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CAIL~英雄の歩んだ軌跡~  作者: こしあん
第二章~絶望の帝国実験場~
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第四十三話―初恋はハグと共に

 









 ――あれからもう三ヶ月が経った。


 今、私を〝抱い〟ている小人族ドワーフの男、ジャックはあれから一回も私に手を出さない。

いや、一応出してはいるが、本格的な意味では出していない。


 〝抱く〟のではなく〝抱き締める〟。

いわゆるハグと呼ばれる行為を毎晩、欠かさず一時間行っているだけだ。

それ以上の行為はしてこない。


 こいつを観察し続けて分かったことがある。


 こいつは純粋なのだ。いい意味でも悪い意味でも。


 魔具を作ることを至上目的とする種族、小人族ドワーフ

だがまさか、ここまでだとは思わなかった。


 口を開けば魔具のこと、〝ドンドン〟のこと〝遥かなる魔具の高み〟のことしか話さない。


 朝起きて図面を引き、魔具を作り、グロックと一緒に実験場を回り、改善案を出し、魔具を作り、私を一時間抱き締めてから寝る。


 たまに妹のエレナがやってくるが、話すことは魔具のこと。

ほとんどの場合、意見の食い違いが生じ、エレナが出ていく。

まるで【洗脳】されているような決まりきった生活。


 だが、感情というものがないわけでもない。


 魔具を作る時は本当に楽しそうに笑い、実験の改善案を出さなければいけないときはめんどくさそうにし、アイデアが出ないときは悩む。


 まるで、人間に似せて作られた精巧な魔具だ。




 魔具を作るために作られた魔具。


 小人族ドワーフによって作られた魔具。




 人という形を模し、人の心さえ持っているのに、その中身は魔具でしかない。




 全く……私にどうしろというのだ。




 アイリーン・フェニキア・オストラシズムは一体何をすればいい。




 帝国は許さない。

あんな一方的な法を民に強いるなど正気の沙汰ではない。駆逐されるべき対象だ。


 それに与する人間も同罪だ。


 帝国の力を傘にきて、民に乱暴を働く輩も、奴隷商売、非合法だった商売で利益を上げる商人も、手のひらを返したように帝国についた国の長達も、


 帝国に魔具を作り続ける小人族ドワーフ


 同罪で、駆逐されるべき対象で、豚以下のゴミ、悪魔にも劣る畜生だ。裁きを下されるべき存在だ。


 


 なのに……




 目の前のこの男は私をどこまでも迷わせる。


 

 私、アイリーン・フェニキア・オストラシズムは貴族の義務ノブリスオブリージュについて教え込まれた。



 民を導く、よき先導者となれ


 欲望に囚われず、仁の道を進め


 人の道理を忘れるな



 民を導けと、欲望に囚われるなと、人の道理を忘れるなと、私は教わった。


 人の道理を忘れるな。


 私を迷わせているのはこの言葉だ。

以前、父様が暗殺者に狙われたことがあった。


 しかし、父様は暗殺者を赦した。


 その暗殺者が、他の公爵家の【洗脳】にかけられていたからだ。



『暗殺者に罪はない。自分のしたことすら覚えておらず、操られていただけなのだから』


 そう言って父様は暗殺者に仕事を与え、導いた。



 今のこの状況は……何なのだ。




 こいつは洗脳されている弱き人間なのか


 自らの意思で殺人魔具を作る畜生なのか




 分からない……分からない……私は何をしたらいい?


 アイリーン・フェニキア・オストラシズムは一体どうするべきなのだ?



 導くのか


 裁くのか



 私はどちらを選べばいい?

 


「んっ、一時間……やなっ」



 離れる。私を包んでいた温もりが離れてしまう。


 ……私は何を思考している?

馬鹿馬鹿しい。まるで私がもっと抱き締めていて欲しいみたいではないか。そんなことはありえない。


 

「親父が言うてたんってこういうことなんかなぁ……」



 余計な思考に蓋をして、こいつの話を聞く。

親父……現族長グロック。帝国に与することを決めた悪しき存在。一度、ここに連れてこられる時に会ったが……奴は危険だ。


 人を人だと思っていない。


 ジャックを、子だとも思っていない。


 全てが魔具の為に……そんな男だ。

私をあてがったのも、〝女〟に慣れさせるためだろう。いずれ生まれる新たな“素材”の為にな。


 恐らく、ジャックもいずれはああなる。

小人族ドワーフの成れの果て--それがグロック。

ジャックもいずれ、ああなるのなら……やはり裁くべきなのか……怒りと憎しみの鉄槌を食らわせるべきなのか?



「うーん……なぁ、もっかい〝抱い〟ていい?」


「は? いや、ちょっ、まて……」



 な、何なのだ!? 今日はいつものように机に向かったり、槌を振るったりしないのか? 一体何を……って私の答えを聞いていないのか!?


 あ……でも……温もりが……



「あったかいな……うん、あったかい。


 今なら女の子にもキョーミ持てそうやわ。

女の子ってこんなにあったかいねんなぁ……ワイ今まで魔具のことにしかキョーミなかったから……こんなん知らんかったわ……。


 〝抱い〟てみたら何とかなるって言うてたんは……こういうことやってんな……」



 恐らくグロックの言う〝何とかなる〟という状況ではないだろう。

だが……


 こいつは……魔具を作る時以外でこんなに幸せそうな顔をするのだな……。


 まるで、母に抱き付く子供のようだ。




 そうか……“知らない”だけなのだ。



 人の愛を、愛情を。



 魔具のこと以外に与えられたものはなかったのだ。

だから、他の人間を思いやることが出来ない。

だから、純粋に人を殺すような魔具を作れるのだ。

ならば……



「温かいのは……私が女だからではない」


「え?」


「人と人との温もり。

それはかくも温かく、心を満たす。

お前は与えられなかっただけだ。


 お前には……魔具しかなかった」


「うん……そやな」


「ちょっと視点を変えれば、見えてくる世界がある。

感じる温かさがある。それをお前は知るべきだ」


「それって……どんなん?」


「言葉に言い表すのは難しい。

だが、古来より人はそれを愛と呼んだ」


「愛……?」


「人が人を大切に想うときに生まれる無形の宝だ。


 この行為は……〝抱く〟ことは、最も素直に、最も大きく愛を感じる行為だ。


 こうして、〝抱き〟続けていたことで、愛の片鱗を、お前は感じたのだろう」



 そして……私もな……



「今日は……よー喋るな」


「今日ではない、今日から・・だ」


「え?」



 私は……決めたぞ。



「お前に“愛”を教えてやる」



 お前を導いてやる――







――――――――――――――――――――







「――勇者ヴァーミリオンは王女エミリアを見事、龍王ジハートから救いだし、二人は仲睦まじく、末長く幸せに暮らしたのでした」



 ――なんか……ありきたりやなー。

今までこんなもん呼んだこと無かったから最初は楽しかったで?

でもそれが二ヶ月も続くとなぁ……


 あれから、ワイの生活は変わった。


 まず、アイリーンに言われたんは魔具を作る時間の制限。

これは断固として拒否したかってんけど、限られた時間で魔具を作ることの有用さと、集中力の底上げについて延々と語られて……


 なんか、乗せられた気がするなぁ。


 実際、今の作業量は前と変わらん程度になったけどな。

それ言うたときアイリーンが「バカな……」って言うてたけど一体なんやったんやろな?


 まぁ、あれや。

大切なんは魔具を作る時間が制限されて、それで空いた時間をこうした童話やとか、会話に使ってるわけや。



「さて、どうだジャック。少しは人間の機微が理解できたか?」


「いや、何か……似たような話ばっかやなって……」



 お姫様が拐われる。勇者助ける。結ばれる。


 こればっかりやん。



「ふむ……なら、次の段階にいくとするか……」


「次の段階?」


「あぁ、そうだ。さっきの話を少し発展させたものだ」



 発展……?


 アイリーンは横においた大量の本から一冊を取り出した。



「ふむ、では読むぞ。タイトルは『恋色の夕陽』だ。



 “出会いは突然だったの。

階段を登っている時、私は階段を踏み外して、落ちそうになったの。

だけど、私は持ち前の運動神経で三回転捻りで飛び上がり、着地しようとした。

二回転までは上手くいっていたのに……!!


 二回転半、私は柱にぶつかった。

なんという不覚……!!

私は跳ぶ方向を誤ってしまったの。


 落ちる……!!


 そう思ったの。

だけどそうはならなかったの。

私は諦めなかった。

三角跳びの要領で柱を蹴り、塀の上に跳び、その勢いのまま隣の家の屋根まで飛び上がったの。


 だけど、ここでまたしても事件が起こったの。

私が飛び乗ったその家は空き家で誰も住んでいなかった。

だからなのかしらね……





 ……立派な蜂の巣だったわ……。





 そこから私は逃げに逃げた。

途中でモンスターの尻尾を踏み、組織の者に肩当てし、馬車を強奪し、秘密地下連盟に乗り込み、国外逃亡をして、組織から追われたの。


 そうして、何日かして何もかもから逃げ切り、ようやく私は母国に帰ってきたわ。

階段を踏み外したあの日からまだ一週間も経っていないのに、母国の空気はとても懐かしかった。

意味もなく川辺に座り、沈んでいく夕陽を眺めていたの。

幻想的に見える夕陽に心を奪われ、それが沈みきるまで私はずっと眺めていたの。


 だからかしら、私は油断していたの。

気が付くと私の横には一人の男がいた。

反射的に身構えると、その男は可笑しそうに笑ったの。

毒気も抜かれるようなその笑顔に、私は構えをといた。

そしてこれが……私と彼との出合いだったの――」




 なんや、コレ?



























「――『長かったね……』


『えぇ、とても……』


『これでずっと二人は一緒だよ』


『誰にも邪魔されない、二人だけの世界なのね』


『……震えてるよ』


『……え?』


『怖いのかい?』


『まさか……そんなわけ……』


『大丈夫。僕がついてる』


『……そうね。もう何も怖くないわ』


『さぁ、行こうか』


『待って』


『どうしたんだい?』


『最期に……聞かせて』










『……愛してる。この世界で誰よりも』


『……私も……愛してるわ』



 二人がいなくなった後に残る夕陽は……血のように赤く、美しく燃えていた」

 


「うぅっ……くぅ……ひっく……」



 な、何ていう話や……ま、まさかこんな結末を迎えるなんて……あんまりや……あの二人が何したっていうねん……幸せになったってええやないか……それぐらいの権利はあったやないか……あんな最期……悲しすぎるやないか……



「ぐすっ……思ったよりも時間が経ってしまったな。

もう寝なければ」



 アイリーンも泣いてんのか……


 しゃーないよな……あんな話……涙なしには読まれへん……



「ジャック?」


「時間……やで、今日の分……まだ……やから……」


「あぁ、そうだな……」



 あったかい……悲しい気持ちがあったかくなっていく……人って……こんなにあったかい生き物やねんな……落ち着く……なんか……心地いい……魔具を作ってるときみたいに……幸せや……――



――賭けだった。


 この〝恋色の夕陽〟は有名な恋愛小説だ。

私の国で出版されたもので、何度読んでも泣ける素晴らしい作品だ。


 物語の最後では、愛し合う二人は夕陽を背景に川に飛び込んで自殺する。


 何故この物語を読むことが賭けだったのか。


 それは……これが〝悲劇〟の物語だからだ。


 悲しい話。不幸な話。報われない話。


 これらの話をきちんと理解し、感動するために不可欠なのは……〝人間らしい感情〟だ。

以前のジャックなら、こんなに涙を流しはしないだろう。

二人が出会い、死んだ物語。

それで終わり、そこで完結していただろう。

そこに何のドラマもなく、感動もない。

 

 今のジャックは以前と比べて随分と人間らしくなった。

やはり、私の選択は間違っていなかったのだな。


 ……いずれ、ジャックには聞かねばならない。

人の心を理解し、命の大切さを学んだジャックに対して、なおも魔具を作り続けるのか。

殺人魔具を……作り続けるのかどうか。

返答次第では、ジャックに対する態度を改めねばならない。

たがまぁ、今考えることではないな。

五ヶ月……いや七ヶ月後にしよう。

それまでは……自由に過ごそう。




 あぁ、温かい……。



 いつしか、私もこの一時間が好きになったいたようだ。

心が落ち着く。

捕まってからは一時も心休まる時間がなかったからな。

この時間は……私を癒してくれる。



 叶うなら……二人でここを抜け出して……幸せな国を……取り戻せたらな――


 




――――――――――――――――――――







――実験場生活も十ヶ月目や。

早かったなー。後二ヶ月でここともおさらばか……。


 長いようで短かったなー……


 そういや、アイリーンはどうなんねやろ?



「………ゃん」



 出来るなら一緒に暮らしたいよなー。

アイリーンとおったら、楽しいし、〝抱い〟てる時は落ち着く。

可愛いし、胸も大きいし、ちょっと怒りっぽいけど、怒るのはワイの為や。

初めてあった時はなんか色々言うてたけど……あれは忘れろってアイリーンも言うてたし忘れとけばええんやろ。



「お兄ちゃん!!!」


「うおっ!?」


「ちょっと、ウチの話聞いとった?」


「あー、いや、全然?」


「何でなん!?

妹が話してる時に無視するとかお兄ちゃんありえへんやろ!!」



 あー、早くアイリーンに会いたいなー。



「ってまた聞いてないいぃい!!」



 何かこう……アイリーンを相手にしとると……胸が高鳴るねんな。

別に苦しいわけやないし、むしろ心地ええねんけど……なんやねやろなぁ。



「もう知らんわ! ウチは部屋に戻るからな!!」



 よし、部屋に戻ろ。アイリーンが待ってるやろうしな。



「なんや、エレナが凄い勢いで走ってったけどなんかやったんか?」



 あー、せやった。そういやこれは実験場の視察やったやんか。親父の存在忘れとったわ……――



「さぁ、何やろな?」


「ま、ええわ。ところでジャック、お前に話があんねん」


「ワイに?」


「ああ、お前……





















 魔具に二つの【能力】を乗せてみい。

それが出来たら、俺らはまた一歩〝遥かなる魔具の高み〟へ近付く」






――――――――――――――――――――





「ただいまー」


「ん」




――帰ってきた……か。

さて、今日は……いや、今日こそ……話さなければ……



「なぁ、ジャック。今日は少し話が……」



 そう言った所で私は固まってしまった。振り返ったところにいたのは……



 美しい花をあらんかぎりに頭に刺しているジャックだった。

赤、青、黄、紫、橙……と目が疲れるような色合いで自らの頭を生け花の台に見立てている。

何がしたいのか分からない。



「どやっ!」


「死ね」



 しまった。

つい口が滑ってしまった。

最近よくあることなのだ。

私を笑わそうとして変な方向に走るジャック。

それ自体は喜ばしいことなのだがいかんせん面白くない。

むしろつまらない。

なので、ついうっかり口汚い言葉が出てしまうのだ。



「ひどっ!」


「すまない、つい本音が」


「もっとひどい!!?」


「いいから早く取れ。そんなふざけた頭では会話が出来ん」


「あ……はい」



 すごすごと花を頭から抜き取っていくジャックはひどく惨めだ。









「さて……ようやく取り終えたか」


「おう、で、話って何なん?」







 話。

あぁ、頼むから……私にお前を……――せないでくれ。

私はお前を―――るのだから。







「……お前は……この十ヶ月で随分と変わったよ。


 人の心を理解し、情を覚え、人間らしい感性を身に付けた。


 命の価値も……今のお前は分かっている」


「まぁ……な」


「なぁ、ジャック、おかしいと思わなかったか?

いや、思えなかっただろう。


 お前は魔具に関する知識しか教えられていないのだから。


 今のお前なら分かるだろう。

気が付けるだろう。

おかしいと思えるだろう。


 自分の置かれていた状況に」


「……」


「“異常”なのだ。

子供に絵本すら読み聞かせないことも魔具に関する知識しか与えないことも……愛情を注がないことも。


 まるで……小人族ドワーフ全体が……お前を洗脳……いや“製造”しているようだ。


 お前は、ただひたすら魔具を作る小人族ドワーフによって作られた魔具だ」


「アイリーン……一体何を……」


「分からないか?

これは“呪い”だよ。

小人族ドワーフの、〝ドンドン〟のな。

最高の魔具を作るように設定された魔具だ。


 小人族ドワーフは……呪われた種族だ。


 お前は……かつての小人族ドワーフの幻想に縛られているんだ」


「何を……ワイに……」


「なぁ、ジャック」



 何かを話そうとするジャックの言葉を遮って私は言葉を投げ掛ける。














「魔具を作るのは……楽しいか?」


「え、あぁ、うん。

それはもちろん楽し「それが人を殺す道具だとしてもか」……!!!」



 良かった……動揺するだけの感情は持ち合わせていてくれたか。

ここから畳み掛けなければ。



「帝国に対する反乱が起こっているのは知っているな。

いくつもの国、星の数ほどの民が立ち上がった。


 対する帝国は犯罪者紛いの愚物集団。

我々が負ける道理などなかった。


 しかし、結果はどうだ。

私は現在捕らえられ、ここにいる。


 帝王一人いるだけで我々は負けただろうと思う。


 しかし、仮に帝王一人が戦ったのなら、塵一つ残さず反乱軍は消えている。


 では何故我々は捕まったのか。


 部隊長が居たから?


 違う。


 我々が弱かったから?


 違う。


 敵の使用する魔具が……桁違いの性能を有していたからだ。


 通常では考えられないほどの【能力】再現率。

圧倒的なまでに差がある魔力変換率。

奇々怪々な発想の術式。


 一発で戦場を揺るがす爆弾型の魔具。

抵抗すら許さない毒の雨。

戦場を駆け巡る武器を内包した移動する魔具。


 これらの内にどれか心当たりはないか?

…………あるようだな。


 そう、我々は使用する魔具の差で負けたと言っても過言ではない。


 あの魔具で、小人族ドワーフの作った魔具が……






 戦場で、何万、何十万もの命を刈り取った」


「……ぁ……ぅあ…」


「分かるか?










 お前の作った魔具が人を殺し続けたんだ。


 お前が……人々を殺したんだ」


「そん……っ……ぃや……ワイ……は」


「そんなつもりは無かった?

そんなものは言い訳だ。

逃げているだけだ。

現実を見ろ。

世間ではあっさりと帝国についた小人族ドワーフをどう思っているか知っているか?

ある者は言うぞ、“人類の裏切り者”だと。


 そして私は何度でも言う。


 お前が作った魔具が人を殺し続けたんだ。


 お前が……私の仲間を、家族を……殺したんだ」


「違う……違う……」


「違わない。

お前は大量殺人の主犯だよ」



 ……もう十分に現実を突き付けた。

こいつは自分が何をしでかしたか理解した。


 充分だ。


 こいつはもう洗脳なんかされていない。

これから話すのは……ジャック自身の言葉だ。





























「ジャック……もう魔具を作るのを止めろ」


「………っ!!!」


「人を殺す魔具を……私はお前に作って欲しくない。


 二人で新しい生き方を見付けよう。


 新しい国を作ろう。


 帝国の支配の届かない時代を作り、皆が笑顔になれる……そんな世界に二人で行こう」



 頼む……!!頼む……!!頼む……!!!


 頷いてくれ。

一緒に行こうと言ってくれ!!






 私に……お前を憎ませないでくれ!!!!


 私はお前を――――――!!!!





















「出来……へん」



 なん……だと……?



「意味を……分かって言っているのか……?


 お前は!!!

これからも人を殺し続けるというのか!!!


 私の話を聞いて何故分からない!!?」



 声が……荒くなる。

口が乾いて気持ちが悪い。

どうしてだ……どうしてっ!?



「違う……ワイは……ワイは人殺しやない!!


 ワイはただ魔具を作っただけや!!

人殺しなんかやない!!」



 ジャックの声も荒くなる。

必死な声が何故か遠く感じる。



「その純粋な探求心がどれほど人を殺めてきたか私は話したはずだ!!


 いい魔具を作れ……

〝遥かなる魔具の高み〟に行け……

それは〝呪い〟だ!!

幻想だ!!!


 そんなものに縛られるな!!!」


「違う……違う……ワイは自分の意思で〝遥かなる魔具の高み〟へ行きたいんや!!」


「その目標の過程でどれほどの人が死ぬと思っている!!!」


















「そんなん……知るかぁ!!!!!!」


「なっ……!??」


「ワイは魔具を作りたいんや……その過程で……人が死んでも……そんなんワイは知らん。

関係……ないわ。

ワイの作った魔具で誰が死のうと……そんなん……知らんわ……。

どうでも……ええねん」



 弱々しい声になるが……その言葉は私が最も……聞きたくなかった言葉だった。



「……本気で言っているのか……?」


「……ああ」


「本気で人が死のうが関係ないと言い張るつもりか……?」


「……せやで」


「自分には関係の無い人だから……死んだって構わないと……?」


「………………………そうや」



 あぁ、なんということだ……。

これが……ジャックの本心……。


 聞きたくなかった。


 知りたくなかった。


 知らないままでいたかった。



「なぁ、ジャック……。

最後にもう一度考え直してくれ……。


 魔具を作るのを止めて……私と一緒に……」


「……出来へん……ワイは……魔具を作りたいんや……」



 終わったな……


 もう、弁解の余地はない……



「話は……終わりか?」



 ああ、そうだな。

終わりだよ、何もかも。



「終りだ。

その汚い口をさっさと閉じろ。

死ね。死んでしまえ。

“人類の裏切り者”め。

私の視界からさっさと消えろ。


 居なくなってしまえ………!!!!!」







 

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