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CAIL~英雄の歩んだ軌跡~  作者: こしあん
第三章~絶対強者との邂逅~
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第七十九話―伸ばした手は……

 




「っだぁああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」




 カイルはヴァジュラを殴り飛ばす。

遠くへ、遠くへ、皆からヴァジュラを引き離すために。


 もう十分に分かったのだ。


 ヴァジュラを倒すには天を裂き、地を割るような強力な魔法で、一撃のもとに倒すしかないと。


 今、その役目をこなせるのは……カイルしかいない。

さらに言うなら、ダンゾウを下したビックバンしか……ない。


 問題はビックバンを正確に当てること。

いくらビックバンが強力な魔法であるとはいえ、それで倒しきれると保証が出来るような相手ではない。

この化け物相手には出来るだけ爆心地に近い位置で、ビックバンを当てておきたいのだ。


 その方法はカイルの頭に既に浮かんでいる。

やることは決まった。あとは実行するだけ。

カイルは目をギラつかせた。



「いくぞ――っ!!!」



 カイルは右手に炎を集中させ始める。

底無しと評された全魔力を結集させようとする。

それを黙って見ているほど、ヴァジュラは甘くはない。



三位合成魔法トリニティレイドカラド――」


「だらぁっ!!!!」



 三位合成魔法トリニティレイドを放つより先に、カイルはヴァジュラの腕を蹴りあげ、魔方の軌道を逸らした。

この方法を続けることができるなら、魔力を右手に注いだままで、ビックバン生成の時間稼ぎができる。



三位トリニ――」


「うらぁぁああっ!!!!」



 再び、ヴァジュラの魔法の出鼻を挫く。


 最早、反射レベルの反応だ。

ここに来て、十一年のサバイバル生活で培われたカイルの野生が働いているのだろうか。

そう思わせるほど、カイルの反応は常人離れしていた。



「小賢し――!」


「ぐっ……!!」



 するとヴァジュラも魔法抜きの戦いにシフトしてきた。

一国の総力を挙げて、強靭に作り上げられた肉体。

それに対するは、【形態変化】で身体能力が底上げされただけの肉体。


 振り抜かれた拳に合わせたカイルの左拳が、衝撃に震える。

だが、



「上、等だぁぁああっ!!!!」


 

 先程の意趣返しとばかりに、カイルは思いっきり反動をつけて頭突く。

鋼のような質感が額を通じて伝わるが、そんなことで怯むカイルではない。


 星がチカチカと目の前をちらついているものの、左手でヴァジュラの腹を殴り付ける。



「はぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


「――――っ!!!!」



 激しく殴りあうカイルとヴァジュラ。

魔法を排した原始的な戦いにも関わらず、戦闘の余波は尽きることなく花園を破壊する。

避けられた踵落としが地にひびを入れ、拳がぶつかれば衝撃波が広がる。


 半ば暴走状態であるヴァジュラと、気合いで身体能力の差を埋めようとするカイルとの肉弾戦。


 そしてそれは……見かけ上、拮抗した。


 拳と拳、脚と脚、幾重にも折り重なったやり取りが交わされ、時間が刻々と過ぎていく。

十合、二十合と打ち合われ、過ぎ去っていく時間。

人間と人間の戦いというよりは……野生の獣同士のような荒々しい戦いだ。




 そんな果ての見えない激突の中……

小さな小さなビックバンが、ようやく……生成された――!



「がっ……!」



 しかし、それは同時にカイルの戦闘に対する集中力の途切れを意味する。

ここでビックバンから少しでも意識を逸らせば、魔力が乱れ、不完全なままにビックバンは爆発してしまうだろう。

それではダメだ。ヴァジュラは倒せない。


 意識は、魔力は……右手のビックバンに向け続けねばならない。

その結果、



「うっ、ぐぁ……がはっ……!」



 拮抗していた戦闘のバランスが……崩れた。

右手を庇うように戦いつつ、意識をヴァジュラから外してしまったカイルは、その代償を受けることになる。



 だが、どれほど殴りつけられようと、


 蹴りつけられようと、痛めつけられようと、


 ビックバンへの集中を切らさなければ、退きもしない。

どれほど窮地に追いやられても、目の前の絶対的強者の首に手をかけることができる機会を逃さない。

じっくりと、狙い、そして待つのだ。

傷だらけになりながら、起死回生の一撃の完成を。













 そして、カイルの体感にしておよそ三分。

とうとう……その時が訪れた。


 

「待たせたな――!!」



 滔々と謳うカイルの握りしめた拳の中から目映い程の光が漏れる。

それは、超圧縮された魔法の塊。

絶大なる破壊力を秘めた、カイル最大の魔法。


 卵程の大きさの……ビックバンが完成した。

後はそれをどう当てるか……だが、



「さぁ、ぶちかますぞ―――!!」



 カイルの中で、答えは出ている。

カイルが一歩踏み出したその時、ヴァジュラの左拳がカイルの腹にめり込む。

ボキボキ、と骨の折れる音が聞こえ、集中が切れそうになる。

だが、カイルの意志は折れない。

瞳に覚悟の炎を灯し、右手でビックバンを握り締めたまま、カイルはヴァジュラに向かって拳を突き出した!







「ビックバン・メテオッ!!!!!!」






 その拳がヴァジュラの腹を穿った瞬間、カイルは手の内のビックバンを解放した。







――――――――――――――――――――






 右手が焼ける感覚、まずカイルが感じた感覚がそれだ。

次に、巻き起こる衝撃と熱がカイルの平衡感覚を奪う。

訳もわからず吹き飛ばされて、熱くて、痛くて、もう何がなんだか分からない。

目を閉じて、身体を丸くして出来る限り防御に努める。

もう魔力は尽きているため、魔力で身を守ることもできずに自らが起こした爆発に呑まれる。


 ビックバンが焦土となったキューケン・ホッフルの花園に止めを差し、花園は完全に原形をなくしてしまった。


 地を震わせ、大気を揺らすビックバン。

爆発の轟音だけをとっても、兵器と呼んで遜色はないだろう。

ヴァジュラの放った炎の大審判ウルガナスよりもさらに強力に、さらに広範囲にビックバンは刹那の内に拡散する。


 過大な爆発が過ぎた後、カイルは地面に墜落する。

か細く繋がった意識の中、カイルの頭を埋めたのは、













「化け、モン……だな」

 


 全身に浅くはない傷を負いつつも、堂々と直立しているヴァジュラに対する、清々しささえ感じる諦めだった――。





――――――――――――――――――――







 ユナはジャックが地中を掘り進めて行ってからも、ヴァジュラによって作られた地中の釜の中にいた。


 あの時、ジャックにリュウセイを運び出すように言われ、しようとした。


 結論から言えば、無理だった。


 例え戦闘技術を体得していたとしても、身体そのものは貧弱な女。

人一人抱えて地上へ飛び出すのは土台無理な話だったのだ。


 せめて治療だけでも、と応急処置道具を取りに戻ろうとしたところで気がついた。

天井が案外高い位置にあることに。


 飛び込むことは出来ても、出ることができなくなってしまったユナなのであった。

まぁ、仮に出れたとしても、応急処置道具は飛空挺もろとも燃え尽きてしまっているのだが。


 結果、ユナは完全に身動きが取れなくなってしまったのである。



「どうしましょうリュウセイさん……!」


「知るか」



 リュウセイは壁に背を付けて座っていた。

横になるのは、彼のプライド的に許されないことなのだろう。

戦いはまだ、終わっていないのだから。

不意に沸き上がってくる闘争心を落ち着けようと、リュウセイが深く息を吸い込むと、



「どわぁぁぁぁぁあああああっ!」



 と、声がしてジャックが落ちてくる。

その上にはぐったりとして動かないマリンとフィーナもいた。



「姉貴っ!?」


「「死んでない……大丈夫よ」」



 二人は心配げな声を上げたリュウセイに向かって安心させるために軽く手を上げた。



「ハッ! ならいい……おい、待てよ。バカイルは、どうした」


「……まだ、戦ってるわ」


「そんなっ……!?」



 フィーナの発言に、思わずユナが泣きそうな声をあげる。

すがるような目を向けられたリュウセイは、ユナと目を合わせずに口を開いた。



「まだ、出ねぇよ。

この魔力の上がり方……アイツは……アレをやるつもりみたいだからな」


「アレ……ですか?」


「実験場を吹き飛ばした技だ。

カイルは……あのバカは一人になるタイミングを待ってやがったみてぇだ」


「どうして……」


「巻き添えを食わせないように、だろ」



 雷の身体強化の反動の結果の、全身を襲う痛みに耐えつつ、リュウセイはそっと刀に手を乗せた。



「安心しろ。それで仕留めきれなかったら、すぐに俺が飛び出して……あんな野郎ぶった切ってやる。

是が非でもな」


「……はい」



 痩せ我慢であることは明らか、だが、そうまで言われては、ユナは納得する他なかった。



「マリンさん、フィーナさん、ちょいゴメンやで」



 ジャックが上に乗っかっていた二人の下からもっそりと這い出て、二人を背中合わせに座らせる。



「ハッ! どうした、ジャック?」


「いや、あんな爆発魔法使われるんやったら、こないな場所、崩壊してもおかしくな――――っ!!」



 ジャックが言い終わるより先に爆音と衝撃がこの場に轟く!

ジャック以外の四人は突然の衝撃に受け身が取れずに倒れるが、ジャックだけは直前にしようとしていた行為を行っていた。


 両手を地につけ、この周囲の土に魔力を流す。

そして、上からかけられる力にこの地中の釜が耐えれるように補強したのだ。


 そのお陰で生き埋めになるという最悪の被害は避けられ、その衝撃は去っていった。

転がっていたリュウセイが声を上げる。



「ぐっ、おいジャック! 俺らを上に運べ!」


「それぐらい自分で――あぁ、もう! しゃーないなぁ!」



 立ち上がれないリュウセイ、傷だらけのフィーナとマリン、涙目のユナを見て、ジャックはなけなしの魔力を地面に注ぎこんだ。

足元の土がぐんぐんせり上がり、五人を同時に地上へと押し上げる。



 地上まで辿り着いた時、急いで五人は視線を泳がせる。

遠く、僅かに視認出来る距離……。

そこに……見つけた。


 地に伏せるカイルと……三位合成魔法トリニティレイドを発動させようとするヴァジュラの姿を。








――――――――――――――――――――







――カイルさんっ!


 気がついたら、ユナは駆け出していた。

いや、ユナだけではない。

ジャックはもちろん、動けもしなかったリュウセイ、マリン、フィーナも青い顔をして駆けている。


 焦燥が全身を支配し、恐怖が背筋に張り付いて離れない。


 土を高く蹴りあげ、がむしゃらに五人は手足を動かす。

焦げ付くような熱気が肺に満ち、走るのを止めたくなる――そんなことは、誰の頭にも無い。

頭を占めるのは、間に合え、という願いだけ。


 だが、現実は無情だ。


 ヴァジュラはゆっくりとこちらを一瞥し、右手を地面に這いつくばっているカイルへ……向けた。



「やめてぇええええええっ!!!!!」



 足を滑らせ、転倒したマリンが声の限りで叫ぶ。

気丈な彼女らしからぬ叫び声に駆ける四人の足は少しだけ速くなった。






――どうしよう、どうすれば……!!



 ユナは、長い黒髪を風に揺らしながら考えていた。



――八年間、隠し通してきたわたしの闇。

今、露見させるわけには……!



 ユナの頭の中で、目まぐるしく考えが流れる。

焦燥と恐怖にせっつかれ、嫌な予感が次から次へと現れてくる。



――死ぬ、カイルさんが……死ぬ。



 何もせずに走り続ければ、その〝最悪〟は現実のものとなるだろう。

しかし、ユナにも譲れないものがある。



――わたしには……成し遂げないといけないことが……!



 背負わなければいけない想いが、ある。

ユナにとってそれは何よりも変え難く、命よりも重いものだ。

八年前のあの日から、誓ったことがある。

父と、母と、かけがえのない友と。

成し遂げると誓った約束がある。



――でも……!



 信じてくれる、仲間が出来た。

闇を簡単に受け入れ、帝国と渡り合う頼もしい仲間が。

暖かい笑顔と、心地よいぬくもり。

それは孤独に泣いていたユナにとっての救いで、命よりも大切なものになった。



 

――でもぉっ……!



 だから……天秤になど、かけられない。

どちらも大切でどちらも捨てたくない。

仲間というものは……カイルは……ユナにとって、それほど特別になっていたのだ。


 迷いながら、ユナはただ走る。


 だが、敵はユナの決断を待ってはくれない。

ヴァジュラの三つの指輪から魔力光が輝き、結び合う。合成されていく。

完成した三位合成魔法トリニティレイドがカイルに――。



 その瞬間、凍りつくような寒気がユナを襲った。

あれを受けてしまえば、間違いなくカイルは死ぬ。


 そう分かってしまった。

この距離では間に合わない。

リュウセイも、ジャックも、フィーナも。





 それはつまり、カイルの死を……意味した。



「ダメェええええええええ!!!!!」



 もう何も考えられなかった。

使命だとか、想いだとか、そんなものは雲散霧消し、ユナの頭からかき消えた。

残ったのはカイルを救いたいという想い、ただ一つ。







 ユナは、カイルに向かって手を伸ばす。

吹けば飛ぶような少ない魔力。

その全てを、伸ばした手のブレスレットに込めた!


 二つのブレスレットは黒い輝きを放ち、妖しく揺れる。

そして、



「【転移テレポート】!!」



 二つのブレスレットは、まるで元から存在しなかったかのように、ユナの腕からかき消えた。




――――――――――――――――――――







獄炎の稲妻インドラ――!」



 ヴァジュラは、カイルに向かって一切の加減なく三位合成魔法トリニティレイドを放とうとする。

が、ここで予期せぬ事態が起こった。


 ヴァジュラの手の延長線上……つまり魔法の軌道上に突如として漆黒の穴が開いたのだ。

よく見るとその漆黒の外縁は大きく拡張されたユナのブレスレットだった。

内部が黒に染まっており、文字通りに突然現れたため、穴が開いたように見えたのだ。


 ヴァジュラはそれに全く構うことなく、破壊衝動に突き動かされるままに魔法を放つ。

雷と炎と岩の穿孔せんこうが……漆黒の奥に向かって放たれる。

 

 しかし、その魔法はカイルを捉えることなく、横からヴァジュラ自身に襲いかかった!

自分の魔法であるにも関わらず、衝撃を受けて吹き飛んでいくヴァジュラ。

そのヴァジュラを吹き飛ばした魔法の出所には……ブレスレットの片割れが、拡張され、同じように漆黒の穴を開けていた。


 

「なんやアレ!? ってユナちゃん!!?」

 


 力尽きたようにユナが膝から崩れる。魔力切れだ。

走り続けていたため、勢いを損なうことなくユナの身体は、荒い地面の上を滑る。

ジャックは慌ててユナに駆け寄った。



「ユナちゃん!」


「カイル……さんは?

ヴァジュラは……どう、なりました?」



 まだ少し遠い距離のヴァジュラをジャックは見やる。

カイルを仕留めるつもりで放っただろう三位合成魔法トリニティレイドは余すところなくヴァジュラ自身に浴びせられ、地に伏せるヴァジュラの姿が、ジャックの視界に入った。



「やった、やったで! ユナちゃん!

ヴァジュラはもう――っ!?」



 喜びの声は長続きしなかった。

傷を負いつつも、ヴァジュラはいたって何の障害も感じていないように起き上がったのだ。

危機は未だ――去っていなかった。


 ヴァジュラが雷の魔鎗ゲイボルグを具現化させ、再びカイルの傍に立つ。



「ダメっ、止めて……っ!!」



 そして、ヴァジュラが雷の魔鎗ゲイボルグの穂先をカイルに合わせて――



「やめてぇぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」




 渾身の叫びと共に伸ばした手。

いつの間にかブレスレットは戻ってきていているが、【能力】を発動できるだけの魔力はない。

指と指の間から見える惨劇。

肉体に鎗が刺さっていくその光景にどれだけ抗って、手を伸ばしても―――。



















 その手は、届かなかった。






――――――――――――――――――――






――動、けよ……俺の身体……!

何で一歩も動けねぇんだ……!!



 何度も何度も魔法を浴びせて、駄目押しとばかりにユナがヴァジュラの魔法を本人に返しても、なお立ち上がってくる絶対的強者ヴァジュラ

皆が手を尽くしてくれているのに、カイルはその場を離れることができないでいた。


 もう首も満足に動かせない。


 近付いてくるヴァジュラの足が死神の足のように見える。

あれだけの戦いを経て、全く曇ることのない強力な魔法の具現化を、カイルはすぐ傍で感じた。



――くそっ、せめて、ここから逃げるだけでも!



 濃厚に迫る死の気配。

それがもう間近にあることをカイルは悟った。



――死ぬ……!



 雷の魔鎗ゲイボルグが突き出される音が聞こえた。

もはやここまで、と覚悟しかけたその時、



「え……?」



 カイルの身体が浮いた。

一体何が、と混乱するが、直後に飛び込んできた光景に一気に魂まで凍りついた。


 カイルを投げ飛ばしたまま笑顔を浮かべる人影。

そこは雷の魔鎗ゲイボルグの軌道上だというのに。



「待っ……!!」



 空中に投げ出されたまま、カイルは必死になって手を伸ばす。












 だが、それは届くことはない。



――なんで、どうして、こんな。



 まざまざと身体の中心を鎗が突き刺さっていく様を見せつけられる。

自分の無力さを目の前に突きだされたような心持ちだった。

紅い鮮血が空に舞い、地を濡らす。

突き破られた身体からは見ているだけで恐ろしくなるほどの血が流れ出ている。

雷が、炎が、岩が、内部から全身を苛む。

焼かれ、燃やされ、破壊されていく。



――なんで、なんでだ。



 焦げる臭い、無慈悲な電撃音。

それらは痛烈に生々しくカイルの感覚に食い込んでくる。

逸らすことの出来ない悪夢をカイルは味わった。



――うそだ、うそだろ、なんでだよ。



 しかし、叫びだすほど苦しいはずなのに。

目の前の人物は……カイルに対して笑みを浮かべるだけだった。

よかった、と……笑うだけだった。



――あ、あああ、あああああ…………



 鎗が引き抜かれ、支えていた糸が切れたように、その身体は地面に落ちていく。


















 鮮やかな緑色の髪が、風に揺られた。




「フィーねぇぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!」




 再び伸ばしたその手は……残酷に空を掴むだけだった。






 

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