エージェントルーム
着くなり出迎えてくれた伊達さんは完全防音になっている個室に私たちを招いた。
伊達さんはポケットから"魔導師適性チェッカー"を取り出した。
映像や写真からでも、魔力を測れるキカイだ。
それを使って、彼は魔導学校のホームページに載っていた写真からレンの数値を調べてみたらしい。
魔力が、からに上がっていた、みたい…
たった一晩の特訓でそんなに数値が上がるわけがないのだ。
あの特訓も、多少は影響しただろうが、それにしても、この上がりかたは異常だ。
この特訓の前までアメリカにいたから、向こうで何かやっていたとしか考えられない。
私は、外のパソコンで少し調べることにした。
ミツが、ずっと伊達さんと話したそうにしてたしね。
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伊達さんと二人になったオレは、ハナの幼少時代のいじめについて聞いてみた。
だが、返ってきた答えは…
「オレは何も知らない。それに本人が言いたくないって言っているならそっとしておくべきじゃないか?」
「……」
今の物言いで分かる。
オレも、バカじゃない。
伊達さん、ハナと何かあったな。
「…そんなに、彼女が好きか?」
「…伊達さんこそ、ハナのことちゃんとわかってるんですか?
彼女にとって、そぉやって真実を知らせてあげないのが、一番可哀想なことなんですよ。
それが出来ないのは、彼女の全てを受け止めてやれる自信がないからなんじゃないですか?」
…言っちゃったよ。
つい…
伊達さん、固まっちゃってるし。
でも、こぉいうの楽しいなぁ。
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…オレは昔、ハナのことが真面目に好きだった。
ハナのこと、全て知ってるつもりだったけど…幼なじみには勝てない。
ミツは…ちゃんとハナのことをわかってる。
ただ、オレは知ってる。
ハナ本人は知らないであろう事実。
今話すべきか迷ったが、話すことにする。
ミツなら、きちんとハナに伝えるべきときに伝えられるだろう、って、さっきの台詞で確信したから。
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オレは、ハナの祖母のことを聞いた。
ハナの祖母の名前は、蒲田華美。
ハナとは、何度も顔を合わせているらしい。
本人が覚えているかどうかは定かではないが…
彼女が物心つく頃に亡くなった。
だから、彼女自身が華美さんのことを「おばあちゃん」と呼んだことがないのだ。
…なんか悲しいよな。
オレも、そうだ。
オレが物心ついたときから、記憶にあるのは母の顔だけ。
兄さんが小学生の頃に亡くなった父さん。
裁判記録でしか顔を見たことはない。
…このことは、まだ彼女には言わないでおく。
いつか、ゼッタイ言う。
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…しまった。
レンのことを調べるつもりが、いつの間にかミツの名前打ってたし。
ん?
"御剣 怜侍に逮捕歴"
って、ええ?
た、た、逮捕?
ミツのお兄さんが?
ミツのお兄さんは検事だ。
職場である検事局にある手紙が届いた。
"15年前の事件を忘れたわけではなかろう。私は真実を知っている。
知りたければ、この場所に来い。"って内容。
何か、脅迫状みたい…
何だろ。
15年前の事件って。
調べてみよっ!!
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15年前の事件。
"TL6号事件"と呼ばれているもので、不慮の事故により停止したエレベーター内で、休憩中の弁護士が射殺された。
その人が、ミツのお父さん。
しかも、ミツのお兄さんの目の前で起きた事件。
なんだって。
その脅迫状に指定してある場所に行ったら、ある男の人がいて、いきなり銃声がして…
その男の人は海に身を投げた。
だから、その場に残ったミツのお兄さんが逮捕された…らしい。
本人は事実をよく覚えてなくて、証拠不十分で不起訴になった。
この話、ミツは多分知らない。
言った方がいいかな?
まぁ、いいや!
いつか言おう!!