第二話 未知
どれくらい時間が経ったのだろう。
パッと目を開けると、沈む夕日にこれから訪れる夜が迫っていた。
なんだかおかしい。
いつまで経っても駅に着かない。
見慣れない風景に戸惑いながら、車内を見渡すと斜め向かいにじっとこちらを見ている少女がいた。
十歳ほどに見えるその子は、ふわふわとしたくせ毛の長い髪に、大きめのコートを羽織り大事そうにうさぎのぬいぐるみを抱いている。
そして不思議そうな表情で俺を見つめる。
ひとりで電車に乗れるんだ、きっと近くの駅の事はわかるだろう。
そう思い声をかけようとすると、
「あなたはスバル?それともタスク?」
大きな澄んだ瞳で少女はハッキリと名前を口にした。
「…え?」
どうして自分の名前を知っているのか…。
「君は…?」
「私は未知。私の事は知らないと思うけど、私は知ってるよ。」
(親戚の子か…?)
両親が離婚してから親戚付き合いも少なくなってしまった。
知らない子がいても、おかしくは無い。
「あの…さ、今ってどの辺りかわかる?
いつの間にか寝ちゃっててさ。」
「…?」
未知という少女は不思議そうな顔をして、そして言葉を続けた。
「どうして望んでこの電車に乗ったのに、降りようとするの?」
そして、にこにことしながらこう言った。
「この電車は、逢いたい人に会いに行くためのものだよ。」