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1.プレイ前

息抜きに書いた小説のため、だいぶテンションのみで書かれています。お容赦ください。

白亜の肌に紫の瞳、それに淡い砂金の髪。

ナターシャ・フォン・ヴォルデリックは愛らしい少女だった。

貴族として尊敬できる両親に、自分に甘い召使たち。

何不自由ない生活に満足していた。


だが――10歳の時の出会いはすべてを覆してしまう。

自分の築き上げてきたすべてを。






自分の婚約者として紹介された遠縁の貴族の少年を一目見たとき、脳裏に膨大な知識が蘇ってきた。

フラッシュバックする画像、脳裏に何枚何枚もの映像が映し出される。

脳が映像で侵される。

何枚も何枚も何枚も何枚も――それは脳を焼き切るかと思われた。

だが、彼女は耐えた。


耐えて、そして思ったのだ。



よりにもよってあのゲームかよ。と。



「ナターシャ、どうしたのですか!?」

可愛い同い年の少年が心配をしてくれている。

私はよろめく体を奮起させながらも、大丈夫。なんでもないです。と囁くような声で彼に問題ないことを伝える。

ひきつった笑顔の下、問題は大ありだった。


それから、どうやって彼との邂逅をすませ、屋敷にたどり着いたか覚えていない。


部屋に帰ってきたとき、ベッドに倒れこんだ。

それほど、昼間に脳裏に浮かんだ情報は膨大で、活衝撃的だったのだ。


最初に浮かんだのは平凡そうな20代の女性だった。

彼女がトラックに引き殺される場面。それだけでも10歳の少女にとっては衝撃的だったが、それから画面はどんどんと巻き返される。

青信号、朝の通勤、化粧をする女性、そうして、それらの画面が次には別のものに置き換わる。

ゲームのスチル、場面から場面へと移行する耽美な映像。


そう、信じられないけれども、私は前世、違う人間だったらしい。

こことは違う場所で平凡な人生を送っていた女性。

だが、それだけならまだいい。

どうやら、彼女が生前にやっていたゲームとやらの世界がこの世界なのだということに気がついた。


まじかよ。

ゲームの転生ものかよ。

めっちゃ読んでたわ……。

使い古されたかのような題材、たくさんの小説。どうやら、私はそれらを読んでいたらしい。


そして、それと同時に思ったのだ。


よりにもよって、あのゲームかよ。と……。



どうやら私が転生したのは、ゲームの世界。

それも、BLという男性同士の恋愛が主体となるお話のようだった。

それだけならばいい。BLゲームの中でもめちゃくちゃ泣けるいい話もあれば、いい話すぎて尊い…好き…と言語活動が馬鹿になるほどにいい話もある。


けれどもだ。

私が転生してしまったのは……どうやら、どうやら。


クソゲーとして名高いBLゲームであるらしい。



「なぜ若男みたいな神ゲーじゃなかったし……!!」

ベッドをダンダンと叩く。

『若君は男子を抱く』とか最高すぎるゲームじゃないか。

乙女ゲームでもいい。『つゆ草は乙女に萌ゆる』とか最高じゃないか。

なのに、なぜだ。神はいないのか。


なぜ、なぜよりにもよってあのクソゲー『少年はワルツを踊る』なのだ。



――そのゲームは通称ショウワル、クソゲーとして有名なBLゲームだった。


前世である彼女もプレイしていた。

はっきりいって、目が虚ろになるほどのゲームだった。

でも全クリした。スチルもすべて回収した。設定資料集も買った。なにせ、スチルを描いていた絵師が最高に好きだったからだ。

あんなにもクリアがするのが辛いゲームはなかった。絵への愛がなければクリアできなかった。そう思うほどのクソゲーだった。


どうやら、私は、そのゲームの攻略対象の婚約者、というものに生まれ変わってしまったらしい。


そのBLゲームは大層に色もの系だった。

絵は言うまでもなく最高級。キャラの設定も申し分ない。

なのに、それを調理するシナリオが最悪だった。


ショウワルのあらすじはこんな感じだ。


とある上級貴族の学校に平民の青年が入学した。

その総攻めな彼は次々と美形の青年を落としていく。

そしてエクストラストーリーは全員とくっついてハーレムエンドになるというものだ。


普通のありがちなストーリーに思えるでしょう?

ところがだ。

そのキャラたちの後付け設定が酷過ぎるのだ。


攻略対象その1。

金髪紫眼の超美形のさわやかな青年。

笑顔が素敵で剣術の腕もある彼は将来王都の王直属の親衛隊に所属するのも夢ではないと思われていた。

けれども、彼には人には言えない性癖があった。

アナニーが好きすぎるという性癖だ。

学校生活でディルドを入れっぱなしにするのはもちろん、自室で開発するのも大好きという変態だ。

その彼に主人公は「こうされるのが好きなんだろう?変態め」とか責められつつ快楽を芽生えさせられて、最終的には公衆便所になるというエンドだった。


素材がいいのに調理が下手すぎる!!!なぜにそんな変態になったし!!!


他にも、女装好きの変態、ドM、縛られないとイケない変態に、露出狂。

受けの性癖が上級者向き過ぎてドン引く。引きまくる。

そんなゲームだ。総攻めとなる主人公はもちろん普通ではない。


眼鏡を掛けると鬼畜になるのだ。


なぜにその設定にしたし!!

すでにその設定で有名すぎるゲームがあるのに!!!


その彼が酷過ぎるのだ。受けを人間扱いしない。

大概がその隠されたる性癖の弱みに付け込んで陥れるという手法だった。


終わったとき、え、まじでこんな人間が主人公になっていいの?と思った。

このエンド、あり?とも。


それだけにこのゲームはなかなかに酷評がされていて、クソBLゲーとして有名になっていったのだ。


神よ……他にも色々といいゲームはあったでしょう……なぜこのゲームなの……。



私は枕を濡らした。

自分がBLゲームの一部だなんて、近くで見れてラッキーなんて気持ちはみじんもない。

それほどまでに酷いゲームだったのだ。



しかもだ、私はその攻略対象その1の、アナニー好きな変態の婚約者、なのだ。

まじかよ。

あの可憐な少年が変態になるのかよ。神はいないのか。


しかもだ、たしかあのエンドでは私は……そう、婚約を破棄される。


そして喪女として修道女になるのだ。


……え、嫌すぎる。

がばりと起き上がる。

そうよ、嫌すぎる。修道女として一生を暗い教会の中で祈って暮らすのは。


私は考えた。そうして導き出された答えは一つしかない。

今まで読んできた小説の登場人物のように、私も運命に逆らうのだ。


「婚約者をアナニー好きの変態にしないで、私好みの青年に調教する」



こうして、私の運命(BLゲーム)に逆らう道を歩みはじめたのだった。




こんな残念すぎるBLゲームあったら逆にやってみたい…。

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