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9.王家の面々

 その部屋にいるのは、パレードで目にしたことのある王族の面々…コンラッド国王陛下、フランシスカ王妃殿下、ジャーヴィス公爵ジャスパー殿下、ハーヴィー王子殿下、ロザンナ王女殿下…それにレノックス。

 ヴォーンが見間違えるはずがない。わずか数時間前に別れたばかりだ。

 現在、トワイニング王国には王子が2人、王女が1人いる。年齢順に第一王子ハーヴィー殿下、王女ロザンナ殿下、そして第二王子ルーファス殿下である。

 レノックスがいる場所は、並び的には第二王子ルーファス殿下がいるべき場所である。

 実を言えば、ヴォーンはルーファス王子の顔を知らない。他の王族と違い、ルーファス王子は病弱だと言うことでパレードに一切顔を見せない。貴族などを招いて宮殿で行われる式典には参加しているのかもしれないが、平民のヴォーンが知る由もない。

 ヴォーンがレノックスのことを知らなければ、レノックスがルーファス王子だと納得しただろう。しかし、レノックスのバディであるヴォーンには、レノックスがルーファス王子であるとは思えなかった。まずもって王族が護衛もつけずにわざわざ死地に足を運ぶ理由が分からない。事実、ヴォーンとレノックスは何度も死にかけているのだ。

 その点を考慮すると、レノックスがルーファス王子であるとは考えにくい。

(どうしてレノックスがここに?)

 その一つの疑問だけがヴォーンの頭の中を彷徨っていた。


 そんなヴォーンの疑問をよそに、まず王弟・ジャーヴィス公爵ジャスパーが口を開いた。

「たびたびの確認になるが、其方がヴォーン・マーベルということで正しいのかな?」

「はっ、はい、私がヴォーン・マーベルでございます、ジャーヴィス公爵殿下」

 ヴォーンはレノックスに向けていた視線をジャーヴィス公爵に移して答えた。

 なるべく平静を装って答えたが、ヴォーンの心の中は2つの感情に支配されていた。疑問と、緊張である。なにしろヴォーンにその気はなくても相手が不敬と捉えればヴォーンを死罪にさえできる方々である。言葉尻一つ一つに神経を払う。緊張するなと言う方が無理がある。

 そんなヴォーンの感情を知ってか知らないでかジャーヴィス公爵はヴォーンをじっと見つめている。

 ジャーヴィス公爵ジャスパー。現国王の実弟であり、現国王の即位とともにジャーヴィス公爵に叙され、以降国王の側近として常に兄王(コンラッド)を補佐してきた。数年前から宰相の座に就いている。

 続いてジャーヴィス公爵は視線を向かい側に移して、確認をとる。

「ルーファス、この者がヴォーン・マーベルで間違いないな?」

「ええ、間違いありません、叔父上」

 この短い会話からヴォーンは察した。ジャーヴィス公爵を叔父に持つ人物は3人しかいない。さらにジャーヴィス公爵はルーファスと呼んでいた。つまり、レノックス・セントクレアとルーファス王子は同一人物だと。

 王子ほどの身分の者が一兵卒として戦場に行った理由は分からないが、一応ヴォーンの疑問は一つ、解消された。


 二つの質問に対する回答を聞いたジャーヴィス公爵は、上座に向き直って一礼してから口を開いた。たとえ兄弟であり、どんなに優秀であっても公式の場では君主と臣下の関係であろうとする、その謙虚さが国王のこの弟(ジャーヴィス公爵)に対する高い評価に繋がっているのだろう。

「陛下、この者がヴォーン・マーベルであることは確かでしょう」

「うむ、分かった」

 上座に悠然と腰掛けた男性が答えた。

 ヴォーンは自然に頭を下げて上目使いにその男性を見る。

 国王コンラッド。

 トワイニング王国の現国王、若くして即位して在位期間は40年近く、今まで幾つもの画期的な政策を実施してきた。また、庶民との距離が近い国王でもあり、国民からも非常に敬愛されている。

 そんな国王がゆっくりと口を開いた。

「ヴォーン・マーベル、単刀直入に聞こう。余は其方が“魔法”なる物を使えると聞いたが、真か?」

(陛下に対して嘘はつきたくない。だが、素直に使えると言えばどうなるか分かったものではない。陛下の人柄が噂通り温厚なら、酷い扱いは受けないと思うが、確証はない。いや、陛下はレノックスからの情報で俺が魔法を使えることを知ったはずだから、いまさら隠す必要もないか…)

「陛下直々のご質問であるぞ。早く答えぬか」

 ヴォーンがどう答えるべきか迷っていると、左前から怒声が飛んできた。

 怒声を発したのは第一王子ハーヴィー殿下。

 父王(コンラッド)のような革新的な発想や叔父(ジャーヴィス公爵)のような思慮深さはないが、相手の能力を見抜くのが得意で平民の登用にも積極的だ。彼に見出され、官僚や騎士になった平民も多い。少々短気な点が玉に瑕だが、自他ともに認める次期国王である。

「ハーヴィー、待て」

 そんなハーヴィー王子の怒りを抑えたのは、他ならぬ国王であった。ハーヴィー王子が一礼したのを確認し、国王は再び口を開いた。

「ヴォーン・マーベル、即答できぬということは、余に何か隠しているな?」

 ヴォーンはビクッと震わせ、国王を見つめた。国王は続ける。

「余は其方と交渉がしたいのだ。そのためにはその“魔法”なる物を見ておく必要がある。今ここで見せてくれんか?」

 そう言った国王の淡く青色に光る目は、穏やかさというベールの下に獲物を見つけた猛禽類のような鋭さがあった。

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