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甲姫の即興小説集  作者: 甲姫
即興小説トレーニング編
10/21

なき真似上手

 ある雨の日のことです。

 いつものようにあなたはひとつ年上の同級生に路地裏に呼び出され、いつものように財布の中身を絞り取られたとします。そうして一通り蹴られて殴られて、いつものように高い背を丸めながら荷物を拾い集めます。

 雨に濡れ、ゴミの臭いの満ちた場所で。あなたは「いつも」に嫌気すら感じなくなっている己の心を自覚し、暗い笑いを漏らします。くだらない人生を今夜にでも終わらせてしまおうか、と何気なく思ったとしましょう。


 そこで、あなたの耳はありきたりな声を拾います。


 雨音と車道の方から響く消防車のサイレンとは無関係の、つんざくような泣き声。

 しかしあなたははたとなって、立ち去ろうとしている足を止めます。果たしてこの声は本当にありきたりでしたでしょうか?

 ここがあの安アパートであったならば。隣の幸せそうなご家族は第二子が産まれたばかりですから、あなたが俗にいうこの「ギャン泣き」に耳慣れてしまったのも当然と言えましょう。

 けれど思い出してみるとします。

 ええ、現在地は路地裏。どこから声が聴こえているのでしょうね?

 ついにあなたは好奇心に屈して、ダンプスター(ゴミ捨て場)までそろそろと足を進めます。

 爪先立ちにならずともあなたの背なら届きます。勢いよくガバッと蓋を開けると、生ゴミの厭な臭いが立ち上ると同時に、泣き声が途端に止みます。あなたは中の小さな影をまじまじと見て、ため息をつきます。


「な、なんだ、猫か。びっくりさせるなよ……」


 野良猫を拾う気が全くないあなたは、そのまま蓋を下ろそうとして――


「猫だなどとは、一言も申していないが」

「わっ!? しゃべった!」

「それはいいが、少年よ、一部始終を聞いていたぞ。抗わなくていいのか? このままでは君の小遣いは減る一方だろう」

「……化け物が僕の心配をするんだ」

「私は君を呼んでいた。力が欲しいか、少年? 報復を手伝ってやろう」


 あなたは、生唾を飲み下します。

お題:ありきたりな声


今回は時間ギリギリだったため粗が目立ち、少し修正してから投稿してます。現在進行形二人称おもしろい…

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