第百五十一話-ノゾムセカイ
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「リュウセーー」
「『終焉は絶望為らず、終焉に悲懐を抱けど、絶望を抱くべからず』」
シュウの問いかけを遮り、滔々とリュウセイは言葉を紡ぐ。それは、かつて師の愛した人が、この世に遺した言葉。
かつて自分が死を受け入れられなかった時、導とした忠告。
「『終焉なる者は虚空の存在と成り果て、積重の思いは届くこと能わず』」
死は絶望ではない。悲しんでくれても構わないが絶望を抱いてはならない。
死者は手の届かない存在であり、積み重ねた想いは届くことはない。
「『残影は幻、残月を望むべからず。
日輪の産まれを望み、彼方への歩みを進めよ』」
思い描く死者は幻だ。死者を追い求め、執着して足を止めてはいけない。次の夜明けを願い、前へ、未来へ進め。
死者に固執するな。囚われるな。前へ進めと、それが死者の願いだと。その願いはーー正しいと信じている。
だからリュウセイは兄に向けて刀を向ける。
「ーー父さんも、母さんも、フィー姉も死んだ。もういないんだ。兄貴だけが、それをまだ受け入れられねぇでいる」
「ーー僕の愛する弟のリュウセイ。それは違うよ。僕は三人の死をキチンと受け入れている。その上で、生き返らせることができることも知っているんだ」
「違う。死は永遠の別れだ。『また会える』なんて甘っちょろい気持ちがある時点で、受け入れてなんていねぇんだよ」
くるりとリュウセイは向き直り、反乱軍たちへと語りかける。
「俺はこれからこのクソ兄貴を改心させるつもりだ。父さんも母さんもフィー姉もジジイだって、生き返らせさせない。コイツに現実を受け入れさせて、世界崩壊だけを止めさせようと思うが……不満があるヤツは言ってくれ。クソ兄貴の語る未来の方が良いと思うのは自由だからな」
無愛想で口は悪いが、義理堅く、なんだかんだと情の深い男。口には出さないものの、彼だって死者たちに逢いたいハズなのだ。
だが、それはしないと言う。逢えないのが現実なのだと言う。
死者がいない未来を、どうしようもない現実を歩もうと、リュウセイは語りかける。
「ーーそれなら、賛成ね。ここまで来たのだもの。自分たちで未来は選びたいわ」
「おう。スミレは分かってくれると思ってたぜ」
口角を上げ、リュウセイは最初の同士を歓迎する。
そして、残った面々に目を向け、無言で問いかける。お前はどうするんだ、と。
「ワタシたちはいつだって、未来を掴み取るために戦ってきた。過去を取り戻したかったワケじゃないわぁ」
「そうね。私もそうよ。エルちゃんやジャックちゃんとくんずほぐれずのキャッキャウフフな未来を見たくて、ここまで来たの」
「そんな未来は目指していないのですよ!?」
「……おれ、は……リュウセイ、に、つく…………」
「無理すんなよなディアス。喉に穴空いてんだぜ。おれっちはじょーおー様に従うぜ」
「なら、従いなさいパック。私たちは未来のために戦うわ!」
長らくスミレと共にいた反乱軍の面々は、未来を求めて声を上げた。理想的な過去より、掴み取った未来を。カルミアを掲げた反乱軍は、求め続けた希望を捨てることをよしとしなかった。
「っ、ワイは正直、シュウの世界に心惹かれた。いや、今も心の底ではその世界を願ってる。やけど、それは違う! 耳障りのええ言葉に従うだけの、与えられるだけの豚になんかなってたまるか! アイリーンから学んだ"誇り"は……! シュウ……自分の言う世界を許さへん!!」
「誇り……か。アイリーンが生き返るなら、その世界でも悪くないと考えていたが……アイリーンが見初めた男が"誇り"を叫んだのなら。親である私が……それを捨てるワケにはいくまい」
心が揺れている者も、迷いながら過去ではなく未来を選ぶ。
「……わたしは今が幸せです。何度だって言います。わたしは今が幸せなんです。だからわたしは、この先の未来が欲しいです。だけど……」
ユナはちらりと、拳を握りしめてその未来を受け入れようとしないカイルを見る。シュウがいない未来を、マリアのいない未来を、たった二人の犠牲を許せない心優しき男を見る。
「シュウさん、マリアさん……どうしても、あなたたちは神の座に囚われなければいけないんですか? 他に世界を救う方法は無いんですか? もしくは、神の座に居てもわたしたちとまた会えるような……」
「残念ながら、それ以外の方法は無いんだ。僕たちが神の座につかなければ、世界は救えない。そして、神の座にいながら世界に干渉する方法は無い。こればっかりは、仕方が無いんだと受け入れてもらう他ないね」
どんな未来を求めても、どんな過去を求めても、その世界からシュウとマリアは喪われる。どんづまりの袋小路で未来を選ぶ者たちを前にシュウは薄ら笑みを浮かべた。
「そして、僕が意見を変えることも無い。僕は家族のために世界を戻し、幸福な世界を作り上げる」
片翼が欠けた天使はそう、宣言した。
「……」
その絶対的な決別を受け、各々は武器を構える。届かない言葉を届かせるために。正しいと信じた、苦難を積み重ねた現実を掴むために。
そんな一触即発の空気の中ーー、
「……ダチが、いるんだ」
神影が一歩、前に出た。
白衣の両ポケットに手を突っ込み、胸を張って、真っ直ぐにシュウを見つめながら。その姿勢は紛れもなくーー
「神代縁って言うんだけどよ。昔っからぽやっとしてる奴で。何が楽しいんだか、ほたほたと俺の後ろを付いてきて、いっつもニコニコしてる奴なんだ」
神影という男の戦闘態勢だ。周囲の怪訝な目なんて気にしない。闘いを前にした張り詰めた空気も読まない。
なぜなら今この瞬間は、虚勢を張り、声を張りーー
「だけど、そいつは俺が中学の時に学校の屋上から飛び降りて、植物状態になった」
意地を張る男の、正念場なのだから。
「飛び降り自殺なんて信じられなくて、誰かがアイツを殺したんだと思って躍起になった。結果への後悔と、ちゃんとアイツを見ていなかった自責で死にたくなった。……目覚める可能性がゼロじゃなかったら、実際そうしたかもしれねぇ。
だけど、違ったんだ。自殺なんかじゃあ無かった。縁はただ、神サマって奴と縁があっただけだった」
「なにを言っているんだい、神影。今更キミの世界の思い出話をしたところで、何も変わりはーー」
「縁が目覚めなかったのは……魂がこの世界に呼ばれたからだ」
神影の幼なじみである神代縁。神の影として、御使の役割を果たしてきた神影の一族とは起源を異にする一族。神代とはまさに、神の依代。
神と成り得る存在ーー!
「縁は、マリアの幾万もの嘆きに、唯一人応えた人間だった。最後の最後の十年ぽっちだが、マリアの嘆きを側で聞いていた」
「儂の声に応えた人間じゃとーー!?」
「そうさ! 居たんだよ! お前が『認識しなかった』だけで、お前の横には十年近く、縁が居たんだ! 俺がこの世界にやってきたのは神が居なくなって不安定な世界に"使わされた"からなんかじゃあねぇ!」
神影という男がこの異世界にいる理由。
世界終焉の間際で叫ぶ理由。
未だ目覚めない幼なじみについて語る理由。
それは……
「縁に頼まれたからだ! 寂しがりで一人んぼな神様を救ってほしいってな! だから俺は目指すぜ! 誰も泣かなくて済む、皆笑って幸せな未来をな!」
マリアが世界に降り立ち、神のいなくなった世界で、縁という少女だけが神の座に残った。神の代行を果たそうとしても、機能が足りない。そもそも管理の方法も分からない。
だけれど、ずっと横で見てきた嘆きは知っている。
世界に人よ来たれと。異世界人よ、この世界を見てくれという、哀しい神様の慟哭を知っている。その使い方だけは理解できる。
だから、己を呼んだその権能を使って、彼女は願った。
最も頼りになる、最も己に縁のある、神影という男の存在を。
そうして神影はこの世界に呼ばれた。それが、神影がこの世界に現れた理由。
そして、神影を呼び出すことができた。つまり、神の権能が残っていることが。
とても、大きな意味を秘めている。
カイル! と神影は声を上げ、指を指す。未だ二人の喪失に心を痛める男を。
ハッピーエンドに至る唯一の可能性を持つ男を。
「【超再生】で、神の座に微かに残った権能から、『神そのもの』を再生させろ! お前にならできる! 神の権能から生まれたお前なら! 神すら己だと定義して【再生】できる!」
だから! と神影は笑う。掴み取った"結"末は犠牲ありきの哀しいものじゃないんだぜ、と誇るように。
「これからだ! カイル! 最後の最後、この分からず屋な神サマ二人を無理矢理救ってやろうじゃねーか!」
「ふざけるな!! それは! 僕の愛する弟のカイルが神になるだけだ!! しかも僕とマリアが神に至るのとは違う! カイルに永遠の孤独を強いるつもりか! 神影!!」
「そうさ、お前らが神になるのとは違う。だって、世界にお前たちが残るからな! 神そのもののマリア、その天使であるお前! この二人が世界に残るんだ! 神の座に行ったカイルをこちらの世界に呼び戻すことだってできる! そしてシュウ! 家族大好きなファミコン野郎のお前は必ずソレをするよなぁ!」
「ーーッ!! 理想論だ!!」
「可能性はゼロじゃねぇ!!」
感情を剥き出しにして叫ぶ神影とシュウ。
だが、冷静沈着であるシュウが動揺するということは……。
「世界を救うために、二人を犠牲にしなくてもいいってことだ……!」
カイルは歓喜で拳を握りしめる。萎えかけていた戦意に火が灯る。犠牲の無い未来への可能性は、【再生】の白炎よりもはるかに強く、カイルの体に力を漲らせた。
朱色の翼を広げ、拳を打ち鳴らす。
もう二度と、誰一人として失わないために。
「ーー何十年かかるか分からない。ともすれば、僕の愛する弟のカイルは永遠に神の座に囚われる。それは本末転倒だと思うのだけれど? 君たちは正しくそのことを理解しているのかな?」
「かもしれねぇーーでも、そうじゃないかもしれない。言っただろうが。可能性はゼロじゃねぇ。……なぁ、お前ら。それじゃあ、足りねぇか?」
天使とエセ科学者の問いかけ。文字通り世界の命運を決める選択。
シュウとマリアを神に据え、帝王が出現しない世界をやり直すか。
カイルを神に据え、帝王亡き傷だらけの世界を生きるか。
シュウとマリアに永遠の孤独を強いるか。
カイルがこの世界に帰れるという可能性に懸けるか。
投げ掛けられた運命の賽。
天使か。
不死鳥か。
壊れかけた世界の民が出したのはーー
「ーーああ、僕の愛する弟のカイル。僕は本当に……キミを誇りに思うよ」
唯の一人の例外も無く、不死鳥だった。
この場の全員が一人残らず。
信頼を瞳に、決意を胸に滾らせて。
天使に武器を向けた。
「幾度となく、奇跡を起こして見せた眩い日輪。キミが勝ち得たその憧憬は、まさしく世界を救った英雄に向けられるものだ。それが、僕は堪らなく嬉しい。
僕は今、僕の愛する弟の凄さを世界と共有できた幸福で満たされている」
誰よりも先頭に立ち、傷つき、立ち上がり続けた不屈の男。
常闇の街に太陽をもたらし、不和に塗れた街の導となり、世界を破壊する魔王を打倒した男。
どんな僅かな可能性だろうと、不可能だろうと可能にしてきた不死身の化身。
ーーカイルになら、世界を託せる。
世界の救済を迷いなく託された弟を前にシュウは感涙する。家族へ……カイルへ向ける絶対的な感情の共有。世界と気持ちを等しくしたという幸福が全身を走り、眦から涙が落ちていく。
「ーーだからこそ、そのカイルを世界から奪うわけにはいかない」
シュウも魔具を展開する。鋼の義翼、鈍色の銃、中距離狙撃ユニット八基。世界から家族を奪おうとする者らへ、敵対を示す。
「カイル。よく聞け。まず、神の座へは、今見えてる白色の空に突っ込めばいけるんだが…….」
「よし! 分かった空だな行ってくる!」
「だが! っつってんだろちょっと待てコラァ!」
翼を広げ、遮二無二飛び出す世界一信頼の厚い男。同時に世界一の無鉄砲さを発揮したカイルは空へはばたき、
「神影の話を聞くべきだよ、僕の愛する弟のカイル。今のキミじゃあまだ、足りない」
「ふぐっ!?」
撃墜。白色の天使に堕とされる。
「僕の愛するカイル。キミはまさしく無限の魔力を手に入れたが、それではダメなんだ。一度に使える魔力の絶対量が、神を再生するにはまだ足りない」
「でも、関係ねぇ! 【超再生】で魔力の上限を上げ続けたら、いつかは届く!!」
「それは正しい。だけど、その手段での魔力の底上げでは時間が足りない。だからーー」
カイルたちを空から見下ろす片翼の天使は、ユナを指差す。
「えっ!? わ、わたしですか!?」
「真祖ヴィルヘルムの色濃く継いだキミの【吸血】でかつての災害『悪魔』と悪辣の叛逆者『ハクシャク』の魔力をカイルに分け与えることができれば、神を再生する魔力に足るだろう」
吸い尽くした相手の魔力に自分の魔力を累乗させるという完全吸血という禁忌。その禁忌を大陸中の人々へ向けた怪物二人の魔力。その魔力の総量はもはや天文学的な途方もない数値に膨れ上がっている。
そしてその魔力は全て、ユナの持つダーインスレイヴに蓄えられている!
「ハッ! 解せねぇな! なんでそんなこと、わざわざ教える!?」
「どうせ神影が教えるだろうからね。誰が教えるかの違いだよ。それにキミたちは、大きな勘違いをしている」
「勘違い……? だ、ぁーーッ!?!?」
瞬間、空気が炸裂する。シュウを起点に全方位に空気の壁が襲い掛かる。それに抗うことができたのはーーリュウセイ、カイル、ユナ、スミレ。常軌を逸した変異たちのみ。それ以外の者たちは迫る圧力に対抗できず、数メートルほど吹き飛ばされ、他に伏せる。
顔の前で腕を交差し、咄嗟に踏ん張ることが出来たカイルが腕の隙間から見た光景は……
「そう、勘違いさ。僕の愛する弟のリュウセイ」
三対五枚の純白、異彩を放つ唯一の鈍色、計六枚の翼を持つ、守護天使という高次存在の姿をとった兄。
シュウが守護天使への【形態変化】を完了した際、元々膨大だった彼の魔力がさらに跳ね上がった。今、カイルたちを襲った風は、跳ね上がった魔力で空気が押し退けられて発生した、副次的な現象に過ぎない。
シュウが本気の姿を取るだけで、変異以外の弱者が振るいにかけられた。
「別に僕はね。帝王相手にだって負けることはなかった。【破壊】の闇があるから、勝てはしないけれど、負けもない」
その威容は、かつてこの大陸でただ一人魔王と呼ばれた存在と同じ。絶対強者の放つ圧ーー
「ビッグバン・シリウス!」
ーーにも怯まず、カイルが飛び出す。帝王を沈めた渾身の一撃を兄へと放つ。
星を生み出す超新星爆発、二重の閃光が炸裂し、荒野を熱風が駆け抜ける。
「ーーつまり、帝王が居なくなった今、この大陸に僕を止められる存在は居なくなった、ということだ」
後に残ったのは白色の風に守られた無傷の天使とその主。カイルの有り余る魔力に飽かせた一撃がそよ風が如く受け流される。帝王の問答無用の【破壊】による防御とは異なる……本人の技量とカイルすら凌駕する魔力量による圧倒的力量差による防御。
「それが、キミたちの勘違いだ。実力行使で僕を止められると、思ってしまったことがね」
世界の理を守護する天使。カイルが万の魔力を無限に使い回せるとするなら、シュウという男は億の魔力を自在に使い熟す。
生物としての格差。存在としての次元の違う強さ。
シュウは紛れもなく、ベクトルこそ違えど帝王に比肩する絶対強者なのだーー!
「しゃがめバカイル! 纏流星・星克!」
「っぅおっ!?」
「速いね。だけど、僕には届かない」
「ハッ! だとしても! 挑まねぇ理由にならねぇ! それに勝たなくても、カイルを神の座に送り届けるまで兄貴をここに足止めすりゃあ俺らの勝ちだ!」
「そうかもしれないね。だけど、それも間に合わない」
「プロミネンーーだはっ!?」
リュウセイ・カイルを一回転した義翼により弾き飛ばし、拳を背後に向けて水平に振り抜く。
ビシリ、と。空間に罅が入り、ガラスの如く砕け散る。剥がされた空間の跡には、遙か上空と同じ白色の空ーー神の座へと繋がる道!
「神の座への道ーー! 自由に作ることができるというの!?」
「これだけ世界が綻びていれば、という制限付きではあるけれどね。さぁ、マリア」
「……こんな別れで、よいのか。シュウよ」
「大丈夫だよ、マリア。これで、僕の愛する家族を全て救うことができる。それだけで十分だ」
「待て……待てよ、シュウ兄!!」
兄が、マリアが行ってしまう。手の届かないところに。二度と会うことも、思い出すことすらできない次元に。
父も母も、姉さえも帰ってくる幸福な世界が訪れる。
それはとても甘美な響きで、身を委ねてしまいそうになるけれど。
この戦いの果てにノゾムセカイでは無いーー!!
「さようなら。僕の愛する家族」
手を伸ばす。兄が笑っている。その姿に……かつて届かなかった姉の姿が重なって。
シュウは世界に背を向けた。
「シュウ兄ぃいいいい!!!!!」
「あはッ! どうにカ--間に合っタみたいだね!!!!」
瞬間、轟く閃光。戦場に響いたその声と共に。
シュウの翼の内の四枚が消失した。
「なっ、くっ……!!?」
困惑するシュウに瞬く間に近づいた小柄な少年は身の丈に合わぬ剣先が折れた長刀を構え、呟く。
「ゼノ」
振り抜かれた神速の居合。辛うじて間に合った防御ごと、その少年はシュウとマリアを神の座の前から引き剥がす。
「お前--!?」
「やァ、カイル。まさカ帝王サマを倒すなんテネ。キミにはビックリしたヨ。ボクともいずレ、戦っテ欲しいナ」
「ハッ! なるほど。そうか。テメェは--!」
「ウン。そうだヨ。早速だけド、借りを返しに来タ」
ギョロリ、と額の眼が天使を睨め付ける。
逃がさない、と。釘を刺すように。
その少年は、失われたはずの右腕で刀を握り、憤怒の形相を浮かべる天使に笑いかけた。
「やァ、元神様とソノ守護天使。……随分と、自分勝手なコトをしていルみたいダネ」
「悪魔王トイフェル……! 何故キミがここで現れる!」
「そりゃア、悪魔だモン。神様には反抗するサ……なーんテネ。言ったでショ? 借りを返しに来タ。
初めてできた、友達にね」
少年--トイはどこか照れながら。
たった一人の神の天敵として、生まれて初めて他人のために戦うことを宣言した。