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ポラリス 2章  作者: susan
11/13

あれから三年

 紅子はタウン誌を辞めて、独立した。

 写真スタジオと両立して、札幌市中央区限定のタウン誌を手掛けている。

 アシスタントを1人雇い、殆んどの業務を紅子は1人でこなしている。

 夜景写真家としても名前を知られるようになり、海外出張をするようになった。

 寝る時間もない程、仕事がある。

 それが最高に幸せ。


 大森とは、結婚までは至らず自然消滅した。

 彼は紅子に、『仕事を辞めて家庭に入る事』を条件に求婚していた。


 家事は、掃除・洗濯が半人前程度。料理はゼロ。 そんな紅子が家庭に入るわけがない。


 仕事中に死ねたら本望。

 家庭なんていらない。

 

 33才の紅子は、ますます脂が乗っていた。


 

「エミコ、君は子供を産んだら変わったよ。僕に対して鬼のようだよ。もう、愛してないんだろう、僕のこと。」


 絵美子と結婚したグレンは、二歳になる息子を抱っこした妻・絵美子と言い争う事が多くなった。

 子供を産んだ途端、母親の顔だけになってしまい、グレンに対して、愛情も色気もない。

 お洒落もせず、育児のみ。

 セックスレスで、それぞれ別の部屋で寝ていた。


 ポラリスビ―ルは、イタリア支店を出した。

 二年半前にグレンはミラノに単身赴任をした。

 支店長代理として、一年の任期が終わり帰国。

 絵美子と離れていた時間が多かった分、お互いの心も離れていた。


 

 グレンは本社にタウン雑誌の取材に来ていたスタッフに話し掛けた。


 「ええ、紅子さんですか?紅子さんは独立しましたよ。北大前にフォトスタジオ持ったんですよ」


 「北大前?」


 グレンはスタッフから、紅子のスタジオの場所を教えてもらった。


 紅子を忘れてはいない。

 一目見るだけなら、許されるだろう。


 グレンは駅から北大方面に歩いた。

 正門前通りに、お洒落な紅子のフォトスタジオを見つけた。


 総硝子張りの店構え。

 

 すぐに判った。

 黒のセ―タ―と、黒のパンツにウエスタンブ―ツ。

 大きなカメラで、七五三の撮影をしている。

 

 紅子サンだ、久しぶり。


 グレンは、胸の中で紅子に挨拶した。

 しばらくそうしていた。

 紅子は、硝子張りの向こうからグレンが見ているなんて、思いもしない。


 そのうち、アシスタントがグレンに気付き、

 「なんか、格好いい外人サンがこっち見てます」

 と紅子に教えた。


 紅子は外を見る。


 グレン

 グレンだわ

 

 紅子は反射的に手を振った。



        続く

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