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天才は使い方次第で神にも凡人にも成る  作者: 田代 秀隆
報告書1〜始まりの日〜
9/30

〜始まりの日9〜

意を決して放った天秤(はかり)の言葉


その言葉と覚悟を決めた目に

小さくなっていた大夢(ひろむ)

すぐに傾聴(けいちょう)モードへと切り替わった


「……お兄さんを助ける?……」



「はい………私には兄が2人いるんですけど……

1週間前、1番上の兄が

殺人の容疑で警察に捕まったんです……」


衝撃の告白に隣の月咲(つかさ)も驚いていた


「殺人っ?!!……お兄さん何したのっ?!!」


その反応から

月咲(つかさ)も今、初めて聞かされたと分かった


大夢(ひろむ)は軽く月咲(つかさ)を制止する


月咲(つかさ)、うるさいっ……

殺人の容疑だって言ってるだろ……」


大夢(ひろむ)の制止で

また、周囲の目を集めていることに気付いた月咲(つかさ)


皆の視線が外れたところで話を元に戻す大夢(ひろむ)


「お兄さんは、どういった経緯で?……」



「ウチの家の近くに、親戚の家があるんですけど……

警察の人の話では

その親戚夫婦2人を滅多刺しにしたって………

理由を聞いたら、口論の末やったって言ってて……

でもっ!!そんなはずないんですっ!!……」


天秤(はかり)の目には、疑問の念が乗り移っていた


語気も強まり必死さが伝わって来る


(まこと)()ぃは大人しい性格で……

その親戚とも、めちゃくちゃ仲良くて……

いくら喧嘩したからって、殺すなんて………」


力強く語る天秤(はかり)の声は

悔しさからか、少し震えていた


大夢(ひろむ)は慎重に言葉を選びながら話を続けた


「仲が良いからだけでは証明にならない……

口論の末という事は、余程の事を言われたり……

親戚と言えど、100%分かり合える人間同士なんて

この世に存在しない……」


しかし、大夢(ひろむ)の言葉を遮るように

天秤(はかり)は強い口調で言葉を返す


菊地(きくち)さんは、(まこと)()ぃを知らないからっ!!……」


思わず荒げてしまった声に

今度は天秤(はかり)の方が小さくなっていた


「………ごめんなさい……」



「いやいや……気にせず続けてくれ……」


天秤(はかり)は涙を堪えて話を続けた


「……本当に仲良しなんです……

だってっ……事件のあった、たった3日前に……

たった3日前ですよ?!!……

私ともう1人の兄を含めた親戚夫婦5人で、

温泉旅行に行ってるんですっ……

しかも(まこと)()ぃがバイトで貯めたお金で……

殺す前にそんな事するなんて、

私にはあり得ません…」


真剣な表情の天秤(はかり)


興奮気味に語ったせいか、少し息切れを起こしていた


大夢(ひろむ)天秤(はかり)の顔を見て思った


なるほどな……

確証無しに言ってる訳じゃないのか……


また、声を荒げてしまった天秤(はかり)

申し訳なさそうに小さく呟いた


「すいません……何度も怒鳴っちゃって……

とんでもない事頼んでるのは百も承知ですが……

お願いします……(まこと)兄ぃの無実を証明して下さいっ!!…

その為なら私、何でもしますからっ……」


そう言って頭を下げる天秤(はかり)


重々しい空気が大夢(ひろむ)達のテーブルを包む



そんな中


大夢(ひろむ)はおもむろにスマホを取り出しすと

頭を下げる天秤(はかり)の前で操作を始めた



大夢(ひろむ)の態度に、思わず月咲(つかさ)が口を挟んだ


「ちょっと……聞いてる?大夢(ひろむ)……」


しかし、大夢(ひろむ)はスマホを操作する手を止めず

月咲(つかさ)の声で顔を上げた天秤(はかり)に語りかけた


「あぁ……ごめん真道(しんどう)さん……

ちょっとだけ時間くれ……」


真剣に話をしているつもりだった


しかし、目の前の大夢(ひろむ)の態度を見て

天秤(はかり)は幻滅した


「………信じれないですよね……」


そう呟き、落ち込む天秤(はかり)の姿を見て

月咲(つかさ)は慌てて慰めに入る


「そんな事無いって天秤(はかり)ちゃんっ……

もうっ、大夢(ひろむ)ってばっ!!……」


月咲(つかさ)が声を荒げるも

大夢(ひろむ)はスマホの操作を止めなかった


怪訝な視線を向けられても

スマホの操作を続けながら、また語り出す大夢(ひろむ)


「別にそう言う訳じゃ無い……

こんな格好で済まないが、真道(しんどう)さん……

1つ確認したい事があるんだが、いいか?……」



「………なんですか?……」


スマホの操作を終えたのか

大夢(ひろむ)はスマホを机の上に置くと

真っ直ぐな目を天秤(はかり)に向けた


「その事件の真実が、君の望む結果で無かった時……

君はそれを受け入れる覚悟はあるか?……」


意味深い言葉に

天秤(はかり)はあまり理解出来ていない様だ


怒りも混ざって、また声が荒くなる


「受け入れるも何も……

(まこと)()ぃがやってるわけないんですっ!!…」



「過程はどうでもいい……

俺の言葉を受け入れる覚悟はあるのか?……

と聞いている……」



「………へ?……」


話の本筋が見えず、天秤(はかり)は困惑していた


困惑する天秤(はかり)他所(よそ)

大夢(ひろむ)は淡々と言葉を続けた


「真実というのは常に1つだけだ……

それ以外はただの仮説・空論に過ぎない……」



「………あの………何が言いたいんですか?……」


やっぱりそうだよね……この人も警察と同じ……

(まこと)兄ぃの事、何1つ分かってない……


その時


大夢(ひろむ)のスマホが、机の上で震え出した


液晶画面に映し出された文字に

メールが届いたのだと分かった



大夢(ひろむ)は再びスマホの画面を覗き込み

念入りに画面に映る情報を確認した


そして、軽くスクロールすると

スマホの画面を天秤(はかり)の方へ向け、(かか)げた


「ここが現場で間違い無いか?……」



「…………現場?……」


大夢(ひろむ)のスマホに注視する天秤(はかり)


脇から月咲(つかさ)も画面を覗き込んでいた



大夢(ひろむ)(かか)げるスマホ画面を目にして

天秤(はかり)は驚きの表情を浮かべていた


「えっ?……これって……」


天秤(はかり)が驚くのも無理は無い


そこには一般的な一軒家の

リビング全体を写した写真が映し出されている


しかし、それを見て驚きを隠せない天秤(はかり)


「なんで……」


それは


その写真に驚くべき物が写り込んでいたからだ



画面に写し出されていたのは

リビング全体を映し出した写真


上部には、綺麗な机と

その奥に見えるのはカウンターキッチン


写真左手辺りにある扉付近には

観葉植物と真っ白な固定電話機が1つ置かれており

写真手前には真っ白なソファーが写し出されていた



ここまでは良い


ごく普通の一般家庭のリビング写真だ



だが、そんなリビング写真の中央に

異様なものが映り込んでいた



そこにあったのは

血で真っ赤に染まった床


死体こそ無いものの

白いテープで人型に確保された

誰がどう見ても明らかな、殺人現場写真



だが、それだけではない


天秤(はかり)の兄が起こした事件現場であるのだから

驚くのも無理はなかった



「…………あっ……合ってます……」



「……そうか……」


驚く天秤(はかり)を尻目に

大夢(ひろむ)はスマホを更にスクロールさせ

下記に書かれた詳細内容を確認していた




天秤(はかり)が唖然としている中


丁度そのタイミングで

月咲(つかさ)の注文した料理達が運ばれて来た


しかし、月咲(つかさ)の興味もまた

大夢(ひろむ)のスマホにあり

慌てて注文に気づき、料理を受け取りだしていた



驚く2人を尻目に

大夢(ひろむ)は写真と一緒に送られて来た

詳細情報を目を通していた



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