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第1話 英雄の息子

 一般小説初挑戦です。よろしくお願いします。

「17年前に発生した戦は『辺境の大乱』と呼ばれ、近代における歴史的な重要事件となっております」


 深い森の中、川沿いの道を進む大きな灰色の狼。その背には少年と少女がまたがっていた。二人とも銀に輝く髪をなびかせている。

 前に座る少年は周囲を眺めながらも、どこか眠そうにしている。後ろの少女は前の少年に抱き着きながら、耳元で言葉を紡いでいた。


「24年前にグリレット地方を統一したアーグリレット帝国の外交的攻撃性が明らかになったためです。

 かの国はもともとグリレット地方に多数存在する国の一つでした。しかし37年前に現王が若くして即位して以降、戦に次ぐ戦を行い、約13年間かけて他国をすべて滅ぼしてグリレット地方を統一しました」


「アーグリレット帝国の東に位置するミッドリエ王国もかの国については注視しておりましたが、両国間の国境南側には高き天峰がそびえたち、北側には強大な魔物が跋扈する未開地の大神林がある関係上、大群が通る道がないことから直接的な危険はないと楽観視されておりました」


「この考えを覆した事件こそが辺境の大乱です。7年間動きのなかった帝国軍は、突如未開地の大神林に火を放ちました。これはミッドリエへの侵攻路を確保するためだったといわれています」


「それに対応したのは未開地の民たちです。彼らはその屈強な肉体を持って帝国軍に反抗しました。しかし、強い肉体を持つ代わりに魔法が使えない彼らでは、軍の侵攻を止めることはできても、時折放たれる火魔法を止めることも、物理障壁に守られた敵軍を倒すこともできませんでした」


「それ故に未開地の民は交易上の繋がりがあったミッドリエに助けを求めたのです。彼らはミッドリエ王国に従属する条件として、王国が大神林の防衛に協力するよう求めました」


「王国としても大神林を守ることにはメリットがありました。アーグリレット帝国に攻め入るつもりがないミッドリエとしては、帝国との壁になる大神林は残したほうが都合がよかったためです」


「王国軍は精鋭の魔法部隊を未開地へ送り出しました。彼らは水魔法で火を消し、対抗魔法で障壁を消し、未開地の民とともに森を守りました。精鋭部隊と民たちは勢いそのままに帝国軍を殲滅し、帝国は大きな被害を受けました。それこそ、しばらくの間戦争することができないほどに」


「ミッドリエ国王は一部隊にて帝国軍を殲滅し、戦争を終わらせた精鋭部隊の隊長を「英雄」と呼び、従属した未開地の統治を任せました。それこそがー」


「それこそが俺の父親であり、この元未開地、現フィアトロン辺境伯領を治めるレオン・フィアトロン辺境伯なんだろ」



 俺付きとなった使用人であるリディの話を遮り、俺、フィアトロン辺境伯令息であるディート・フィアトロンは言った。英雄と呼ばれるうちの父を尊敬しているリディは、父に関することになると話が長くなる。



「はい。閣下は先代族長の娘であったレア様と恋に落ち、妻に迎えてこの地を治めました。それから17年、ミッドリエ王国の辺境伯としてこの地を治め続けております」


「もう何度も聞いたから大丈夫だ。貴族学園に向けての復習と言っても聞く回数が多すぎる」


「多いと言われましても。都までの道すがら若様が暇だとおっしゃいますから、歴史の内容をおさらいしているだけですので」


「もっと面白いことを話してくれ、何度も聞いた自領の歴史ではあくびが出る」


「とは言いましても、若様に楽しんでいただけそうな話があれば、もう話していると思いますよ?」



 そう言われると何も言えない。なんだかんだ生まれたときから俺についていた彼女だ。話すことがあればすべて話しているだろう。



「そろそろ夕刻だ、今日のうちに森の外の砦につくと聞いているが間に合うだろうか」



 周囲を囲む森を眺め、確認する。ミッドリエ王国の砦に向かうには、メジェス川沿いの道を上り続けるだけ。いくらフィアトロンが森の外に興味がないからと言って、外に続く道がこの荒れた道一本というのもどうなのだろう。


 

「申し訳ありませんが、リディも森の外に出たことがありませんのでおそらくとしか言えません。ご当主様はこの子・・・グレイの脚なら一日で着くと仰られましたが」


「いや、リディが謝るようなことではない。もとはといえば距離も知らぬ俺と、外への道を整備しない父上が悪い」


「いえ、そんな・・・ご当主様は悪くありませんよ」


「俺が悪くないとは言ってくれないんだな」


「ご当主様は頑張っておられますので」


「まるで俺が頑張ってないような言い方はやめてくれ」


 笑いながら紡がれる揶揄うようなリディの台詞。いつも通りの父上至上主義に苦笑を返す。穏やかな会話。しかし、前方に現れた異常な魔力濃度に目を凝らした。何かがいる。


「魔獣か」


 11時の方向で動く巨体を見てグレイから飛び降りる。熊だ。5m近い巨体に赤く光る瞳。距離は10mもない。


 もとより真横に来るまで隠形する予定だっただろうその熊は、こちらが気付いたとわかると魔力を漲らせ木の陰から躍り出る。活性化した魔力が強く体を回り始めた。


 着地した俺を待ち構えたその魔獣は、正面からこちらを見据え一瞬で距離を詰め跳びかかる。ただの獣にはあり得ない身体能力。振りかぶる右腕。鈍く光るところどころ赤く汚れた爪は、触れるだけで巨木を切り倒す鋭さを持つ。


 風を切り裂いて近づく腕の根元に、さらに懐に踏み込んで手刀を振るう。一閃。


 付け根から切り飛ばされた熊の腕は宙を舞い、片腕をなくした奴はバランスを崩し転倒する。即座に背後から切りかかり、首を落とした。上がる血しぶきに距離を取る。


 少し離れたところでグレイが立ち止まった。リディはいつの間にかグレイから少し離れたところに立っているので、彼女も飛び降りたのだろう。まとめられた銀髪を靡かせ、こちらに駆け寄ってくる。



「お疲れ様です。肉を持っていくには量が多すぎますが、魔石ぐらいは取りますか?」


「そうだな、はした金くらいにはなるか」


 強化した手を熊の胴体に突き込み、心臓に食い込んでいる魔石をもぎ取った。ついでに背中の肉を切り落としグレイに投げる。宙で食らいついたグレイがうまそうに食べた。魔獣の肉はうまいとはいえ、こんな場所で悠長にはぎ取っていればさらに魔獣が出てくる。放置するしかない。


 返り血は浴びていないが、熊に突っ込んだ右手は赤く汚れている。軽く手を振って血を払った。



「手をお流しします」


「頼む」


 リディが使ってくれた水魔法で手と魔石についた血を洗い流し、渡されたタオルでぬぐう。タオルと魔石をリディに渡す。


「また少し遅れてしまった。少し急ぐか」


「わかりました」


 グレイに飛び乗る。手を伸ばすリディを引き上げて後ろに乗せると、先ほどと同じように抱き着かれた。柔らかなものが背中に当たる。少し揺れる心を、いつものことだと鎮め、グレイを促した。


 先ほどより少し早く、俺たちは進み始めた。揺れる背の上、俺はここまでのことを思い返していた。

何となく少女って書いちゃってますけどディート君15歳、リディさんは20歳設定です。でも少年と女性って書くよりも少年と少女って書きたかったので。少女表記にしました。

リディ「20歳はまだ少女です。いいですね?」

ディート「アッハイ」


読んでくださってありがとうございます。

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