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超々短編

宛名のない恋文

作者: ぴよ
掲載日:2026/03/23

超短編でサラッとお読みいただけます。


「お待たせしました」


高価な物ではないけれど、陶芸作家に揃いで作ってもらった珈琲カップとソーサーをことりと置く。

丁寧に入れた珈琲が香った。


「そちらは本日のお茶請けです。よろしければ召し上がってください。」


砕いたダークチョコを練り込んで焼いたクッキーが一枚、ソーサーからはみ出て載っている。


趣味でやっているような小さな喫茶店。

オープンした頃から、ガチガチのメニューはあまり作ってこなかった。

気に入った珈琲ブレンドを数種類と、紅茶が数種類。お茶請けになりそうなものを日替わりで2、3種類。本当にそれだけ。軽食を出したこともあったけど、今は一旦休止中。

出来る範囲の席数、メニュー、レシピ、仕入れ、仕込みで。

そうやって守ってきた私の小さな城。



どのくらい経ったのか、夕刻以降ひとりしか居なかったお客さんが帰った。

「もうじき店じまいね」ひとりごちてお手洗いの掃除に入った。

手洗いのボウル傍に見慣れないノートの置き忘れを見つけて手に取った。

表にも裏にも持ち主が分かるような情報はない。


ノートの取り扱いを迷いつつ閉店作業をし、明日の仕込みも終えて、店の2階にある自宅に戻った。


持ち主不明のノートをテーブルに置き、自分のために珈琲を淹れて座った。

1日の仕事で得た疲労感を感じつつ、ノートにそっと手をかけた。




時間を忘れて読み耽り、最後の一文を読み終え。

両手で頬を挟んだ。


あつい。鏡なんて見なくても、真っ赤になっていることが分かるくらいに、あつい。


それは丁寧に紡がれた恋愛小説だった。

主人公は男性。そして想い人は...私、のような、小さな喫茶店の店主をする女性。

主人公は仕事で引越しをせねばならず葛藤し、結局は想いに蓋をして去っていく。

それは丁寧で淡々とした、静かな恋の物語だった。


ノートに名前はない。あったとしても、ほとんどのお客さんの名前は知らない。


私は静かな感謝を込めて、昂る胸にノートをそっと抱きしめた。




お題を決めて、短時間集中して完結まで書き上げる練習中です。

今回のお題は「忘れ物」でした。


誰だか分からない異性がはっきりとは示されないものの恐らく自分をモデルに恋愛小説を…。

これは現実だったらどうなのでしょうね…?

こわっとなるのか、ロマンティックだわーってなるのか…。

書き上がった後でもよく分かりません。笑


お読みいただき、ありがとうございました。

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