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甲姫の即興小説集  作者: 甲姫
即興小説トレーニング編
16/21

話し相手

 遠い銀河を駆け抜けた、ひとりの男の話をいたしましょう。

 いまより数十年前のこと。男は宇宙のはるかかなた、まだ見ぬ同胞との邂逅を夢見て飛び立ちました。


「はらからってなに」


 そうですね。この場合は、簡単に言ってしまって、意思疎通ができるかもしれない相手のことですね。

 人類であっても、そうでなくても、或いは言葉が通じなくても、ほんとうは構わなかったのかもしれません。夜空を見上げて語らう度に、誰かがそこに「在る」と信じたいのです。生命が地球だけの秘密ではないと、信じてやまなかったのです。


「へんなの。おはなしあいてなら、がっこうにいけばいるよ」

「そうだよ。パパとママもいっぱいおはなししてくれるよ」


 ええ、ええ。あなたがたのおっしゃる通りです。男はけれども、傍らにいたはずの人々を顧みずに、そらに飛び立ってしまいました。周りが彼の夢を笑っても、ひとりで成し遂げてみせました。

 あの日の彼の姿は、町の語り草となりました。輝く機体、輝くパイロット。

 けれどそんな旅路が孤独でなかったはずがありましょうか。


「こどくってなぁに」


 さびしいという、苦しく切ない気持ちのことですよ。

 わたくしはその男の最期の願いを聞き届けて、この地に降り立ちました。

 ――語り継ぐために。

 男が探し求めていたものが、確かにあったのだと、あなたがた地球人にお伝えするために。


「なにそれ」

「きみは、うちゅうじんなの」

「ばっかおまえ、うちゅうからきたやつはじぶんのことうちゅうじんっていわないんだよ」


 おやおや、可愛らしい聞き手さまがた、喧嘩しないでくださいまし。

 わたくしは宇宙から来ましたけれど、この通り、ヒトではありません。でも、仲良くしていただけると嬉しいです。大人たちにはまだ内緒ですよ。


「わかった。ふまないようにきをつけるね」

「おとなたちに、ないしょな」

「ねこちゃんよりおおきいいもむしなんて、ふめるわけないって」


 ふふ。また、この公園に来てください。

 お待ちしていますね。

お題:輝くパイロット

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