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第4話 ゲーアハルト・アレリマ子爵

 コンコン。ノックの音が響く。



「守衛隊長ベンノ、入ります」


「ああ、入れ」



 ベンノが扉を開ける。一歩部屋に入り、奥の男へと敬礼した。壁の陰になって、廊下にいる俺からではよく見えない。



「フィアトロン辺境伯令息をお連れしました」


「うむ、こちらへ」


「はっ。ディート殿、どうぞ」


 促されて部屋の奥に進む。リディは廊下で待機だ。


 そこにいたのはおよそ50代ほどの大柄な男だった。短く刈った黒髪に服の上からでも筋肉が分かる鍛えられた身体。守衛隊長よりも装飾の多い軍服を身に着けている。彼がアレリマ公爵家の方・・・ゲーアハルト・アレリマ子爵だろう。


 彼の前に立ち、姿勢を整えた。敬礼。答礼を頂いたのち、腕を下げる。



「フィアトロン辺境伯嫡男、ディート・フィアトロンと申します。子爵閣下に挨拶に伺いました」


「よく来た、ディート殿。私がゲーアハルト・アレリマ。メジェス軍団長だ。楽にしてくれ」


「ありがとうございます」



 休めの姿勢を取る。何か話があるのだろうか。いや、父がずっと外に出ていない以上、話したいことも話すべきことも山のようにあるのだろうが。


「いや、話が長くなりそうだからな。そこのソファに座ってくれ。ベンノ。下がれ」


「わかりました。」


「はっ。承知しました。失礼します」



 守衛隊長が部屋の外に出ると、子爵閣下は俺の対面のソファに座った。まじまじと俺の顔を見て、にやりと笑う。



「なるほど、確かにベンノが、「似ても似つかぬ色合いだが、不思議と似た顔だとわかる」などと言うはずだ。若いころのレオンにそっくりな顔つきをしている。髪も肌も、体の色はまるで違うがな。お父上はご壮健か?」


「はい、日々前線で魔物を討伐し続けるほどには元気ですね。体の色は母譲りのものであります。あの、子爵閣下は父のことをご存じで?」


「はっはっは、相変わらず前に出て戦っているんだな。彼のことならもちろん知っている。彼がアレリマ公爵領出身であることは知っているか?」


「存じております」


「平民であった彼は、それにもかかわらず貴族である我々と同じほどに魔力量が多くてな。その魔力に目を付けた我がアレリマ公爵家は、彼の後見人となり魔法学園への推薦を出した。その時に初めて会ったから、ちょうど今の君ぐらいの年のころから知っていることになる。彼は私の一つ上だからな」



 まさか父のほうが年上だったとは。ということはまだ40代だったわけか。50代とか思ってすみません。



「彼が魔法学園を卒業してからも、ともにアレリマ公爵軍に所属していたから、一時期は同僚だったわけだ。とはいえ圧倒的な魔力と卓越した魔法技能で瞬く間に昇進した彼は、早いうちにここ、メジェス砦の即応部隊隊長になったからな。同じ場所で勤務した記憶はあまりないが」


「父はここで勤務していたのですか?」


「ん? ああ、そうだ。ここに勤めていたからこそ、あの『大乱』の際に出陣したわけだ。この砦が未開地に一番近いからな。未開地の民が助けを請うてきたのもここだった。彼がここにいなければ、あの事件は全く別の結末を迎えていただろう」


「さすがに言い過ぎではないでしょうか? 人一人ではできることも限られましょう」


「いや、彼に関しては言い過ぎではなかったはずだ。

 確かに即応部隊隊長には対処すべき事態が発生した場合に大きな権限が与えられる。とはいえ辺境からの従属の申し入れと防衛の依頼を即座に受け入れて、数十分で出陣するなどと言うことは彼以外が隊長では不可能だっただろう」


「・・・それは軍規として問題であったのでは?」


「もし負けていれば軍法会議ものだっただろうな。勝ったから英雄になったのさ。当時のメジェス軍団長は免職を覚悟しただろうし、後見していた我が父も胃を痛めただろうが」


 父よ、とんでもない無茶をしやがって。負けていたら戦犯として殺されていたんじゃないか。



「すべてがうまくいって彼が英雄となったときは逆に揉めたものだ。国を挙げての英雄として祭り上げられてしまったから、我が家が後見していたのにも関わらず国にとられてしまった。とはいえ陛下が貴族にすると言い出したからには我が家ではどうしようもない。与えられる家格も違うからな」


「無知で申し訳ありません、後見したにも関わらず、とはどういった状況なのでしょう? 貴族の知識が不足していまして」


「ん? ああ、王家からだとそこらへんは違うのか・・・? 高位貴族からの後見は、基本的に与力・・・部下である貴族にするための前段階であることが多い。公爵には子爵や男爵を任命する権限が与えられているからな。

 強力な魔力を持つ平民を後見して鍛え上げ、貴族になるだけの成果を出したところで、報酬として貴族身分と正妻となる妻を与える。基本的には娘を下賜しているな。貴族の妻としての教育を十分に施した娘を下賜することで、身内にするとともにその後の生活を補佐する・・・。

 いや、待て。どういうことだ・・・?」


 子爵閣下が何かに悩み始めた。なんだ、なんとなくいやな予感がしてきた。



「ディート殿。君の色はお母上譲りのものといったな。お母上は、先住民族の族長の娘であっているか?」


「はい、その通りですが」


「その方はレオン殿の正妻なのか? いや違うな、その方以外にレオン殿の妻、もしくは妾でもいいが何人いる?」


「は? いえ、父の妻は母だけですが。妾なんていませんし」


「・・・そうか。だからか。いくら何でもこう何年も挨拶に来ないのはおかしいとは思っていたのだ」


「えっと、なんでしょう。なにかありましたでしょうか」

 


 謎は全て解けたといいそうな顔をしているが、俺の謎は解けていない。ちゃんと説明してくれ。


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