親方、空から美男が!
やっと転生したぞ~!やったー!
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次の瞬間頭にかかっていた霧のようなものが晴れた。同時に木々の草がこすれ耳には鳥の鳴き声が聞こえてくる。
そう瑞樹はついに来たのである。SOUL伝記の世界に。
………… 来ったーーーーーーー!!!
「来た…。」
脳みそでは歓喜に溢れていたが現実を受け入れるのは少し時間がかかるのだ。
『来た』と言葉に出してはみたがやはり実感があまりない。周りを見回してみたが一面草木が生い茂っている。瑞樹の世界でのあのコンクリートの建物など何処にも見当たらない。
それを思った途端、ついに来たのだと深く思い知らされる。
「ついに来た…SOUL伝記…」
すぐ横にある木を触る。どうやら本当に本物のようだ。
しかし…。なぜか異様に手が小さい
数秒考えたあとまさか、と思い己の体を見てみた。
…地面までの距離が短い。
それと胸の辺りの膨らみが心なしか無い。
いや、元々から無いのだが。
(……泣きそう)
まぁそれはさておき。
予想するに今自分は前の体より小さくなっているに違いない。そう確実に思えるほど小さいのだ。体の感覚はしっかり自分にフィットしているのになぜか違和感がある。
(まあ、後々から慣れるだろうけど)
「それよりどっか鏡無いかな」
今から何十年かの付き合いになる体なので自分の姿を拝めなければ。再度辺りを見回したが鏡どころか湖もない。
くそテンプレ用意しとけよ。
(しかし緑色の木があるってことはここは緑の国ってことか。)
『緑色の木』とは緑の国の特徴である木の色だ。
ちなみに、
火の国だったら赤色の木
水の国だったら水色の木
魔の国だったら紫の木
天の国だったら白色の木
この話はおねいさんとは話していないが公式のページに書いてあった。瑞樹はゲームをする前、知識はある程度入れておく質なのだ。
(…今こうして考えてみるとなんの捻りもねぇ木の色)
全くその通りである。
ズドォォン!!!!!!!!
その時大きな音が近くでした。…細かく言うと瑞樹のすぐとなりで。
(……………今なにか右に落ちた。)
視線をそちらに移す。『なにか』が落ちたところは煙が上がり見えないが、もう少し瑞樹が右に寄っていたら確実に死んでいた。いや、しかしチート並みの能力をおねいさんにお願いをしたので大丈夫ではあるだろうが、瑞樹はある意味不死身なのだが、これは心臓に悪い。
……静寂が訪れる。
辺りは平和そのものだと言うのに瑞樹の心臓は平和ではない。…今にもはち切れそうだ。
「…なんだ!?!?隕石?!?」
無理もない怖すぎる。瑞樹があれよあれよと考えおどおどしているとき、砂煙の中から声が発せられた。
「おいお前、名はなんと言う。」
砂煙の中のなにかがこっちに向かって行ってくる。姿が見えないのでマジで恐怖だ。
「……………ど、どなた?」
こう言うしか無い。マジで。
(てか、こーゆー場面見たことあるんすけど)
死んでからというもの驚きと絶句の連続である。
「俺はお前の名を聞いているのだ。答えよ、お前は何者だ?」
砂煙が大分薄れてきた。影は人形。ある程度思考を復活させつつ瑞樹は答えることにした。
「し、篠原瑞樹です…っ多分人間です。ドウモ」
最後片言になってしまった。
(てか、こいつ口わりぃな。しかも上から目線口調じゃねぇか)
…人のことは言えない。
煙が完全に消え去り声の主が姿を表す。
(…………………)
瑞樹は言葉を失った。
無理もない。何故なら声の主はとてつもない美形であったから。
黒系統の軍服のような服を身に纏い肩から赤黒色のマントを膝ぐらいまで下げている。肌は健康な色をしておりそして身長は180位ありそうなほど高身長。体型は細くもなくガッシリともしていない、まさに細マッチョ。目と鼻はすっとしていて唇は薄く、それでいて綺麗な形をしている。目の色は薄い赤色だ。 濃い青色でストレートな髪は腰までのびていて女の人ではないがミステリアスな雰囲気を醸し出している。それと耳が尖っており、よくよく見ると何やら頭から黒い角が生えている
……刺さったら痛そう。
「ふむ。シノハラと言うのか。してお前。見たところ親が居ないな?ここで一人、何をしていた。」
(ここに来たときの事から言えば良いのか?)
「え~と…き、木と戯れていました。」
もう自分でも何言ってんのか分かんない
「木と戯れていました?だと?お前バカか。」
ごもっとも。
「まあ良い、次だ。お前親は?」
私は転生して最初にここに居たのでそんなものは知らない。
「分かんないです。てか多分居ない」
というかもう『親』はいらない。
こう思うのも仕方ないことなのだ。瑞樹は『親』というものに良い思い出がないのだから。
「お前が人間ならば親が居ないわけないだろう。人間の子は大人の人間から生まれてくるのだから」
…正論過ぎて何も言い返せん。でも何でいきなり空から降ってきたことにそんなこと言わなきゃいけないんだ。
「……」
「…まただんまりか。」
瑞樹は頑張って脳みそを動かしていたのだが喋らないのでだんまりと捉えられてしまったようだ。しかしまぁ嘘は言っていない。むしろこれが本当なのだこればかりはどうしようもない。
何だかイライラしてきた瑞樹である。
「…とりあえずあんたは誰なんだよ。いきなり空から降ってきて。こっちは名を名乗ったんだからお前も名乗れ」
空から降ってきた『綺麗で上から目線』の男が目を大きく見開いた。うん相当分かりやすく見開いた。
「お前、俺を知らないのか?」
「知らん」
間を入れず良い放つ。すると男はまた目を見開いた。…次は男の目がはち切れそうである。
「ふっ、ふっふっふっふふ」
男が急に笑いだした。不気味だ。芸能人か何かか?とは思ったがこの世界にはアイドルというものは存在しないし、そもそもそんな風習はないはずだ。
「俺を知らないとは…っ面白い小娘だ」
何が何だか分からんがとりあえずバカにされたことだけは分かる。
(……………逃げよう!)
不気味かつ嫌味な人とは極力関わらない方が身のためだ。良し!行こう!
「おい待て何処に行く」
捕まった。ガッシリと捕まった。
肩がいてぇ
「俺はカルベン・クラウスというカルベンと呼べ。」
「そうですかありがとうございますクラウスさん。では」
ガシッ
次は腕を捕まれた。いてぇ
「俺はまだお前に用がある」
「こっちはないさらば」
「おい、待てと言っているだろう」
「…………なんすか」
いつまでも離してくれなさそうなのでちゃっちゃと聞くことにした。
「お前、俺にステータスを見せてみろ」
ステータス?なんすかそれ。
「どーやって見せるんすか」
「自分の右上を見てステータスを開け。」
そんな無茶な。説明雑すぎぃ!でも一応やってみよう今後使うかもだし。
ムムムムっ!
ブオン!と近未来的な音を出して文字が表示された。日本語ではないが読める。しかし書けはしないだろう。
「………は?」
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HP【測定不能】 MP【測定不能】
物攻【測定不能】 魔攻【測定不能】
物防【測定不能】 魔防【測定不能】
命中【測定不能】
特能【創造者】
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(な、なんじゃこりゃ…)
……もう意味がわからない。
瑞樹は遠い目をする。
驚き桃の木なんとかの木ぃ!だ。こうなるのも仕方がない。
「…おいどうした。まだかかるのか?それとも何かあったのか」
痺れを切らしたようにクラウスさんが言ってくる。どうやら相当待たせたようだ。
「…雑すぎる」
「は?…とにかく見せろ」
「…良いっすけど、どうやって」
「ステータス表示の上に『相手に見せる』ってやつあるだろそれを押せ」
おけ。ポチっとな!
あ、文字が反転してクラウスさんの方を向いた!
「………」
またもや目が見開かれる。
しかし美形顔での驚いた表情は面白い。だが決して自分はSではない。断じてない。
「……………は?」
クラウスさんが言った。
(うん、分かるその気持ち。)
このステータスはビックリですね
うん最強。