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甲姫の即興小説集  作者: 甲姫
即興小説トレーニング編
7/21

知らなかったんだ

 若気の至りとは便利な言葉だと思う。


 俺は学生時代に、くだらないことを結構してきた。

 不法侵入、万引き、喧嘩、それくらいなら誰もが通る道だろう?


 そんな俺にもひとつだけある――大人になってからも、誰にも語ることのできないエピソードが。

 あれは、廃墟となったビルが取り壊される直前のことだった。あの夏は無駄に暑かったのを覚えている。

 俺はいつもの悪友どもとつるんで町を徘徊していた。それまでにも数か所の廃墟を巡って根城にしてきた俺たちは、その場所でも遊んでみることにした。

 ところがそこには先客が居た。

 全長一メートルの小柄でまだら模様の体躯をした、木にも似た未知の生き物だった。俺たちは一目散に逃げようとしたが、そいつの触手、いや、枝? に捕まえられて、嫌々「話し相手」にさせられた。

 遥か彼方の宇宙からやってきたというそいつは、密かにゴミ捨て場から人類の情報を集めていたという。言語も覚えていた。そいつは、俺たちに地球の面白いものを見せろとせがんだ。

 喰われたくなかった俺らは、ポケットの中身をあらかた見せてやった。


「その箱はなんでぃ」


 生き物が興味を持ったので、俺たちは箱の中身の細いものを取り出して見せてやった。更にライターで火を点け、そいつに煙草を吸わせてやった。


 知らなかったんだ。

 煙草は生き物にとって毒だった。

 奴は残らず溶けて、そうして俺たちは自由になったが。


 何だか悪いことをしたなと、今でもたまに思い出して罪悪感を感じる。

お題:マイナーな過ち

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