狂い出す日常
18:44
「おせぇよ」
やはり、この世界のつとむはいつもと表情が違って目が鋭く光、狂気に満ちていた。
「お前が誰かはもういい。目的はなんだ。つとむを苦しめるな。もうやめろ」
「目的??そんなもんねぇよ。ただ、人が苦しみ、もがき死んでいく、それがみてぇだけだ!」
空を仰ぎ笑っている彼はとても不気味で声を聞くだけで苛立ちがこみ上げる。
「このクズ野郎」
「なんとでも言え。それでも俺はお前に感謝する」
「え?」
高笑いは消え、微笑を湛えながらまなぶを睨みつける。
「お前からはたくさんの時間を貰った。僅か7分。これで6回目か?30分以上もあったからな。もう終わりだよ」
つとむの言葉を理解できなかった。俺があいつに何かしたか?殺されはした。一回だけ…。それ以外は何も…。
「なんだぁ?頭いい割には理解がおせぇじゃねぇか。お前がここに来てる7分間、元の世界はどうなってるか考えたことあるか?」
「あるに決まってんだろ。俺がここにいる間の元の世界の7分間は、何にも干渉されな……」
はっと、まなぶはある事に気づく。その表情を見てニヤっと頬を釣り上げる。
「俺が、ここにいる間、つとむは……」
「ふっ、ははははははは、やっぱり気づいてなかったなぁ?!いま、元の世界で、俺が、俺自身の人格がつとむとして動いてるってことをなぁっ!もう、最終調整も終わったところだよ」
18:47
今目の前で話しているやつが、もう過去になる世界で動き回ってると考えると少し違和感だが、それを否定する根拠がない。
「てめぇ、何するつもりだ……」
「ゲームだよ」
瞳孔が開き、ギラギラ光る目玉を見開きながら続ける。
「クラスをかけたゲームだ。みなが死ぬか生きるかってとこだな」
「関係ない奴まきこんでんじゃねぇよ!」
「そんなこと知るかよ。そもそも俺には関係する人間すらいねぇからな。人が死ねばそれでいい。まあ、お前には時間を貰ったってことで、チャンスをかねて、ゲームってことにしてやってんだよ。感謝しな」
「死ねばいい??くそ、ふざけやがって」
「お前が止めてみろよ。ただ、それだけだ。生きるか死ぬか、いいゲームだろ?」
「……。教えてくれ」
「飲み込みが早くてありがたいねぇ〜。もちろん、教えてやるよ。学校の何処かに爆弾を仕掛けた。爆破予定時刻は12:00ジャスト。それだけは、教えてやろう」
「…………」
「なんだ?怖じ気づいたか?」
「俺がやらなくて、誰がやる。まだ18:50だろ?そのヒントだけで十分だ。もうお前と話すこともないだろうな。じゃあな。殺人犯」
「ああ、また、会うかもしれないけどな」
不敵な笑みを浮かべて、もう一人のつとむはその場から去っていった。
「もう……時間か」
時計を見ると7分が経とうとしていた。
そして、また、元の世界へ戻る。
「お前に伝えないといけない事がある」
さっきの話を話そうと、つとむに向き合おうとした時、あの奇妙な笑い声が聞こえた。
「つとむ?!」
「まさか、このままでいられるなんてなぁ?!」
そこにいたのは、いつものつとむではなく、さっきまで話をしていた殺人鬼だった。