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甲姫の即興小説集  作者: 甲姫
即興小説トレーニング編
6/21

望んだから、宇宙が応えた

 おかしな景品を当てたものだ。

 ――いや、これは景「品」と呼んでいいのだろうか?

 雪の降りしきる寒い夜、いつの間にか、目の前には異様な男が立っていた。気温などまるで無視しているのか、半そで半ズボン姿のガチムチの青年であった。


「あなた、だあれ」


 私はランドセルのストラップを握る手に力を込めて、長身の男を見上げた。

 男の顔立ちはそれなりに整っており、たとえるならば、大河ドラマで主人公の側近その一として活躍して早世する役でも演じられそうなイケメンだった。主人公よりもうっかり人気が出ちゃうような。


「俺は景品だ。ほら、君が商店街の福引きで当てたヤツ」

「あれ、冗談だと思ってたのに……」


 苦笑を返すしかなかった。

 数分前に挑戦した商店街の福引き――「さみしい人におすすめなプレゼントが各種当たります!」と、意味不明な呼び込みに興味を惹かれてやってみたやつ――では、確かに「特別賞」を当てたのだった。

 角を曲がった先に行けば回収できるよと言われてその通りにしてみたのだが、どうせ子供だましの何かがあるのかと思っていただけだった。


「じゃあ、きみがそうなの」

「そうだ。俺が、『プロの兄』だ」

「いみわかんないんだけど」


 と、私はため息をついた。何故この不審者をいの一番に警察に突き付けなかったのか、後悔を覚える。


「君が褒めて欲しい時は好きなだけ頭を撫でよう。君が家事を手伝って欲しい時は喜んで何でもこなしてみせよう。家計簿がきついと思ったなら、職についてみせよう。俺は、君の考える『理想の妹生活』を実現する為にのみ存在する」

「そんな存在が居るわけないよ。あんた、クローン人間か何か? ロボットなの?」

「君が望んだから、宇宙が応えた。ただそれだけだ。俺には過去がなく、あるのは現在と未来だけ」


 一日試すだけならいいじゃないか? と彼は言う。

 孤児の私は、よほど寂しかったのだろう。


 ついには頷いていた。

お題:プロの兄

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