予知夢という悪夢
18:44
「な…、お前っ……」
「ん?どうした?いつものつとむだぞ〜?」
挑発するような喋り方で話しかけてくるつとむは明らかに別の人間だった。
「どうして、お前が出て来るんだ!」
「まあまあ、そんな怒るなって。俺だって出てきたくて出てきた訳じゃないんだしよ。たまたまだからさっ」
「こいつ………」
「でもさ、なんでお前が俺のこと知ってるわけ?」
「は?何をいまさら」
「たしかに、俺はつとむのもう一つの人格さ。名前だって借りてるようなもんだ。そして、今日初めてお前と話したんだ。なんで俺を知ってるんだ?」
「お前、未来で散々暴れまわってたじゃねぇか。それを」
「……、ああ、ああ、なるほどな。だから、俺は7分だけここに来れたって訳か。それで、そっちの世界で俺とお喋りってことね。はいはい、理解したよ」
一人で納得するつとむ。まなぶは慌てて続ける。
「……、人を殺すなんてことするなよ」
「ん?なんだよ、急に。向こうでなんか言われたか?そんなこと…」
「ほんとか?なら「ふっ、ははははははは
お前はほんとにおひとよしなやつだなぁ!」
まなぶの安心した表情がパッと引きつる。
「お前の予知夢はなぁ、俺がいて初めて成り立つ世界なんだよ!だから、ゲームもしっかり行う。見て、聞いてきたんだろ?なら説明はいらねぇな」
「ちょっと待てよ。予知夢って」
「特殊能力かなんかとでも思ってたのか?そんなもん、たまたま感じた世界がデジャブに見えただけだろ?それに、俺と一緒の時は何一つ同じ予知夢はみなかったはずだ」
思い返すとそうだった。未来の世界でこいつが、元の世界では元のつとむがいたからまったく違った世界になったんだ。
「理解したか?俺がここに来てしまった今、人が死ぬ未来が作られる。ただそれだけだよ」
やはり、あの表情は殺人鬼のつとむのものだった。未来で話した奴が目の前で笑っている。
「頭のいいお前なら簡単なゲームだろう?予定時刻までに爆破を阻止すればいいだけだからな」
「ほんとうに……このクズ野郎」
「なんとでも言え。未来は変えれるんだろ?それとも、今ここで俺を殺すか?それで解決か?どうせ何もできねぇだろ?」
高笑いを続けるつとむになす術もなくうつむくしかなかった。
「もう準備は整った。あとは、明日のお楽しみだ。まさか、潜在意識じゃなく眼前でゲームを楽しめるなんてな。お、そろそろ7分か?じゃあな、まなぶ」
時計は18:50を指していた。つとむは一方的に話をきりあげその場から去っていった。
まなぶは後を追うことを出来ず、つとむの言ったゲームがなんなのかを考える。
答えは簡単に出てくるはずもなく時間だけが無残に過ぎていく。
突然降り出した大雨に打たれながら校庭の真ん中で一人立ち尽くしていた。