未来の殺人鬼
16:48
次の日の放課後
二人は本屋に来ていた。
「なんだよ、つとむ。エロ本でも買いに「んなもん買うかよ。ちょっと待って」
と、つとむはいそいそと専門書のコーナーへと向かう。
「何?」
つとむの手に取った本を横から盗み見る。そこには、『多重人格』と書かれた本が。
「ん??そういう道に進むの?」
「いや、別にそういうわけじゃないけど…」
「じゃあ、何」
「なんか、最近気になるんだよね。二重人格の人ってどんなこと考えてんのかなって」
「は?意味わからん」
「だから言ったろ?こなくていいってさ」
「終わったら勉強教えろって言ったのはどいつだ」
「ああ、俺だ笑」
「はやく終わらせろよー」
「はいよー」
とまなぶは専門書の棚から離れる。
その時、無意識にあの動作を行っていた。
16:55
目を瞑り、深いため息。
時間は進む。僅か7分。先の未来だ。
17:02
「あ、」
その直後に気付く。今、未来に来てしまったと。
キャーーーーー!
突然女の人の悲鳴が。
(なんだ?)
声のほうへかけていく。そこには、腹部から血を大量に流した男が倒れていた。付近に犯人らしき人は見えない。もちろん刃物や凶器のような物もない。
「う、、あ、、」
言葉がうまく出てこなかった。人が、目の前で、死んでいる。
17:05
救急車を!誰だ!誰がやった!ああぁっ、…
フロアは一気に混乱の渦に巻き込まれる。
殺される!逃げろ!助けてくれ!
その場にいるかもわからない殺人鬼に怯え出す人々。
「ひ、人…が……、つとむ?!」
と、つとむがどこにいるのか不安になる。専門書の棚は人が倒れている所の数メートル先。
17:07
慌てて走り出す。つとむの安否を気にして。
「つとむ!」
そこに、つとむはいなかった。
「…ど、こいっ…た……」
死体と化した人形のような物がつとむではないのは確かだ。じゃあ、あいつはどこに?
17:08
時計を見ると残り1分だというのに気付く。数分間で頭の中をグチャグチャとかき回されている感じだ。
人が死に、友人が消え、自分も殺されるんじゃないかという恐怖。心が潰れそうだ。
「なんだ?」
「!」
振り返るとそこにはつとむが。トイレで手を洗っていたようだ。
「どうしたんだい?酷い顔をしているよ」
「お前!どこに…いって……」
言葉が途切れる。つとむは頬が引きつり目は煌々と煌きながら気持ち悪いほど、笑顔だった。
17:09
その一瞬、まなぶは戻っていた。
「はぁ、はぁ、なんだ?人が…」
その瞬間走り出していた。なぜか、叫び声は聞こえない。間に合うのか?
殺害があった現場に行くのではなく、つとむが出てきたトイレに掛け込んでいた。
「つとむ!」
「うわっ!何?!」
そこにはいつもと変わらないつとむが。
「はぁ、はぁ、」
「何?どうした?」
「いや、別に……」
「もう見るもんないからいこっか」
「………ああ、」
まなぶの脳裏にはつとむの不気味な表情が焼き付いていた。