ミサの後
新しいお母さん――つまり父の再婚相手は、信仰に熱心なひとである。
はじめこそは僕らを置いておとな二人で毎週日曜日に教会まで繰り出したものだが、最近では寝ぼけまなこのままの僕と妹を無理やりミニバンに詰め込んで一緒に連れていくまでに至っている。
「へえ。だから見ない顔だったのね」
きぃ、きぃ、と彼女の乗ったブランコがやさしく揺れている。
ミサに来るうちにいつしか知り合ったやや年上の少女だ。日曜日だけ、金色の巻き毛を無理やり、ストレートになるまでヘアーアイロンをかけているらしい。
「遠いんだよ。あのひと……『お母さん』はお父さんと結婚して前の町から引っ越しちゃったけど、近所にちょうどいい教会が無いからってわざわざ前のところまで戻ってくるそうだよ」
車で片道四十五分。支度と移動に時間がかかるから、早起きは必至である。正直はた迷惑な話だった……が。
「いいんじゃない。それだけここは居心地がいいんだよ」
「そうなの? 僕にはわからないや。ミサはいつも眠いし、何してるのかよくわからないし。並んでクラッカーとかワインとかもらうところが本当に謎で」
彼女は少し空を仰いで、声を出して笑った。
「別にわからなくても雰囲気だけでいいのよ」
「そんなものかな」
「そうよ。子供の頃はね、教会は友達を作る場所だってくらいに思っていればいいの」
「はは。妹はもう、そんな感じだ」
僕らの目線の先に、花壇の間を縫って追いかけっこをしている小学生が十人ほどいる。先頭を逃げ惑っているのは妹だ。僕よりも活発で人見知りのしない性格だから、あっという間に溶け込んでいる。
「きみはここに来るのきらい? 早起きがめんどくさい?」
「……そんなこと」
ない、と顔を逸らして呟く。彼女のきらきらとした緑色の瞳を見つめると、胃の奥を搔き乱されているような感覚がする。
「よかった。私は神様も、ここに来るみんなも、大好きだから。君にも好きになってもらいたいな」
「がんばってみる、よ」
大きく息を吸い込んでから、なんとかそれだけ答えた。
お題:宗教上の理由で青春




