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CAIL~英雄の歩んだ軌跡~  作者: こしあん
第三章~絶対強者との邂逅~
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第六十三話―水上都市ヴェンティア

おひさしぶりです、こしあんです。

今日から各週に戻るので、よろしくおねがいします、

 




 ザァッ、と船先が波を切る。

スクリューが静かな音で高速回転し、船はぐんぐん前へ進んでいく。

だがそれは船と呼ぶにはあまりにも異様であった。

UFOのような円盤形で、巨大。

遠目から見れば小さな要塞にも見える。


 そう……カイル達の飛空挺である。


 ジャックの魔改造により、とうとうこの飛空挺は水上さえも移動できるようになったのだ。

水陸両用どころか水陸空万用である。

もはやこの万能機体は飛空挺と呼べないような気もする。


 しかし、機能は大幅に変化したものの内装はさほど変わっていない。

何部屋かは改造の過程で潰れたが、六人しか乗っていないこの飛空挺において大した障害にはなっていなかった。


 そしてここは潰れなかった一つの部屋。

部屋というよりは居間、これまで何度も使っているリビングルームだ。


 六人は顔を突き合わせ、地面に置かれた紙きれを見つめていた。



「……うーん、とうとう出たわねー」


「まぁ、予想はしてたけどねー……」


「ワイは元々でとったけどな」


「わたしもです……」


「あっはっはっはっ!!」


「…………」



 見ているのは六枚の紙きれ。

それは何かというと……



「「あたし達も賞金首か……」」



 手配書、である。

実験場から出て、最寄りの街に行った際、マリンとフィーナがいち早くそれに気付き、こっそりと拝借してきたのである。

カイルあたりならこうスマートに物事は動かないだろう。


 パッと手配書の掲示板を見ただけでもその手配書の注目度は異常だった。

それは懸賞金の額もそうであるが、反乱者が出たから、という意味合いが強かった。

掲示板の周囲は人でまみれていて、彼らは口々に反乱者が出たらしいぞ、今さら反乱かよ、などの反抗と思われない程度の無難な言葉を口にしていた。

あのまま街に居続けたら、遅かれ早かれ見つかっていただろう。


 言葉を変えて繰り返すが、この六人はお尋ね者となった。

ではその詳細を順に上げていこう。



 〝睡蓮〟ゴードン&フリューゲル


 偽名であると思われる。本名不明。

青髪の女と、茶髪の女の二人組。

年齢は十代後半と推測される。

瞳は緑。

冒険者のような服装で目撃情報が多数。

片方一人で一億マム。

二人合わせてなら三億マム。

生死問わず。




「「ちぇっ、三億か……」」


「なんでそんな不満そうなんですか………」




 ジャック・ドンドン


 小人族ドワーフ。赤い髪に金の瞳。

身長約一メートルの男。

歳は十代後半。

腰に提げた職人道具が目印。

懸賞金一億マム。ただし、殺害の場合はゼロ。




「上がっとる上がっとる。前は五千万くらいやってん」


「ふーん」




 ユナ


 闇属性。

ロングヘアーの黒髪に大きな黒い瞳。

少女のような外見で胸は小さめ。

歳は十代後半と推測される。

必ず生け捕りにすること。

懸賞金二十億マム。殺害の場合はゼロ。




「二十億!?」


「二倍ですか……」




 カイル


 有翼族。短髪金髪の緑眼。

火属性の使い手で膨大な魔力を有する。

【形態変化】後は朱色の羽毛の翼を生やす。

拳や肉体を使う戦闘を好む。

人の話を聞かない。

生死問わず、三億マム。




「人の話を聞かないってなんだよ……」


「「当たってるじゃない」」




 〝流星〟


 本名不明により便宜上二つ名で命名。有翼族。

カイルと同じ容姿だが、刀を使う。

雷属性。

【形態変化】後は竜のような翼を生やす。

生死問わず、三億マム。




「「「「「ぷっ」」」」」


「おいコラテメェら、何一斉に笑ってやがんだ」


「いやいや……何でもないで〝流星〟」



 ジャックが堪えきれずに吹き出し



「そうですよ〝流星〟さん」



 ユナが口元を押さえて



「便宜上とはいえ二つ名が付いてよかったわね〝流星〟」


「〝流星〟……いい名前じゃない。

これからそう名乗ったらどう?」



 マリンとフィーナがにやりと笑みを浮かべ



「〝流星〟だってよ!! あはははは!!!!!!」



 カイルが爆笑する。



 そう、そうなのだ。


 リュウセイの二つ名は〝流星〟。


〝流星〟の……リュウセイだ。



「ハッ! なぁにが便宜上の名前だこの野郎……!!

便宜上なんだったら本当の名前を当ててんじゃねぇよ!!!」


「あはははは!!!」


「笑うんじゃねぇバカイル!!!」


「ってぇ!! 何すんだよ〝流星〟!!!」


「テメェ……今どっちの方で言いやがった?」


「もちろんお前の名前だぜ。


 ……二つ名の、だけどな。なぁ〝流星〟?」


「切るぞバカイル」


「やってみろ〝流星〟」



 カイルの挑発から喧嘩が始まった。

まぁ、別にいつものことなので誰も止めはしない。



「いやー、この手配書の二つ名を考えた奴とワイ、友達になれる気がするわぁ……。センスを感じるな」


「そうねぇ、よりによってリュウセイに〝流星〟だなんて……」


「どうやったらこんな風になるんですかね?

二つ名と本名が同じだなんて」


「そればっかりは帝国に聞かないと分からないわよ」


「多分偶然だと思うけどね」








「ハッくしゅン!!!

っアー、何処カの誰カがボクのことを噂してるのカナ?


 マァ、多分“彼”だろうけどネ。

いヤー、誰モ名前知らナイって言うカラ二つ名と本名を同じ名前にしてみたんだケド一体どんな気持ちなのカナ?


 エレナちゃンから聞いたウィルを切った技がそれっぽいカラ特に問題ナク通ったケド……ウン、今度会ったら聞いてみヨウっと」



 この大陸の何処かで確信犯がくしゃみをしたことは、誰の知るところでもない。











「ほーら、そろそろ目的地に着くから、喧嘩は止めてこっちに来なさい〝流星〟」


「早くしなさい〝流星〟」


「あ、〝流星〟さん、お茶入れてきますね」


「〝流星〟ー、聞こえとるかぁー?」


「ほらほら、行くぞ〝流星〟」


「クソがぁぁぁぁ!!!!!

俺の二つ名を付けやがった奴!!!!

絶対にぶった切ってやるからなぁぁぁっ!!!」



 だが、その二人の邂逅は近そうである。





――――――――――――――――――――





「「それが頼んでたもの?」」


「もっちろんやでマリンさんにフィーナさん」



 ジャックの目の前に並べられているのは六つのベルト。

六つとも留める位置にはクリスタルと魔力鉱石が陰陽道の陰陽の印のように、勾玉二つを組み合わせた形で嵌められており、どうやって留めれば良いのか分からない。

フィーナはその中の今の自分と同じ地属性のものを手に取ってしげしげと眺めた。



「これ、どうやって留めるの?」


「あぁ、魔力を流したら勝手に留まるように設定したわ」



 無駄にハイテクなベルトだ。

フィーナは手に持ったそれを腰に巻き、魔力を流すとガチャン、と機械的な音がしてベルトが留まった。



「後は【能力】を発動するだけやでー」



 フィーナはその言葉を聞いて【能力】を発動させる。

魔具から広がる茶色の光がフィーナを包み、その身体を覆い隠す。



 その光が晴れると、フィーナの姿は大きく変化していた。

まるで亜人族の【形態変化】のように。

しかし、変化後の姿はどの亜人族の変化でもなかった。


 その姿は………獣人族。


 ピン、と飛び出た三角の耳。

それはピョコピョコとコミカルに動いて一体何がどうなってるの?と主張しているようだ。

ふわぁ、と伸びる長毛で覆われた尻尾は見ているだけで思わず触りたくなる衝動に駆られる。



「わぁ、凄いじゃにゃい。

これにゃら猫の獣人って言っても絶対にバレ「猫さんですぅーーーっ!!!!!」



 まぁ。


 衝動に駆られるままに、本能の赴くままに動く人物がいることは周知の事実だろう。



「ちょっ、ユナちゃん止めっ!?」


「ふわぁぁぁ、猫しゃんですぅ~~~」


「ちょっ、どこ触っ、ひゃぅっ!

にゃによ、この感覚ぅ、んぅっ!!?」



 ユナがフィーナへと飛び付き、その柔らかそうな尻尾を無我夢中でモフる。

顔を埋め、抱き付き、撫でて撫でて撫でまくる。


 フィーナは必死で抵抗しようとするが、何故か体に力が入らない。

それどころかどんどん力が抜けてへたりこんでしまう。

ユナはそれにも構わず撫でまくる。

その度にフィーナから聞いている方が恥ずかしくなるような声が上がる。

顔はだんだん赤くなり、聞いてはいけないような吐息が漏れ出した。



「んっ、うぅ……いやぁ……にゃぁぁぁ……。

にゃによぉ、これぇぇ……」


「説明するで!!

ここにある魔具は獣人族みたいな外見に変身できる魔具や!!

【擬態】により、変身後はベルトは周囲から見えなくなる!!!

【変態】を持つモンスターの素材で作られたその猫耳と尻尾は本物と同じ!!!

感覚さえも感じてしまう!!

元来の器官やないから慣れへんうちはちょっと敏感やけどそこは我慢や!!

そして、口調で変装がバレることのないように語感変化機能も付けとる!!

猫獣人の場合は〝な〟の文字が〝にゃ〟に変化する!!!


 よくやったワイ!!

あぁ、目の前が天国っ!!!!!

フィーナさんがあんな顔でユナちゃんに襲われるやなんてぇえええええ!!!!!」



 グッ!!!!!!!!!!!!!!


 ジャックは水道栓を全開まで捻ったような勢いの鼻血を吹きながらこれでもか、というくらい力強いガッツポーズをしてみせた。



「ぅ、にゃぁ………」


「へぇー、俺っていつもあんな風にユナに苛められてるのかー」



 カイルがしげしげとユナとフィーナの絡み合いを見つめる。

隣にいたリュウセイは全然ちげぇよバカイルお前はあんな顔しねぇよ、と心の中で罵った。

口に出さなかったのは、実の姉のちょっとあられもない姿に顔が赤くなり、どもってしまう危険性があったからだ。



「ま、マリ……ン………ひぅっ!!

た、たひゅけ………にゃぅ!!」



 とうとうフィーナが自分の片割れに助けを求めた。

普段責められ慣れていない上に、敏感な部分の集中攻撃で、フィーナは大分まいっていると見える。

基本的にSな人は打たれ弱いのである。



「い、いやぁ、ちょっと、ね」



 そしてそんなフィーナの様子にマリンはビビる。

彼女は自身の片割れ。

下手を打つとああなってしまうという事実が、マリンを怖じ気づかせた。



「にゃぁっ、ぅっ、そ、そんにゃぁ……」



 そんなマリンの考えが分かってしまうフィーナの顔は絶望に染まる。

救いなどどこにもない、フィーナは絶望へと叩きのめされた。


 いや、まだだ、マリンが頼れないなら自分で何とかするしかない、フィーナがそう考えて、ふと、自分の目の前を見るとそこには誂えたように置かれた五本のベルトが。

そして、恐らくジャック用だと思われる地属性のベルトも、そこにはあった。



「にゃあ……っ!!」


「……フィーナ?」



 フィーナはそのベルトを掴み【能力】を発動させてマリンへと投げつけた。

その狙いは外れることなく、マリンの腰に巻きつく。



「ちょっ!?」



 マリンは茶色い光に包まれ、そして獣人族の姿へと変化する。


 ふにゃり、とした垂れ耳。

ぱたぱた、と忙しなく動き、何だか微笑ましい。

尻尾はぴん、と立ち上がって、来る脅威に備えているようだが、それも何だか可愛らしく感じるポイントだ。



「犬さんですぅ~~~~~!!!」



 まぁ。


 動物で毛が生えているのなら、目をつけられるのは当然なわけで。



「んっ、わふっ………ひゅぁっ!!」



 マリンもユナの魔の手にかかってしまうこととなる。


 ただ、計算違いだったのは……



「にゃぅぅ………」



 ユナがフィーナを手放さなかったことだ。

二人をその手中に収めて、なおかつ二人同時にモフる。

カイル達の目の前には猫耳獣人娘と犬耳獣人娘が黒髪美少女にいいようにされる非常に百合百合しい光景が広がっていた。


 熱い吐息が二人の口から漏れだし、ユナが尻尾を撫でる度、耳を触る度に反射的にビクンッ、と身体を震わせる。

若干目に涙を浮かべ始めたその様子は普段の彼女達からはまるで連想が出来ない光景だ。



「ここがこの世の楽園か………っ!!!!」



 鼻血のダムが決壊でもしたのか、瀑布のごとき量の鼻血を流しながら、ジャックはクワッ、と目を見開いてその光景を脳内メモリーに焼き付ける。


 一方、カイルはぽけー、とその光景を眺め、特に何も考えていない。

リュウセイも何も考えていないが、考えられないと言うのが正解だろう。

ウブな彼は耳まで真っ赤にして必死に煩悩と戦っていた。



「んにゃぁぁぁっ、ま、マリ、ン………ひにゃっ!」


「わ、わふっ、分かって………ぁっぅぅゎん!」



 二人はユナに襲われて満身創痍になりながら、ある場所へジリジリとにじりよっていた。


 自分達がこの地獄から逃れる為、新たな手段を行使するために。



「フィーねぇ? マリンねぇ?」



 カイルはその行動を疑問に思って声をかけるも、二人は応えることが出来ず、ただ目的の物を掴むために前へ進む。


 そして、二人は、それを掴んだ。


 勿論、ベルト型魔具のことである。



「二人で駄目にゃら………にゃぅんっ!」


「全員でよ…………ゎふんっ!」


「「食らいな(にゃ)さい!!!!」」



 二人はベルトの【能力】を発動させて三人に投げつける。

【スイッチ】により五大属性全てを扱える二人に、扱えない魔具など……ない。


 結果として……



「にゃぁっ!! しまったぁぁあ!!

やられたにゃぁぁぁ!!!!」


「おー、なんだこれ、犬か?

アオオオオオオオオン!!!」


「吠えんなバカイル!!!」



 見事に三人が三人とも獣人化したのである。

そして……



「天国ですぅ~~~~~!!」



 狩人から逃れられることなく、三人は捕まってしまうことになる。


 ここから先のことは割愛だ。

誰も男のあんな声やこんな声は聞きたくないものである。

ただ一つ、語れることがあるとすれば……



「にゃぅっぁ………」


「予想外……ゎん」



 獣人が五人になったところで、ユナが二人を離すことはなかった、ということだ。



『目的地周辺です。入港の準備を行ってください』



 そんな館内放送が流れる頃には、ユナ以外の全員がぐったりとなっていたことは言うまでもない。





――――――――――――――――――――







 飛空挺は水中に停泊させた。

あんなもので入港すれば目立って目立って仕方がないからだ。

潜水機能まで付いているとは……万能過ぎる機体だ。


 その万能な飛空挺に備え付けてある小型船で、六人は目的地へと向かう。

飛空挺よりも数段遅いので目的地まではもうしばらくかかるだろう。


 ちなみにユナが起こしたあのモフモフ事件はなかったことになっている。


 余談であるが、ユナを獣人化させたところ、自分の尻尾をモフって自滅する、でも触らずにはいられないという無限ループに陥ってしまった。

ゆえに、一旦自分の尻尾の感覚に慣れる時間を設け、ある程度の耐性を付けてから、六人はこの小型船に乗っている。



「さて、じゃああたし達の設定を話しておくわよ」


「よーく聞きにゃさい」



 猫獣人に扮したマリンとフィーナがそう切り出した。

二人の尻尾がふにゃりふにゃりと完全に一致した揺れ方を見せる。

流石、髪の色と魔力以外に違う部分はないと豪語する二人である。



「あたし達はそれぞれの獣人の里から観光で今から行く街を訪れている」


「あたしとフィーニャは双子。カイルとリュウセイも双子。

ただし、あたし達とカイルは姉弟じゃにゃい」


「何でだ? 俺たちとマリンねぇは姉弟じゃんか」


「お前………自分の格好見ろや………わん」



 んー?、という顔でカイルは自分の身体を見る。

カイルの尻尾もカイルの考えに同調し、?の形になる。

その尻尾は猫ではなく、犬のものであった。



「ハッ! 何で分かんねぇんだよバカイル。


 姉貴達の見た目は猫の獣人。


 俺達の見た目は狼の獣人。


 血筋的に俺らが姉弟になることはありえねーんだよ」



 獣人の混血。

それはどちらかの家系が強く出る、ということは滅多にないのだ。

大概はアジハドのように、両方の獣人の特徴が出て、より獣に近い外見となる。


 

「そういうことよ」


「あたし達六人はおにゃじ目的で今から行く街に向かう途中で知り合った」


「「これが設定よ、分かった?」」



 全員がその質問に頷く。

この程度ならば、カイルも理解出来るようだ。


 ここで何故六人が変装、もとい変身しているかを語っておこう。

まぁ、みなまで言うまでもないことではあるが、それは帝国に見つからない為のものである。


 懸賞金がかけられているということはつまり、街民全員が敵になる、ということだ。

検問にだって引っ掛かるし、そうなれば面倒。

ゆえに、根本から別の種族に変身すれば疑われないだろう、という魂胆での変身というわけだ。



「んみぅ~~この魔具は凄いですぅ……」



 若干もふもふモードが抜けきっていないユナの声だ。

彼女のベースは狐、狐の獣人である。

闇属性のクリスタルは存在しないので、ユナの魔具に使われているのは火属性で、カイルが発動させていたりする。

三角の耳は少し垂れて、気持ちいぃですぅ、というユナの心の声を代弁していて、彼女は六人の中で一番大きなモフり甲斐のある自分の尻尾に顔を埋めていた。



「おいワン公」


「なんやリュウセイ? わん。

つーか、お前もワン公やろ! わん」


「別に俺らだって猫の獣人でもよかったんじゃねーか?

別に姉弟の設定でもいけるだろ?」


「男がにゃーにゃー言うてもキモいだけやん、わん」


「……あぁ、そうかよ。でもお前のわん付けはどうなんだよ?」


「それはぁー、僕くらいの子供がわんわん言うてたらぁー、巨乳の方とお近づきになれるかと思っているのわん!!」



 そう言って尻尾を猛烈に振るジャック。

確かにその様子は様になっていて、人によっては心惹かれるものがあるのかもしれない……が、普段のジャックを知っている分、その媚を売るようなわん! は、ただただキモかった。



「ほらほら、馬鹿やってにゃいで」


「見えたわよ、目的地」



 船の先頭に立つ二人がそう言うと他の四人は一斉に視線を前へと向ける。



「うわぁ………!!」


「わん……!!」


「すっげー……!!」


「へぇ………!!」



 目の前に見えるのは正に水の都。

そう、目的地とは陸にあるのではない。


 海上に、水上にあるのだ。

魔法により、空中に浮かぶ水路が幾重にも絡み合って遠目から眺めればまるで高尚な飴細工のよう。

家も、水上に建てられており、屋台が水路を通って移動しているのが見える。

人工の歩道だけで、陸地は一切ない。


 水が、あの都市の基盤なのだ。


 四人がその光景に息を呑んでいるとマリンとフィーナは船の先頭で軽く腰を曲げ、案内人のような台詞を口にした。



「「ようこそ、みにゃさん、あれが水上都市ヴェンティアです!」」




 

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