真ッ赤ナ地面…… 4 七年前
もうすぐ進級という四年生の秋と冬の間のことだった。
三人のクラスでいじめが起こった。
チヒロは人一倍正義感が強かった。
だからこそいじめられた生徒を放っておけなかったのだろう。
チヒロがその生徒を庇えば庇うほど、チヒロはクラスから孤立していった。
いじめの標的がチヒロに変わるのにそう時間はかからなかった。
一番最初は上靴が片方なくなっていた。
いつものように三人で登校してくると、チヒロが「あれ?」と首をかしげた。
「靴がない……」
「おいおい、どこにやったんだよー」
ヨシタカがチヒロを少し馬鹿にした。
「どっかに忘れちまったかな?」
二人が冗談めかしに話している中、シュンは何も言えなかった。
二人とも『わかって』いてふざけているのが読み取れてしまったから。
三人は放課後、チヒロの上靴を探した。
「……ねぇ、チヒロ」
「何?」
「……陽太君とあんましつるまない方がいいって」
シュンの言葉にチヒロは目を見開いた。
そして不機嫌そうに言った。
「俊、それって結局いじめてるやつと変わんねぇって。俺はあんな奴らと同じなんてやだね」
「……そっか」
ヨシタカは一言も喋らずにに上靴を探し、二人もそれ以上何も言わなかった。
チヒロがいじめられてから、数週間が経った。
シュンたちが教室に入ると机が三つだけロッカーの方に下げられたままだった。
二つはチヒロと最初からいじめられていた陽太の分だ。
もう一つは……シュンのだった。
シュンが教室の前で足を止めたのを不思議に思い、チヒロとヨシタカが教室を覗いた。
チヒロはそれを見た途端、いじめの主犯であるクラスメートに掴みかかった。
「おい、武!! てめぇ、どういうことだよ!?」
掴みかかられた武はへらへらと笑っているだけだった。
「えー? なんだよ急に」
「この野郎っ……」
シュンは慌てて二人の間に入った。
「チヒロ、やめなよ。昨日の掃除当番は確かに武の班だったけど、たまたま忘れてただけかもしんないじゃん」
「俊……」
「ほら、俊のやつもああ言ってるじゃん。たまたま、忘れちまったんだよ。悪かったな」
「うん、大丈夫。自分で戻しておくから」
なんとかチヒロを武から引き離し、机の方へ向かった。
チヒロはただうなだれているだけだった。
ヨシタカは無言で三人の机を戻すのを手伝った。
「俺のせいか……?」
チヒロの小さな声にシュンは「だから、違うって」と作り笑いを浮かべた。