第三十八話―自由の為に
帝国実験場には5つの巨大な塔がある。
東西南北それぞれにある管制塔。
そして中心に位置する実験塔だ。
腐臭が漂い、ゴミが散乱し、死体が積み上げられ、壊れかけのボロボロのバラックが各所に散在している帝国実験場の中において、その5つの巨大な塔だけが圧倒的な存在感を示していた。
東西南北の管制塔は結界管理魔具を置いてあるだけのただの塔だ。
外形はチェスのルークの駒のようであるが壁に接してそびえ立っているため、塔自体は半分ほど壁にめり込んでしまっているように見える。
窓は一切無く、内部にある結界制御用の魔具がどこにあるのかも分からない。
そして全く同じものが東西南北に存在している。
中心に位置する実験場最大の施設であるところの実験塔は他の4つとはまるで意匠が異なる。
他の4つが半分壁に埋もれているのに対して、実験塔はしっかりと大地に根を張り、そびえ立っている。
大樹の根のように実験塔から実験場全体に巨大なパイプがいくつも伸び、それぞれが4つの管制塔に繋がっている。
管制塔がチェスのルークのような外形であるのに対して、実験塔は蟻の巣のようである。
中心に軸となる塔がどん、と据えられて、そこから蟻の巣のように楕円状の部屋が幾つも付加されている。
そして、ディアスの持っている情報の通り、これらの塔に帝国実験場を丸々覆う巨大な結界を制御する為の魔具がある。
これらを破壊することが出来たなら、カイル達はこの実験場から脱出することが出来るだろう。
そしてカイル達がスミレを誘拐しようと画策しているまさにその時。
帝国実験場のちょうど中心に位置する実験塔でも大きな動きがあった。
場所は再びスミレの部屋。
集まっているのはジャックの妹にして次期小人族族長、赤い髪をお団子にし、金の瞳を持つ女、エレナ・ドンドン。
黒い忍装束を纏い、黒いターバンで顔中を覆い、群青色の目を覗かせる第8部隊長、ダンゾウ・ハチスカ。
十二単が如き豪華絢爛な衣装を身に纏い、美しい紫色の髪を無造作に垂らし、闇属性の魔具である黒のチョーカーを付ける少女、スミレ。
肘から先が蛇、足が山羊、不自然なオッドアイ、背中から6つの鎌、下半身が牛、顔の横にさらに二つの狼の顔……様々な改造を施されたダンゾウと似た忍装束を着た人間が数人、ダンゾウの後ろに控えている。
「エレナ・ドンドン。報告」
口火を切ったのはダンゾウ。
短く、エレナの方を見ずに言い放った。
エレナもそんなダンゾウの様子を気にもかけずに報告を行う。
「実験は……成功やな。
モンスターと人体の接合範囲を広げることによって拒否反応は大幅に抑えられた。
そんで一旦拒否反応が終わりさえすれば、魔力は安定し、自分の魔力とモンスターの魔力が合わさって、更なる強化があることが分かった。
ここにおるんは成功例の内のいくつかや。
【伸縮】を持つ蛇、サルモネラの頭を肘から先に取り付けた女。蛇が伸びて攻撃することはもちろんのことやけど、人体も伸縮可能になっとる。
【空歩】を持つ山羊、テンガクの後ろ脚を足にした男。
魔力を足場にして空を駈けるより少ない魔力で空を走れるようになった。
【幻惑】を持つ魚、メフィネルの瞳を片方の目と変えた女。
目を合わせた奴に幻覚を見せることが出来る。
この三人は比較的緩い改造に当たるねん。
余り強くないモンスターに、取り替えた部分も少ないわ。
そしてここからが本番や。
より強いモンスターとより広範囲で接合して生き残った奴等や。
【エッジスライサー】を持つ昆虫、サイズモアの鎌全てを背中に接合した男。
サイズモアはアガレアレプトには劣るけどそれなりに強いモンスターや。
魔力を込めれば込めるだけ、その刃は鋭くなり、切れるものの無い必殺の刃となる。
鎌はかなりの範囲届くようになってるから戦闘で活躍できることは間違いないわ。
【バンフ】を持つ牛、ドーガの下半身をそのまま人体に接合した男。
ドーガの【バンフ】は簡単に言えば突進や。
本人の意思とは関係なく、超スピードで突進していくねん。
直線的なスピードだけならアジハドにも劣らんわ。
かなりピーキーな【能力】やけど使いこなせれば中々のもんになるやろ。
ま、使われへんかったら当て馬にでも使えばええ。
【ハウンドボイス】を持つ狼、ゲッズウルフの顔を頭に付け足した女。
こいつの【ハウンドボイス】は音を増幅して放つっつーもんや。
音波攻撃にも使えるし、そのまま声の衝撃波で攻撃することやって出来る。
戦闘以外にもその声を使えば何か連絡にも使うことが出来るわ。
万能タイプの改造人間やな。
とりあえず、ここに連れてきた奴等についての説明はこんなもんや。
勿論他にも混ぜた奴はおるけど、詳しいことはまた後でレポートにでもして出しとくわ。
大体どれくらいの強さのモンスターが結合可能なんか……それは検討が付いたわ。
一種類のモンスターの結合に関してはもう失敗は無いと言ってもええやろ。
オカマにくっ付けたアガレアレプトみたいなモンスターと結合出来るんは、部隊長クラスの魔力持ちつつ、強靭な精神力を持つ奴に限るけどな。
アイツはやり方さえ分かっとけば何とかなったんやろうけど、どっかの誰かが情報渋りおったから失敗したわ。
次に二種類のモンスターの結合やけど、これはやっぱりしんどいみたいやわ。
経過観察は必要やけど基本全員やられとる。
モンスターの魔力の残りカスに負けて死ぬか……理性が壊れ、モンスターじみた破壊衝動に呑まれるかのどっちかや。
それからウィルやけど、二匹のモンスターと結合した結果、生き残ったが理性が飛んだ。
結合したモンスターは堅い甲羅を持ち、さらに【硬化】を使うことで知られてるガルガードルとアジハドの大剣にも使われていた【身体強化】で有名なオニマジロや。
【硬化】と【身体強化】を合わせて死ににくい人間にしようと思うてんけど、理性が飛んでもうたからなぁ……まぁ戦場に放り込んだら働くやろ。
敵味方関係なく、暴れるやろうけどな。
抑えんのホンマ大変やったで、事前の予防として封化石の手錠嵌めてたのに何人か殺られたわ。
まぁ、どうでもええけど。
ウィルを含めた理性がぶっ壊れた奴等は今現在、封化石で出来た手錠を嵌めさせてこの実験塔の地下に隔離しとるわ。
手錠以外にも色んな拘束具使って身動きとれんようにしてな。
この実験の成功によって、これからはどんな雑魚い奴でも改造前のウィルくらいの実力は出せるように改造できるわ。
実際そこの緩い改造三人も前のウィルよりは強いしな。
つまり、帝国軍はこれから大幅な戦力アップが行われることになる、とまぁ報告はこんなもんやな」
「了解」
その報告を受けても目の前のダンゾウとスミレはピクリとも顔を動かさない。
了解、という言葉でターバンが少し揺れたのが分かったくらいだ。
その人形のような無機質さにエレナはため息をつきつつ肩を竦めた。
「はぁ……なんかもっと反応せぇよ。
ウチが折角実験を成功させたったのに。
この実験場でのデカイ目標の1つが達成されてんで?
今までみたいなちゃっちい成功やなくて大成功や。
それやのにそんな顔されたら気分が下がるわ」
「成功は帝国にとって喜ばしいことだが、それをわざわざ表に出す必要は皆無。
そもそも感情を持つということ自体が―――」
「あぁー、もうはいはい。
分かった分かった。そんな話どうでもええわ。
それよかウチはこれがホンマの情報を教えたことに気味の悪さを感じてんねん」
ダンゾウの話を流し、スミレを強く睨むエレナ。
本来、この実験が成功するのはカイル達がスミレを助けに来るその日だったのだ。
だが、本来くるはずだった未来とは裏腹にこの段階において実験は成功してしまっている。
つまり、未来は変えられたのだ。
スミレが未来で視たことをエレナに伝えることによって。
「お前がウチに言うた実験に関する予知……接合範囲を広げれば成功する……確かにそのことは正しかった。
ウチからしたら『遥かなる魔具の高み』に近づけて満足やけどな……けど、何で素直にウチに教える?
ウチには何か裏があるとしか思われへん」
あからさまに疑ってかかるエレナ。
それは帝国の為にスミレを疑う、というよりは単純にスミレが帝国の味方をするところを見るのを気持ち悪がっているようだった。
「……裏なんかない。
私は自由になりたいだけ。
それ以上の目的なんか……ない」
「その願いも抽象的すぎるしなぁ。
何とでも解釈出来るんとちゃうんかい」
スミレの言葉に被せるようにしてエレナは話す。
彼女はどうあってもスミレを味方だと認めることは出来なさそうだ。
「命……私が望むのは私自身の命」
「さっきから言ってることが分かりづらいねん。
もっと具体的に話せや」
引くことをしないエレナに対してスミレは億劫そうに口を開いた。
「毒」
「あぁん?」
「私の中にある毒を……解毒してほしい」
「毒やと……?
おい、ダンゾウどういうことやねん」
「簡単な事。
スミレは反乱軍と懇意になり過ぎていた為、逃げ出すことの無いように鎖を付けることが必要。
故にこいつには我が【毒焔】の【能力】を使い、定期的に毒を吸わせてある。
直接的な効果は無いが、日常的に吸うと、中毒になり、定期的に毒を摂取せねば、死んでしまうタイプの毒。
言わば、麻薬。
本物の麻薬のように快楽を与えることは無いが、苦しみは麻薬の数段上。
そしてそれを徐々に徐々に身体に染み込ませ、もはやスミレは我の毒の中毒。
現在に至っては3日間【毒焔】を浴びなければスミレの死は確定。
毒の解毒とはスミレの身体の毒を取り除くこと」
ダンゾウはそう言いつつ右腕をスミレに向ける。
するとダンゾウの右手から紫色の炎が立ち上った。
スミレの髪のような鮮やかな紫色でなはく、もっと濃く……紫色を凝縮して固めたような色。
見るものの気分を害し、一目見ただけで毒だと分かる人体に訴えかけるような色、生物が本能的に嫌悪する色。
……毒々しい色とはまさにこれを指すのだろう、そう思わせる色をしていた。
腕全体を這うように毒の炎が動き回る。
次々とダンゾウの右腕から発生するその毒が十分な量になるのをダンゾウは確認すると、そのままスミレに向けてその炎を打った。
「なっ……」
「案ずるな、これは今日の投与の分」
何となくそうだと分かってはいたものの驚きの声を上げずにいることはエレナには出来なかった。
一息吸えば、死んでしまいそうな危険な色をしているそれが、どれほど死なない物だと説明された所で簡単に信じることなど出来ないものだ。
確実に人体に有害な炎がスミレを丸々覆い、【未来予知】の時のようにスミレの姿が見えなくなる。
もし自分があの炎を受けたらと思うとエレナは背筋が寒くなる心持ちがした。
「6時間に一回、こうして毒を与えなければ中毒症状が現れ始め、3日後に待つのは死」
ダンゾウがそう言ったがエレナはほとんど聞いていなかった。
ただスミレがダンゾウの炎を吸い込んでいるのを見ているだけ。
「納得した?」
毒の炎を全て吸い込んだスミレは何もなかったかのようにエレナに問いかけ、その様子がエレナの中のスミレに対する拒否感をさらに大きくさせた。
「なに考えてるか……全っ然分からんわボケ」
目を反らし苦虫を噛み潰したような顔になる。
そう言う声にはあまり力が籠っていなかった。
「報告はこれで終わり?」
「終了」
気持ち悪がるエレナを無視しスミレはダンゾウに問いかける。
「そう。だったら話しておくことがある」
「その内容は【未来予知】か」
「ええ」
「話すことを許可」
「………明日、元反乱軍の主力の戦闘部隊隊長ディアスと魔具職人部隊隊長ジャックが私を拐いにここにやってくる。
あなた達が今警戒している反乱者の何名かも一緒に」
「……」
そんな内容に対してもダンゾウは大した感情の変化は見せなかった。
何かを考え込んでいるようだ。
だがエレナは……
「何でこのタイミングで言うねん。
お前は最高1ヶ月先のことまで予知出来るんやないんか?
なんでそれを予知した段階で話さへんかってん。
ちゃんと理由があるんやろなぁ?」
ここぞ、とばかりにスミレの粗を探しにかかる。
どこかに綻びはないか、どこかに歪みはないか、と探るような目線と声でスミレに応対する。
先程気後れした分を取り戻すように、スミレへの拒否感、忌避感を取り払おうとしているようにも見えた。
「言ったらあなたは……実験に集中しなくなる。
それは不味いから言わなかった。
それだけ」
「何でそんなことが分かんねん。
それに積極的に予知の内容を教えるんやなかったんか?あぁ?」
「予知したから。
あなたが集中しなくなる未来を。
話さなかったのは実験が遅れることによる帝国の損害を考えただけ。
出来るだけ帝国にとって有利に働くタイミングを予知したら……このタイミングで言うのが一番だと分かった」
「予知予知って……そんなお前だけが分かることを信用できるわけないやろっ!!」
「落ち着け、エレナ・ドンドン」
「お前もこいつを信じるんかダンゾウ!!
いずれ絶対後悔するで!!!
こんな……こんな〝道具〟ごときの言うこと鵜呑みにしてたらいつか絶対痛い目に――」
「落ち着け」
殺気。
強烈に放たれたそれはエレナのみならず、控えていた六人の実験体の背筋をも震えさせた。
第8部隊長ダンゾウ・ハチスカ
肩書きに呑まれない実力者であることは疑いようもなかった。
「っ……!」
「……」
「初めから全てを否定していては交渉というものは不成立。
それが真実か真実でないのか……見極め、判断を下すのは我。
確かに現段階ではスミレは完全に信用するには些か不足。
だが、このタイミングで嘘の情報を流した所でスミレに益が無いのは事実。
明日、奴等が攻めてくるのは真実であると推測。
その上で、此方の戦力を分散させ、内部から我らを瓦解させる可能性も存在。
管制塔、この実験塔の結界管理魔具を破壊し、この実験場から脱出する魂胆があるとも、予想可能。
故に我はスミレの言う通りに行動しない。
明日……奴等がこちらに来ることだけは確実。
ならば、我はそれ以上の情報は望まない。
気付かぬ内に誘導されることは不都合。
よってスミレ、それ以上の情報を話すことを禁ずる」
「分かった」
ダンゾウは視線をスミレから反らし、殺気を放つのを止めた。
強烈なプレッシャーに晒されていたエレナは何も言えず、呆然としている。
「後で我の部屋に来い、エレナ・ドンドン。
作戦についての話がある」
エレナの耳元でそう呟くと、ダンゾウはさっさと部屋から出ていってしまった。
――――――――――――――――――――
「お前は明日、スミレの部屋で待機」
―――ウチは今、ダンゾウに言われた通りダンゾウの部屋に来とる。
そんでもって開口一番にこれや。
ほんま、こいつといいあの〝道具〟といい説明するっちゅうことを知らんのか。
人形みたいな顔で淡々と喋り続けんのは気味悪いわ。
そのくせ説明不足とか……やってられへんわ。
ジャックが書いたメモを実践するためにわざわざ、里から出向いてきたっちゅうのに……
「先にお前の計画の概要を説明せぇや。
ちゃんと詳しく、細かくな」
詳しく、細かくを強調する。
こんだけ言えば大丈夫やろ。
機械人間でもちゃんと理解したやろな。
「今回の作戦でスミレの本意を精査」
やから、ちゃんと説明せぇよボケ。
先に結論言われても分からんねん。
「敵がここに来るなら、狙いは2つ。
結界管理魔具の破壊か、スミレか。
奴等の事。
スミレの所にも誰かは来訪。
だが、我は敢えてそれを邪魔立てしない。
故に部屋に誰かやって来ることは確実。
そこでお前はスミレが帝国側に付いたことを強調して話せ。
そしてその時のスミレの反応を観察。
どこか、無表情が崩れていないか。
裏切る気配はないか、一挙手一投足全てを観察して、違和感がないか、探れ」
つまり、アレか……〝道具〟の心を揺さぶったりしてあいつの真意を探れってことか。
ほんまに帝国側についたんか、それとも元反乱軍に与するんか……ってことやな。
「一応、管制塔にも警備は配置。
先程の六人を適当に身繕い、配属。
奴等がどれほど使えるか、確認出来たら上々。
それから、スミレの部屋にやって来た奴等についてはウィルを使用」
「おいおい、話聞いてたんか?
ウィルは理性が飛んで使い物にならんって言うたやろ」
言っとくけどほんまに抑えんの大変やってんからな。
封化石嵌めてあれとか………正直な話パワーアップしすぎやわ。
「理性が飛んで思考がモンスターに寄る。
それがお前の報告。その思考過程を述べよ」
「結合した部分が異常に大きい奴やとそのモンスターの真似をするようになってん。
例えばさっきのゲッズウルフの成功例を見せたよな?
あいつに使った余りを使って配合してみた。
ま、世にも珍しい人面犬の誕生っつー訳や。
そいつは完全に人間を捨てとった。
まるで本物のゲッズウルフのように四足歩行をし、歯を剥き出しにして威嚇する。
仲間を呼ぶための遠吠えも観察された。
んで似たような話がいくつもあんねん。
やから理性が飛んだ奴はモンスターに近付く、と判断したわ」
「モンスターがより強いものを優先して狙う、という結果は無かったか」
「あー、そう言えばあったなぁ……ウィルん時も……」
あー、そうか、そういうことか。
モンスターの習性っちゅーか本能。
生き残るために強者を始末する。
自分の命を脅かすものを優先的に狙おうとする本能……それを利用すんねんな。
部屋にやって来る奴の中には相応の実力者が紛れ込んでるハズ。
やったらウィルの拘束を解けば真っ先にウィルはそいつに狙いを絞る……
ウィルの性能の確認と敵の撃退の両方を行うって訳やな。
「暴れ終わったなら我が【毒焔】でウィルを抑圧。
ウィルを解き放つタイミングはお前に一任。
そして実験塔の結界管理魔具は我が責任をもって警護」
つまり、奴等の目的だけを押さえるって訳か。
道中の奴等は完全に無視して奴等の目的地で罠に嵌め、一網打尽にする……
〝軍師〟の奴ほど綿密な策やないにしても中々考えられとるやんけ。
「そして、奴等の内の何人か……もしくは全員、スミレの部屋に来た場合、殺さずに逃がせ」
「……は?」
どういうつもりや? 逃がせ?
「逃がしておけばまた必ず奴等は蜂起する。
外から侵入してきた有翼族らが持ってきた食糧にも必ず限界は存在。
故に攻めてくるのは近日中。
そして、今度はスミレをわざと拐わせる。
その際、奴の服にこっそりと我が部隊長の証を付着。
我の部隊長の証は偵察用の魔具も兼ねているため、高性能の位置確認能力を有す。
そして、スミレが奴等の潜伏場所に連れ込まれた時を見計らって……」
「姿を眩ませた元反乱軍、それに新しい反乱者もろとも一網打尽にする……」
一回目の戦いで〝道具〟の真意を見抜き、二回目で一網打尽に……なるほど……二段構えっちゅう訳か……
「以上。異論は」
「無い、ダンゾウの指示に従う」
奴がほんまに帝国側についたんか……見極めたる。
いつもみたいに無表情決め込んで何も喋らんかったら直ぐに反乱の意思ありと見なして、部隊長になんかさせへんからな。
一生〝道具〟のままや。
『遥かなる魔具の高み』へ行くために……使いまくったる。
ウチがウチこそが小人族最高の魔具職人にして、ドンドンの遺志を継ぐものやと……証明したるからな………!!―――
「それともう一つ―――」
――――――――――――――――――――
場所は再びスミレの部屋。
既にこの部屋にはスミレ一人しかいない。
誰も居なくなったからか、彼女の目には毅然とした強い意志が見てとれる。
「いよいよ……明日」
何かを決意するようにそう呟く。
天窓から無機質な空を見上げ、首の黒のチョーカーに手を当てる。
憂うような表情を一瞬浮かべたが、直ぐに無表情に戻り、自分の意志を再確認するように呟いた。
「私の……自由の為に」




