大量虐殺 -ジェノサイド- の行方
長編の合間に書いた、短編です。ちょいとした思いつきだったのですが、テーマを持って書きたい、という気持ちだけで書きました。とはいえ、小説はエンターテイメント。お読みになるみなさんが、エンターテイメントとして楽しめるように心がけましたが、訴えたいテーマも刻み込みました。
皆さんからのご意見をいただければ、作者としてこれ以上の励みはありません。
どうか、ご意見をいただきますよう、お願いいたします。
黒沢冬二
俺は、眼を疑った。
まったく覚えのない場所で目を覚ましたからだ。白い天井、白い壁。床やドアまでも白かった。すべて白だ。ただし、一つだけ大きな窓があった。完全な閉鎖空間ではないようだ。日差しが入り込んでいる。
これは夢なのか?
一瞬、そんな思いが脳の中を駆けめぐったが、すぐに否定された。タクヤに声をかけられたからだ。
「おい、コウジ。ここはどこだ?」
「俺が聞きたいぐらいだ。タクヤは覚えがないか」
「ない。寝たのすら覚えてないんだよ。まだ、頭がふらふらする」
そう言えば、俺もいつ寝たのか覚えがなかった。
寝る直前、寒さを感じた。身を寄せるようにして、志を共にする連中と集まったところまでははっきりと覚えていた。だが、そこから先の記憶がまったくない。
志を共に――同志。
そうだ。タクヤは同志だった。まさか、他の同志もここにいるのか?
俺は、回りを見渡した。予測は当たっていた。
同志のほとんどが、この妙な空間に集められているようだった。いや、違う。俺たちとは違う同志のグループもいる。
見渡すと、どうやらこの場所は巨大な、体育館のような広い部屋になっていることが分かった。あちこちに、俺たちと同じように連れてこられたやつらなのか、グループを作ってまとまっていた。
「ともかく、他の同志も起こした方がいいんじゃないか?」
「そうだな」
俺とタクヤは、周りにいる同志に声をかけようと立ち上がろうとした。だが、体がまったく動かない。俺は目を見開いてタクヤを見た。タクヤと目があった。
「体が動かない」
「おまえもか」
俺は、動揺しながらタクヤに言った。手や足も動かそうとしたが、気持ちはあっても動く気配すらなかった。
《薬を嗅がされたのか》
俺は、咄嗟にそう思った。記憶が曖昧ない上、体が動かないのだ。そう思うのも道理であろう。
俺は、なるべく冷静になろうと努力した。
首を左右に振る程度のことはできるようだ。声も出せるし目も見える。頭はぼんやりとしているが、正常に働いているようだった。動かないのは体だけ、と限定的だということが分かった。しかし、理由がまったく分からなかった。なぜ動けず、不愉快な場所に連れてこられたのか。
策略――
脳に何かが駆けめぐった。思い出せそうな気配がした。だが、だめだった。ぼんやりとしたものが脳裏に浮かんでは消えていく。俺は苛立ちを覚えた。だが、どうすることもできない。頭は働くが体が動かないのだ。
「ここはどこなの?」
突然、ぼんやりとした声がした。
「レイコ。おまえも連れてこられたのか」
声のする方をみると、同志の一人、レイコが眠気眼で仰ぎ見ていた。
「連れてこられたって、どういう意味? ここ、どこなの?」
「知らねぇよ。俺も、気がついたらここにいたって状況だからな」
レイコは、俺の女のだった。俺たちは、同志に見つからないように密会をしては、愛をむさぼっている。
同志――
密会――
何かがひっかかった。だが、思い出せない。
「あれ、体が動かない」
「そうらしいぜ。体も動かない、なぜこの白い部屋にいるかもわからない。これが、今のところ分かっていることだ」
俺は話しながら笑いがこみ上げてきた。分かっていることと言っても、どうしようもない状況だと言っているだけじゃないか。
「コウジ。それでどうするんだよ」
「どうするって何がだよ」
俺は、吐き捨てるように言ってやった。
「いや、このままじっとしているのかってことだよ」
「体が動かないんだから、どうにもなんねぇだろうが」
「そらそうだがな」
タクヤがそっぽを向いた。
そのときだった。突然、金属音が室内に鳴り響いた。不愉快な、癇に触るような音。許してはいけない音。ドアが開いた。そして、一人の男が入ってきた。
男は、恐ろしいほど大きな体をしていた。まるで、巨人だった。手に容器をぶらさげて、ゆっくりと歩いている。
「コウジ、あいつ、何者なんだ?」
「分からん。だが、味方じゃないことは確かだろう」
俺とコウジは、男の動きを注視した。
男は、俺たちとは別のグループへ近づいていった。
突然だった。容器に入っている透明の液体をぶちまけた。
男の表情は見て取れた。何の感情もない。冷血。そんな言葉が似合いだった。
他のグループのヤツも俺たちと同じなのだろう。液体をかけらてもぴくりとも動かない。ただし、叫ぶ声だけは聞こえた。頭の中だけは働いているのだ。
鼻につく鋭い臭いが漂ってきた。
「灯油っ――」
俺の頭の中を嫌な予想が支配した。その瞬間だった。男はマッチに火をつけると、無感情にグループへとマッチを放り投げたのだ。瞬く間に火が広がった。
「お、おい。見たかよ」
タクヤがろれつの回らない舌で言った。レイコなどは、呆けたような顔をして燃やされるグループを見入っていた。
俺は黙って頷く。目は、燃やされているグループに釘付けだ。
生きながらに燃やされている。ただし逃げることは許されない。体が動かないのだ。冴え渡る頭だけが、自分が死んでいく様を記録していく。
悲鳴が激しくなった。
苦しい。
熱い。
助けてくれ。
死にたくない。
生きながらにして燃やされる無念さだけが伝わってくる。
燃やされている同志と目があった。悲しそうな目を向けている。だが、目に火が燃え移り、沸騰したお湯のように泡を吹き出した。やがて泡は蒸発し、目のあたりにぽっかりと穴が開いた。
男は、燃やされる同志の一部始終を見届けると、部屋から出て行った。相変わらず無表情だ。ドアが閉まるとき、金属の板を叩いたような音がした。ドアも鋼鉄製なのだろう。白い部屋に静寂が流れた。異臭が鼻をつく。燃やされた同志の臭いだった。
「どうするんだよ、コウジ。俺たちも燃やされるんじゃないのか」
「怯えてどうする。体が動かないんだ。どうにもなんねぇだろうがっ」
「そんなこと言ったってよう、コウジ。俺、怖くて、怖くてしょうがねぇよ。次は、俺たちが燃やされるかもしれないんだぜ。あの敵にさ」
《敵――》
そうだ。敵だ。あいつは敵なんだ。
俺は、すべてを思い出した。
俺たちは、阿蘇に展開する二連星小隊の一員だったのだ。
ときに西暦二〇二三年。サハリンで発見されれた油田を巡って、世界が揺れていた。一時は民主化を推進したロシアが再び力を盛り返し、共産化の道に戻った。そのころ、中国も輸出による国力が増大していた。思想を同じくする強国であるロシアと中国は同盟を締結した。露中同盟だ。これに呼応するように、すでに共産圏であった北朝鮮、ベトナムも露中同盟に参加。この連携に反対の立場をとっていたタイ、マレーシアだったが、カンボジアが露中同盟に参加したのをきっかけに、東アジア全体に共産化の波は広がった。日本の立場は微妙なものになった。周囲は完全に共産化していた。唯一、韓国だけがかろうじて民主化の道を歩んでいたが、国内情勢は揺れ動いており、いつ、共産化に走るかわからなかった。日本は窮地に立たされていた。周囲を共産国に取り囲まれている上、アメリカから北方四島を取り返せと矢の催促が入ったからだ。アメリカはサハリンの油田を狙っているのだ。その役割を日本にやらせようとしている。日本は、混乱した。アメリカの無理な要求を呑むべきだと主張する保守派、要求を蹴り独自の思想を貫くべきだという強行派、さらにはいっそ共産国化しろという売国奴まで現れる始末であった。そして日本は――
俺は、時代を憎んだ。こんな時代に生まれた自分をも恨んだ。
だが、そんなことは泣き言だった。世間のことなど俺の生き方には関係のないことだ。こんな時代に生まれたのなら、その中で出来ることをやるしかない。
二連星小隊、隊長。それが俺の正式階級だ。二連星小隊の役割は、南の要、九州を敵より死守することであった。九州全域に散らばるのは一連星連隊、二連星連隊、それに七連星連隊だ。七連星連隊がもっとも多く、活躍も有名だった。それもそのはずで、福岡、宮崎、すでに敵の手に落ちている東京といった大都市に配属されていたからだ。俺たち二連星連隊および一連星連隊の一部は、九州山脈を中心に展開していた。その中、俺たちは阿蘇山中に潜み、敵を迎撃する役目を担っていたのだ。
だが、どうだ。あっさり掴まって、今にも殺されようとしているではないか。
俺はほぞを噛むような思いに支配されていた。どうせ殺されるなら、タダじゃ死なない。一矢報いてやる。俺たちの仲間をゴミのように焼き払い、俺たちの領土に土足で入り込んでくるやつらに一泡吹かせてやる。絶望感の中、怨念のような思いが広がってゆく。
気は焦るが、どうにもならなかった。首だけは動いた。無理矢理左右に振ってみる。少しは動いた。窓に目がいった。
俺は目を見開いた。
動きは鈍いが、這うようにして動いているヤツがいるではないか。
「おいっ、タクヤ。窓の方を見ろ。動いているやつらがいるぞ」
「え、本当か」
タクヤは、窓の方に目をやって唸っていた。
「俺たちと何が違うんだ。あいつらはなぜ動ける」
動ければ、逃げることも可能だ。あの鋼鉄製の扉が動かなくても、窓をぶち破ることだって出来るかもしれない。いや、それは無理だろう。遠く離れたこの場所からでも、あの窓が分厚いのが手に取るように分かった。並の力で割ることなど不可能だ。だとしたら、ドアからの脱出しかない。それには、動けるようになる必要がある。
俺は必死に考えた。窓の近くと俺たちがいる場所との違いだ。
「レイコ。何か浮かんでこないか?」
「何かって?」
レイコは、いまだに震えていた。まだ、同志が燃やされたことに動揺しているようだった。
「のんきな声を出してるんじゃない。動ける方法だ。動けなきゃ脱出もできやしない。何でもいい、考えろ。窓の方のやつらは動き始めているぞ。タクヤ、おまえもだ」
タクヤが返事をすると同時に金属音が鳴り響く。
《来た。ヤツだ》
俺は固唾を呑んだ。タクヤは祈るようにして「こっちに来るな、こっちに来るな」とつぶやいていた。
男は、俺たちの方には来なかった。奥へ行くようだったが、途中で方向を変えた。男は、白い巨大な箱を動かしていた。何をしているのか意味が分からなかった。だが、白い箱を窓の方へと動かしていることが分かると、行動の意図が分かった。
男は、動き始めた同志を捕まえようとしているのだ。まだ、這うことしかできないのだ。動き回られて面倒なことになる前に、白い箱に閉じこめる気なのだ。
果たして、俺の予想は当たってしまった。
男は、動きの鈍い同志を捕まえては、クズを扱うようにして白い箱に放り込んでいく。同志の声だけが聞こえる。
「やめてくれっ、俺が何をしたっていうんだ」
「助けてくれ。俺は死にたくない」
「ここからだせ、このやろう。殺戮はやめろ」
俺は耳をふさぎたくなったが、目は白い箱に釘付けになっていた。あの箱を、まさか燃やすのではないか。見たくはないし、想像もしたくないことだった。だが、男は、俺の想像をなぞるようにして、箱に蓋をした。
そして、透明の液体をふりかけマッチで火をつけた。
悲鳴。
叫び。
無念と憎悪を声にのせて、箱の中の同志は訴えていた。
男は無表情だ。いや、むしろ楽しんでいるようにも見えた。口元がゆがんでいるのだ。箱全体に火が燃え広がり炎上を始めた。もはや、同志の声は聞こえない。狭い密室に閉じこめられて燃やされたのだ。俺の脳裏に、同志の姿が浮かんだ。逃げようと這うようにして壁にとりつくもの。同志の背中を踏み台にして上へ逃げようとするもの。祈りを捧げるもの。無情に透明の液体が箱からしみ出てくる。そして炎に包まれるのだ。
手は焦げ、足は焼けただれ、肺を熱気にさらして死んでいくのだ。
箱が焼け崩れた。
中から、黒こげになった同志の死体があふれ出る。中心の方は、まだ生焼けだった。腹がふくれている同志がいた。だが、次の瞬間、はじけるような音がして内臓が飛び出した。俺は、思わず目を背けた。タクヤなどは、うずくまるようにして、決して箱を見ようとはしなかった。
腕に圧力を感じた。見ると、レイコが腕にしがみついているではないか。
当然だろう、と思った瞬間だった。俺は、眼を疑った。レイコがしがみつくということは動けるということなのだ。
「レイコ。動けるのかっ」
「え?」
レイコは、自分でも夢中だったのだろう。動くことができるということに気がついていない様子だった。
「ほ、本当だわ」
俺は、自分の腕を動かしてみた。レイコがしがみついているという感覚があったのだ。ということは、神経系が回復しているということではないか。
かすかだが、腕が曲がった。
「やったぞ。動く。タクヤはどうだ」
「わかんねぇよ。俺はもう殺されるんだ」
「ばかやろう。諦めたら終わりだ。生き残る。俺たちは、二連星小隊じゃないか。敵をこのままのさばらせてていいのか」
「二連星小隊?」
「あぁそうだ。俺は思い出した。自分の使命、任務。俺たちは、領土を土足で踏みにじる敵を侵入させないために配属された志願兵じゃないか。どうだ、思い出したか」
タクヤは、自分の頭の中をまさぐっているような表情をした。
「そ、そうだ。俺の両親は敵になぶり殺しにされたんだ。それで、志願兵になったんだ。コウジ、いや、隊長。思い出したよ」
何が引き金になっているかは不明だ。だが、確実に記憶が戻り、体が動くようになってきているようだった。このままうまくいけば脱出も可能かもしれない。
だが、そんな楽観的な思いは、打ち砕かれることになる。男が、俺たちの方に歩いてきたのだ。俺は、全身を硬直させた。
「動くなよ、タクヤ、レイコ」
声を潜めて言った。
男は、ゆっくりとした足取りでこちらにやってきた。俺は、男の目を凝視した。睨み付ける。それしか出来ないからだ。たとえ殺されても、ヤツに俺の恨み怨念を脳に刻み込ませるのだ。動けないのならばそれしかできない。それが一矢報いることになるとは到底思えないが、俺が殺されても他のヤツが必ず復讐する。そう思いこむようにするしかない。
男が目の前にやってきた。俺は、鋭い視線を男に浴びせる。だが、男は、俺のことなどお構いなしに他の同志を捕まえた。同志は、悲鳴を上げた。
「た、助けて。俺は死にたくない。やめろっ」
掴まった同志は、頭しか動かないようだ。頭を振りながら叫んでいた。同志の恐怖にゆがむ顔。俺は、捕まった同志の名前を思い出した。
「あいつは、確かキョウゴ――」
そのときだった。キョウゴと目があったのだ。
「あ、隊長じゃないですか。助けて、助けてください。俺、体が動かないんですよ。お願いですから、助けて」
俺は、キョウゴの声を無視した。助けてやりたいに決まっている。だが、俺だって体が動かないのだ。捕まったら、睨んで怨念を敵の脳に刻むことしかできない。
「た、隊長?」
キョウゴの顔が苦悩にゆがんだ。
「あんた、卑怯ものだ。同志を見捨てようっていうのかっ」
俺は悔しかった。だが、耐えるしかなかった。今、声をあげれば捕まってしまう。それでもいいのか。声をあげてキョウゴを慰めればいいのか。違うはずだ。キョウゴの罵倒に耐え、体が動くかもしれないという賭に勝たねばならない。それが隊長の任務だ。俺は言い聞かせた。
「ちくしょう。隊長は俺を見捨てるんだな。今まで、えらそうなことを言っていたのは嘘なのか。この、腰抜けめっ」
悔しくて涙が出そうになった。だが、そんなものは出なかった。涙など、いつから始まったか分からないこの戦いに巻き込まれたときから忘れてしまった。罵倒するキョウゴの声をよそに、男は、椅子に腰掛けた。そしてキョウゴを机の上に寝かせた。
俺は息を呑んだ。
男がナイフを取り出したからだ。
「な、何をするんだ。やめろ。やめてくれっ」
キョウゴが叫んだ。だが、その声は悲鳴へと変わっていった。
生きながらにして燃やされるほうがまだましだった。キョウゴは、生きながらにして切り刻まれている。腕にナイフが滑らされていた。よほど切れ味がいいのだろう。軽く滑らすようにしただけで、腕が体から切り離された。
キョウゴは絶叫を上げた。
周囲にいる同志は凍り付いている。俺も同じものだった。動けるようになるまで耐え、賭に出る。そんなことを考えていたが、違うのだ。怖いのだ。キョウゴのように殺されるのが怖いだけだ。
俺は恐怖で身が縮こまる思いがした。
次は、俺かもしれないのだ。さっき、睨み付けたことを後悔した。
虐殺は続いていた。キョウゴの悲鳴が室内に木霊する。同志を焼かれた異臭と絶叫。まさにここは地獄だった。
キョウゴは、まだ生きていた。絶え絶えだが、目だけが異様な光りを放っていた。その眼差しは俺へ注がれている。目をそらしたくなった。だが、それをしてはだめだ。恐怖が全身を捕まえているが、キョウゴが殺されていく様は、俺が受け取らなければならないのだ。そう、思い定めるようにしてキョウゴを見つめ続ける。
キョウゴの両足、両腕はすでになかった。ゴミでも捨てるようにして、机から放り出されている。男は、口元をひしゃげた。なぜか、一瞬こちらを見る。
俺は男と目があった。次の瞬間だった。
キョウゴの腹に深々とナイフが突き刺さったのだ。キョウゴは、首だけをのけぞらせるようにしたと思うと、頭を前後に振っていた。口から妙な色をした液体があふれ出ていく。泡が混じっていた。
「た、隊長――復讐してください」
言ってキョウゴは絶命した。
俺は我に返った。そして恥じた。キョウゴを見殺しにしたのだ。隊長として許されるのか。悔しさと怒りで体中が燃えるようだった。
男は、こちらを向いて笑みをたたえているようだった。
「殺れるものなら殺ってみろ」
そんな言葉が聞こえてきそうなぐらい、男の表情は余裕に満ちていた。
男は立ち上がった。そしてキョウゴを机の上から滑り落とし、何事もなかったかのように部屋から出て行く。ドアが閉まった瞬間、金属の板を鳴らしたような、あの重たい音が室内に響いた。
「ちくしょうーーーっ」
俺は、怒りを声にのせて怒鳴った。だが、その怒りは男には届かないのだ。動かない体になってしまった自分が情けなくなった。
「隊長、しょうがないっすよ。どうにもできなかったですから」
タクヤが悲しそうな目をして慰みを言った。
「そうよ、コウジ。気持ちは分かるけど、助けに行くことなんか無理だった。体が動かないんだから」
レイコも慰みを言ってくれるが、俺には聞こえていなかった。振り上げた拳をおろすことが出来ない憤り。そうした思いで胸がいっぱいなのだ。
肩に違和感を感じた。ふと肩を見ると、タクヤの手が乗っている。
「おい、タクヤ。おまえ、そんなに動けるのか?」
「え? あぁ。なんとか腕をあげるぐらいまでにはなったみたいだ」
「何かしたのか?」
「あまりに恐ろしくて必死に動こうとしてさ、手を動かしているうちに徐々に動くようになったんだ」
「その程度のことなのか?」
「そうだ。特別なことは何もやっちゃいない」
動けるヤツがいて、動けないヤツがいる。その違いは何だ。
俺は、回りを見渡した。
そうだ。窓際のヤツは動いていた。そう言えば、室内もほんのりと暖かくなってきていた。男が灯油を使ったせいだろう。
タクヤは、腕を動かそうとしているうちに動いたと言っていた。とすれば、温度なのか?
確かに窓際は暖かいはずだ。俺は、試しに腕をこすり合わせるようにしてみた。少ししか動かないのだが、しばらくこすっているうちに動きが大きくなっていくような気がした。
これかもしれない。
俺は必死になって腕をこすった。タクヤとレイコは、不思議なものでも見るような目をしていたが気にしなかった。腕をこすっていると、移動幅が増えていく。やがて、肩の動きがスムーズになっていることに気がついた。
「タクヤ、これだっ」
「これって、何です?」
「温度だよ、温度。体を動かしているうちに体が温まるだろ。なんで体が動かないかは分からん。だが、温度が高くなれば体が動くようになるんだ。窓際を見ろ。あいつら、這うまでになってるじゃないか。俺も、試しにと思ってやってみたんだが、暖まったところは動くようだ。つまり――」
「みんなで体をこすり合わせれば動ける?」
「そうだ、それだ。やってみる価値はあるんじゃないか」
「あいつが来る前にね」
沈んでいた気持ちが、一気に明るくなった。レイコは顔をほころばせている。キョウゴの死を無駄にしないためにも、生き残って敵に一泡吹かせる。あわゆくば、敵を領土から追放するのだ。
俺は、俄然、やる気になった。
俺とタクヤ、レイコは体を押し合うようにして動かした。他の同志も俺たちを見習っているようだ。あちこちで体を押しつけ合っている。みるみる体が動くようになっていく。腕、足が動くではないか。だが、まだだめだ。這うのがやっとだろう。完全に動かせるようになるまでは、この間抜けな行為を続けなくてはならない。
しかし、無情な音が聞こえた。
あの金属音だ。男が入ってくる。
俺たちは、慌てて元の体制を作った。
「危なかったね」
レイコは、俺にささやくようにして言ってきた。悲痛な印象ではなかった。弾けるような嬉しさがこもっていた。愛。そんなものを感じた。
男は、例によってゆっくりと歩いていった。
俺たちのように、すぐに元の体制を作ったやつらはよかった。だが、男が侵入してきたことに気がつかなかった奴らは悲惨な目にあった。
男は、動いている同志を見つけると、片っ端から白い箱に押し込んでいく。まだ、完全には動けないのだ。捕まるのは目に見えていた。
次々に同志を箱に押し込んでいく男。部屋を見渡している。まだ動くヤツがいるかどうか確かめているようだ。動くヤツがいないのを確認すると、男は灯油を出して白い箱に振りかけた。そしてマッチで火をつける。
同志が燃やされていった。動けるためか、悲鳴と共に腕や顔が焦げた白い箱から飛び出してくる。目を覆いたくなる状況が加速した。
男は、白い箱全体に火が燃え広がるのを確認すると、部屋をうろつき回った。俺たちの前に男がやってくる。俺は固唾を呑んで男が通り過ぎるのを待った。なぜか、男は俺たちの前で足を止めた。心臓の鼓動が高まった。心臓の音が聞こえて、男が俺に手を伸ばすのではないかと気が気ではない。
男は、俺には手を伸ばさなかった。変わりに、レイコに手を伸ばした。
《レイコに手を出すなっ》
俺は、思わず叫んでしまいそうになった。だが、満身の力を込めて声を喉の奥にしまいこんだ。動けるようになったといっても、這うのがやっとだ。叫んだところで、俺までなぶり殺しにされるだけだ。キョウゴの無念を晴らすためにも、生き残らなくてはならないのだ。だが、レイコを見殺しにできるのか。
レイコを見た。
悲しそうな、そして優しそうな目をしていた。
口が動いている。声には出していないが何を言っているか分かった。
《復讐を誓って》
そう口が動いている。俺は、悔しくなった。切り刻まれてもいいから、今すぐ、男に殴りかかりレイコを助けたいと思った。だが、それはかなわない。もたもたと這うのが精一杯だった。そして男に見つかり、踏みつぶされるように殺されるだけだ。
レイコが机の上に仰向けにされた。
目を閉じている。覚悟したのだろう。
俺は、ふと自分が机にのせられたらどうするだろうと考えた。泣き叫んで、命乞いをするかもしれない。だが、レイコは違うようだ。潔く、死を受け入れている。レイコは、俺に復讐を誓わせた。見るのだ。レイコが殺される様を脳に焼き付けるのだ。そして、その思いを胸に抱き生き続け、必ず復讐を果たすのだ。
俺は、レイコを凝視した。
男はナイフを取り出し、レイコの首へとあてがった。そして、口元をひしゃげ俺を見た。次の瞬間だった。男が力を込めたかと思うと、レイコの首が勢いよく飛んでいった。
俺は拳を口につっこみ、恨み言が飛び出さないようにした。
男は、薄ら笑いを浮かべている。汚いものでも切ったかのように、ナイフを机の端でしごいている。ナイフに付着した汚れをふきとっているのだ。
首を失ったレイコの体が痙攣を起こしていた。まるで、生物とは思えない動きをしている。手足が、めちゃくちゃに動いていた。
男は、嫌な顔をするとナイフを腹へ突き刺した。体が反射的にナイフを掴むような恰好になったかと思うと、ぐったりと力を失う。
男は、面倒くさそうにナイフについた汚れを拭き取ったあと、立ち上がりドアの方へと歩んで言った。俺は、男を凝視した。ドアから出る直前。男は足を止めた。そして、俺の方を見た。ナイフを取り出し、俺の方を指した。
《次はおまえだ》
そう語りかけられたような気分になった。俺は肝を冷やしたが、すぐに冷静になれた。レイコとの誓い、キョウゴの無念を晴らすのだ。
男が部屋から出て行くと、さっそく体を動かしてみた。這う程度にはなっているがこれでは不十分だ。
「隊長、無念です」
「分かってる。だが、レイコの死を無駄にするな。敵と戦うためには、生き延びなければならない。違うか」
俺は、腹の底に力を込めて言った。
「そのためには、体を動かさなければならないんだ。つぎに敵が入ってきたときは、俺がやられる。怖くはないが、レイコやキョウゴの復讐をしなくてはならない」
冷静に言った。タクヤは静かに頷いている。
俺たちは、体を動かした。例によって体を押しつけて動かすのだ。徐々に全身が火照っていくのが分かった。かなりな時間、体を押しつけ合っていると手足が自由に動くのが分かった。
「動きはどうだ、タクヤ?」
「ほとんど、普通みたいですね」
「俺もだ。よし、じゃ、行動開始と行くか」
「了解」
俺は、体が動く同志に声をかけた。
男が入ってきたら襲いかかる。それも一つの手だ。だが、それはこの場だけで終わってしまって意味がない。それに、この部屋の外に敵がうじゃうじゃといるかもしれない。怒りにまかせて、この場の敵と戦うことは無駄なことかもしれない。
俺たちの使命は敵を殲滅し領土から追い払うことだ。レイコのためにも、キョウゴのためにもここから生きて脱出し、外にいる仲間と合流し戦う。それが俺に与えられた使命だ。
俺は計画を話した。
ドアが中から易々と開くとは思えなかった。
まずは、ドアに近づく。そして、敵が入ってきてと同時に、動けるやつら全員で表に飛び出す。部屋から出て敵と遭遇したときは、その場で判断。命がけで戦い、生還できたものが同志と合流する。
「これでどうだ」
全員は頷いていた。動ける同志を数えると二十に満たなかった。それでもよかった。全滅するかもしれない。だが、何もしないで虐殺されるのを待つということだけはごめんだった。
俺は、早速行動を起こした。まったく音を立てず移動する。体さえまともに動けば、こんなことは朝飯前だ。阿蘇山中に潜んで戦う殲滅作戦に参加しているのだ。人目に触れずに移動する手段は会得している。
ドアまでの距離は意外とあった。途中、ドアのノブを回してみようと試みたが、細工がしてあるのか滑って動かない。閉じこめられた、ということを思いししらされるだけであった。
ドアの開く側に俺たちは陣取り身を潜める。
呼吸すら聞こえないように、ゆっくりと息を吐く。
待った。
待っている間、俺は首だけになったレイコの顔を眺め続けた。安らかな顔をしているレイコは、胴がついていれば寝ているかと錯覚するほどだった。
タクヤは恐怖なのかそれとも期待なのか、複雑な表情をしている。だが、目だけがギラギラとしていた。
金属音。
俺たち全員に緊張が走った。
俺は、手を挙げた。
ドアが開け放たれた。
「今だっ」
言うと同時に手を振り下ろす。
一斉に、背中の甲冑を開き羽を出した。そして宙に舞ったと同時にドアの外へと飛び出していく。男が、一瞬、逃げるようにして頭を振った。
俺たちは、廊下に飛び出した。長く白い廊下は清潔そうで、老人ばかりが目立った。俺は、自分たちがいた場所がどこであったか悟った。ここは医療設備のある建物なのだ。まだ、完備されていない、病室。それがあの部屋だったのだろう。
そのまま飛び続け、俺たちは表にでることができる場所を探した。
あった。窓が開け放たれている。
「あそこだ。行くぞ」
俺は、腕を胸元でしぼるようにして一気に加速した。振り返ると、全員がついてきているようだった。
窓を飛び出した。春の美しい緑が俺たちを出迎えてくれた。
二連星小隊。
俺たちは、敵――人間たちの間ではテントウ虫などと呼ばれている。俺はその中でもナミテントウという種類に属しているらしい。背中に二つの赤い紋があるからだ。東京に展開している七連星連隊は、ナナホシテントウだ。まったく人間どもときたら、勝手な名前をつけやがるもんだ。
なぜ、あんなところで目を覚ましたか、今、理解した。俺は、不幸にも秋に成虫になったのだ。俺たちは越冬する習性を持っている。木片か何かにつかまって冬眠していた俺たちは、建設中の病院に連れて行かれたのだろう。そして、作りかけの病室で目を覚ましたのだ。
俺たちを虐殺した男。やつは、清掃員だ。俺たちを虫けらと言い放ち、掃除という名の下に俺たちを始末するのも、やつの仕事だ。冬眠するために、俺たちは身を寄せる。その数はおびただしい。そんな俺たちは、人間から毛嫌いされていた。気持ち悪いなどとほざく輩もいた。
キョウゴやレイコを弄ぶようにして殺したのは、ただの遊びだ。気持ち悪い俺たちを、ただ殺すのはつまらない。絶対的な力さえあれば虐殺を楽しむ。虐殺を本能として持っているとしか思えない、人間らしい行動だ。
人間どもは都市部の開発に飽きたらず、ついに俺たちの森、つまり領土に侵入してきた。やつらの暴走を止めるには戦うしかない。今は、人間にやられ放題だ。いつまでもそうやって、我が物顔で森を破壊し山を焼き尽くせ。
だが、俺たちは必ず勝つ。数の優位性で必ずや勝ってみせる。
俺は死ぬが、子孫が俺たちの意志を継ぐ。何世代も、いや何十世代、何百世代と生まれ変わり、人間どもへの復讐心をDNAに刻み込んでこの戦いに終止符を打ってやる。
俺は、レイコ、キョウゴに誓いながら森を飛び続けた。
ジェノサイドの行方 了
テントウムシ
節足動物門昆虫網鞘翅目テントウムシ科Coccinellidecに属する昆虫の総称、または一種。
日本に主に分布するテントウムシ
ナミテントウムシ Harmonia axyrid
ナナホシテントウムシ Coccinella septempunctat
ケシツブテントウムシ Sukunahikona japnic
オオテントウムシ Synonycha grand
ニジュウヤテントウムシ Henosepilachna vigintioctopuncta
オオニジュウヤテントウムシ H.vigintioctomaculat
ベダリアテントウムシ Rodolia cardinal
クリプトラエムステントウムシ Cryptolaemus montrousier
ヒメアカボシテントウムシ Chilocorus kuwana
テントウムシは、赤、黒、黄の前羽を持つ小型の甲虫で、全世界で4200〜4500種、日本では153種が確認されている。体長は1ミリ〜十四ミリと幅があり、おおむね円形。卵は二日程度で孵化し、幼虫期を二十日程度で過ごしサナギになり、一週間前後で成虫になったのち、二ヶ月程度で寿命を迎える。年間で、三〜四回ほど世代交代するが、中には、一年間生き延びたという例も報告されており、環境下によっては寿命を大きく延ばすことが確認されている。
多くのテントウムシは、益虫である。
幼虫期、成虫期を問わず、一生を通じてアブラムシを補食するナナホシテントウ、ナミテントウは有名。幼虫期で、一日で二十匹、成虫期で五十匹ほどのアブラムシを補食する。幼虫期は、管をアブラムシに差し込み体液だけを吸うが、成虫期には体ごと食べてしまう。ただし、幼虫期において食料となるアブラムシが不足すると共食いすることが報告されている。
みかん類に大きな被害を及ぼすカイガラムシを捕食するテントウムシも古くから知られており、日本ではわざわざカイガラムシを補食するカイガラムシを輸入したほどである。
このように、テントウムシは益虫として広く知られているが、一方で作物を荒らす害虫となるテントウムシの仲間もいる。テントウムシモドキやテントウムシダマシなどと呼ばれるが、その正体はニジュウヤテントウとオニニジュウヤテントウである。ニジュウヤの名前から示すとおり、赤地に二十八個の黒い紋があることから、簡単に見分けがつく。
ニジュウヤテントウは、主にジャガイモ、ナス、トマト、ホオズキといったナス科植物の葉を食害する。このほか、本州から北海道にかけて、アザミ類を食べるコブニジュウヤテントウの存在も確認されている。
ニジュウヤテントウ類は、平気気温が十三℃〜十四.五℃付近で北と南に住み分けられているが、交配実験により子孫を残すことが確認されており、種の分布は地域性による変異と考えられている。
テントウムシは、普通の昆虫には見られない大きな特徴がある。猛毒を持つ昆虫以外は、保護色を持つか、あるいは木や葉に似せた擬態を行う。これにより外敵より身を守るすべを得ているのだが、テントウムシは明らかに逆で、かえって目立つ色を備えている。このことから、テントウムシには毒、あるいは捕食生物が嫌がる何かを分泌すると考えられていた。事実、テントウムシを捕まえると嫌なにおいのする液を分泌する。この液体は、テントウムシの血液であり、関節膜を押しつぶすことによって分泌させている。幼虫も同様の機構を持っており、やはり悪臭を放つことができる。
こうした機構を持つのにもかかわらず、多くの鳥の胃からテントウムシが発見されている。また、テントウムシに寄生するハチも確認されており、テントウムシが発する悪臭が防御にどの程度の効果があるか立証されていない。このため、むしろ目立つ外見を持っていると捕食されやすいだけになり、テントウムシの派手な外見が何のためにあるか、議論を呼んでいるのが現状だ。
テントウムシは目立つ色を持つ上、人に無害なためか、古くからテントウムシに関する迷信や言い伝えがある。
日本では、天道虫と言われ害虫に天罰を与える虫とされているし、英名であるレディ・バグは聖母マリアの虫の意味を持つ。ドイツ名、マリーエンケーフェルもまた聖母の甲虫と、聖母が大きく関わっている。仏名では神の虫、処女マリアの馬などと呼ばれ、蘭名では敬愛する神の小動物、露名では神の雄牛と呼ばれ、神にまつわる昆虫として親しまれている。
昆虫学者古川晴男氏は、こうした名の由来を郊外にあるマリア堂の周囲で、よく目にしたためではないかと分析している。
テントウムシは、秋になると白い壁に好んでとまる習性を持っている。教会といった建物は概して白い壁であるため、テントウムシが好んでとまった可能性は安易に想像できる。さらに、作物を食害するアブラムシを補食する益虫であるため、聖母マリアの虫、神の虫と呼ばれる原因ではないかと考えられる。
テントウムシは、冬眠するが実は夏眠も行う。セミが全盛期を迎える盛夏になると、テントウムシは草の根元にもぐり仮眠する。そして、セミがいなくなる頃になると、また活動を開始する習性を持っている。
冬眠は越冬のために行う。
劇中で登場した主人公コウジ達は、ナミテントウを擬人化したものである。
ナミテントウは、自分の親が越冬した場所で越冬するという習性を持っている。また、数百、多いときには数万という数で一カ所に固まる。多くは、雨風がしのげる岩の下などであるが、民家の軒先、屋根裏、入れる隙間さえあれば、どこへでも入って越冬を行う。
この習性は、ナナホシテントウにはない。ナナホシテントウは、多くても二〜五匹が集まる程度で、数百といった数の集団が発見されたという報告は一例もない。
ナミテントウが持つ独自の習性を利用し、畑のアブラムシ駆除を行ったアメリカの農家がいたが、これは失敗に終わった。確かに、ナミテントウは越冬のために一カ所に集まる習性を持っているが、春になり飛び立つと、ばらばらに飛び立ってしまうため、特定の畑のアブラムシを駆除するという成果にはつながらなかったのである。
ナミテントウのこうした習性は自身の繁殖のみならず、生態系にも大きな影響を与える。
劇中で扱っているように、人が山林を開発し建物を建てた場所がナミテントウの越冬場所であった場合、数百から数万単位でナミテントウは殺される。このため、その地域でのナミテントウは極端に姿を消し、結果的にアブラムシの大繁殖を促すことになる。別荘地の大規模開発はこのような現状を看過しており、周囲の農作物に少なからず影響を与えている。
無農薬栽培が脚光を浴びる中、ナミテントウを初めとするテントウムシは生態農薬として活用されつつある現状を考えると、皮肉な結果としか言いようがない。一カ所に無数に集まる昆虫は、あまり気持ちの良いものではないが、生態のことを理解し昆虫と付き合っていきたいと切に願うものである。
参考文献およびホームページ
科学のアルバム「テントウムシ」 佐藤有恒著 あかね書房
世界大博物図鑑1 蟲類 荒俣宏著 平凡社
動物の大世界百科13 日本メールオーダー社
農山漁村文化協会ホームページ内「食と農で生きる力を育む総合学習」
http://www.ruralnet.or.jp/news/sogoten/1998/tenji/tenji1-053.htm