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第2話 名も無き理想

ルミナリスの貧民街、薄暗い廃屋の中。レツ・スズキはボロボロのジャケットを脱ぎ、傷だらけの腕を眺めた。初日から怪我をした。貴族の私兵に叩きのめされた痛みが体に残る。


「くそ…まだ痛むんだけど」


隣でミリアが心配し、傷んでるところに包帯を巻き直したりしている。そしてミリアは笑って


「レツ、貴族に突っ込む前に筋トレしたら?流石に弱すぎると思うけど!」


烈はミリアを睨んだ。


「うるせえー。俺は頭で勝負するタイプだ。力なきものも、平等に接しろー!」


と、冗談交じりにそう話す。

ミリアは肩をすくめた。


「まぁ、熱いのは認めるよ。でさ、少し私の家に寄っていってくれるかな?」


烈は廃屋の窓から外を見た。煤けた建物、遠くの時計塔。ルミナリスの不平等な現実が胸を締めつける。転生前の日本での怒り—母の過労、友人の顔—が蘇る。


「あぁ。いいぜ、そのついでに少し情報を収集だ。」


烈は呟き、拳を握った。


朝、烈とミリアは貧民街の市場へ向かった。神願の試練「デザイアル」の情報を集めるためだ。ゼノの言葉、大いなる輝石「シャルト」、平等な社会への鍵が烈の頭を離れない。市場は人で溢れ、露店の叫びの音が響く。ミリアが露店のリンゴをスっと盗む。


「おい、盗むなよ!」


烈が咎めると、ミリアは舌を出した。


「貧民の掟その一、生きるためには手段を選ばない! ほら、半分こ」


リンゴを齧りながら、烈は苦笑した。


「あのなぁ、そういうのは法律でそして憲法でー」


「やめろぉ!難しい話は聞きとうなぁい!」


ミリアの軽快さが、張り詰めた気分を和らげる。その時、市場の広場で叫び声が上がった。


「払えねえなら働け! 貧民のガキが!」


貴族風の男が、少年を革鞭で叩いていた。少年は地面に倒れ、怯えた目で貴族を見上げる。


「またかよ…!」


烈の血が沸いた。烈が動こうとした時、ミリアが腕を掴む。


烈は心配した。ミリアが未だに過去に囚われているのかを。


「レツ、まって! またやり返されるだけだよ!」


しかし、考えすぎだったようだ。

ミリアは過去を踏み台にした。成長した。


「放せ! こんなクソくらえな世界、黙って見てられるか!」


烈は猛々しく走り出し、

少年の前に立ちはだかった。


「てめえ、ガキを叩く趣味でもあんのか? クズ貴族が!」


貴族が驚いたように烈の顔を見る。


「金がねぇなら働けだと?ならその環境はどこにあんだよ。働ける環境もろくに作れないのに、金が作れるかよ!」


貴族が嘲笑した。


「働ける環境だって?何言ってんだ。作ってるじゃねぇか、ただてめぇらが職を掴めてない()()だ。」


烈は強く拳を握り、怒りを顕にした。


「掴ませる気の無いくせに、綺麗事抜かしてんじゃねぇよ。」


そういうと貴族はため息を吐く。


「ふん、貧民の分際で汚い口を吐くとは。衛兵、始末しろ!」


貴族の私兵で革鎧の男たちが剣を抜く。烈は構えたが、体は昨日の傷で重い。

烈はため息を吐く。


「貴族は全員こうなのか?まともな貴族はいないのか。」


そこへ、甲冑の音が響いた。赤髪のポニーテール、赤い瞳の少女が剣を手に現れる。軽鎧に身を包んだ、凛とした美少女だ。


「貴様ら!、矛を収めよ。聖輝石騎士団見習い、ルナ・ヴァルティア、参る!」


ルナの剣が閃き、私兵の一人を弾き飛ばす。烈は目を丸くした。


「騎士団? 助け舟か? 助かるぜ…!」


烈はそう解釈した

だが、ルナは烈を睨んだ。


「騒ぎを起こす愚か者は、秩序を乱す!」


どうやら彼女はここにいる者たちを悪としているようだった。

烈は驚く、しかし、鼻で笑った。


「秩序? こんな不平等な現場に一時の平等を求めるのか?、永久な平等を作れよ。」


そんな煽りを言うと

ルナが剣を構える。


「黙れ! 貴様らのような者がルミナリスを乱すのだ!」


貴族が笑い声を上げた。


「貴様、見習いの分際で俺に逆らうか? 上に報告すれば、お前の貴族の名誉は終わりだぞ。」


どうやら貴族とルナは面識があるようだった。

ルナの顔が強張る。貴族は命じる。


「ルナ及び私兵たちよ、ここにいるヤツらを始末しろ!」


ルナは驚いていた。


私兵のリーダーの大柄な男が巨大な剣を振り上げる。ルナの剣に炎が宿る。恐らく火の輝石魔法だ。


ルナの剣が烈に襲いかかる。


「レツ!危ない!」


ミリアが吹き飛ばし烈を助け出す。

その後烈は立ち上がる。


「ミリアここからは俺が一人で戦う。」


そんなことをいった。


「そんな無茶な…」


烈は歩き出しながら言う。

その背中はなにか惹かれるものがあった。


「真の平等を体現させてみせる。」


そう言い残し、私兵たちに立ち向かう。


貴族が退屈そうにあくびする。


「おい見習い、さっさとガキ共を殺せといっただろう。」


しかしその横暴な案にルナは部分否定した。


「いえ、まずは捕縛を」


貴族はルナを突き飛ばす。

ルナは地面に叩きつけられる。その時ルナは話していたため、一瞬呼吸ができなくなった。


「聞いてなかったのか?俺はそいつらを殺せといったんだぞ?」


貴族はため息を出す。そして呆れたようにルナを見下したあと、私兵を呼んだ。

嫌な予感がした。


「貴様ら、こいつ用済み。あいつらと一緒に殺せ。」


貴族がそういった瞬間、私兵は承諾しルナに剣を振り下ろした。


その振り下ろされた理不尽に対抗するが如く、剣を抜き出し私兵の剣に重ねたた。

触れた衝撃に誘発されるように、ルナの輝石が光り、炎の斬撃が私兵を吹き飛ばす。


烈は私兵と戦っていて何があったかわからない。


「なんだ!?」


ルナが私兵を次々に倒す。烈には理解できなかった。仲間割れだろうか。

だが、私兵の数は多い。見習いということもあってルナは次第に追い詰められる。


ルナは劣勢だ。


烈は考える。彼女を守りつつこの不平等な場を平和に収める方法を…。

烈は集中する。ルナの輝石が私兵を切るときに光ったり、ゼノが光らせた明るすぎる輝石。

そこからインスピレーションが湧いた。平等。この場を一瞬だけ。


「平等の天秤」


頭の中に浮かんだモノが発動する。体が熱くなり、視界がクリアになる。私兵リーダーの剣が鈍り、ルナの炎が一層輝く。そして烈は息切れした。呼吸が苦しくなり、汗が止まらない。


「何だ、この力は…!」


ルナが驚く中、少ない酸素量で、烈が叫んだ。


「俺も知らん!とにかく今だ! ぶっ飛ばせ!」


ルナの剣が唸り、炎が私兵を飲み込んだ。


「ぐああ!」


ルナと私兵達との差は歴然のはず……だった。何故か倒すことが出来る。圧倒的な差が無くなっているのだ。


まさしく、力の「平等」


ルナは次々と敵を切り裂いていく。

レツも苦しんでいたが我慢できずに割り込む。

ミリアはレツの援護をしながら戦う。


さっきの劣勢が嘘のように覆った。


ルナがリーダーと戦う。それは凄まじく、応用力の戦い。その差異が結果を確立する。


レツが私兵をコテンパンになぐる。しかし、何故かレツの力は上がっておらず、反撃をされてレツは怪我をするがミリアの援護のおかげで、怪我は最低限に収まった。


そして遂に、リーダーに一瞬の隙が生まれた。その刹那をルナは逃すことなく通した。


リーダーは倒れ、他の私兵が怯む。貴族は顔を歪め、撤退した。


「覚えておけ、ガキども!」


烈は地面に膝をつき、息を切らした。


「…キッツゥー、なんだこれ平等の天秤?意外とキツイぞこれ…」


ルナが剣を収め、烈を睨んだ。


「貴様、何者だ? その力…ただの貧民ではないな。」


烈は立ち上がり、苦笑した。


「ただの不平等を生きる貧民だよ。名前はレツ・スズキ。けど、この世界の不平等は我慢ならねえ。そんな人間だ。」


ルナは目を細めた。


「ルミナリスは秩序で成り立っている。貴様のような乱暴者がそれを壊すのだ。秩序は人を生かす。それを壊すこと自体が人を殺す。」


二人の緊張が高まる。


烈が反論をしようとした瞬間

ミリアが割って入る。


「はいはい、喧嘩はそこまで! ルナ、確かにレツはバカだけど悪い奴じゃないよ。それとあんたももうお尋ね者みたいなものだからさ、仲間になっちゃいなよ!」


ルナは眉間を寄せ、


「仲間? ふざけるな! 私は騎士団の…」


だが、ルナの言葉は途切れた。貴族が貧民をいじめる様を見て、彼女の心に疑問が芽生えていた。


私が求めていた騎士団の姿はこれなのか?そもそも私の「理想」ってなんなのだ?

烈は言った。


「騎士団が正義なら、なんでガキが虐められてんだ?それがここの秩序(ルール)か?それ自体は人間を殺さないとでも言うのか。」


ルナは黙り込んだ。少年が駆け寄り、烈に頭を下げた。


「ありがとう、お兄ちゃん…!」


突然の感謝に烈は照れくさそうに頭をかいた。


ミリアはそれを微笑ましく見る。

ルナは烈の言葉に反論ができずにいた。


「ルナ、何も俺はお前を責めているわけじゃない。お前は正しいんだ。ただな、根底から壊れてんだよ。」


ルナは振り返る。上層部がこの事態が普通に起こっているのに、何もしないこと。複雑な気持ちになり、何も考えられなくなる。


「君達の名前を教えてくれ」


「レツ・スズキだ」


「私はミリア・クロウ!ミリアって呼んで」


ルナは微笑む。そして


「レツ、君はこの世界は腐ってると思うかい?」


烈は身体の埃を払いながら


「当たり前だ。俺は平等を目指す人間だ。」


と言う。そうするとルナはギュッと自分の手を固く握る。


「例えそれが最悪な結果を招いたとしても?中身のない秩序となっても?」


それは何かを訴えるかのような質問だった。


「その例えは成立しない。平等な社会は絶対にそれが起きないからな、少なくとも俺はそう信じてる。」


ルナは確信する。この行動力、圧倒的自信。この人が思う理想は本当に叶えられてしまうと。この人に着いていけば、私は自分が求めていた「理想」が見つかるかも、と


「レツ、君と一緒に平等を目指したい。自分がこれまでやってきたことが無駄じゃないと信じてみたい。」


「私が望んできた平和を、未来を、今度は現実にしたい。」


烈は安心したように腰に手を当てた。ミリアはやったー!と心を躍らせている。


「仲間が増えた!レツやったね!」


ミリアるんるんと跳ねている。烈は安心するとよろめく、ルナに担がれながら夜にもなりそうなので宿を探すことに。


途中、ルナが烈に話しかけた。


「私は人を守るために戦うことを決めたんだ。だか、見たのは守れない現実だった。それが悔しい。」


淡々と身の上話をするルナを烈は真剣に聞いている。


「今の私には平等がどうなのかはわからない。だがもし、レツの平等が間違いに進むなら、それを是正するのが私の務めだ。」


烈はそれを聞き、笑みがこぼれる。次第に口に出して笑ってしまう。ルナは驚いた様子だった。


「まぁ、俺の平等が間違うなんてあるわけないだろうが、……もしそうなったら頼んだよ。ルナ。」


その様子を見たミリアも嬉しそうにニコッとする。




夜、貧民街の宿でルナの奢りで休息。烈はルナに感謝する。


1つの電球から小さな部屋を包むように光っている。その空間でミリアが露店から盗んだパンを分け合う。


烈はミリアに説教をぶちかました。ルナは同席し、鞄からなにやら小さい箱を出した。




なんと中からケーキが生まれた。ルナは目を輝かせ、頬張る。


「至福…! この甘さ、最高だ…!」


烈とミリアが目を丸くする。ルナは顔を真っ赤にした。


「…見るな! これは、ただの補給だ!」


烈は笑った。


「意外と可愛いとこあんな、俺にも分けてくれないか?」


糖質は得るべきだと思っただけなのにルナにとってはからかわれただけに思えた。


ルナの顔はプルプルと震え

ついには剣を握り、ミリアが慌てて止める。


「やめなよ、ルナ! 」


烈は笑った。


そして考える。シャルト、デザイアル、代償。貴族の横暴、ルナの葛藤。この世界を変える戦いは始まったばかりだ。ルナが呟く。


「レツ、どうやって平等を目指す気でいるんだ?」


烈は思い出す。ルナにまだデザイアルのことを話していなかった。


烈はルナに話す、デザイアルという存在。平等を実現するためには大いなる輝石(シャルト)が必要なんだと。そしてその代償。


そこを目指すために情報を集めているということ。その話を終えた時、ルナは考え始める。


「1000人の中から優勝者を選ぶ。道のりは長いな。」


これを達成するためにこれからは様々な苦難があると思うが、烈は不思議と乗り越えられそうな気がしていた。


「そういや、俺の母が作るケーキは美味しかったな。ずっと作るとこ見てたから覚えてるかも。今度一緒につくるか?すっげぇ美味いぜ」


ルナの食べてる姿を見て、レツは母を思い出し独りでに語る。ルナは


「本当か?……すごく美味しい…ぜひ作らせてくれ!」


ルナの全身から嬉々としたオーラが纏っている。


ミリアが笑う。


「いいねそれ!私も作りたい! 」


仲間ができた。この旅は退屈は絶対にしなさそうだ。ふとミリアが言う。


「レツ、いいチームになるよ!」


烈は微笑して、ベッドを見る。


いつぶりだろう、時間に縛られることなく睡眠を得ることができるのは。


と言っても、もう少しこの世界について知る必要がある。深夜深くまで本を読んで知識を得よう。きっと快適に寝てしまったら体が慣れてしまう。


烈はため息をつく。


「未だ情報足りず……か、」


次の道へと歩みを進める。


神域の聖峰が遠くにそびえる。試練まで、残り数ヶ月。

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