創部!! 16日
「なぁ、勘解由小路。俺の部活入ってくんねぇ? 創りたいんだけど、足りねぇんだよ」
彼は二年生に進級したての春、僕に話しかけてきた。
「……ずいぶんといきなりじゃない? 何でよりによって僕な訳?」
「お前変だもん」
それが初めて話す相手に対する態度か。
少し癇に障ったが、僕は軽く受け流すことにした。
しかし、と僕は考える。
僕は目立つような行動は入学してから一度もしていないつもりだったのだが。
彼のような有名人に話しかけられるようなことも。
だが、話は聞いてやろうと思い、聞き返した。
「……何部?」
「あー……」
彼は少し考えるそぶりをしてから言った。
「……部活巡り部」
それが僕が入った部活の名前。
僕らの中でいう部活巡りとは、とにかく、部活や同好会の人たちに短期間混ぜてもらったり、学校にない部活は自分らで勝手にその部活内容に沿った活動をする、というものだ。
正式な部活名は「英語の方がかっこいいから」という我らが部長、義孝の提案で、『Club Activities Tour』(略してCAT)部と名づけられた。
この部活名で『猫と触れ合える部活!?』と勘違いして入部してくれたメンバーのおかげで僕らの部活はぎりぎり人数が集まり、成り立った。
集まったメンバーは男子三人、女子二人の計五人だった。
言いだしっぺである彼、雲母義孝は、優等生で教師からの印象もいいため、本当なら許可が下りそうもないこの部活の許可が一瞬で降りてしまった。
自らこのめちゃくちゃな部活の顧問をかってでてくれる教師もいた。
しかし彼は部活内では、一番メンバーを振り回す。
だが、彼に限らず、他のメンバーも個性的なメンバーばかりだ。
そんな僕らの唯一といえる共通点は、『変な苗字』ということだ。
変、というか、珍しい、というべきか。
雲母、勘解由小路、猜ヶ宇治、一口、大豆生田。
そんな苗字が同じ高校に、しかも同学年にいる時点ですごい偶然のようなものなのだが……。
覚えるのも大変だし、面倒だしで、部活内ではほとんどが名前かあだ名を使うことに必然的になった。
部室は何故か図書室。
なんでも、それ以外に使える場所がなかっという。
そして、なんだかんだバタバタしている間に創部した春から半年の月日が流れていた。