幕開け!! 1日
僕は舞ステージに山下と立った。
けれど、ステージの周りが暗いからか、あまり緊張していなかった。
『おはようございます。演劇部部長の山下基です。演劇部は――』
山下が、マイクを持って、演劇部の実績について話し始めた。
しかし、あまり長くはなく、すぐに話は終わりそうな方向へと流れた。
『今回はCATと協力をして、白雪姫をやります。では、CATの代表者と代わります』
山下が僕にマイクを手渡した。
それを受け取り、深呼吸をしてから僕は話し始めた。
『おはようございます。CAT代表の勘解由小路光希です。CATはClub Activities Tour の略で、今年の春に創部された部活です。活動内容は、さまざまな部活を短期間に体験するというもので、部員五人で活動しています。今回の白雪姫では、部長をはじめとした部員三人がそれぞれ、ナレーター、白雪役、王子役を担当しています。特に白雪役の男子に注目していただければと思います。それでは、どうぞご覧ください』
僕が話し終えると山下が僕に合わせてお辞儀をした。
舞台裏へ戻るとき、山下が苦笑いを浮かべた。
「――お前って実はSだろ」
「何の話?」
「シュンが哀れだな……。あんな動揺しているシュンを見たのは初めてだ」
舞台裏へ戻るなりシュンが目に涙をためて僕の肩を揺さぶった。
「コウキ!! 何でわざわざ注目浴びせようとするんだ!」
「主人公じゃん。ほら、行ってきなよ」
すでに鏡役と妃役がスタンバイしていて、チトセはステージの上で話していた。
「コウキ、覚えといてよ……」
「うん、多分忘れられないね」
「それもそれで嫌なんだけど……」
「シュン、もうちょっと待って!!」
シュンがステージへ向かおうとすると後ろに引っ付いてケータイを握っていたヒトミが慌てて、シュンとヨシタカをくっつけさせ、写真を撮った。
「よし、これを二人のファンに売れば……」
「ひ、ヒトミ!?」
「俺は別にいいや。女の子はいつでもウェルカムだよ」
顔を青くするシュンに対して、ヨシタカはご機嫌だった。
「僕は女装してるんだよ!?」
「かわいいわよ、シュン」
「ヒトミ、それフォローになってないから!!」
シュンがギャンギャンと喚いた。
「……シュン、出番だよ」
「うっ……」
僕の言葉に俊は顔を顰めた。
「お金」
「行ってきます」
実は五人の中でシュンが一番単純かもしれない。
シュンは僕らに背を向けてチトセと入れ替わるようにしてステージへと向かっていった。