語り、そして回想
ねぇ。私たち…幼なじみなんかじゃないよ。
出会ったときから。
あなたは私の中で特別だった。
幼なじみとしてなんて、見たことは…ない。
…好き。
だけど、この想いを伝えてしまったら、このままの関係ではいられなくなる。
だから…
お願い。
もう少しだけ…このままでいさせて?
【'10 6.4 START】
【'11 7.30fin】
オレの名前は御剣 優作。
皆からは「優」と呼ばれていることが多いが,「ミツ」と呼ぶ奴もいる。
今は無邪気にプールで娘と遊んでいるオレの幼なじみ…ではなく、愛する人、蒲田華恵。
皆からは「ハナ」と呼ばれている。
スタイルも良く,可愛い。
そしてもう一人,オレを「ミツ」と呼ぶ,幼なじみ,宝月蓮太郎。
カガク捜査官になりたいと言って,小4のときから5年間,アメリカでカガク捜査を学んでいた。そこでカガク捜査の術を身に付け,オレらが高校の入学式を迎える春休み,日本に帰国した…いわゆる"帰国子女"。
だから、英語はお手の物。
旅行のチェックインのときも、流暢な英語を話していた。
オレらは今、グアムのホテルにいる。
温水プールで遊んでいるハナやレンのお姉さんやら妻やら、宝月一家。
無邪気に遊んでいる彼女たちを見ていると、自然と笑みが溢れる。
もう、25だぜ?
レンの2番目のお姉さんなんか、三十路だし。
そんな人たちが、子供みたいにはしゃいでいる姿が、愛らしかった。
「ミツさ…
いくら可愛いからって、
見とれんなよ?
オレの大事な奥さんに。」
「分かってる。
それはこっちの台詞だ。
オレはもとより、ハナしか見てない。」
グアムの雄大な自然を目の前にして、こんな会話しか出来ないオレとレン。
いくらある特殊能力を持っているオレらもまだまだ、子供なのかな。
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レンと2人で呑気にプールサイドにて休憩しているオレはというと、 会話が途切れてから、オレとハナが再会した日からのことを、回想していた。
「なぁ、レン。
オレ、ハナのあの笑顔、あのまま一生見られないのかと思ったよ。」
「オレも。
懐かしいよな。
あれ…小6のときだっけ?」
「…だな。」
オレら3人は幼稚園の年長ぐらいの仲だ。
その頃から、オレはハナのことが好きだった。
小学校のとき,ハナに気を持ってほしくて、レンと二人でちょっかいを出したこともあった。( 周りの人にはいじめだと思われたかもしれないが…)しかし、皮肉なことにそれが原因でハナは心を閉ざしてしまい、違う学校へと転校してしまった。それから、レンも夢を追いかけてアメリカへと旅立ってしまい、オレらはバラバラになってしまった。
けれどもレンがアメリカから一時帰国してきた3年前のあの日、思いがけない"出来事"が、オレらを待っていた。
その時,オレはレンがアメリカから一時帰国すると聞いて、空港まで迎えに行った。久しぶりに見たアイツは、最後に見たときより少しカッコ良くなっていた。オレらはその足で、オレらの母校、魔導学校に向かう。オレらの恩師、アコール先生は、目を丸くしてこっちを見ていたが、やがていつもと変わらない笑顔で微笑みかけた。
「あら、蓮太郎くん。元気だった?」
「ハイ。無事FBIカガク 捜査官の人が通う学校の過程も終了したので後は試験です!落ちたら1年間、留年ですけど。
レンが過程終了書を見せながら答える。
「そう。こっちにはいつまでいるの?」
「一応5日間くらい滞在するつもりです。」
テンポ良く会話が交わされていく。ちょうど良かったわ。あなたに"彼女"のことを話しておかないとだから。
先生の目が、まっすぐオレ達を見つめて言った。