最終章 Ⅲ New World Order
今回もよろしくお願いします。
そして読者の皆さん、ごめんなさい。
このタイミングで新キャラって><
活動報告の通り、続編はあるけどこれは・・・・
本当にすいません。
~最終章 Ⅲ New World Order~
ステラスと第二世代の戦いは思わぬ戦況であった。いや寧ろ当然の結果なのかもしれない。いくら最新の技術によって強化された小隊であっても、手負いであっても世界最強の称号を持つ男の前では霞んでしまう。
戦闘経験の圧倒的な差と、ステラスの判断力、そして第二世代側の指揮官の未熟さが今の戦況の要因となった。先手を打ったのはステラスであった。ステラスは正面から向かうふりをしながら、破壊を免れたαによる奇襲を行った。それに対して第二世代達は電気系能力者で対処した。この選択はステラスに最も有意義な情報を与えた。それは誰が電気系能力者かだ。ステラスは銀色の剣を握り締め、真っ直ぐに電気系能力者へ向かう。ステラスにとって残りの能力者の攻撃など何ら脅威ではなかった。ステラスはいとも簡単に第二世代達の中を突破した。電気系能力者の第二世代はステラスへ電気を放った。ステラスは放たれた電気をマントのように変化させたαへ伝導させ受け流す。そして残された右腕に握られた拳銃から放たれた弾丸が電気系能力者の額を撃ち抜いた。
第二世代達はただ唖然としてその姿を見ていた。彼らはどう自分達が動くべきか分らなかった。いや分っていたがすべてがステラスの判断の後手であった。第二世代達は七人が塊、ステラスを迎え討った。それが各自の行動を制限し、誰が何をするか判断を下せない状況を作り彼らを追い込んだ。
「お前達、早くこの・・・」
ステラスと話した指揮官らしい青年が声を張り上げた。ステラスは電気系能力者を仕留めすでに次の目標へ狙いを定めていた。それは指揮官。ステラス、黒髪の青年へ向かう。黒髪の青年はステラスの銀の剣をヒアシノシスの剣で受けた。動きの止まったステラスへ他の第二世代達から攻撃が迫る。ステラスは危機を感じ取り、第二世代から距離を取る。
「逃げられると思うなよ」
ステラスが距離を取り体勢を立て直すと、自分自身が見えない壁に閉じ込められていることに気付く。第二世代の青年が笑いながらステラスを近づく。
「手間を取らせてくれたね。これであなたは逃げられない」
ステラスは見えない壁の中で笑った。
「また助けられてしまったな・・・」
ステラスと第二世代達の戦場へ一機の飛行機が墜落した・・・・
フロルはフォークトと共に声のもとへ目を向けた。そこに居たのは二人組みの男女だった。二人ともアステリオスの真っ黒な軍服を着ており、女の方が拳銃を握っていた。二人の内、女の方はフロルと同じ位の年齢のようだった。首元で切り揃えられた濃い栗色の髪に、華奢な体系、身長も150cm弱くらいしかなく、身に纏う雰囲気はどこか遠足に来た子供ようだった。それとは対照的なのは隣いた男だった。赤く長い髪、眼鏡の奥で鋭く光る目に特徴的な両目の下の黒子、モデルのような長い手足、そして腰の両側には一本ずつ刀が差されていた。
フォークトは二人の姿を確認すると同時に二人へ向けて宝炎具を振った。宝炎具から放たれた炎が二人へと向かう。
「刃砥」
女の言葉に反応し、刃砥は腰の刀を抜き炎を切り裂いた。いや炎は切り裂かれたと言うより、刀に吸い込まれたようだった。刃砥は無表情にフォークトを睨みつけていた。それに対して栗色の髪の女は嬉しそうに目を輝かせフォークトを観察している。
「もう炎を操る者としてのクラスを完全に超えているね。記録では自分自身を炎化できる能力者を見たことはあったけど、本当にこの目で見られるとは。そして能力の具現化、本来は圧倒的な凡庸性と攻撃力を武器とする操作系能力者が、自身の能力の凝縮により辿り着く新たな終着点ねぇ」
「お前達は何者だ?」
先ほどとは異なりフォークトは二人を注意深く睨みつけていた。
「私を知らないなんて、もっと勉強するべきでないか?」
フォークトの眉間へと皺が寄る。
「でも私の名前は知っていても、私の姿を見たことがある人は少ないものね。私の名はライトヒル、ベンジル・ライトヒル」
フォークトの表情が一遍した。フロルはその名をどこかで聞いたことがあるような気がしていた。
「マジかよ、あのライトヒルがこんな小娘だったとわな。そして、まさかアステリオスに身を隠していたなんて」
ライトヒルはニヤニヤと嬉しそうに笑っている。
「ライトヒル様が俺様にいったいなんのようだ?」
「特にお前にようがある訳ではない。私はただ観察しに来ただけよ。まぁニュトラの生き残りを見つけたから保護しに来たくらいかな」
フロルはライトヒルの目が自分に向けられていることに気付く。キラキラとした目がフロルを捕らえ続けている。
「ニュトラ?この小僧のことか?」
フォークトはフロルを見下ろし、鼻で笑った。
「こんな小僧に大した価値はないと思うが」
フォークトはフロルに向けて宝炎具を振り下ろそうとした。一瞬の出来事だった。フォークトは小柄のライトヒルのストレートを腹部に受け大きく吹き飛ばされた。
「私の話が難しかったのか?」
ライトヒルの手が真っ黒なグローブのようなものに被われていた。
「うん、ヒアシノシスでの打撃は通用すると。それにスーツの調子もいい感じ、でも量産にはコストがかかり過ぎるのが課題だなぁ」
ライトヒルの手から黒い影が引いていく。ライトヒルはフロルに近づき髪の毛を掴み頭を上げ、フロルの顔を覗き込むように顔を近づけた。
「この青い髪に青い目、間違えなくニュトラの希少種。本当にまだ生きている個体がいたなんて」
ライトヒルはフロルの髪を放した。
「僕をどうするともりだ・・・」
フロルは荒い息の中、ライトヒルに尋ねる。
「どうするも、軽く話を聞いて、体を見せて欲しいくらいかな?私は研究者だけど、被験者をどうこうするのは好きじゃないんだよね。だって勿体無いじゃん」
ライトヒルは無邪気な笑顔をフロルに向けた。その時、二人の足元から炎の柱が噴出した。
「おっと」
ライトヒルはフロルを抱え、炎の柱から退避した。地面から噴出した炎の中からフォークトが姿を現す。
「小娘のくせに舐めたまねしやがってぇ!!」
フォークトを中心に八方向へ炎の柱が地面から噴出し、周囲へと広がる。ライトヒルへ炎の柱が向かう。
「刃砥、さんきゅ」
ライトヒルに向かった炎の柱は同様に刃砥の刀に吸い込まれた。その刀は真っ黒な刀身をした直刃の刀であった。刃には全くもって輝きがなく、深い穴のような印象をフロルは受けた。
「ライトヒル、あまり私に迷惑をかけないでくれないか?」
ライトヒルは刃砥の顔を見上げニッコリと笑った。
「それが恩人へ・・・」
三人に向けて炎の剣圧が放たれる。ライトヒルと刃砥は二手に別れ剣圧をかわした。
「俺様のことを馬鹿にしてんのかぁ?」
ライトヒルは真顔で言う。
「馬鹿だとは思っているよ」
フォークトは怒りを爆発させた。全身を炎に変えライトヒルへ向かう。
「何だてめぇは?さっきから俺様の邪魔しやがって」
フォークトの行く手を刃砥が阻んだ。フォークトの宝炎具と刃砥の刀がぶつかりあった。
「本当に五月蝿い人だ。弱い奴ほど良く吼えると言うがあなたにはピッタリだ」
フォークトは宝炎具を炎へ変え、刃砥を炎で包み込んだ。
「誰が弱いだと?燃えてなくなれ・・・」
刃砥を包み込んだ炎が一瞬で真っ黒な刀へ吸い込まれた。
「弱点は頭で決まりだな」
刃砥は挑発的にフォークトへ刀を向ける。その時、ライトヒルの通信機が陽気な音をたて鳴り響いた。ライトヒルは通信機についた画面を見た。
「刃砥、10分くらい時間を稼いでくれ。私はこの子を連れて先に帰るわ」
刃砥は大きくため息をついた。
「この任務が終ったら、約束は守ってもらうよ」
刃砥は2本目の刀へと手を伸ばす。フロルはライトヒルに抱えられたまま、刃砥を一心に見つめていた。
「ここからは企業秘密さ!!」
フロルは首、針に刺される痛みを感じ意識を失った。
「刃砥、10分でいいから。別に無理して戦わなくてもいい、とにかく10分たったら帰ってこい」
ライトヒルの声はすでに刃砥へ届いてはいなかった。刃砥の表情が無表情から笑顔へと変わる。
「4年ぶりの戦場の空気、ここが一番落ち着く」
刃砥は眼鏡を外し投げ捨てる。刃砥の投げた眼鏡が地面に落ちた時、フォークトと刃砥は刃を交え、ライトヒルの姿は消えていた・・・
第二世代の青年は廃ビルの屋上から空を舞う悪魔の姿を見つめていた。屋上にあったのは青年の姿だけであった。青年は上半身だけの体を引きずり、目の前に転がる紫色の球へ手を伸ばす。青年の伸ばした手の先が煙のようになり消えて行く。青年は消えいくなか紫色の小さな球を見つめ続けた。
「僕等はいったい・・・」
青年が消えると同時に小さな紫色の球が屋上を転がった・・・・
~つづく~
最後まで読んでいただきありがとうございます。
刃砥に関しては続編で登場するはずだったキャラクターです。本当は登場させる気はなかったのですが・・・・話の展開的に登場することになってしまいました。
残り2話ですがよろしくお願い致します。