第10話 決裂
「信じて貰えないかもしれないですが私━━━━━」
「━━━━━魔女なんです。」
瞬間烈の身体は強ばる。
烈はあの「地」が脳裏をよぎる。
「何言ってんだよエリカ。どういう意味かわかって言ってんのか?」
エリカは服をギュッと掴んで言う。
「信じられないなら、これでどうですか?」
そういうとエリカは一瞬闇に包まれる。風が舞い起こり様々な部品が吹き飛んでゆく。
そして再び姿を現した。
エリカは服装を変えて出てきた。その姿は気迫に包まれ。威圧されたかのような雰囲気をだした。
いかにも魔女らしくカッターシャツのようなものにネクタイをかけその上にローブを羽織っている。しかし本当に言いたいことはそれじゃあないだろう。
恐らく証拠と言えるものは一瞬にして着替えられる程の余裕があるということ。今までは多少自然現象や人間の力を変える程度の能力しか見ていない。
しかしエリカの輝石は明らかに違う。人間の限界を超える潜在能力がある。
「私の本当の名前は、エリカ・マギサ。これができるのは、マギサの一族、魔女の一族が代々受け継ぐ潜在輝石のおかげ。」
色々言いたいことはあるが烈は確信した。
こいつは魔女だと。
ドンッ
部屋に音が響く。烈が壁にエリカを埋め込んだ。
「いたっ」
先程のような穏やかな顔はそこにはなかった。
烈は怒っていた。
「エリカ、なんでお前はあそこで、被害が出るようなところで!輝石を使ったんだ!」
烈はエリカを怒鳴り散らす。
エリカは青ざめたかのように烈を見る。
「な、なにが……?」
その言葉で烈はよりヒートアップする。
「とぼけてんじゃねぇよ。あの戦争の跡はお前がつけたんだろ。」
エリカは思い出したかのように早口で話す。
「あれは違うんです!、私がしたくてした訳じゃ」
烈はそれに被せるように反論する。
「でもお前は人間に危害を与えたんだろ?」
「ッそれは!」
烈は一旦離す。
そして物理的にも精神的にも見下し提案する。
「今すぐ死ぬか?」
エリカは絶望する。この人なら分かってくれると、自分の痛みを分かってくれると、信じていた。
だが目の前にあるのは他の人間と変わらない。
「差別です……。」
烈はピクッと体が揺れた。
「差別?」
エリカは大声で叫んだ。
「誤解です!……私は魔女なんですが、差別されてきただけなんです!、というか私は人間と一緒に生きていたんです…生きたかった!普通の生活を過ごしていたかったんです!壊したのは私じゃない!」
烈は戸惑う。
騙されては行けないと思ったが、真剣な顔に烈は嘘をついていないように見えた。
烈は話をとりあえず聞くことにした。
無駄に広いベッドは今回ばかし距離感を保つには調度良い広さであった。
「正直に話せ。お前はどうやって生きてきた。」
そう言うとエリカは自分の過去を語り始めた。
***
昔、エリカは魔女の末裔だった。唯一の生き残り。
物心が着いた時には、魔女は絶滅していた。
自分が魔女だと知ったのは母の遺書からだ。
遺書には魔女について、潜在輝石について。今後生きていく最低限の情報を遺していた。
いつまでもお金がある訳でもないので遺書に従い、どこかに働きへ出た。
そして貧民街のとある村で働くことになった。
遺書には自身が魔女ということは明かすな。と言われているのにも関わらずエリカはつい自分のことを魔女と話した。
しかし村人はそれを受け入れた。魔女がこの世の中から恐れられていた時代はあの戦争から終わったのだ。
魔女との関係は最早無いに等しいと思われていた。
それはそれは楽しく働いていたとさ。
エリカ自身も村の1部として貢献していた。
ある日村長に呼び出された。
「なんですか?村長さん。」
村長は自身の髭を擦りながら答える。
「この村はどうだい随分経つけど、慣れたかい?」
エリカは姿勢よく座っている。
「はい!おかげさまで」
と、恥ずかしがりながら感謝している。
村長は足に腕を乗せる。
「君はたしか魔女だったよね。魔女って特殊なこととかできるの?」
エリカは自身に「魔女輝石」があることを知っている。そして信頼しきっているエリカはその人達にそのまま話してしまった。
「私が持ってる魔女輝石というのはですね、莫大な魔力を持ち、様々な輝石の応用ができるそうです。例えば、畑を早く成長させたり……、あとは……」
良い例が思いつかずにエリカは口を止める。
村長がフォローに入る。
「ほうなるほどね。その輝石というのは君だけにしか使えないのかい?」
「分かりませんね。魔女だけが持っていて魔女だけが使える……みたいなものですかね?」
村長の目がキリッとなる。
「君の魔女の輝石は、他の魔女と同じなのかい?」
エリカはちょっと考えたあと指を出して話す。
「他の魔女ができたことは私は一応できます。試したことはあるんで。」
村長は目を閉じた。しばらく考え込んだ後、口を開く。
「わかった。もう行ってもいいよ。すまんな。」
エリカは不思議に思ったことを言う。
「どうしてそんなことを聞くんです?」
村長はすぐに答える。
「魔女をよく知るためだ。平和にやっていくにはお互いをよく知らんとな。」
その言葉を聞いてエリカはなんだか嬉しくなり軽快なステップで帰っていった。
夜になった。
エリカはこの村に来てから借り宿で暮らしている。
窓を閉めずに寝ていたため夜風が当たってしまってつい起きてしまった。
1度起きてしまうとなかなか眠れないので仕方なく眠くなるまで外を歩いていた。
「今日は満月かー……。綺麗だなぁ」
月を見ながらそんなこと思う。
「うそでしょ!?」
突然大きな声が聞こえてきた。
声がした所を見ると村長の家があった。
窓からエリカがひょこっと見る。
「あの子が魔女と同じ力を……!?」
なんと村人が全員集まっているようだった。
エリカは(自分だけ呼ばれてないの仲間はずれにされた気分)と心の中で思った。
「あの子は、本物の魔女だ。」
「かの魔女と同じ力を持っているというのなら根絶やしにするしかない。」
村長がそう言うと、村人は躊躇ったあと
「……そうね。」
と、言った。
エリカには会話は聞こえず、ただ何かを話しているということだけしか分からなかった。
「ただ、殺してはダメだ。」
村人は机を叩く。
「なぜです!?殺さなければならない種族ですよ!」
村長は睨み返すように反論する。
「魔女はあの子1人だけだ、他は全滅した。政府の意向により、」
村長は顔を上げる。
「内密であの輝石について研究しろとのことだ。どんな方法を使おうとも。この村から逃がしては行けない。」
皆は腑に落ちない顔をしていたが渋々了承した。
エリカは段々眠くなってきて、自分の部屋へ戻り、そのまま眠りに落ちた。
地獄が始まることも知らずに。
翌朝、目が覚めた後着替えて外へ出る。
今日は雲行きが怪しく、このあと雨が降りそうだった。
「みなさん、おはようございます!」
と、そういつも通りに元気よく挨拶する。
しかし、村人はいつもよりなんだか素っ気なく返す。
エリカは
(今日はみんな元気がない日なのかな)
と呑気に思った。
いつも通り仕事を始めようとした時、なんと村長が来た。村長はエリカに近づくと、何かを堪えているかのような顔をしながら話す。
「今日は村おこしをするんだ。手伝ってくれるかい?」
エリカは二つ返事で引き受けた。そして村長の後に着いていくと何やら歪な古い小屋……いや牢屋のようなものを見つけた。
しかしそれは横からは丸見えで申し訳程度の天井がそこにはあった。
「ここだ、さっさと中に入れ。」
エリカは困惑する。
「なんですか?これ」
そう言った瞬間、エリカの背中に強い衝撃が襲った。そして勢いよくその「牢屋」の中に入れられた。
「なにするんですか……!?」
村人はエリカに対して冷ややかな目を突き刺す。
「被害者ぶってんじゃないわよ」
「えっ……?」
目の前にいる人たちは昨日までの人達と全く違う。その落差にエリカは愕然としている。
「エリカ、君は人間じゃない。悪魔だ。」
「今日から魔女は人間の実験体だよ。」
エリカは悟る。もう二度とあの平穏な日々には戻れないと。村人が去った後、エリカは1人寂しく泣いている。
ぽつりぽつりと小雨が降ってきた。
雨の音と重ねるように地面を蹴る音が聞こえてきた。
「村長……さん?」
エリカの言葉を無視し村長は牢屋の中に入っていくと
ギチギチと破片が見えた。そしてエリカの前へしゃがみこむ。
エリカはそれを以前の作業で見慣れているものであった。そして用途は今現在は考えるまでもなく明白で、
それはエリカの肌に赤い線を通した。
「ぐあぁ……!」
エリカは呻き声をだす。
しかし待つこと数分、エリカの赤い糸はたちまち解かれ元通りとなった。
「人間みたいな血出しやがって」
声をした所を見上げるとそこには村人が居た。
「傷がすぐ治るのか……、興味深い。」
村長は立ち、村人と話をするとみんなが破片を持ち始め、
一斉にエリカの生命力そして精神を削いでいく。
村長の合図でみんなが止まる。そして今度は観察が始まった。
「なかなか傷が回復しないな、多すぎると追いつかないのか、はたまた傷を回復する根本的な物の不足なのか。」
村長は考察する。
「どちらにせよこれを調べるには日を跨ぐしかないな。今日は撤収だ。」
そう結論付けた。
「あ、そうそう。この研究は1ヶ月ほど続けるつもりだよ。それまで付き合ってくれたら解放してあげるよ。」
そう言い残し立ち去る。
夜風に吹かれると様々な所から針で刺されたかのようにチクチクとした痛みが襲う。少しずつ回復はしていっているが痛みは治まっていない。
「お腹空いたなぁー……。」
そしてもう一つの問題。今日は一度もご飯を食べていない。頼んだところでくれるとは到底思えない。
エリカは自分に襲う腹痛だけを感じ、静かに眠りについた。
朝起きると、深呼吸をした。嗅覚が感じとったのは消毒液のような刺激臭と少し錆びた鉄の匂い。時間が経ったのだから当たり前だ。
身体を見てみると昨日の痕跡は無い。しかしエリカは少しやつれている。
「おはよー、エリカ。答えが分かったよ。君の様子でね。」
トラウマとなったその声は村長であった。
声をかけられた時エリカはビクついた。
「君の回復のメカニズム。過程こそは分からないが何を源にしているか。それは魔力だ。」
「君は以前、莫大な魔力を持つと言った。その情報と魔力の特性、輝石に魔力を伝えることが出来る。媒介を使って細胞レベルにまで干渉したんだろう。魔女のための輝石なんだ。そうなってもおかしくは無い。半分は推測だがな。」
「そしてそれを裏付けるのは君の様子。私達は早く切り上げた。なのに疲れが溜まっているようだ。つまり魔力の大幅な消費により多少なりとも体力が奪われたのではないのか?」
エリカは納得してしまった。
この考察は恐らく合っていると。
そして今度は村人がやってきた。手に持っているものはバケツ。
バケツをエリカの傍に置くと、村長はエリカの手を持っていき、破片で手を滲ませるとバケツの中に滴ませた。ピリッとした痛みはエリカの唇を震わせた。
手が風呂上がりのようなシワができた時、採取は終わった。
「よし、こんなもんでいいだろう。これを解析しなきゃなぁ……。俺は忙しくなる。あとは頼んだ。」
そう言うと次の日から村長は姿を現さなくなった。
しかし差別は終わらず村人が引き継いだだけだった。
エリカを殺そうとした村人もいたが他の村人に止められた。
数日後、村長が顔を出した。
エリカの様子を見た村長は村人に問いかける。
「こいつに飯どころか水さえも与えてないんだろう?」
「はい、そのはずですが」
村長は顎を擦り考える。
「エリカ、腹は空いてるか?」
コクリ、とエリカは頷く。
嘘はついてないようだ。
「凄い回復力。魔女の輝石は栄養をも補填できるのか。」
魔女の輝石の底知れない力にみんなは驚く。
「じゃあ今日は発展と行こうか。」
村長達は一度立ち去った。エリカにとってその待ち時間は、永遠に続いて欲しいものだった。この時間をすぎればきっと絶望が待っている。そう感じたのだ。
そしてやってきた、
長く鋭い刃を持って。
エリカは戦慄した。身体が震える。
「お待たせ、さっそく切ろうか。」
「なんで、そんなことするんですか!?する必要なんてないじゃないですか!」
エリカは反発した。村長はニヤリと笑う。
「試してみたくなった。組織を回復できるかをね。」
そして右肩に冷たい感触がする。この感覚がした瞬間にエリカは嗚咽する。そして━━━━━━━━━━
翌日、エリカが目を覚ますと、古傷だらけの左腕と比べると右腕は何も無かったかのように純白な腕をしていた。そして強い倦怠感だけが身体に募った。
「凄い、丸1日寝るだけで再生、しかも細胞の設計図を覚えているかのように完璧に同じ形だ。徐々に内側のものを再生して外側を再生する。実に合理的だ。」
村長が興味津々に右腕を見る。どうやらずっと再生している過程を見ていたようだ。
「面白いものを見せてくれた礼だ。今日はゆっくり休むといい。明日のためにな。」
と言うと本当に何も無く、それどころか食料と水分もくれた。久しぶりのご飯にありがたくエリカは頂いた。
それと同時に明日の拷問がとてつもないものだという事を察した。
翌日。運命の日。
雨が降っている。激しく降っていて、雨の音以外は何も聞こえなかった。
村長がやってきたことにも気づかなかった。
「さてと、魔女の輝石についてある程度調べられた。」
「ま、最後の仕上げと実験をしようか。」
最後?この言葉にエリカは違和感を持った。約束の1ヶ月にはまだ時間がある。
「多少の傷はすぐ回復する。組織も時間があれば回復する。なら、」
エリカはゴクリとする。
「急所なら?」
村長が隠し持っていたナイフが光り、エリカを襲う。しかしエリカは余力を振り絞りそれを避けた。
「逃げちゃダメだって。そういや何にも繋げてなかったな。監禁するだけで。」
エリカは牢屋を逃げ回る。村長は追いかける。
破片は命中しない。村人は村長の猛攻にエリカを捕まえることが難しく何も出来ずにいた。
そしてエリカは追い詰められた。
角に追いやられてしまった。狭い部屋だったので割と早く追い詰められた。
そして村長はエリカを胸にめがけ突き出した。
そして皮膚を切り、肉を切り、血を泳ぎ、生命を断ち切ろうとしたその瞬間。
破片は粉々になった。
「なんだ?」
エリカは闇に包まれそして魔女の正装へと身を包んだ。
エリカの目にはハイライトが無く、まるで気絶しているかのように無気力であった。村長は冷や汗をかく。
「そもそも心臓を貫かせてはくれないのか!」
そしてエリカは小さく口を開く。
「全魔消費、終焉。」
その瞬間、光に包まれ、焼けるような痛みが全身に襲った。
何日だろうか。随分と長い間寝ていたようだ。身体はすっかり元気になって後遺症はどこにも無い。服装も元に戻っている。
そして周りも何も無い。
「なに……これ?」
村全体が更地となっていた。綺麗な程に何も無く、静寂に包まれていた。
そしてエリカはこの騒ぎに誰かが気づいて人間に見られる前にこの元村から離れていった。
そして邸宅街に足を運ぶ。
幼い見た目と服装の綺麗さにより門番の独断と偏見により関所は無事に抜けられた。
セントラル・ルミナへ着くと、ふと噂を耳にした。
「今日はデザイアルの予選だってよ。すっげぇ、強い奴らがわんさかいるぽいぞ!見に行こーぜ。」
デザイアルの予選?
固有名詞が分からずにいたがやることないので興味本位で見に行くことにした。先程の人に着いていくと予選会場に着いた。
観客席へ着くと放送の音が聞こえた。
「レツ・スズキ、ライララ・ソウジャーは、闘技場へ集合してください。」
2人の選手が呼ばれ、しばらく立つと2人の姿が見えた。
エリカの目には2人は似ているように見えたが根本的な物が違うとわかった。
試合のゴングが鳴った。激しい戦いだ。これが自分の信じているものを背負う者の戦い。
エリカはデザイアルという試練で優勝すればシャルトで願いが叶うという事を街で知った。
自分なら差別を無くしたい。どんな種族も平和に生きていけたらなと願うだろう。とエリカは思った。
「理不尽に搾取されるこの世界は、根本から腐っている。抵抗できないこの世の中はどうかしてんだよ。」
ライララの声が聞こえてきた。
「それはそうだ。ただお前がどうやってそんな世界を壊すという思想になったかは、分からねぇ。だけどよ、それが間違ってるってのはわかる。いいか、その平等は間違いだ。」
烈の声も聞こえてくる。
ライララが持つ壊す平等を否定しているようだ。
私は壊すことで解決してしまった。ライララという人と同じ手段を取ってしまった。
本当にそれでよかったのだろうか。
「分かるわけないだろ。客観的に言おう。お前はただの我儘だ。それで何を救う気でいる。結局はただの私利私欲だ。だが、そうなるのはわかる。不平等だと自分はより求めてしまう。」
烈の言葉が反論してくれた。もっとやることは出来たか。他の方法で救えたんじゃないのか。そんな後悔ばかりが募っていく。だがあの時はひとつしか無かったんだ。
「 俺も我儘だ。 」
エリカは自然と涙が出ていた。
彼の言う平等に興味を持った。人間不信だったエリカは少しずつ心を取り戻している。
「平等っていうのはな、弱者を助けてくれる。すがりつけば、救済をくれる。そういうもんなんだ。世界は変わる。」
エリカはそういうものなのかと納得した。しかしライララがそれに反論する。
「そんなのが、今の世の中で出来るのか?無理だろ。貧民は敵、みたいなこの世の中、「異端者」が裁かれるのが定着している。見た目だけ取り繕っても、改善するわけねぇだろ。」
シャルトで平等を願っても根本的な解決とは思えない。一時的なものでしかなり得ない。また惨劇が起こってしまう。
「見た目が変われば中身も変わる!、例え中身がどす黒くても、見た目を清純に本気で変わりたいと思えたなら!中身もより研磨され見た目と同意義な存在になる!」
子は親の背中を見て育つという。親が平等に生きていたら、当然のように子も平等に生きようとする。
エリカは烈の言葉に虜になっていった。
予選が終わりエリカはその余韻に浸ったまま会場を後にした。
そしてエリカも平等に興味を持ち始め、少しずつこの世界について学び始めた。自分の魔女の輝石について研究した。調整できるように修行をした。
数週間後、貧民天国にて
「ここが貧民天国……。」
スチームパンクの服と貧民天国の風景は一致していて、まるで最初からそこに住んでいる人のようだった。
エリカは腹をさすりながら歩く。
「お金が無くて、3週間ほど飲まず食わずだったから腹痛が酷いなぁー……。」
ゆらゆらとなっていく、香ばしい匂いがしてきた。
出店からの流れ出る匂いのようだ。
そのせいで限界となったエリカは横に動きそのまま路地裏のゴミ置き場に倒れ込んだ。
そして数分後、烈とミリアに拾われ今に至る。
***
エリカは話終えると。どこか寂しげな表情をした。
烈はエリカをギュッと暖めるように優しく包んだ。
「ごめんな……エリカ…。ごめん。」
その烈の目には涙が浮かんでいる。
(私のために泣いてるの……?私を拒絶しないの?)
エリカは1つ目から水を流した後、その流れは急激になり、ひたすらに泣いていた。烈もエリカと一緒に泣いていた。それは強く辛く。
「辛かったよな……エリカ。」
コクリコクリと頷き、エリカは烈を抱き返す。
「俺と同じだ。俺もそんな人生過ごしてたんだよ。」
烈は誰にも話したこと無かった自分の過去をエリカにだけ話した。
自分が差別されてきたこと。搾取されてきたこと。自分の心が蝕んだことを。
2人の距離はこのベッドの広すぎる広さは必要のないぐらいに近く。
エリカが涙目で烈を見て、一つ願望をこぼした。
「レツさんがもし私の退屈で苦痛な毎日に居てくれたら、楽しかっただろうな。耐えられただろうな。どんなに辛くても笑顔でいれただろうな。」
そう笑顔で言った。
「そうだな。」
そう肯定し、更にもう一言。
「もう俺がいるから今度は大丈夫だ、俺を頼れ。」
と言うとエリカが今度は突っ込む。
「でもレツさんも1人だったら抱え込んじゃうじゃないですか。」
途端に2人は笑顔になる。
冗談交じりにそういうと烈は照れる。
「はは、そうだったな。」
ガチャっとドアが開く。
「たっだいまー!」
なんととんでもない長風呂から上がったミリアが帰ってきた。そして烈とエリカの様子を見た瞬間驚いて
「え!2人とも、もうそんなに仲良くなっちゃったの!?」
とおかしなことを言う。
「違……くはないけど、それよりもどんだけ風呂長いんだよ。」
ミリアは腰に手を当て自信満々に答える。
「色んな風呂を長風呂していったらいつの間にかこんなに時間が経ったのさ!」
「自信満々に言うことじゃないぞ……。」
烈は呆れた。
ミリアにもしっかりエリカについて話した。最初は驚いていたが、特に気にすることもなくいつもの調子へと戻っていった。
日を跨ぐ前に寝る準備に入る。
ミリアはエリカと一緒に寝たがっていてエリカは烈と寝たがっていたので、3人家族のように川の字で寝ることにした。
烈は今日は色々あったと思い馳せてそのまま眠りに落ちた。
窓からの木漏れ日により目が刺激される。
身体を起こそうとした時、いつもより少し重く、微妙な感じでまるで金縛りを受けたようだった。
布団をめくってみるとそこには日光に照らされ輝く銀髪に気持ち良さそうにすやすやと寝ているエリカが居た。
エリカも烈とおなじく日光に起こされると、烈に気づき、
「おはようございます。レツお兄ちゃん。」
と柔らかく挨拶した。
烈は困惑した。
(お兄ちゃん??)
「あぁ、おはよ、エリカ。」
とりあえず挨拶を返した。そしてエリカを横にスライドさせる。エリカは「あぁーれぇー」と言いながら滑っていった。
「あ、おはよ!レツ!」
ミリアは何やら鏡台の前で容姿を整えているようだった。
「んじゃ、早速あいつらの元へ帰るか。」
と、トル達の元へと帰ろうとする。しかしミリアに静止させられる。
「ちょっと待ってエリカはどうすんの?」
烈は即答する。
「この子は俺が育てる。」
ミリアは口が開いた。エリカも驚く。
「どゆこと!?」
「そのままの意味だよ。エリカと一緒に生きていくよ。俺は。」
と決意を固めている。
「エリカはそれでいいの?」
エリカにも確認をとる。
「まぁ、元々レツお兄ちゃんの目標は私と同じですし、レツお兄ちゃんが私と一緒に……と言ったら私は構いません。」
エリカは小恥ずかしく答えた。
ミリアは昨日、自身がいない間で二人の間にどんな過程があってこうなったのかを考え込む。
頭がプシューとオーバーヒートしたところで烈が叫ぶ。
「よっしゃー!じゃ、帰ろか!」
ミリアは頭をブルブルっと震わせた。エリカは大きく振りかぶった。
そして手を上げて、
「おー!」
と相槌した。
宿を後にして適当に朝食を済ませ、帰路に着く。ここからは半日かかる予定だ。できる限りの寄り道はせずにまっすぐ帰る。
ミリアが思いついたかのように話す。
「そういやさっき耳にしたんだけど、デザイアルの出場権って奪えるらしいよ。」
その衝撃な一言に烈は驚く。苦労して予選を勝ち抜いた人が可哀想じゃないかと思った。
だが予選を勝ち抜いたものがやすやすと負けるはずが無い。
「なんでそんなことになってんだ?」
ミリアが頭に指を置き思い出しながら喋る。
「確かね、主催者が出場権を持ってるものをデザイアル本番まで動くことが出来ない状態にしたら奪うことができるらしい。」
主催者……神のことか。
それにしても動けない状態。どこからなのだろうか最大は死。それは確定だ。ならば最低は?残り1週間は動けない状態のことか?
「具体的にはどうするんだ?」
具体例を聞く。しかしミリアはそこまでは分からず、たまたま良い例があったのでそこを指さす。
「あ、ちょうどあんな感じに━━━━━」
指の方向には男3人が男2人を一方的に殴っていた。
「やばっ、あれ出場権を狙う奴らじゃない?」
ミリアがそう言うと
エリカの手が震えた。烈はすこし歯を食いしばり
「よし、エリカ。俺の平等の在り方を目の前で見せてやるよ。特等席でな。」
烈がエリカの肩をポンと触る。
「行くぞミリア!」
「わかったー!」
勢いよく2人は飛び出した。
「何してんだボケー!」
烈は3人のうち1人に飛び蹴りをかました。
そうすると吹っ飛んでいった。
ミリアも続いて残りの2人も吹き飛ばした。
「何してんの、君たちはー!」
そうすると気だるそうに3人のうち1人は答える。
「俺らは三人兄弟。長男は俺だ。名前は上から、ショウ。」
「チク!」
「バイ。」
自己紹介が済んだところで本題に入る。
「なんであいつらを殴ってたんだ。」
ショウが高らかに笑う。
「デザイアルに行きたいからに決まってるでしょ?」
烈が腕を組み、怒りを露わにする。しかし少し余裕があるように
「ほう、お前らごときがね。」
と話す。
突如チクが叫ぶ。
「はへー!兄貴、あいつらデザイアル出場権を持ってるレツ・スズキとミリア・クロウだよ!」
「なるほど、お前らを倒せば全員デザイアル行きだな。」
そう意気込むと肩を鳴らし、構える。
「ミリア、援護で大丈夫か?」
「いいよ!かましてきて!」
ミリアの許可を貰い、烈が一人で前線を張ることに。
「3対1で大丈夫?」
バイがそう烈に心配する。
ショウがあおる。
「何人来ようと関係ない、あいつらも諦めたのだろう。」
戦いは始まった。
烈が攻め込むとショウは真っ向勝負をしてくるが烈はそれを避ける。そして烈はチクを右ストレートで吹っ飛ばす。そしてミリアの風ですぐさま方向転換しバイも吹っ飛ばす。
あっという間にショウと烈の一騎打ち。
「お前ごときに輝石を使うまでもないな。」
烈はショウを煽る。
ショウはとる手段がなくなり後退りをする。その様子を烈は見兼ねた。
「二度とそんなことすんなよ。」
そして後ろを向く。ショウはその背中を見て目付きが変わる。そして真っ直ぐ突進してきた。
「ま、そんな約束出来ねぇか。ミリア」
「あいよ!」
キーーンっと一瞬の高音と共にショウは倒れた。
「いっちょ上がりだね!レツ!」
烈とミリアはハイタッチする。
そしてやられた2人の安否を取ると、ところどころ骨折をしている。不幸中の幸い死んでいるのではなく気絶しているだけだった。
「どうだ?エリカ、これが平等の意思だ。」
エリカは口を小さく開け
「おぉ」
とこぼした。
周りの人に助けを求め何とか処置する事には成功した。
そしてまた歩みを進める。
歩いてる途中、ミリアがふと
「てかさ、2人ともおそらくデザイアルには出られないし、あのショウ兄弟も出られないでしょ?ならデザイアル出場権は私達にかかると思うの。」
烈はそれに気づく。
烈はエリカを見る、エリカは「?」という顔で見返す。
「俺はエリカをデザイアルへ連れてく。」
「えぇー!?てかまぁ、そうなるよね。」
少し驚いたが、そうなることは初めからわかっていたのでそんなに驚きはしなかった。
「いいよな?」
「ま、まぁレツお兄ちゃんが一緒に行きたいっていうならいいですよ……?」
「決まりだな!」
エリカの了承を取る。
そして再び帰路に着く。
烈は帰って何をしようかと深く考え込む。
ミリアは周りの景色を見ている。
エリカはソワソワしている。エリカが声を上げる。
「レツお兄ちゃん。」
「ん?なんだ?」
「手繋いでいいですか?」
と突然そんなことを言い出した。
そんなこと言って烈は頭をかく、そうこうするとミリアがエリカの手をとる。
「ほらレツ!繋いであげて!」
とミリアが誘導する。そして烈はやっと手を繋いだ。そしてもう片方の空いた手をミリアが取った。
そしてあの地へと帰る。
あの魔女の跡地。戦争の跡。
エリカが反応する。
「これ、私と同じ感覚がします。ここなんなんですか?」
烈が答える。
「お前と同じ魔女が輝石を使った時に出来た跡地らしい。」
エリカは納得する。
「なるほど。」
そしてゲレソナ村に着く。そうするとリヤに会う。
「おっ、帰ってきたかー!おかえりー!」
「ただいまーリヤー!」
エリカは未だ人間に怖い部分があり烈の後ろに隠れる。
烈はそんなエリカを優しくさすりながらリヤに会う挨拶する。
「レツもおかえりね。ん?その子誰?」
烈は誤解が生まれないようにしっかり話す。
「あーエリカだよ。迷子だったんだけど今は俺が預かってるってところ。」
ミリアは何となく察した。リヤは納得した。
「へぇー、今トルを呼んでくるね。」
と、リヤが家の中に入った瞬間、雨がポツリと降ってだんだん激しく降った。
「うわ、にわか雨か?」
と、烈は推測する。
扉が開くとトルが出てきた。
「よっ、久しぶり。レツ……」
しかしエリカを見た瞬間トルの顔色は一変した。
「レツ、その子は誰だい?」
トルの顔色を見た烈はエリカが魔女だと言うことがバレたのかもしれない。しかし隠すことは無い。差別を無くすために自身を表現するんだ。
「正直に言おう。いいなエリカ?」
エリカも覚悟を決める。
「いいですよ。」
「私はエリカ・マギサ。魔女です。魔女の末裔です!」
そう言うとトルは臨戦態勢に入る。
「レツとミリア、その子から離れろ。そいつは魔女だ。悪魔だ。」
まさかこうなるとは思わなかった。
「いや離れない。この子は魔女だが、悪魔じゃないこの子も被害者だ。」
地面が揺れる。トルが怒っているようだ。
「お前は騙されてる。人間を沢山殺め、呪った一族だぞ。」
リヤが慌てて外へ出る。
「何やってるのみんな。」
「リヤ!家から出るな!」
そんなリヤを止めるトル。
トルが前へ進む。
「俺がそいつを殺す、どけレツ。」
そう言うが烈は
「嫌だ、俺はどかない。」
と反発する。
ミリアはあわあわと焦っている。
「邪魔するなら俺はお前を殺してでもやるぞ。」
以前のトルの冷静な態度とは真逆に、頭に血が上っているようだった。
「トル!落ち着いてよ。」
「落ち着いてられるかよ!魔女だぞ!仇だ!」
トルの過去が少しだけ見えたような気がした。
そして残酷な運命による引き起こされたくなかった戦いが始まる。
「俺はそんなことさせたくないよ、トル。」
「俺だってお前を殺したくはない。」
2人ともやはり戦いたくは無いようだ。
「違う。魔女もだ。」
烈は当然のように言う。
そしてその言葉を引き金に2人は激突する。
トルの強さに敵うはずがない。
「使わせてもらう。」
平等の天秤━━━━発動。
しかし何も起こらないように見えた。
「なんでだ?」
烈は焦る。
「そうか。」
烈は気づく。
「俺はこの状況に不平等を感じていない。俺はこの不平等を憎んじゃいない。」
そのままトルに思い切り吹っ飛ばされて地面を擦った。
「いってぇ。」
烈は傷を拭い、土を払う。
烈はトルに対して、親友に対して、何も敵としてなんて見ていない。その心が平等の天秤は揺らめかせたんだ。
「レツお兄ちゃん大丈夫かな……私のせいで」
ミリアがエリカに抱きつく。
「大丈夫だよエリカ、レツはエリカのせいでやってないよ。エリカのためにやってんだよ。」
エリカは少し安心する。
リヤがこの状況を何とか理解しようとしている。
「だいたいつかんできた。あの子は私達の仇の魔女。どういう理由か分からないけどレツはあの子を庇っている。魔女を殺そうとしているトルは困惑しているってことね。」
リヤの背後に怪しい影が潜んでいる。そして一口に食べた。
「えっ?」
リヤは連れ去られてしまった。
「平等の天秤がなくたって、刃向かってやるよー!」
烈はトルに教えてもらった体技のみで立ち向かう。
「かかってこい!」
正面で受けるのは厳しいので烈はひたすら受け流す。
その隙に反撃のチャンスを得ようとするが、中々見つからない。
そして避けられない一撃の瞬間。ミリアが叫ぶ。
「リヤが居ない!?」
トルの攻撃が止んだ。
「なに!?」
2人声が一斉に響く。
トルが周りを見回す。烈も同様に、しかし本当に見当たらない。
「リヤ?リヤ?」
トルは冷や汗をかく。
烈はミリアに聞く。
「それいつ気づいた!?」
「え、さっき!見た時にはもう居なかった。」
どうやら、ミリアも攫われた瞬間には気づいていなかったようだ。
「くっそ!どこへ行ったんだ!」
気が動転しているトルに烈は声をかける。
「落ち着け!とりあえず俺はこっちへ行く、お前は心当たりがありそうなところに行け!見つけたら合図する。」
トルは正気を取り戻し承諾した。
「あぁ、任せた。」
そして2人は別々に捜索し始めた。
「レツお兄ちゃん!私も連れてってください!」
よく分からないがエリカの手を引っ張って草むらの中へと入っていった。
「私の輝石で探してみます!」
頼もしい限りだ。遠いところは肉眼では見にくい。エリカが遠隔で探している間烈は近接で探す。
「リヤー!どこにいる!」
声を出すのは悪手だとは思うが、犯人を煽るには丁度良い。
「見つけた!レツお兄ちゃん!あっちの方向に居るよ!近い!」
そしてレツは全力疾走をする。そして同時に叫ぶ。
「リヤ見つけたぞーーー!!!トルー!!!」
そして草むらを抜けると平坦な土地が広がった。そこにはリヤと謎の男がいた。
リヤは攫われたあと不安で胸がいっぱいだった。
(なんでこうなるの?私ばっかり?)
「なにか私悪いことでもしたの?」
そう言うと攫った男は話す。
「あそこにデザイアル出場権を持っているやつがいる。しかも2人だ。お前を人質にして、出場権を奪うって魂胆だ。お前はあの中じゃ攫いやすかったからな。」
リヤは克服したと思った過去が蘇った。
トルと比較ばっかりされていた過去を。
(いつもこうだった。兄妹だからっていつも比較され劣っている私にばっかり棘が刺さる。2人きりになってあの村で過ごしてもう克服してたと思ってたのに、ただ逃げただけだった。)
リヤは涙を浮かべた。
「こんなのもう嫌だ、誰かと比較されたくない。私のままありたい。」
そして限界を迎えたリヤは口から言葉がこぼれる。
「誰か助けて。」
そして思い切り烈は謎の男にとびひざげりをかけた。
「ぐわっ!!」
「見つけたぞこのやろー!!」
男は驚く。
「なんでここがわかった!?」
烈は問答無用にリヤを男から引き剥がす。
「大丈夫か、リヤ。」
涙ぐむリヤを烈は優しく拭う。
雨は依然降ったまま。リヤの涙を烈は雨だと勘違いしている。
「ありがとう、レツ。」
背後から男が襲おうとしたが、トルが現れ男を逆に襲った。
烈は感謝をされて空気が一変したので烈は話を変える。
「お前の言葉聞こえてたぞ。比較されてたんだってな。まぁあんなクソ強兄貴が居たらそうなるよな。」
冗談交じりでそう言う。しかしリヤにとっては深刻な問題だと烈は察していた。
「平等っていうのはな、比較出来ないものなんだ。全部が同じでいい所が同じぐらいある。リヤもトルと同じぐらい、良い所があるんだぜ?」
リヤは微笑したあと
「何それ」
と言った。しかしまだ不安が解消されていないように見えた。そこで烈はトントンが言ったことを思い出した。
***
「レツ、もしリヤの様子がおかしかったりいつもより元気が無かったりしたら、そっと何かしてやれ。」
***
そして烈の顔は若干火照ったが、そっと
リヤの過去を丸く包んであげた。
「っーーー!」
リヤの頬は赤く染め上がった。
「こ、これで大丈夫だろろ?」
呂律が回っていない。その態度にリヤはますます笑った。
「あはは、うん。大丈夫!」
「エリカだっけ?エリカもありがとうね。」
トルも男を消滅させたようだ。
幸いさっきの現場はトルに見られてはいなかった。
「トル、エリカとレツが私を見つけて助けてくれたんだよ。」
トルはびっくりする。
「魔女が……?人間を呪う立場なのに、人間を救ったのか?」
エリカは弁明する。
「私が産まれる前の魔女達はそうだったのかもしれません。でも私は少なくとも人間と生きたいです。」
トルは記憶との齟齬にすこしやつれたが、理解した。
「なんか俺も誤解があったようだな。とりあえず君は悪いやつじゃないことはわかった。ごめん。」
烈が辛気臭い雰囲気を壊す。
「よし!これで仲直りしたね!それじゃ、今日は仲直りと戻ってきた祝いとデザイアルへ送別する会を両立するぞ!」
トルが驚く。
「いや多すぎだろ。てかもうデザイアル行くんか?」
烈がため息をだす。
「5分前行動ってやつですよ。早めに出といて損は無いですよ!」
と言った。ミリアと合流して家へ入る。
そしてパーティーはゲストルームで開かれた。
部屋は相変わらず変わってなく、申し訳程度の飾りが着いていた。
「レツくん、貧民天国はどうだった?」
烈は揶揄する。
「貧民の天国だなんて笑わせますよ。結局は貴族のためじゃないですか。」
トルが笑う。
「言えてるな!」
エリカが烈の袖を掴む。
「レツお兄ちゃん。」
その言葉にリヤは反応する。
「レツ「お兄ちゃん」!?」
烈はびっくりする。
「なんか突然言われ出してな。」
と慌てて弁明した。
「エリカ、レツとどういう関係なの!?」
エリカはニヤーっと笑う。
「運命共同体です。」
リヤは空いた口が塞がらず、そのまま俯くとゆっくりと見上げて
「お、お兄ちゃん?」
と告げた。烈の身体は一瞬震えると、また再開した。
トルがこちらを見て笑っているが、目だけが真顔だ。
「話しよっか、レツお兄ちゃん。」
と、そんなこんながあり、仲直りと戻ってきた祝いとデザイアルへ送別する会は無事幕を閉じた。
夜、コンコンコンと烈の部屋にノック、開けてみるとそこにはリヤがいた。
「なんだリヤ?」
モジモジしていてなにか恥ずかしそうにしていた。
「あんた、エリカとも寝てるのね。」
「まぁ、エリカがこうじゃないと嫌だって言うし、まぁもう寝てるからいいじゃない。」
リヤはため息を出した。しかしそのおかげで緊張が若干ほぐれた。
「これ、助けてくれたお礼に食べてよ。」
となんとデザートを作ってくれたみたいだ。しかもなかなか量が多い。
「ありがたいけど……。」
「さっきのやつのせいで腹いっぱいなんだけど」
リヤは目が点になる。
「せっかく作ったんだけどなぁー、一人で食べよ。」
そんなリヤを烈は止める。
「いや、食べる。全部食べるよ!」
そう言って本当に完食した。
烈はリヤのことを深く考えているようだった。
そして食べ疲れしてそのまま寝てしまった。
「本当に食べた……」
リヤは嬉しがる。そして烈が起きないことを確認して赤裸々に一言こぼした。
「しゅき……」
そして翌日、朝一番に出発する。朝食を済ませた後、今度こそ最後のお別れをする。
「これで本当の最後だな。寂しくなる。」
烈が寂しげにそう言うとリヤとミリアが泣く。
「そんな事言わないでよー!レツー!」
「そうだよー、また会えるかもしれないじゃーん!」
烈は困ってしまった。
「会えなくなるのは少し寂しいですよね。」
エリカも便乗してきた
「でしょ?エリカも寂しいよね。」
リヤがよしよしとエリカを撫でる。
そうするとトルがフォローに入る。
「まぁ、次会うときはこの世が平等になったらだな。」
「そうだな。」
昨日は対立してしまったが今日は親友と胸を張って言い合える。
烈が村全体に叫ぶ。
「じゃあな!お前ら!元気でなぁぁ!!!」
村中が騒ぐ、みんなが烈たちを送迎してくれた。
そして烈達は村を出る。次の目的地はとうとうデザイアル。
この1ヶ月成長した仲間達と敵達。
そしてまだ見ぬ強敵。デザイアルを勝ち抜いてシャルトを手に入れることが出来るのか。いや手にしてみせる。
烈はそう心に決めて歩みを進める。




