素敵なクリスマスプレゼント
グレンが、紅子のマンションへ来るようになるのに時間はかからなかった。
二人はあの時よりも激しく愛し合った。
深く愛している。
その愛を確かめたい。
グレンは三年間、妻に対して偽りの愛を演じた。
今、紅子とメイクラブしている自分が、本当の自分なのだ。
彼は愛の奴隷と化した。
紅子の体中にキスマークを残し、紅子が彼の背中に爪跡を残す。
だが、グレンは遅い時間でも、泊まらずに帰宅した。
「遅いわね」
妻の絵美子は帰宅したグレンの背広を、ぶっきらぼうに受け取り、ハンガ―に掛けた。
「…………………………!」
この香水の香り。
セクシ―な強烈な色気。
思い出した。
紅子という女の香水と同じ匂い。
いつか、紅子とエレベ―タ―ですれ違った時の匂い。
グレン、離婚を切り出したと思ったら、そういう事なのね。
あの女とヨリが戻ったから、私と別れたいのね。
「私、貴方と別れないわよ」
「もう、終わりでしょ、僕達。年内に全て終わりにする」
「勝手に決めないでよ。子供はどうなるの?可哀想じゃないの?私はどうやって生活するの?二歳の子供抱えて」
「預金の半分と養育費は渡す」
グレンは、激昂する妻の般若のようなすっぴん顔に、ゾッとした。
「絶対離婚しませんから、それに、帰りが遅いのも、あの女と会っているからでしょう」
「僕達はセックスも、ろくな会話もない。顔見ればケンカ。夫婦ではない」
「日本の夫婦は、セックスしなくても平気なの!」
「僕は日本人じゃない」
「どうしてそんなに、セックスしたいの?紅子さんも、好きそうな女よね。そんな、淫乱なだらしない女性が好みなんでしょう?」
グレンは何も言えなかった。
絵美子と決定的な終わりとなった。
紅子は三越デパートのネクタイ売場に居た。
クリスマスプレゼントにネクタイなんて平凡過ぎる。日中、あまりにも忙しくて、プレゼントを決められなかったから。
グレンと待ち合わせの直前にクリスマスプレゼントを選ぶ紅子。
グレンは街の宝石店に居た。
昨日、独身に戻った。紅子はまだ知らない。
どのダイヤモンドがいいんだ。
待ち合わせてから、ここに連れてこようか。
それとも、今、紅子を呼ぼうか。
グレンは上着ポケットから携帯電話を出した。
完
ありがとうございました(^o^)