第4話 天地正しく天地の差
輝石教会を訪れ、そこで出会った金髪の聖女(笑)に出会いなんやかんやで仲間になった。
そして今度はデザイアル予選の開催地を知るべく様々な所へ出ている。
神願の試練「デザイアル」。大いなる輝石「シャルト」を手に入れるための土台。
ミリアがあちこち回り込んだ時の情報によると、闇市に情報屋がいるらしい。
烈はボロボロのジャケットを羽織り、埃を払った。
「ミリア、闇市ってどんなとこ?」
ミリアがニヤリと笑う。
「怪しい奴らがウジャウジャいる!輝石、武器、情報、何でも売ってるよ。けど、油断したら即死だからね!殺すか殺されるかの場所だよ!」
ミリアの発言に、セレナは戦慄していた。
「たしかに、デザイアルの情報は必要だよね……。何も起きないと良いけど。ほんと」
烈は鼻で笑った。
「平等な社会を目指すなら、怪しい場所でも突っ込むしかねえだろ。」
闇市はなんと貧民街へあった。貧民街への入口は沢山ある。中では、関所に傭兵がいないところがある。
そこを狙い進んでいく。
烈達は関所に向かう途中、世間話に花を咲かせた。
「ねぇーレツ〜、貧民街に戻るんならレツの家に寄りたいよ〜。」
以前烈は、貧民街のはずれのはずれに烈の家があると言った。それを覚えていたとは……
しかしどう答えようか、烈は自分の素性を明かす気は更々ない。困惑を生むだけだからな。
「ダメだ。」
烈はキッパリ断った。ミリアは頬を膨らませる。
そこでセレナが提案する。
「なら、どういう所なんだ?という質問ならどうだ?」
貧民街はどれも同じではないのか……返答を創造するのに時間がかかる。
ならば、カウンター。
「そうだな、まぁ俺にとっては酷いとこだったよ。平等を目指す理由がわかるぐらいにね、だがお前達はどうなんだ?俺とミリアとは違って輝かしい生活送ってたんじゃないのか?」
ルナが答える。
「私はあまり、楽しいところではなかったな。同期の女もみんなが男のように活気立って、訓練に励んでいたよ。」
セレナも答える
「あんまり、教会のこと思い出したくないけど……、そうだね、積み重ねが大変だったね。努力とタイミングの世界かなー?」
意外とみんな、ちゃんとした人生を送っている。辛い過去だけが人生じゃないんだな、と思い知った。
ここでミリアが突拍子のないことを言った。
「みんな、友達とかいなかったの?」
ミリアの禁忌。しかしそれは単なる興味のよう。
ルナは、腕を組み、目を瞑って考えていた。
「そうだな、多少なりとも交流はあったよ。」
セレナが揶揄する。
「へぇ〜じゃあ男がいるということは彼氏もいたのかな〜???」
ルナは目を見開き、動揺した。
いつも男のようなルナしかし、その姿は女の子らしく
「は、はぁー!?」
ミリアがルナの前に出てくる。
「えぇー!!まじー!?、聞きたーーい!!」
ミリアが目を爛々とさせている。
ルナは目がおどろおどろしくなり
「????」
困惑を浮かべる。
烈は呆れてフォローに入る。
「言いたいことははっきり言うべきだぞー、」
ルナがこっちを見る。
そして
「そういうのはまだいない……。」
と、目を合わせずに言う。
きっとその顔は赤々となっている。
セレナが悪戯っぽく笑い
「そっかぁー!じゃあさ、レツさんとかどうだ?」
ミリアが驚く。
烈は口が空く。
ルナは炎のように顔が真っ赤に染まり
「いや、レツは共に平等を目指す……仲間と、というか」
あ、と感動詞をルナが言って付け足す
「別に!レツのことを悪く言うつもりは無い…!レツには良い所が、が、ある……!」
ルナの動揺した姿を見た烈。そういう所もあるんだなーと、彼女の新たな片鱗を見た。
「からかいすぎも良くねーぞ、落ち着けお前ら」
ミリアも同様に笑う。
なんやかんやでみんな楽しいそうだ。
一息ついた時
「おもしろかったー、てか、もう着きそうじゃない?」
そういうと
関所に着いた……と言えるだろうか、関所らしい建物もなく、通るとその瞬間の雰囲気の荒みを感じた、間違いなく貧民街だ。
「ここが貧民街?、まるで人がいない廃屋みたいに家がボロボロなんだけど」
セレナは貧民街に訪れるのが初めてだった。
さすがにこの違いは言葉が無くなる。
しばらく歩くと、貧民街の陰気臭さが、更に増しているところがある。闇市だ。
闇市は、蒸気管が絡まる薄暗い市場だった。怪しげな露店、歪な輝石の光、私兵たちの笑い声。ミリアが鼻を鳴らす。
「うわ、めっちゃ怪しい匂い! 情報屋は奥の酒場にいるらしいよ。リズ・シャドウフェルってやつが情報を売ってるって!」
ふと、烈が言葉を零す。
「ほんと、なんでも知ってんな」
自分のためにここまで、いや平等のためにここまでやってくれている。
そう言われた瞬間ミリアは驚いたが、すぐ顔が緩み、
「当たり前だよなぁ〜!、貧民の掟その2!不利にならないように予め情報を得る!」
そう、ドヤ顔で言った。
四人は人混みを抜け、酒場へドン!して、入った瞬間鋭い気配。紫の、鋭い目つきの少女が現れる。
彼女がリズ・シャドウフェルだ。黒紫色のウルフカットの髪型が、彼女の気味悪さを物語ってる。アメリカ・ボーイ風の短剣を手に、冷たく微笑む。
「ねえ、君たち、情報屋になにか用だね〜?、ここら辺の人じゃないかな〜」
烈が一歩進む。
「あぁそうだよ、俺はレツ・スズキ!、デザイアルの情報をもらいにきた。」
リズはクスクスと笑う。
烈は困惑する。
「ここがどこだかわかってるかな〜?」
「いい?、何事も信頼が命だよ〜。信頼してない人に情報を渡すのは無理かな〜。最もお金があれば別だけど」
烈はどうしたものかと頭をかいてる。
そうしたらリズが突然
「情報屋ってどうやって情報を仕入れてるか知ってるかな〜?」
その問いに烈は答える。
「様々なとこに介入して情報を得てるんだろ。」
リズは目を閉じて緩急付けて大きく歩く。
「んっんー、惜しいんだよ〜。半分正解かな〜。」
リズは短剣を烈の胸の前に出す。
「私は情報屋の前に暗殺者、殺し屋をしているんだよ〜。」
「私の腕は色んなところで買われているかな〜。じゃないと情報入らないんだよ〜。」
身体を包むオーラが殺気か、はたまた貧民街特有のか、分からない。
「基本的になんでも知ってる。君たちの名前も、ただレツ・スズキ。君だけは知らなかった。」
リズは既に短剣を抜いており、臨戦態勢になっている。話の聞ける状態の相手じゃないようだ。
「君、何者?」
リズは素早かった。それはまるで炎上を起こした時の拡散のように。そして、烈たちの体を触る。
「私が知らない情報は、とっくに知れてるんだけどね〜。」
リズの短剣が閃き、烈たちの影が動く。闇輝石魔法だ。烈たちは自らの影に縛られ、動けない。これがリズの能力……。
リズが近づき、烈の顔を覗く。
「ふーん、弱そうな男の子だね~。でも、なんか面白そうな変な匂いがするかな~?」
烈は歯を食いしばった。
「変な匂い?」
と言った。セレナが烈に向かって
「比喩だと思うよ……」
と、突っ込む。
「俺たちはシャルトでこの腐った世界を変えるんだ!」
リズが目を細める。
「シャルト? ははーん、なるほどだよ〜。デザイアルに参加してシャルトを手に入れたいのかな〜。 ふふ、甘い夢だよ~。そんな理想この世界で通用しないかな~。」
甘い理想と侮られ
烈は叫ぶ。
「ただ平等な社会を目指すなら、誰もが自由に生きられる世界が必要だろ! お前もそんな世界、嫌いじゃねえだろ?」
リズがより鋭く烈を睨み利かせる。
「…ふーん、口だけは上手いね~。君がこの世界を平等にするほどの力を持ってるのかな〜?」
そしてリズの拳がより固く握られる。
「そんなことを軽く成し遂げられるほどこの世界は甘くないんだよ〜。」
その時、突然私兵が来た。リズが舌打ち。
「ちっ、邪魔者が来たかな〜。」
リズは暗殺業を営む。故に恨みを買いやすい。
恨みを持つものがリズを追いかけるのは日常茶飯事だ。
「私は居場所を転々としているんだよ〜!だけど今回はさすがに長居しすぎたかな〜!」
リズが素早く、私兵を5,6人倒す。その時烈達を縛る影は解放され自由になる。リズはあまりの人数に苦戦を強いられている。
烈が提案する。
「よし、組もうぜ! リズ!
ミリア、ルナ、セレナ、準備!」
突拍子のない烈の提案にリズは呆気にとられていた。
傭兵の1人が大剣を振り上げる。ルナの火輝石魔法が炸裂、炎が傭兵を弾く。
ミリアの風の刃が援護し、セレナの結界が攻撃を防ぐ。
リズの闇輝石魔法が影から傭兵を刺す。
烈が叫び、「平等の天秤」を発動。
カァーン
「今だ、みんな! ぶっ飛ばせ!」
傭兵の力が弱まり、ルナの炎が決める。
しかし数が多い。力が一緒でも数で決められてしまう。ルナが押される、セレナが護衛でいっぱいいっぱいだミリアも不意打ちが出来ないため正面で戦う。
でも押されてしまう。
こうなればまた逃げるしかないのか……
いや違うだろ。
烈は過去の記憶がその行動を無くした。
「うぉー!」
烈は私兵達の頭上へ出る、「平等の天秤」の発動のせいで体力が多少失われている。しかしだからなんだというのだ。
自分ばかり引いてたら
「平等じゃねぇーだろ!!」
1人の私兵を押し倒す。そして、乱雑に強引に私兵を殴りまくる。反撃も食らう、痛すぎる。傷を負う、鋭い痛み。負けない!
ミリアとリズが烈が注意を引いてる間に着々と敵を薙ぎ倒す。
ルナが炎ためる。初めて見る技だ。
「レツが、自分の身を犠牲にして頑張っている。私も貢献しなければ!」
メラメラと湧き上がった火炎は、収束し、粘度の高い炎剣となる。
その隙に攻撃をされないようにミリアが先陣を切りルナを援護する。
「うぉーだぁぁー!」
風と共にミリアは私兵を殴る。
そして溜まりきったそのルナの剣に宿る炎は私兵達を包み、焼き払った。
その後の戦いは瞬く間に終わる。リズが短剣を収め、微笑む。
「君たちすごく強い人だよ〜。まるで私とおなじ強さみたいかな〜。」
核心を突かれた。
「鋭いな、さすが情報屋。目がいいな。」
烈はリズに「平等の天秤」について説明した。
リズはとりあえず烈達を信用したようだ。そして、烈に興味がとてつもなく湧いたようだった。
そして烈はリズと話し合う。
「君は、シャルトを使って叶えたい願いは平等だよね〜」
烈は頷いた。
「異端だね〜。」
「でも力が弱い気もするかな〜」
だが烈には平等の天秤がある。
「平等の天秤、面白い能力だけど自分には使えないでしょ?ならさ、もし自分以外の味方が居ない時の対策とかしてるかな〜?」
烈はそこまで気を使ってなかった。
今までは仲間がいる前提。だがデザイアルでどうなるかは分からない。
「1つヒントを出してあげるよ〜、さっきの戦闘の借りね〜」
烈はこくりと頷く。
「応用だよ〜。自分でも勝てるように工夫をするかな〜。平等の天秤を使い、相手を弱体化させた時できることだよ〜。それはまともな戦いだよ〜。さっきの戦いより、君は基礎的な体力を持ち合わせていないことがわかったかな〜」
真っ当なこと。
その言葉を烈は深く刻む。このままではいけないからだ。
そして酒場を離れ、人気の少ない場所へと移った。
薄暗く、情報の受け渡しに最適だ。
「んじゃ、早速情報を吐いてもらうか」
烈は本題に入る。聞くことは、デザイアル予選の会場だ。
「あのね〜、そんな犯罪者みたいな聞き方しないで欲しいんだよ〜…。あくまで取り引きなんだからね〜」
烈はワクワクしている。
しかしリズは
「お金あるかな〜?。」
料金の要求、しかしそんなもの誰も持ってる訳もなく。
「さっきの借りはもう返したよ。だからチャラ。今はもう恩人でもなく、ただの提供者と客。まぁ、持ってないよねー。じゃあ」
リズの視線が冷たく光る。
烈は冷汗をかく。
「私もデザイアルへ連れてって。」
笑顔でそう言ってきた。
その笑顔は殺気も何もなく。裏も無さそうに見える。
何を企んでいるのか分からない。しかし
「おう、いいぜ。」
軽やかに答えた。
「人数は多い方が有利だ。でもいいのか?願いは平等という願いだが。」
リズは笑顔で
「別にいいよー願いが欲しいんじゃなくて、過程が欲しいんだよ。」
烈は不思議に思う。
「過程?」
リズは上をむく
「そう過程。これから私たちは努力してシャルトを手に入れる。その過程を私は楽しみたいの。別にシャルト自体は欲しくは無いよ。」
「ただ君たちがデザイアルの絶望に立ち向かうところをね。」
烈はますます分からない女だな、と思った。だが、手の内を知ったことで信頼感は増した。少しだけではあるが、このパーティーの団結力は高まったようだ。
リズが新たに仲間に入ったことで
条件を満たし、情報を言ってくれた。
「そうだね〜、予選はルミナリスの主要都市、セントラル・ルミナにあるかな〜。言うても、町外れにあるみたいだね〜。」
そこは蒸気管が絡まっており、セントラル・ルミナが放つ、神々しい輝石の光。そして闘技場の周りには光とは対比の極みである。国と輝石教会が共同で支援している。
「でも最近は、予選が始まるから、より厳重なセキュリティが施されてるみたいかな〜。」
闘技場周辺は綺麗に「掃除」されているだとか。神々の政に逆らうと人間はどうなるか分からない。
「へぇ〜。そんなのに俺らが行くのか」
烈が言葉を落とす。
「何を気ーおとしてんだよ、大丈夫だって。そんなんじゃ平等なんて夢のまた夢だぞ?」
セレナが励ます。
「……お前そんな優しかったっけ。」
いつもと違う態度に烈は困惑を浮かべる。
「いつもこんなんだろ。逆にお前はそんなに臆病だったか?そんなんじゃなんにも勝てねーよ。」
なんともごもっともな意見だ。予選を勝ち抜くには、それ相応の覚悟と、チームワークすなわち「絆」が無ければ勝てない。
平等を目指すためにやってんだろーが。鈴木烈。
喝を入れる。
しかし、ふと
「こんなパーティーで俺らは勝てるのか……」
烈はみんなの動向を探る。
して、ミリアが突っかかる。
「んなぁー!失礼だなぁ!私はいい相棒でしょ!」
「どんな時でもレツの味方!親密度も底が見えないほどに深すぎる!これを相棒と言わなくなんと呼ぼうか!」
ミリアは腰に手を当て、鼻を高くし誇らしげに言う。
ミリアはすっかり烈に馴染んでいる。
「レツ、1人ではこの先やっていけないぞ?お前の平等の天秤も戦闘役がいなければ意味は無い。それとな、私も考えを改めたいんだ。」
「平等という信念の強さも、この予選を勝ち抜ければきっと答えは出てくる。」
ルナは覚悟を決めているようだ。完全にこのパーティーを信じきっている。
セレナが激しく突っ込む。
「私をここまで連れてきたんだからちゃんと見返りないと許さーーん!。手ぶら無しで、というか平等にしなかったら、私殺されるよ!!」
セレナは息を吸う。
「絶対勝たせてよ」
将来への希望を胸に、
「気持ちがマイナスなら面白くないかな〜。どうせなら命がけに楽しく、行くんだよ〜。」
新たな仲間と共に、
「それじゃ行くか、セントラル・ルミナ!餞別の闘技場へ!」
「おー!」
烈の叫びに呼応する。
シャルトへの道は、まだ始まったばかりだ。さっさと終わらせて平等にしたい。




