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CAIL~英雄の歩んだ軌跡~  作者: こしあん
第二章~絶望の帝国実験場~
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第四十五話―逃走の果てに

 





 ガタンゴトン……ガタン……ゴトン……



――今、ワイはナーデル車で連行されとる。族長やったグロックを殺した罪でな。手に手錠を嵌められ、使える魔具も無い。


 やけど、それがどうした。


 封化石は嵌められてないんや。

脱出手段はある。この状況やったら、やれることはひとつやけどな。


 ブチッ



「っつ!!」



 隠し持ってた釘で手のひらを傷付ける。

ちょっと痛いけど、連れていかれるよりマシや。


 そのまま縛られたままゆっくりと指先で床に血で術式を書いていく。

見えへんくっても、それくらいは朝飯前や。



 ……よし、こんなもんやろ……あとは……



「………ぺっ」



 この口の中に隠し持ってた地のクリスタル、地の魔力鉱石を術式の上に置いて……



「完成……やな」



 これもまぁ、簡単に言うたら魔具や。

クリスタルと魔力鉱石、そしてモンスターの素材も使ってんねんから。

え、モンスターの素材がない?

……そんなん、ワイの血に決まってるやないか。


 モンスターの素材を使わないとアカン理由は魔力を流すためや。

その為には神経を引きずり出して使うんが一番ええ。

でも神経を使わないとアカンわけやない。

皮膚でも魔力は少しは流れる。

基本的には魔力を保有する生物の身体の一部を使えば、万事OKや。


 そして、人間やって魔力を保有する生物や。


 使われへん理由には……ならへん。


 さて、じゃあそろそろ脱出するかな。


 

「はぁぁっ!!」



 魔力を込める。茶色の魔力がワイの血を伝って術式全体に行き渡っていくのが目に見えて分かる。

神経やったら一瞬やのになぁ。自分の神経を引きずり出して使うわけにはいかんし……



 カァァァァァ!!



 術式全体が輝きだす。魔法が術式のルールに乗っ取って発動される……!!



 
























 ………もう行ったかな……?



「ん……しょっと」



 ふう、上手いこといったみたいやな。

ワイがやったんは穴堀の術式。

ナーデル車の床をぶち抜いて穴堀って、その中にワイが隠れるっていうだけや。

もちろん穴は中から塞いだで?

さて………



「これでワイは………っ!

自由やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」





 一面の砂漠の中で、ワイはそう叫んだ。







――――――――――――――――――――











「無理無理無理無理死ぬって、流石に何の準備も無かったら砂漠越えとか無理。ってかここどこ? 北はどっち? 北でいいん? オアシスとかないん? 一面砂漠とかどうなってんのぉぉお!!?」



 し、しまった。何にも準備してない。脱出することしか頭に無かったわ。

身一つ、クリスタル一つ、魔力鉱石1つ。どうせぇ言うねん。



「ん?あれは……?」



 んー、モンスターの死骸……か? モンスター?



「モンスター!?」



 きたんちゃうか!? これはもしかしてワイに運が向いてきたんちゃうか!?


 駆け寄ってみるとそこにあったんは砂亀の死体。


 砂亀は【硬化】を使うモンスターで、体長はおよそ五十センチ。

噛みついたりして狂暴な性質も持っとるけど、大きさが大きさやから対した脅威やない。

多分この道を通った帝国軍にやられたんやろう。

魔具としてはめったに使わんモンスターや。

やけど……



「無いよりはマシやな」



 とりあえずワイは身を守るために魔具を作ることにした。















 うっし、でけた。

使えるとこは全部使って、作り上げたで。

使われへんところはごちそうさまでした。

右手の肘から先を覆う籠手みたいな魔具や。

【硬化】も再現した。これでちょっとは生き残れるかな。



「さて、じゃあ……てきとーに歩いてみるか?」



 まっすぐ、歩いとけばどこかしらに出るやろ。何も考えんととりあえずこの砂漠から出ることを考えよう。



 身一つ、魔具一つ、生き残って反乱軍に入ろう。

そんでもって……アイリーンの目指した国を……アイツの故郷を取り戻して見せるっ!!!



「んー……? なんや……アレ……?」



 出発しようと意気込んだところやけど、砂煙がこっちに向かって来るのが見える……もしかして帝国かっ!? もうバレたやとっ!!?


 ……いや、あの方向は帝国が進んでいった方向やない。



 じゃあアレは……?


 だんだん見えてきたで……何か……地面から三角形が生えとるな……。三角形……!?



「嘘やん……!? あれはもしかして砂漠鮫シックスギルか……!?」



 その名の通り砂漠に住む鮫である砂漠鮫シックスギル

【能力】は【身体強化】。

まぁ、ありきたりやけど、普通の人間にとっては脅威以外の何でもないな。砂漠にならどんなところにでも生息し、血の匂いに反応して群れで襲いかかる。



「っ! しまった……!

あいつら砂亀の血の匂いに反応してここまで来たんか……!!」



 現在あいつらはワイの回りをぐるぐると回ってる。

数は四匹。いつ飛び掛かってやろうか、とタイミングを伺ってるようや。



「って……冷静に分析しとる場合やないやん……これ、ホンマにどないしよ……」



 右手の魔具を見る、これでどこまで戦える……?

戦闘なんてやったことないぞ……どないせえ言うねん。



 そんなワイのことをモンスターが待ってくれる訳も無く、砂漠鮫シックスギルの一匹がワイに向かって飛び込んできた。



「うおおぉぉぉあぁあっ!!」



 大袈裟にジャンプして砂漠の砂の上を転げ回り、なんとか攻撃を回避する。

ただ、ワイは砂漠鮫シックスギルの習性を忘れとった。

奴等は群れで狩りをする。つーことはつまり……



「う、うわぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」



 目の前には……大きく口を開けた砂漠鮫シックスギルの姿。

せっかく飛んで逃げたのにそれが仇になった。

変に転がってもうて身動きがとられへん。

鋭利なナイフのように輝きを放つ歯。

ズラリ、と並んだそれはノコギリの刃のよう。

上下についてるから、トラバサミにもみえんことはない。

だけどワイは知ってる、それがトラバサミなんて生易しいもんやないことを。

獲物を【身体強化】で一息に噛み千切るあいつらの力を。

その刃の奥にはぽっかりと空いた穴。

それが、ワイには……


 い、イヤや……し、死にたくない……ワイは……ワイは……!!



「う、うわあああ!!!!!」



 とっさにワイはシックスギルに向けて魔具を着けた右手を向けた。

必死に魔力を注ぎ込んで【硬化】を発動させる。


 しにたくないしにたくないしにたくない!!










 めきめきっていう音が聞こえた。





「うっああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」



 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!


 腕が………腕がぁぁああ!!!!!


 放せ、放せ放せ放せ放せ放せ放せ!!!



「放せぇぇええええ!!!」



 砂漠鮫シックスギルの口の中に腕を突っ込んだまま、魔法を発動させた。

頭の中でこの状況で一番効果的な武器を連想する。



「うわああああああああ!!!」



 ずしゃっ


 肉が潰れたような音が聞こえた。


 砂漠鮫シックスギルはワイの作った魔法で身体の中を貫かれて死んだ。


 ワイはすぐに手を引き抜く。




「ぁぁ……あ……」



 ワイの手に握られとったのは……


 アイリーンを殺したんとそっくりな銛やった。


 なんや、これ

 なんで、これが

 また、ワイは……


 茫然としたまま顔を上げると、再び黒い穴がぽっかりとワイの前に広がっとった。




 あぁ、ワイ死んだわ………




















「獣剣術・虎砲」



 目の前で舞う鮮血。

目の前にあった砂漠鮫シックスギルが一瞬で吹き飛ばされ、絶命した。

見てみるとそいつの顔に脇差しが刺さっとって、それが砂漠鮫シックスギルが死んだ原因であることはすぐに分かった。


 一体誰が……?


 辺りを見渡すといつのまに立っとんたんか……長くて白い白髪、同様の髭。

砂漠やっていうのに袴姿で、目は閉じてんちゃうんかって言うくらい細い……そんな……爺さんやった。



「今夜はフカヒレじゃの、少年」



 ほっほっほ、と笑う爺さん。

あと二匹、こちらを狙ってるって言うのにまるで危険に感じとらへん。どころか今晩の飯の話にまで話が飛んどる。



「悪いが、ワシは襲われるのを待ってやるほど親切ではないんでな……終いにしようぞ」



 そういって爺さんは刀を一振り。

刀の先端からは凄まじい勢いで水が流れ出し、めっちゃ速い上、その範囲は狭い。

そんで……恐ろしいくらい……密度の濃い魔法や。

その魔法で、砂漠ごと・・・・砂漠鮫シックスギルを切り裂いた。



切斬舞きりきりまい



 キン、と刀を鞘に戻す。


 凄い……モンスターを……こんなあっさり……。

あぁ、ワイは……助かってんな……

よかっ………た…………








――――――――――――――――――――







 む……ぅぅん……



「別にいいんじゃなぁい? 何かワケアリみたいよ?」



 こ、ここは……?



小人族ドワーフだぞ? 信用していいのか?」


「いいじゃないっ! ちっちゃくて可愛いわっ!!」



 ちっちゃい……かわいい……? だれのことや……?



「私情を挟むなクレア」


「私情じゃないわ。ちょっと趣味に走るだけよ」



 それ……私情……やん……



「それを私情と言うんだ。全く……ゲンスイさんも一体何を考えているのか……」



 ゲンスイ……? ゲンスイ……ゲンスイ……どっかで……



「急に隠れ家から飛び出して戻ってきたら砂漠鮫シックスギル小人族ドワーフの男の子。

一体何が何なのか……さっぱりねぇ」


「でもあの人が判断を誤ったことは今までないじゃない。超人族ハイヒューマンの勘か何かが働いたんじゃないかしら?」


「勘でそんな行動をしてもらっても困る。あの人は反乱軍の総大将なのだぞ?」



 反乱軍……総大将……超人族ハイヒューマン……ゲンスイ……反乱軍?



「反乱軍!?」



 は、反乱軍でゲンスイって……もしかしてあの……!?



「あー♪ ジャックおにいちゃん起きたー♪」



 ジャックおにいちゃんやって……? もしかしてエレナも……ここにおんのか?



「おはよー、ジャックおにいちゃん♪」


「おう……おはよう……エレナ」


「むうー、スミレはエレナじゃないよっ。スミレはスミレなのっ」



 スミレ……?


 ワイは目を擦ってぼやけた視界を元に戻そうとする。そんで目の前でスミレスミレって連呼するやつをじーっ、と見つめる。


 鮮やかな紫色の髪と瞳。

丸っこくて子供っぽい顔立ちに、ツインテールがよく似合う。

むむうっ、と顔を膨らませて怒ってる様子はとても可愛らしい。

短パンに半袖のシャツというとても活動的な服装で子供らしさ、を追求したような少女や。

首元には黒いチョーカーがあり、まるで身体の一部みたいにその少女は着けてる。


 ……うん、エレナやない。完全に人違いや。


 でもあれ? さっきこの子……ワイのこと〝ジャック〟って言わんかったか? ワイ……名前なんて教えてない……よな?



「ワシが教えたのじゃよ」



 顔を上げたら、そこにはさっきの爺さんが……そういやこいつが……そうやっ!!!


 こいつがあの……!!



「ゲンス「あ♪ おじーちゃんだー♪」



 ……はい? おじいちゃん……?


 

「おおーっう!! スミレよっ。いい子にしておったか?」


「うんっ。スミレいい子だよっ♪」


「ふぉほほほほほ。そーぅかそーぅか! いい子じゃったか!!」


「えらいー?」


「偉いぞーーーーーっ!!!!!

ウチのスミレは最高じゃーーーーっ!!!

そうじゃろう!? ジャックよ!!!」


「え、あ、はい」


「スミレえらいー♪」



 な、何やこれ……?



「っていうか、名前……」


「あぁ、ほら、お主の顔、なんか〝ジャック〟っぽいじゃろ」


「そんな理由で!? しかも的中してるし!?」


「ありふれた顔に名前じゃな」


「感想が辛辣!!」


「下の名前は多分“ドンドン”じゃろ」

 

「そこまで的中!?」

 


 な、なんや……ワイそんな分かりやすい顔なんか……?

“ジャック・ドンドン”ですって、顔に書いてあんのか……?

はぁ、嫌やなぁ。これから人に会うたびに、あっ、あの人“ジャック・ドンドン”っぽい顔してるーっ、て思われなアカンのか……



「ってんな訳あるかい!!」


「なんじゃ、当たっとったのか」


「当てずっぽうやった!?」


「スミレは“タンタン”の方が可愛くて良いと思うなー」


「よし、お主の名前はたった今から“ジャック・タンタン”じゃ」


「勝手すぎる!!?」


「何を言うか。我が愛しのプリティースミレがそう言っとるのじゃ、もはやそれは世界の決定じゃ」


「この子にそんな決定力が!?」


「たわけたことを。

ロリの決定はありとあらゆる力全てを使ってでも押し通されるべきことじゃ。

そんなことも分からんのか、最近のジャックは。

昔のジャックはもっと理解のあるような名前であったぞ?

そもそもロリは全人類、いや全生物によって保護されるべきであり、その発言は全てが正しい。

いや、正しくしてやる。

ワシの全ての力を使っての。

まずは、そうじゃな。

お主の教育からじゃ。

まず、純真無垢な視線に射ぬかれた段階で………………」


「あのー、夕飯の用意ができたのです。

皆さんもどうぞ「エェェェエルちゃぁぁあん!!!」うわっ、く、ククククレアさんは、離れてくださ……っ」


「先に行っておくぞ」


「そこのキミも早く来なさいよー」


「スミレもいくーっ♪」


「むっ、そうかスミレも行くのか。

なら仕方がない。話を中断して飯にするか」



 な、何やこれ……? これが反乱軍?

なんかワイが思ってたんと随分違う……



 ぐぐぅぅ~~~~~



 あぁ、そういや、なんも食べてなかったなぁ。

ワイの腹の音に気が付いてスミレちゃんがこっちにトテトテ、と音を立てて走ってくる。



「一緒に食べよ♪」



 ワイは、そのスミレちゃんの申し出を受けることにした。


 



――――――――――――――――――――





「さて、単刀直入に聞く。お前は何者だ?」



 料理を食べ終わった後、竜人族ドラゴニュートの男、ディアスに尋ねられる。

怖いわ。

あの牙とか牙とか牙とか、さっきの砂漠鮫シックスギルを思い出して仕方ないんやけど。



「ワイは……」



 何て言えばいいんやろう。帝国から逃げてきた? あなたたちの味方です? アカン、全部胡散臭く聞こえる。



「とりあえず、族長の息子であるハズのお主が何故こんなところにおるのか、その理由から聞かせてもらおうかの」


「「「「はっ?」」」」



 この場におるゲンスイ以外の四人が声をあげた。

スミレちゃんはおやすみの時間や。

ちなみにゲンスイに敬語とかはなしや。こいつただのロリコンやもん。いや、それはいいとして……何でこいつはワイが族長の息子やと分かった?



「何を驚いておる。“ドンドン”の名を持っておるのじゃ、族長の血族に決まっておろう」


「いや、そんなさも当たり前のように言わないでくれるかしら? ワタシたちにとってはゲンスイ大将の常識は常識じゃないのよ?」


「そうやで。小人族ドワーフは排他的な種族や。よそ者がそんなことを知っとるわけない」


「む、排他的とな?

二百年ほど前は随分と友好的な種族じゃったぞ?」


「そんな昔の話持ち出されても……」



 それに二百年ほど前やと? じゃあこいつ今何歳やねん。



「あと数年で三百じゃ」


「……へ、へぇ、じゃあ本物の〝ドンドン〟にもあったことあるんか?」


「ジジイの癖にハーレムを築いておった」


「面識ありやとっ!?」


「しかも巨乳好きとな。今からでも行って斬りにいってやりたいわ。

なぜ巨乳なのじゃ。あんな脂肪の塊より、ちっぱいの方がよっぽど……」



 反乱軍のリーダーがこんなやつやったなんて……ただの変態ロリコンジジイにしか見えへん。

あと、〝ドンドン〟とワイは間違いなく血が繋がっとるみたいやな。



「それで?」


「え?」


「お前が族長の一族だということは分かった。ではなぜここにいる?」



 ディアス……そう呼ばれている竜人族ドラゴニュートがワイに聞く。



「……ワイは親父を、族長やったグロックを殺した。

もう帝国の為に魔具なんか作りたくなくなったから。


 そんで……帝国から逃げてきた」



 嘘はついてない。でも真実も言ってない。

全部を話すべきなんやと思うけど……いきなりアイリーンの話をするのは……何か嫌やった。



「それが「そうかそうか。それは大変じゃったのう。

今日は色々あったじゃろう。寝室でゆっくりと休むがよいぞ」



 え、それだけ? もっと……質問されるんかと思っとった。ディアスとか……スゴい文句ありそうやし。



「はいはーい、りょーかいしたわぁ。

じゃあそこのジャック君、とりあえずアナタの部屋に案内するから、ついてきてちょうだい」



 巨人族の男にそう言われて有無を言わさずにお姫様だっこをされた。



「ついてきてって言わんかった?」


「細かいことは気にしちゃダメよん」



 そのままワイは部屋までお姫様だっこでつれていかれる。

何だかんだ言うて疲れてたんか、部屋に入ってベッドに潜り込んだら、ワイはすぐに死んだように眠りについた――
















「ゲンスイさん」


「む?」 



 ザフラがジャックを連れ出した後の部屋。

残されたディアスが少々不満気にゲンスイに話しかけた。



「簡単にアイツを信用していいのか? もう少し問い質すべきだったのでは?」


「いや、あれでよい。心配せずともジャックは信用出来る。魔具を作る腕も相当に良い。


 お主も見たじゃろう?

あやつの腕に嵌められておった魔具を。


 砂漠鮫シックスギルに噛み付かれてもただの打撲ですんでおる。使っているのは砂亀の素材であるにも関わらずじゃ」


「確かに……小人族ドワーフであるだけ、魔具を作る腕は良さそうだ。


 しかし、信用という面では俺は納得出来ない。

どうしてそんなにあいつを信用することが出来る?」


「この世の中には人の理屈では及びもしないことがあってだな……」


「特に理由はないんだな」


「まぁ、時間が解決してくれるじゃろう。

信頼関係の問題も……あやつの抱える問題も」


「アイツの問題……?」


「ディアス、貴方は本当に人の感情を読むのが下手ね」


「……どういう意味だ、クレア」


「あの子……無理矢理男に押し倒された時の顔をしてた……」


「……俺は真面目な話をしているんだが」


「真面目な話よ。

つまり言い換えると、あの子はそれほどまでに辛い経験をしたってことよ。

察してあげなさい。

親殺しが……その経験なのかどうかは分からないけれど、ああいう時は無理に迫っても断られるだけよ」


「だから俺は真面目な話をしているんだ……」


「え?

今、私何か変なこと言ったかしら?」


「うむ、終止真面目な話じゃったの」


「『無理に迫っても断られるだけ』……と言ったではないか」


「………」


「………」


「………」


「何を考えておるんじゃ貴様は」


「普通今の流れでそういう意味にとる?」


「すまん、忘れてくれ」



 沈黙の後、二人からの口撃に目を反らしながらディアスは答えた。

クレアがここぞとばかりにディアスを弄りにかかる。



「むっつりね」「そんなに溜まってるの?」「手伝ってあげましょうかぁ?」「ザフラも呼んで三人で」「勿論、私は見てるだけだけど」



 次々と繰り出されるクレアの口撃は止まることを知らず、ディアスは困惑することしか出来ない。


 そして、その二人を眺めているゲンスイは二人に聞こえない程度の声で呟いた。



「何故、ワシがジャックを信用出来るのか。


 その答えは簡単じゃよディアス。







 そんなに疑わずとも“未来”はちゃんとやってくる。

ワシは少しそれを聞いただけじゃ……」





 


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