第四十八話―マリン・フィーナvsダンゾウ
「ここがそうなの?」
「あぁ、せやで」
フィーナの問いにジャックは答える。
四人がいるのは五年前にジャックが帝国軍にいた時、エレナが使っていた部屋の前だ。魔力探知により、中にエレナと思われる魔力も探知している。
「開けますか?」
「あぁ、その為に来たんや」
ジャックは強い視線で睨みつける。
ドアの奥にいる……変わり果てたエレナを。
絶対に、小人族の呪いから解き放って見せる。
そう決意し、ジャックはゆっくりとそのドアを開いた。
「エレナ……………」
ジャックは呟く。
開いた扉から四人は次々に部屋に入り、ドアを閉めた。
エレナはジャック達を待ち構えていたように扉に向かって仁王立ちし、腕を組んで不敵な笑みを浮かべていた。
「ジャックゥ、待ちくたびれたでぇ……!!」
煌々と光るその金の瞳には目的以外の姿は写っていない。
目的--ジャックを殺すこと。
それ以外は一切目に入っていない。
盲目的なまでジャックに固執するエレナ。
それもまた、小人族の怨念のせいなのだろう。
「エレナ……ワイはお前に謝らなアカン」
ジャックはいきなり本題に入る。
一歩前に出て、エレナとの距離を縮めた。
まだ距離はあるが、それでもジャックは自分の思いを告げる。
「謝る……やと?」
訝しむような声。
エレナは完全に警戒してしまっている。
だが、ジャックは構わない。
「あぁ、せや。ワイは、お前のことをずっと忘れとった。
親父がおらんくなったから、もう大丈夫やと思っとったんや。
もうお前は小人族の悪習に晒されへんで済む、って勝手に思い込んどった。
謝って済むことやないかも知れへんけど……スマン、悪かった……。
置いていったりして……スマンかった。
それからエレナ、お前は外の世界へ行くべきや。
外の世界には、お前が考えもせぇへんようなことがい〜〜……っぱいあんねん。
知らんだけやねん。
何もかんも、知らんだけやねん。
知れば分かる。知れば気付けるから。
ワイと一緒に行こう、エレナ」
ジャックはエレナに向かって手を伸ばす。
泣きそうな顔をしながら、伸ばした手。
その顔は、『一緒に逃げよう』と言ったアイリーンと……同じ顔をしていた。
エレナはジャックの話の最中俯いていた。
その様子は何かを考え込んでいるようだ。
ジャックはその様子に少し希望を持っていた。
悩んでくれているなら、まだ引き返せる、と。
そしてエレナは顔を上げた。
「行くかボケ」
その返答も……あの時と同じ拒絶だった。
違うところは、あの時、拒絶したジャックが辛そうだったのに対し、今のエレナは侮蔑的な表情を浮かべ、嫌悪感がにじみ出ているところか。
「しょーもない話聞かせよってからに。
下らなさすぎて反吐がでそうや。
寝言言いに来たんならさっさと死ねや」
ジャックの説得は……エレナに全く届いていない。
揺さぶりすらかけれていない。
エレナがそれほどまでに強固な意思をもっているのかと言われるとそうではない。
そう言う次元の話ではない。
聞く耳を持たないのだ。
まるでジャックの言うことを全て“悪”と見なすように
ジャックの言うこと全てに抵抗心を剥き出しにしている。
「エレ「話は終わりや、どーでもええ、そんでお前らの命も……ここで終わりや」
エレナの口が半月型に歪んだ。
「っ! 水の渦壁!!」
その瞬間、マリンが腰のポーチから素早く水精霊の指揮棒を抜き放つ。
指揮棒の先から水が具現化され、それがジャックの頭の上を通り、その目の前で展開される。
渦の壁。
その名の通りに渦を巻いた水が壁のようにジャックの目の前に広がる。
こぼっ、こぼぼっ。
それを展開してからすぐ、エレナの後方から飛んできた三本のクナイがその渦巻く水の壁に絡めとられた。
「そこねっ! 針針草!!」
今度はフィーナが懐から植物の指揮棒を取りだし、その【能力】、【発育】を使う。
フィーナの投げた針針草の小さな針が異常成長を起こし、巨大化してクナイが飛んできた方向……エレナの背後の辺りへと飛んでいった。
普通の人間なら一発で死に至らしめるようなサイズの針が風切り音を立ててエレナの横を通り過ぎる。
だが……
「【毒焔】―融解の壕」
エレナの後ろからそんな声が聞こえてきたかと思うと、炭酸が勢いよく抜けていく時のようなシュワァァ、という音がした。
現れたのは毒々しい色の焔の壁。
それがエレナの背後に現れ、フィーナの投げた針針草を溶かしていたのだ。
それも触れた瞬間から凄まじい勢いで溶けているため、焔の壁を突き破ることができない。
その毒の強力さが伺える。
その焔の壁の内側には、先程までは存在していなかった人影が浮かんでいた。
「っ!?」
ジャックが驚きで目を見開く。
分かったからだ。
その毒々しい焔の正体が。
気づいたからだ。
最も出会いたくなかった最悪の人物がそこにいることに。
「【毒焔】―激痛の弾」
再び声が聞こえたかと思うと今度は紫色の弾丸が飛んでくる。
それも一発ではない。
何百もの毒の弾丸が壁のように密集して四人へと襲いかかった。
「水の渦壁!!」
再びマリンは指揮棒を振り、水の壁を作り出す。
それによって敵の攻撃は防ぐことができたが、マリンの魔法が明らかに毒に侵されていた。
清らかな水が汚染水のように濁り、紫色となってしまっている。
マリンは毒を食らわないように魔法を凍らせてから砕いた。
攻撃の元、つまりはエレナの後ろにいたのは忍装束の男。
顔をターバンでぐるぐると覆い、片目だけをその隙間から覗かせている。
深い青い瞳からは何を考えているのか読み取れず、不気味だった。
「アカン……っ!
フィーナさん、マリンさん、ユナちゃん!!
すぐにここから逃げるで!!
アイツが第八部隊長のダンゾウや!!」
ジャックは呆然としていた意識を取り戻し、叫んだ。ユナは驚いているが、フィーナとマリンは落ち着いて指揮棒を構える。
「分かってるわよ……それくらい」
「簡単に逃がしてくれそうにないから困ってるんじゃないの……!!」
二人はターバンの男、ダンゾウから目を離さない。
いや、離せない。冷や汗が……流れる。
「エレナ・ドンドン」
「おう」
名を呼ぶことを契機に、エレナは用意してあった下の階へと降りる隠し扉を開き、ジャック達に何の言葉もなく、その場から離れていった。
あっさりと去ったエレナにジャックは哀しみに似た感情を抱いた。
それはジャックの胸を締め付けるようで、昔のアイリーンが抱いていたものと同じだった。
「さて、貴様らに聞くべき情報は皆無。
闇属性とジャック・ドンドンが手に入れば我は十分に任務を完遂。
そのために……邪魔者を消す必要が存在」
「あーら、エレナと意見が食い違ってるわよ」
「ジャックは殺すんじゃなかったの?」
「ただ殺すには、その技術は過分に貴重。ゆえに……強奪」
「「させると思う?」」
「無論」
ダンゾウが喋りながら逆刃で小刀を持つ。
【毒焔】が這うように小刀を侵食していき、気味の悪い毒色に包まれる。
刀を握る左手は顔の前で、右手は腰に。
フィーナ達に対して正面を向かず、斜めの形で構え、人体急所の中心線を完全に隠す。
そして、腰を落とし、重心をゆっくり前方に傾けて……
マリンとフィーナの方へ向かって飛び出した。
「【毒焔】―幻魔の刃」
「「合成魔法水精霊の塔!!」」
ダンゾウが肉薄してくるより二人の魔法発動の方が早かった。
フィーナとマリンが手を繋ぎ、指揮棒を同時に振り上げる。
二人の魔力、魔法が合わさり、幻想的な風景が一瞬現れるが放たれるのはとてつもない威力を秘めた合成魔法。
二人の足元からダンゾウに向かって伸びていく白色の塔。
ダンゾウはそれを跳躍することで避けた。
だが、その塔には無数の窓枠があり、そこから溢れる水流が塔を避けたダンゾウへと襲いかかった。
水流と対峙したダンゾウは自身の魔力を高濃度に圧縮し、足場とすることでさらに空中で跳躍。
踊るようにその水流を避けていく。
生き物のようにうねり返る水流は複雑な動きでダンゾウの接近を阻む。
そんな水流の嵐の中でもダンゾウはゆっくりとフィーナ達に近付いてきていた。
「【毒焔】―幻魔の伸」
接近してきたダンゾウが小刀を突き出すと、纏わりついていた【毒焔】が二人に向かって伸びていく。
「「チェンジ!!」」
ばぁん、と一回ハイタッチ。
マリンの髪が青から赤に
フィーナの髪が茶から緑に
それぞれ、変化した。
「春の突風!!」
フィーナがポーチから緑の指揮棒を取りだし、突きだすように振るう。
強烈な突風が吹き荒れ、ダンゾウの放った【毒焔】も水精霊の塔も吹き飛ばした。
塔の破片がダンゾウを追撃し、その内の1つが腹に当たる。
「っく!!」
「いくらあんたの【毒焔】が脅威でも」
「当たらなければ問題ないわっ!!」
自らを鼓舞するように声を上げ、二人は吹っ飛ばしたダンゾウにさらに追撃をかける。
「「合成魔法・熱塵嵐!!」」
二つの指揮棒から溢れる魔法は炎の嵐。
大きく荒れる熱風が実験塔の壁を吹き飛ばし、強烈な風圧と苛烈な熱波がダンゾウに直撃した。
熱風が二人の顔を撫で、炎で閉ざされた視界が開ける。
実験場の様子が一望できる巨大な窓が新たに作られ、そこにダンゾウの姿はなかった。
「やったかしら……?」
仮にも部隊長。そんなことはないと思うが、今放ったのは合成魔法。
完璧に当たればエリュアの時のように肉片も残さないような強力な魔法だ。
もしかしたら--という考えが頭をよぎる。
「不愉快。貴様らの攻撃など児戯と同等。我の命脈は未だ健在」
だが、そんな考えが通じるような相手ではなく、無機質な声が二人の耳に届いた。
「マリンっ! 下よ!!!」
フィーナの言葉と共に部屋の床が打ち破られる。
二人はすぐに手を放し、お互いに逆方向へと跳躍することでダンゾウの攻撃を回避した。
「うわっ、ちょっ、嘘やん!?」
「きゃぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
ダンゾウが床を壊したことでこの部屋はもはや部屋としての機能を保てなくなり、ジャックとユナの足元の床も抜け、二人は下の階へと落ちていった。
「「あんたらはそのまま逃げなさい!!
ここはあたし達が何とかするから!!!」」
二人は落ちていくジャックとユナにそう声をかけた。
今、フィーナとマリンは床の抜けた部屋の壁の装飾にしがみついている状態だ。
そしてダンゾウは魔力の足場を使い、悠々と空中に佇んでいた。
「疑問だ」
「何がよ」
「あの二人の逃亡を選択した貴様らが」
「当たり前じゃない」
「あの子たちがここに居てもあたしたちの邪魔になるだけ」
「「だったら逃げてもらった方がいい」」
「我は手加減の必要を消失。--そのことを理解しているか?」
ダンゾウは、両手を二人に向けた。
「【毒焔】―侵食の霧」
ダンゾウの手から溢れるのは霧のような【毒焔】。
今までのように一直線に二人に向かっていく指向性の類ではなく、無差別に、広範囲にその霧は広がる。
捕獲の対象の二人がいなくなったことで、彼らに配慮する必要がなくなったのだ。
「くっ、面倒ねっ!!」
フィーナは悪態を付きつつ、指揮棒を横に振るう。
その動きと連動して突風が吹き、ダンゾウの【毒焔】を先程作った壁の穴から外へと吹き飛ばした。
「あれ?」
ダンゾウの姿が消えていた。
フィーナはすぐに魔力探知でダンゾウの魔力を探る。
上、いない
下、いない
左、いない
右、いない
後ろ、いない
前……いた。
「っ! マリン!! 気を付けて!!」
探知したのが自分の真正面にいるマリンの近く。
そして、マリンもそれに気付いたのかすぐに指揮棒を振るう。
「斑火鳥!!」
具現化される火の鳥達。
一匹のサイズこそ小さいがツバメのような形状のそれらは機動力に優れていた。
何十匹ものそれがマリンを中心にして飛び回る。
ダンゾウの姿は未だ見えない。
恐らく【擬態】の魔具でも使っているのだろう。
しかし、これならどの方向からの攻撃でも対処できる。
マリンはそう考えた。
だが…
「【魔力喰い】―爆熱の鈎」
ダンゾウがマリンの下から姿を表す。
その手には先程の小刀ではなく、鈎爪のついたロープが握られていた。
その鈎爪をダンゾウはくるくると勢いをつけてからマリンに向かって投擲した。
「そんな攻撃が当たると思ってるのかしらっ!」
マリンはその攻撃を身体を少し傾けることで回避する。
そしてダンゾウにカウンターを決めるため、突撃しようとすると……
「マリン!! だめっ!!! その鈎爪何かヘン!!」
フィーナの必死な叫びが聞こえた。
マリンは信頼できる姉妹の言葉にすぐに反応し、その意味を探る為にダンゾウの投擲した鈎爪の行方を追う。
その鈎爪はダンゾウの手から離れても、まるで意思を持っているかのような動きを見せていた。
マリンの出した火の鳥を追いかけ、触れた瞬間、マリンの火の鳥は消滅する。
「っ! 【魔力喰い】っ!!」
ダンゾウの放った鈎爪は魔具だった。
しかも火属性の【魔力喰い】。
マリンの火の鳥は次々と喰われ、そして最後の一匹もいなくなった。
「マズイ!!」
マリンはすぐにその場から離れるため、ダンゾウと同じように魔力で足場を作り、フィーナの元へ飛ぼうとするが……
「えっ?」
突然足場が消えた。
踏ん張る所を見失ったマリンの足はあえなく空を蹴る。
なぜ……?
そんな思いがマリンの頭を過る。
その答えはすぐに出た。
「【魔力喰い】……!!」
喰われていたのだ。
ダンゾウの操る鈎爪によって。
空気中で身動きがとれないマリンをダンゾウの鈎爪が捕らえる。
ダンゾウは鈎爪をうまく操り、マリンをそのロープでぐるぐる巻きにする。
「くそっ、放しな……さいよっ!!」
手元から離れた鈎爪ロープを器用に操ったダンゾウ。
マリンがいくら暴れてもそのロープはほどけない。
そして、ダンゾウはその場で回転し、遠心力を利用してマリンをフィーナの方へと放り投げた。
ダンゾウのその行動に、フィーナは動けない。
「「うぁっ!!」」
重なりあう叫び。
見事に激突した二人はそのまま壁に叩きつけられる。
ダンゾウは二人の姿が重なったのを確認して顔の前で忍の印のように右手の人差し指と中指を立てて起動呪文を唱えた。
「爆」
マリンを縛る鈎爪ロープの鈎爪部分が赤く光る。
それはつまり【魔力喰い】によって喰われた魔力が一気に解放されるということだ。
「「ヤバッ………!!!」」
二人は爆発に包まれた。
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少々時は遡る。
帝国のとある部屋、天蓋付きのベッドの側で一人の男が佇んでいた。
「スミレ……」
男……リュウセイは呟く。
カイルと服装を代えているのでいつものような道着ではなく、刀も差していない。
愛おしい者を見るような眼差しでリュウセイはベッドの中で眠るスミレを見る。
すやすやと、気持ち良さそうな寝息を立ててスミレは眠っていた。
その様子からは……昼間のスミレの様子はどう考えても繋がらなかった。
やはり、あれは何かの間違いだ。
スミレはスミレ、俺のよく知るスミレだ。
リュウセイはそう考え、ベッドのカーテンをスライドさせる。
カーテン越しではないスミレにリュウセイの顔がますます緩む。
その優しい顔は、普段の彼からはまるで想像できない。
「……一人になんてさせねぇ。
他の奴等が何と言おうと、俺はお前を信じてるからな」
スミレは応えない。
眠っているのだから当然だが、リュウセイはそれに構うことなく、眠るスミレをそっと抱き上げた。
それは端から見ればお姫様だっこというものなのだが、リュウセイはまるで気にした様子はない。
むしろそうするのが当たり前、といった感じだった。
そして、リュウセイがスミレをお姫様だっこで抱えてすぐ、何かが壊れる音と共にこの実験塔が少し揺れた。
「……姉貴たち……戦ってんのか……」
塔が揺れたことで、リュウセイは無意識の内に言葉に出していた。
リュウセイは先程から大きな魔力を三つ感じている。
恐らくダンゾウと、フィーナとマリンであろうことは分かっていた。
多少の罪悪感はあるが、今は魔具も持ってきていない、駆けつけたところで足手まといにしか……そんなことを考えていたリュウセイだったが、その思考は新たに感じた魔力の変化によって無理矢理中断させられた。
「っ!? 姉貴たちの魔力が……消えた……?」
再び大きな魔力を感じた後、唐突に二人の魔力が消えたのだ。
それはつまり……
「嘘だろ……オイ……!!」
二人の魔力が探知出来ないほど弱くなったか、あるいは……死んだか。
唐突な魔力の消え方。
大きな魔法を打ったわけでもなかった。
そのことから判断すると……
「ふざけんなよ………!!」
じわじわと焦りが湧き出て、リュウセイの心が掻き乱される。
―――魔具はない、一旦戻るか……?
いや、でも……―――
「迷ってる時間がもったいねぇ!!」
リュウセイはスミレをお姫様だっこで抱えたまま、翼を生やし、強化された身体能力でマリンとフィーナの元へ向かう。
魔具は今手元にないが、フィーナは雷属性の魔具を持っている。
それさえあれば、例えダンゾウであっても逃げに徹すれば撒けるかもしれない。
危険な賭けだが、マリン達の命がかかっているかもしれないこの状況ではその選択を取るのも仕方のないことだった。
「んだよ……コレ」
エレナの部屋にたどり着いたリュウセイが発した第一声はそれだった。
視界に入るのは完全に崩落した床と、吹き飛ばされた壁から見える実験場の景色。
そして……崩壊した壁から見える隣の部屋だった。
死体がなくて少し安堵したのは事実だが、この穏やかでない光景に嫌な予感が身体中を走り抜ける。
魔力探知をしてもフィーナとマリンの魔力は感じられないし、ダンゾウも恐らく魔力を抑えているため、探知ができない。
「くそがっ……!!!」
翼をはためかせ、リュウセイは破壊された壁から外に出た。
そしてそのままリュウセイは飛空挺の方へと飛ぶ。
この異常事態を早く伝えるために、リュウセイはかなりのスピードで飛空挺へと……飛ぶ。
リュウセイは気付かない。
スミレの服に仕込まれた……八の文字が書かれた小さな印章が、淡い赤い光を放っていることに……
リュウセイは……気が付かない。