異世界転生モフモフ~この世界に足りないのはビタミンでもカルシウムでもなくモフモフだったようです。
「なろうラジオ大賞」応募用作品です。1,000文字以内ってのが厳しい!
俺の名は……モフモフ……さん
ワケあって、この異世界に転生した
この世界の――支配者である
なにをバカな! そう思うだろう。いや、かまわない。俺だってそう思う。俺はとある事情にて死亡。気がつけばこの異世界に転生していた。転生した俺はどうせ最強だろ? と旅にでた。しかし
――うはっ ぐはっ うっひょ―――いぃ〜
スライムやゴブリン、果てはちっちゃな虫モンスターにさえ負けるほどに弱かった。そこで自分をよく見てみれば、カラダは丸っこく、モフモフっとした毛で覆われていた。
「さ、最弱かよおい!」
困り果てた俺は、魔王軍の門を叩いた。だって、どう見たって俺の属性はモンスターだったからだ。が、文字通り門前払いを食らった。
「ざけんな! コッチから願い下げだぜ!」
俺には熱い正義の血が流れている。だから、当初の予定通り、勇者パーティに入ることにした。そしてこれは案外簡単だった。
「いやーんカワイイ〜モフモフしてるぅ〜アンタの名前はモフモフさんね!」
女勇者の使い魔――ペットとも言う、の職を得たのだ。通り名を得た俺は一気にレベルアップ――などはせず、相変わらずモフモフとしていた。だが女勇者との至福のモフモフ生活も長続きはしなかった。
――我は倒れるとも、必ず意志を継いだ者がお前を倒すだろう!
女勇者パーティーはあっけなく全滅してしまったのだ。
「勇者が負けんなよ! あと最後の負け惜しみ要らないからね!」
しかし、捨てる神あれば拾う神あり、とはよく言ったもので、俺は転職先をすぐに得ることができた。
「え? キミなに? なんでそんなにモフモフしてんの? ちょっとモフモフさせて!」
異世界を支配する魔王女ミカエラである。ミカエラを癒やすのが俺の勤めとなった。
そして当然の帰結としてモフモフへの依存度は増していき、俺と結婚する! とか言い出しやがった。アホである。そのアホが通るのが専制政治のヤバイところで、こんな俺がこの世界の王となったのだ。
その後ミカエラは新たな女勇者に倒された。しかし俺はまた女勇者への転職に成功。勇者が倒れれば魔女に、魔女が倒れれば女剣士に、と、常にこの世界の中心に居座り続けたのである。
異世界転生して分かったこと、それは世界はモフモフで回っている。ということだ。