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整理!! 24日

 授業が終わり、いつものように図書室へと向かう。

 何故かとても楽そうなのに、この部活は、毎日活動がある。

 ため息を吐くが、結構楽しんでいたりはする。

 図書室へ入ると、大豆生田俊が本を読んでいた。

「やあ、コウキ」

「やほ。……珍しいね。シュンが本読んでるなんて」

 僕は意外に思ってカバーのついている本を見た。

「でしょう?」

 シュンはケラケラと笑う。

 そして、本の中を僕に見せてくる。

 それを見て僕は納得した。

「……って、漫画か……」

「そゆことー」

 僕は定位置となってきた三つ並んでいるテーブルのうち、二つ目のテーブルのちょうど真ん中、シュンの向かい側に座った。

「他はまだ来てないんだ」

「みたいだね。まぁ、もう来るんじゃないかな」

 シュンは廊下側を見る。

 すると少し遠くで誰かが話しながら図書室へ向かってくるのがわかる。

 そしてすぐに図書室の戸が開く。

 中にCATのメンバーである僕とシュン以外の三人が入ってくる。

「おっ! 二人とも早いなぁ」

「何でヨシタカは僕と同じクラスなのにこんなに遅いのかを聞きたいね」

 僕はため息を吐く。

「ちょっと生徒会長につかまってさぁ」

「つかまった?」

「ほら、もうすぐ後期だろ?」

 『後期』の単語に少し反応する。

「お前じゃね……」

「わかってる!!」

 僕らの高校では前期と後期で委員会と生徒会のメンバーを決めなおすことになっている。

「で、三年生は生徒会に入れねぇだろ?」

「ああ、受験勉強ね」

「そうそう。で、今の生徒会長に頼まれたんだよ。やってくれないかって」

「そっか、生徒会、次の生徒会長だけ生徒会長に指名されるんだな」

 一口千歳が呟く。

 ……いつの間に僕の隣にいたのだろうか?

「……なんだ?」

 いいえ、なんでもありませんとも。

「顔が広いって大変よね」

 長いストレートの髪をくるくると指に絡ませて猜ヶ宇治瞳が面白くもなさそうに言う。

 僕以外の三人と面識はあったものの、部活に入るつもりのなかった彼女は『猫と触れ合える部活』と勘違いしてこの部活に入部した。

 部屋に上がらせてもらったことがあるが、猫のグッズで埋め尽くされたその部屋に僕は恐怖すら覚えた。

 たしか猫も数匹飼っていたはずだ。

 多少一人称が変わったりするのも彼女の特徴だ。

「それよりも、今週は何をするの?」

「そうそう!」

 ヨシタカが黒板にチョークで文字を書き始める。

 相変わらず見本になるような癖のないきれいな文字だ。

 ヒトミは少し遅れてシュンの隣に座る。

 黒板には『部活 済』と書いてあった。

「今日はまず、今までやった部活、整理しようぜ。何やったか適当に言ってくれ」

 相変わらずの面倒くさがりが黒板にも表れている。

「一通り、学校のはまわったよね。バスケ、ハンドボール、サッカー、テニス……」

 シュンは指を折っていく。

「陸上、卓球……あと、野球とか?」

「何で一番王道なのが一番最後に出るのよ」

 ヒトミがため息を吐くのを横目で見ながら僕は思わず苦笑する。

 あれはトラウマの一つだ。

 運動音痴な僕にとって苦痛でしかなかった。

「ああ、あれな。コウキが連続で三振しまくったやつ」

 ヨシタカは楽しそうだ。

 僕は何度か打順が回ってきたが、一度もヒットすることはできなかった。

「……」

「わ、悪かったよ、コウキ。そんなににらむなって」

「ああ、ごめんごめん。ついつい殺意が……」

 僕はいつも通り微笑む。

「……」

「運動部はそれくらいじゃないかな? そもそも、うちの学校の部活数はそこまで多くないでしょ?」

「ああ。水泳部があるけど、あれは時期を逃したから……来年、できたらだろうなぁ」

「そういうことになるな。文化部は……こちらは一番人数のいる吹奏楽部とかは行ってないんじゃないか?」

 チトセがテーブルに片肘をつきながらもう片方の腕で人差し指をたてる。

「あ、そうじゃん!」

 ヨシタカが思い出したように黒板の右の方に『未』と書いて、『吹奏楽部』と付け足す。

「コンピューター部、囲碁・将棋部、軽音部……」

「あ、軽音、楽しかったなぁ」

 ヒトミが微笑む。

 チトセが言葉を止め、首をひねる。

「ヒトミのせいで忘れてしまった」

「ちょっとぉ! あたしのせい!?」

「だから、そういっているだろう」

「もぉ……」

 ヒトミが頬を膨らませる。

 その顔がかわいらしく、少し笑みがこぼれる。

「コウキ、何? あんたまで何か言うつもり?」

「ああ、違う違う。そんなつもりじゃないよ」

 僕が焦って首を振るとヒトミが「わかってるけど?」と笑った。

「ほんと、コウキってかわいい」

「かわいいって……嬉しくないんだけど」

「正直って風に受け取ればいいじゃん」

「……」

「話中断するなよなぁ。今日、これ書いて終わっちまうだろ?」

 ヨシタカが不満げに声を上げる。


 一通りやったことのある部活が出たあと、シュンがA4サイズの紙に書いていく。

 シュンは書記係のようなものだ。

 多少、女子によく見る丸文字のような部分が見られる癖のある文字だが、こちらも字はきれいだ。

「じゃあ、学校の部活でまだやったことがないのは、水泳部、吹奏楽部、天文気象部、茶道部、だね」

「そうだなぁ……んじゃ、次は吹奏楽でも行っとくか?」

「あー、うちの友達、吹奏楽部だけどさぁ。今の時期が一番暇な時期なんだって。春は新入生のことがあるし、夏は大会で、冬は少人数の大会があるって言ってたよ」

「いい感じのタイミングじゃん」

 ヒトミの一言でヨシタカは次に参加する部活を吹奏楽部にしたらしい。

「今度、顧問と部長に頼んどくから、それでいいか?」

「私はいいと思う」

 珍しく、チトセがやる気なことに僕は少し驚いた。

「……言っておくが、私は中学の時、吹奏楽部だっただけだからな」

「あ、はい……」

 たまに思うのだが、チトセはテレパシーでも使えるのではないのだろうか。

「……で、問題があるんだけど……」

 ヨシタカの表情が暗くなる。

「……学園祭の出し物、どうする?」

「「「……あ」」」

 僕らは、学園祭というものの存在を忘れていた。

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