ、まさか……」


 冒険者たちが僕の方を見る。

 ようやく事態を悟ったとばかりに、顔を青ざめさせる。


「報酬ですが……。200万ルドでいかがでしょうか?」


「に、200万ルドぉぉぉぉおおおお!!」


 僕は絶叫する。

 郊外なら一軒家が建てられるぐらいの値段なんですけど。

 他の冒険者も驚いていた。

 ホブゴブリンの値段としては、あまりに破格だそうだ。


 それでもAランク判定された魔物。

 それぐらいの値段が付いてもおかしくない、というのが冒険者たちの見解だった。


 だが、アストリアは首を縦に振らない。


「うーん。もう一声……」


「わかりました。210万でどうでしょうか?」


「うん。それでいい……」


 す、すごい……。

 210万の取引を見てしまった。

 1000万ルドの予算を申請したことがある僕が言うのもなんだけど、目の前で210万ルドのお金が動くのは、さすがに圧巻過ぎる。


「全額お支払いを希望されますか?」


「50万だけ引き出す。後はギルドで預かっててくれ」


「かしこまりました」


 しばらくしてマーレイさんは、50万ルドが入った袋を持ってくる。

 以前、腕相撲でもらった賞金と同じ額だけど、大金は大金だ。


「さて、ユーリ。少し君にレクチャーしてあげよう」


「レクチャー?」


 袋を受け取ったアストリアはニヤリと笑う。


「冒険者と仲良くなる秘訣だよ」


「へ??」


 すると、アストリアは受け取ったばかりの金袋を、冒険者の前に掲げてみせた。


「みんな、喜べ! ここにいるユーリが先輩冒険者のみんなにお酒を奢りたいのだそうだ。新人冒険者の申し出を仕方なく(ヽヽヽヽ)受けたいヤツはいるか」


「え? ちょ――――」


 僕、何も言っていないんですけど!


 止めようとした時には遅かった。



「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」



 万の軍勢が攻めてきたのかと思う程の雄叫びがぶち上がる。

 冒険者の瞳は飢えた狼のように光っていた。

 中には、涎を垂らしている人もいる。


「やったぁぁぁあぉあぁあぁあぁぁあああ!!」

「新人冒険者様さまだぜ!」

「期待の新人ルーキー様はよくわかってんなあ!」

「ひゃっっはああああああああああああ! 今日浴びるほど呑むぜぇ!!」


 まるで猪の大群が現れたのかと思う程、大きな声を上がる。

 冒険者は興奮の坩堝と化していた。


 こうなったら、僕の鍵魔法でも止められそうにない。


「あ、アストリア……。これ――――」


「ふふふ……。これが冒険者と仲良くなる秘訣だ。さ――行こうか」


「行こうかって……。どこへ?」


「酒場に決まってるじゃないか?」


 アストリアは僕の腕を引っ張る。

 その後ろからぞろぞろと冒険者が付いてきた。

 まるで一国の軍司令官みたいだ。

 残念ながら、連れている兵士はどれも柄が悪いけど。


「ふふん……」


 でも、僕の腕を引っ張るアストリアはなんだか嬉しそうだ。

 お酒が好きなのだろうか。

 そんな彼女の顔が見てると、細かいことはどうでもよくなってくる。


 たまにはこういうのも悪くないかもしれない。


本日はここまでです。

あと1話だけ日常シーンを挟んで、いよいよ第一部最終章です。

勘違いしてる人が多いんだけど、第一部の最終章ですからね。

ついに対決の日がやって来ますので、お楽しみに!


ちなみにカクヨムの方に掲載しております。

もし良かったら、あっちの方の★★★も入れてもらえると嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス10巻 11月14日発売!
90万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



シーモア限定で6月30日配信開始です!
↓※タイトルをクリックすると、シーモア公式に飛びます↓
『宮廷鍵師、【時間停止】と【分子分解】の能力を隠していたら追放される~封印していた魔王が暴れ出したみたいだけど、S級冒険者とダンジョン制覇するのでもう遅いです~』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


シリーズ大重版中! 第7巻が10月20日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本7巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


9月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本4巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



8月25日!ブレイブ文庫様より第2巻発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


書影が出ました! 2月10日発売! こちらもよろしくです。
↓※タイトルをクリックすると、カドカワBOOKS公式ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large

ツギクルバナー

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[一言] 円貨換算いくらぐらい、と思ったけれど、単位は$(のさかさま)かあ。というと、腕相撲の賞金が、なんかとてつもない額に見えてくる… 国家予算規模の1/100の1/5のさらに1/4だから… ホブ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ