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CAIL~英雄の歩んだ軌跡~  作者: こしあん
第四章〜飛翔する若鳥〜
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第九十話ーこんなことになるなんて思っていなかったのです

 






「準備はいーい、シア?」


「いつでもどうぞ、ルナちゃん。まぁ、今日もわたしの勝ちでしょうけど」


「なにを言ってるのか分からないわね。今日も私の勝ち、の間違いでしょう?」


「昨日負けたじゃないですか」


「お、一昨日は私の勝ちだったわよ!」



 今、二人の少女が互いに向かい合わせの形で立っている。


 腰まで伸ばした烏の濡羽のような黒髪、吸い込まれそうな黒い瞳に、漆黒の翼。お気に入りの活動的なワンピースを着て、両掌を指を閉じたまま大きく開き、壁につけるように前に突き出して構えを取っている。

背丈は少し伸びているが、まだまだあどけなさの残る少女――ユリシア。


 肩口まで伸ばした月夜に映える黒髪、血のような真紅の瞳に、純白の翼。ショートパンツにファーが肩口の装飾に使われているおへその見えるシャツ。トーン、トーン、と小刻みにジャンプし、二つの拳を腰骨の位置に置いている。子供っぽい言動とは裏腹に、顔立ちは大人びてきた少女――ルミナス。


 あの唐突な出会いから二年が経ち、二人は親友と呼べる仲にまでなっていた。


 そんな二人が、明らかな戦闘の構えを取って、明らかな戦闘の意思を持って向かい合っている。



「じゃあ……行くわよ、シア!」


「はい、ルナちゃん!」



 ルミナスが大地を強く蹴りつけ、翼を大きく広げてユリシアの方へと向かっていく。その動きはレーザーのようにまっすぐで、速い。流れていく景色を置き去りにして、最速最短でユリシアに接敵していく。その途上で、ルミナスの嵌めた赤い腕輪が大きく輝いた。



「護身剛拳・煉獄掌覇(ヴォルガーナ)!!!」



 ルミナスは両腰の位置にあった二つの拳を全力で突き出す。

するとその拳の動きと連動し、勢いよく炎が吹き出した!

それは火の球。圧縮された炎の形。

炎の再現率は完璧で、とても幼い少女がこれを放ったとは信じられないほど殺傷力の高い魔法だ。

その赤熱する火球は一直線にユリシアを目標に定めて、当たれば火傷では済みそうにない……が。

ユリシアは薄く笑って両掌に闇を纏わせた。



「護身柔拳……」



 向かってくる火球に合わせ、ユリシアは体軸を九十度回転、火球の横に入り込む。流水を想起させる滑らかで、淀みない動き。そのまま闇を纏った掌で火球を上下から優しく包み、流れるように二百七十度回転。

回転の勢いを殺すことなく、掌の上下を反転させて……



(ウッラ)!!」



 火球をルミナスに向かって打ち返した!

しかもただ打ち返しただけではない。火球の表面はユリシアの闇でコーティングされている。

もし、なんの細工もなく打ち返されていたならルミナスはその火球にぶつかったところで痛くも痒くもなかっただろうが、この火球はもうルミナスの支配下にない。火傷こそしないだろうが、無害なものではなくなったのだ。



「っふ!」



 それも所詮ぶつかれば、の話。ルミナスは吸血鬼としての卓越した身体能力で跳ね返された火球を難なく避けて見せた。自分で放った火球とは言え、直線的な軌道であるが故に避けるのは容易い。



「護身剛拳――」



 再び、ルミナスは動く。今度は先ほどの直線的な動きと異なり、大きく渦巻きを描くような距離の詰め方。火球を打ち返した手を戻そうとするユリシアの背後を狙って……



「甘いですよっ!」


「っなぁ!?」



 先ほどの火球がルミナスを横から襲う。

一体何故――? そんな疑問を浮かべた瞬間、答えがルミナスの目に飛び込んできた。



「闇を……鎖代わりにして……っ!」



 火球からユリシアに伸びている紐上の闇。

ユリシアはその闇を操って火球をユリシアにぶつけたのだ。それはさながら鉄球に鎖を繋いだモーニングスターのようで。ルミナスはまんまと不意を突かれたのだ。


 ユリシアはその即席の武器をすぐに手放し、お返しとばかりに体勢を崩しているルミナスの方へ駆ける。

ハーフとはいえ、吸血鬼。

その身体能力は人族(ヒューマン)の大人と比べても遜色はない。


 右拳を腰に、左手は顔の前に立て、前傾に。

ユリシアは鮮やかな所作でルミナスに向けて掌底を放った――っ!



「護身柔拳・奈落頸(グロル・シュピッツ)!」


「っくう、ぁ!!!」



 鳩尾のあたりに吸い込まれるユリシアの掌、掌がルミナスに触れると同時にルミナスの体に流れこんでいく闇。

もちろん、重症にはならないように手加減されているものの、戦闘不能に追い込むには十分な威力である。


 ……はずなのだが……。

ルミナスはにぃっ、と口を歪めて見せた。



「っ!」


「効かないわよ、シア!!」



 鳩尾に突き出された腕を掴み、ルミナスはユリシアを足の底を使って蹴り飛ばす。

軽く咳き込むユリシアに、ルミナスは得意げな表情で臨む。



「【魔力喰い(マジックイーター)】……ですね」


「どーんと正解よ、シア!」



 ルミナスはべぇっ、と舌を出す。その上には小指の先ほどの大きさの小瓶が乗っていて、中には飲みきれずに溜まった赤い液体―――血があった。

これぞ、吸血鬼族(ヴァンパイア)の真価。血を吸うことで、血の持ち主の【能力】、魔力を一時的に使用することの出来る力。

それは、対象がモンスターであったところで作用するのだ。



「反則みたいな力ですよね……」


「シアほどじゃないわよ! 自分の魔力量を考えて言ってくれる!?」



 と、文句を言いつつルミナスは出した小瓶を服の中にしまい、新たな血の小瓶を口に含んだ。

そんなルミナスに対して、ユリシアは文句有り気に頬を膨らませる。



「いくらわたしの魔力が多くても、ルナちゃんだって血を吸えばわたしと同じくらいの出力は出せるじゃないですか……。その上、【能力】まで使えますし。やっぱりルナちゃんの方が反則です。ずーるーいーでーすー」


「ず、ずるくないわよ失礼ね! 勝てばいいのよ、勝・て・ば!」


「ちょっ、速っ!」



 【身体強化】。汎用な【能力】だが、その利便性は高い。

かつて、カイルとリュウセイを苦しめた第七部隊長、獣王アジハドがそうであったように圧倒的な身体能力は魔法を必要としないほどに、強いのだ。



「目で追っちゃダメです……こういう時は魔力探知で……」



 ユリシアは目を閉じ、魔力を感じ取ってルミナスの速さに対応しようとする。

高速で移動する魔力の塊が右に、左に、右に、背後に、前に……



「っ、上!?」


「護身剛拳・滅獄墜(シュトラーフェ)!!」



 真上に感じた肌が焼けるような熱い魔力の波動。

煌々と目を輝かせたルミナスがユリシアの視界に写る。

ルミナスは両手をハンマーに見立てて組み、メラメラと燃え上がる炎を吹き上げるそれを、ユリシア目掛けて振り下ろした――!





――――――――――――――――――――







 二人の少女が争っている……その戦闘区域の外延に、戦いを見守る二人の男がいた。



「いやはや、末恐ろしい少女に育てたものであるな、ジュリアス。もう護身柔拳は体得したと言っても良いでのはないであるか?」



 その内の一人は豪華なローブを身にまとい、立派な髭を蓄え、王冠を頭に乗せている。

思わず身を引いてしまうほど絢爛な衣装だが、その衣装が醸し出す空気を全て拭い去っているのが……左腰に刺した剣。

赤黒い……血を固め、煮しめたような剣。

醜悪に歪んだそれは人を切ることなど出来そうに見えないが、それでも刀剣の持つ鋭い気を発していた。


 ちなみにと言ってはなんだが、もちろんこの男はルミナスの父親でありフィルムーア王国国王。

アダム・ヴィルヘルム・ヴァンパイアその人である。



「勿体無いお言葉です。国王様。

しかし、折角のお言葉ですが、まだまだ二年程度では体得などという言葉は程遠いですよ。それにルミナス姫の方こそ真面目に修練に取り組んでいます。……まだ、体得には至っておりませんが」



 それに応えるもう一人の男。

すらっとしたスマートな体型に、かっちりとした衣装。刈り上げられた短髪で、赤目、黒髪という吸血鬼に多く見られる見た目。知的で優しげな風貌だが、娘であるユリシアを見る目は少しばかり剣呑な雰囲気だ。

ジュリアス・フェルナンデス。言うまでもないが、ユリシアの父親である。



「相変わらず、厳しいのであるなジュリアス。自分にも、周囲にも」


「……私はそうやって育て上げられましたので」


「……そうであるな……そうであった。すまぬ。

苦労を……かけたのである、ジュリアス」


「いえ、それが私の監察官(ヴェルター)としての使命でしたので」



 監察官(ヴェルター)。それはフィルムーア王国における極秘役職。

その職務は……地上の調査。産まれ、自我を持ったその時より、戦闘技術、礼儀、知識、忠義の全てを叩き込まれた存在。成熟した後の数年にも渡る地上調査の任を終えると、王家の懐刀として働くフィルムーア王国最強の人材達。自由など、ない。滅私奉公とはまさに彼らのこと。


 ジュリアスも、そうであった。

才気溢れる彼は、過去類を見ないほど様々な技術、知識を取り込み、歴代最高の監察官(ヴェルター)と呼ばれるほどになった。


 ……その強さを知った幼き日のアダム王が勝負を挑んでボロ負けしたのは、また別の話。


 ともかく、ジュリアスという男は最高の王家の道具(・・)となったのだ。

アダム王は、そんな彼に対して思うところが無いでも無かったが、彼は彼で王として教育されていたので、その思いが外に出されることはついになかった。


 アダム王は、感慨深い目でジュリアスを見つめる。



「そんなお前が……他種族を引き連れて地上から帰ってきた時には、本当に驚かされたものである」



 ジュリアスが任務を終えて国に戻ってきた時は、王家貴族のみならず、監察官(ヴェルター)の存在を知らない国民までもが、一時騒然としたのだ。


 当時、国王になって数年のアダム王もその件については頭を抱えた。


 連れて帰って来たのだ、他種族を。

人族(ヒューマン)獣人族(ビースト)魚人族(マーマン)人魚族(マーメイド)巨人族(ジャイアント)……などなどを。


 当時、帝国という巨大な国家、帝王という絶対強者はまだ無かった。

しかし、だからと言って平和な世の中であったということは断じてない。


 いつの世にも戦争は存在し、被害を被る者たちがいる。

ジュリアスは、その者たちを引き連れて帰国して来た。


 何を考えているのだ、その者たちを殺せと、数多くの罵倒をジュリアスは受けた。

高位の貴族から命令という形で抹殺の仕事さえ来たことがある。

そんな時、彼は冷徹にこう言い放った。

 


『私は王家に仕える身、あなた方の命令を聞く義務はございません』



 ならば王に命令させようと、貴族たちは動いた。

しかし、アダム王は悩んだ。

王家の懐刀として幼少期を、これからの人生を犠牲にするかつてのライバル(思い込み)を理由も聞かずに否定してもよいものなのか、と。

だから、彼は問うた。

どうして彼らを吸血鬼族(ヴァンパイア)の国、フィルムーアに引き込んだのだ、と。

ジュリアスは……



『恋を、したのですよ。国王様』



 と、答えた。アダム王はしばらく思考を働かせることが出来なかった。その間に、ジュリアスの口は回る回る。


 任務中に出会ったフェルルという人族(ヒューマン)の女性の話。優しくて、マイペースで、料理が得意で、可愛くて、小動物のようで、笑った顔が素敵で、泣き出すと止まらなくて、弱くて、守ってあげたくなる女性だと。


 惚気られたのだ。


 歴代最高の監察官(ヴェルター)――当代最強の吸血鬼に。


 もう笑うしかなかった。アダム王は生きてきた人生の中で一番、心の底から腹の底から大笑いした。


 詳しく理由を聞けば、フェルルというジュリアスが惚れた女性に、行き場を失った人達に居場所を与えて欲しいと懇願されたらしい。


 あまりにもくだらない理由だったが、アダム王はその理由を否定しなかった。笑って、彼らを受け入れたのだ。


 住む場所は貴族たちに追いやられたように王国の端になってしまったが、それでも彼らに居場所を提供した。


 

「……私は今でも感謝しています、アダム王。

国益とは何の関係もない彼女達を受け入れてくださったこと。どれほど言葉を尽くしても足りません」


「よいのであるジュリアス。他種族の移住は、確かに国民の間にわだかまりを生んだのである。

しかし、余は差別意識を持ったまま地上に上がることの方が問題であると考えるのである」



 アダム王は、目を伏せる。

深い思考の海に沈むその姿は声をかけ難い雰囲気を作り出していた。



「地下に住むこと五百と余年。恐らく、遠からぬ未来に我々は地上に出ることになるのである。

まして、現在地上には帝国なる統一国家が存在しておるのである。ここもいずれバレるやも知れぬのである。その時、他種族を見下す吸血鬼であったならば……」



 アダム王はそこで言葉を切る。

ジュリアスはその後に続くであろう言葉をそれとなく察していた。

しかし、王が言葉にしないのなら、それは口にするべきではないと彼は判断した。



「……差別と言うならば、目下最大の懸案はアザロ伯爵と言ったところですか」



 アザロ伯爵。彼は純血主義の筆頭貴族である。

王家に近い公爵クラスの貴族は比較的他種族に寛容である。それは絶対的地位が約束されているが故の余裕であるからかもしれない。

しかし、伯爵や侯爵、男爵たちはそうではないのだ。

王国創生に関わった王家、公爵家とは異なり、彼らは王国が運営していくにつれて出来た役職的な立場の意味合いが強い。問題があれば、取り潰しも容易い。


 だから彼らは純血に執心する。それこそが、自分たちの地位を確約するものと信じて。



「そうである……どうも伯爵たちは何か企んでいるようなのである。もしもの時は……ジュリアスの力も借りたいのであるよ」


「元々私が蒔いた種です。何なりとご命令下さい」



 変わらない忠誠を誓うジュリアス。アダム王はその姿に頼もしさと、ほんの少しだけの淋しさを覚え、再び娘たちに視線を戻した。


 ユリシアの上方で、ルミナスが今まさに組んだ両手を振り下ろそうとしている。その両手の炎は赤々と激しく燃え上がり、その上【身体強化】の血を吸った直後の一撃。


 その攻撃が決まった瞬間、一瞬の閃光と熱風がジュリアスとアダム王を襲った。


 ……どう考えても十歳の子供の放つ威力ではなかった。ましてや女の子、一国のお姫様の放つような威力ではない。



「どうしてこうなったのであろうなぁ……」


「……申し訳ありません。二年前は、こんなことになるなんて思っていなかったのです」



 何気無く口にした地上へ出る方法……地盤を砕く。

それを鵜呑みにして、修練を重ねた結果がコレだ。


 

「兵士相手であれば、確実に負けないであろうなぁ……」


「も、申し訳ありません……」



 二人をあんな風にした張本人であるルミナス、ユリシアの護身拳術師範はきまりが悪そうに頭を下げる。

自分にも周囲にも……たとえお姫様であっても厳しく接するジュリアスであった。





――――――――――――――――――――







 ユリシアはルミナスの攻撃を回避していた。

降りかかる拳を紙一重で避け、波状に広がった熱波は闇を盾にするのと、衝撃に逆らわずに吹き飛ばされたことで事無きを得たのだ。

地面を滑るように飛ばされるユリシアは、その黒翼を大きく広げて飛行。粉塵に隠れたルミナスに向かっていく。


――ルナちゃんは自分で巻き上げた粉塵でわたしの姿を認識出来ていません。魔力探知で探知される前に速攻で決着をつけてやります!


 ユリシアは右手の人差し指に闇を集中させる。レイピアのように鋭く形成された闇。

これで……



「わたしの勝ちで--っ!??」



 ガンッ! という衝撃。まるで巨大な鈍器で全身を打たれたような……いや、違う。


 ユリシアの方が、鈍器に当たりに行ったのだ。


 ユリシアの眼前にそびえる炎の壁。先ほどまでは影形も無かったそれに、ユリシアは全力でぶつかりに行ったのだ。


 無様によろけて不安定になってしまった体勢から立ち直ろうとするユリシア。その時、首筋に冷たく、鋭い……硬質な感触のものが押し当てられる。



赤の境界線(ロート・グレンツェ)、とでもどーんと(にゃ)付けようかしら。まぁ、にゃんにしても……」



 聞き慣れた親友の、ちょっと怪しい滑舌の声。

刃物らしきものを首筋に突きつけられては負けを認めるしかない。ないのだが、してやられたという悔しさがユリシアの中で芽生えていた。



「今日も、私の勝ちね、シア」


「今日は、の間違いですよ、ルナちゃん」



 ユリシアが身体の緊張を解くと同時に、首筋に感じていた感触も離れていく。

悔しさから少しだけ消沈したため息を吐き、ルミナスの方を向くと、



「………っ!」


「ふっふーん♪ どーお? 【変態】で猫の獣人族(ビースト)にどーんとにゃってみたのよ!」



 髪の色と同じ黒いネコ耳と尻尾、そして短剣ほどの長さにまで伸びた鋭い爪。

かつてヴェンティアの街でマリンとフィーナがそうしたように変身をしているルミナスの姿がそこにあった。彼女は魔具を使わず、吸血によって変身してみせたのだ。本当に応用性に富んだ種族である。


 勝利の喜びからか、嬉しそうに尻尾を揺らすルミナス。

その毛並みは滑らかで、ユリシアの目には触り心地はとても良さそうに写った。


 

「……ぃです」


「え? (にゃに)? (にゃに)か言った?」



 ボソ、と消えいるような声。ルミナスの聴力をしても聞き取れなかったその声は、



「……かゎぃぃです……っ!! さ、触ってもいいですか! いえ、触ります、触りにいきます!!」


「ちょっ、ちょっとぉっ!??」



 ユリシアは急加速でルミナスにタックル抱擁する。

幸せそうに顔は緩み、蕩けきった表情になって、ルミナスの毛並みをまさぐる。耳を優しく撫でて折ってみたり、頬擦りしたり……尻尾を掴んでしゅるる、と勢いよく撫でてみたり……



「ふ、ふわぁ……っ!

気持ちいいです………っ!!」


「し、しあ! 待ってちょっと待って!

あにゃた今、どーんとおかしい……っ!!

やめっ、その触り方は……ヘン……(にゃに)かヘンな気分にぃ……」



 なんだか妖しげな声をあげるルミナスをよそにユリシアは甘ったるい声を出す。

ルミナスは何とかユリシアから逃れようとするも、不思議なほどに強い拘束からどうしても逃れられずにいた。

頬を赤らめ、上気した声を上げ始める十歳児。

状況的にかなり危ない絵面だが、残念なことに見守る男親二人からはじゃれあっているようにしか見えていない。



「モフモフですぅ………!!」



 結局、モフリストとしての片鱗を垣間見せたユリシアのモフりは、吸血の効果が切れ、ルミナスが元の姿に戻るまで続いたという……。

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