最終章 Ⅴ Secondly
久しぶりの投稿になってしまい申し訳ありあせん。
今回もよろしくお願い致します。
~最終章 Ⅴ Secondly~
「ギレーヌ様、最高の舞台を用意していただきありがとうございます」
ステラスの操作するαの群れが新たなアステリオスの軍艦へ向かった。αの群れは軍艦の目の前で見えない壁にぶつかった。α達は見えない壁に阻まれ、大きな銀色の塊となっていた。突然、αの群れが光った。そしてα達は地面へと落下し始めた。ステラスはすぐに電気系能力者による攻撃だと分かっていた。
「始めまして、ステラスさん」
ステラスの前に7人組みの男女が現れる。全員とも真っ黒のアステリオス軍服に身を包んでおり、年齢は16前後ようだった。7人の先頭に立った黒髪の青年が一歩前へと出た。その青年は真っ黒な髪に青白い肌、輝きを失った真っ黒な瞳。まるで人形のような、人よりも機械に近いような印象をステラスは受けていた。
「僕達の名は第二世代、この世界の未来へ繋ぐ者。あなた達にはもうこの舞台から退場してもらいます。僕達の築く未来の礎となれることを光栄に思っていただきたい」
ステラスの前に現れた七人は空中に立っていた。ステラスは自分の乗っているαの円盤から降り、空中に作られた見えない床へ一歩進んだ。
「心配しなくても、足場を消すようなまねはしません。戦いの場はこちらで準備致しました。さて手負いではありますが、世界最強の力見せていただきますよ」
先頭に立っていた青年が自身の手を前へと出す。
「ヒアシノシス」
青年の手が真っ黒な影に包まれ、影は青年の手が真っ黒な剣へと変化した。
「あなたはこの力をご存知のはずですよね?人間が創りし、ただ一つ能力。能力を喰らう能力、ヒアシノシス」
先頭の青年がヒアシノシスを解放すると同時に後の六人もヒアシノシスを発動する。ある者は斧、ある弓、ある者は腕そのものへ、各自が個々のヒアシノシスを発動させていた。ステラスは残ったαを剣へ変化させた。
「君達ごときにはこの世界の未来は託せないな」
ステラスは銀色の剣一本を握り締め、走り出した・・・・・
ヴァイパーは自分自身の拍動の音をこれまでにないほど五月蝿く感じていた。深く切り裂かれた胸部、普通の人間なら間違えなく致命傷となっていた傷だった。ヴァイパーの体もリオルと同様に機械化が進んでいた。二人の機械化には全く別の背景があった。リオルは戦闘で傷ついた為、ヴァイパーはより強くなる為・・・、二人には共通することが一つあった。それは理由だった。
「こんなにも死を間近に感じたのは始めてだ。一撃、一撃が常に死と隣合わせのこの感覚、
感覚が研ぎ澄まされ、世界全体がスローモーションのように感じる」
ヴァイパー額から眉間を切り裂かれ傷から流れる血液が顔を流れていた。力関係は一目両全だった。愛の動きはすでに人間の限界を超えていた。ヴァイパーにとって普段なら必ず当たる攻撃も、今の愛に届くことは無かった。ヴァイパーは長い前髪をかき上げ、顔を流れる血を手で拭き取った。
「おい、包刃。お前はもう限界か?俺はまだまだやれるぜ」
ヴァイパーは両手の槍をしっかりと握り直し、愛へ向かう。ヴァイパーの一突きを愛は紙のようにヒラリとかわし、間合いを詰める。ヴァイパーはもう一方の槍を短く握り直し、愛の一閃を受け止める。愛の一閃は重く、ヴァイパーの体は後方へ吹き飛んだ。愛は追い討ちをかける為に、ヴァイパーへ向かう。
愛はヴァイパーに向けて真っ直ぐに刀を突いた。ヴァイパーは片方の槍を地面へ刺し、それを軸にするように回転し、愛を迎撃した。刀の先と槍の先がぶつかり合う。愛は大きく体勢を崩した、ヴァイパーは反対側の槍を支えに体勢を保っていた。
ヴァイパーは愛へ槍を突く。愛は何とか刀の刃でヴァイパーの槍を受け止めた。ヴァイパーの槍が愛の刀へと触れると同時に、槍は形を変え刀へと巻き付いた。
「捕まえた」
愛は咄嗟に刀を放し、ヴァイパーの懐へ入り込みヴァイパーの胸部の傷へ手刀を差し込んだ。愛の手は手首近くまでヴァイパーの胸元へ入り込んでいた。
「本当に大胆な女だな」
ヴァイパーの口元から血液が流れ出す。ヴァイパーはしっかりと愛の腕を掴み、愛の着物の襟元を掴み真横へと投げ飛ばす。吹き飛ばされる愛へヴァイパーは槍を如意棒のように変化させ、壁際へと突き飛ばした。吹き飛ぶ愛の姿が突然消える。
ヴァイパーは隠し持っていたスイッチを押した。格納庫の中に突然、コンテナが姿を現す。コンテナの入り口が閉まり愛はコンテナの中へ閉じ込められた。
「そこで頭を冷やせよ」
ヴァイパーはもとから愛に勝つ気はなかった。光学迷彩によって隠したコンテナへ愛を閉じ込めることそれがヴァイパーの狙いだった。ヴァイパーは口元から流れる血液を拭き取り、床に転がる愛の刀を拾い上げた。
「こいつを取り上げるのには苦労したぜ」
コンテナの中から激しい衝撃音が響いていた。
「ちったー静かに出来ないのかよ」
ヴァイパーはコンテナに繋がれた鎖の先を格納庫内の飛行機へと繋いだ。ヴァイパーは鎖の繋いだ飛行機の操縦席へ乗り込む。ヴァイパーは操縦席から出ると、飛行機は無人のまま動き始める。
「そのコンテナの中なら飛行機が撃墜されても死なないだろ」
ヴァイパーは衝撃音の響くコンテナへ近づいた。ヴァイパーが近づくと同時に衝撃音が止む。格納庫の扉が開き、飛行機がゆっくりとコンテナを引きずり始める。
「お互いこれが最後の別れにならないことを祈ろうぜ」
コンテナの中から掠れた声が聞こえた。
「待てよ、これお前の心臓だろ・・・・・」
ヴァイパーは自分の胸元に空いた穴へ手を当てた。血液の溢れでる胸の中央に空いた穴、そこには本来心臓がなくてはならなかった。
「俺の体はもう100%近くが機械なんだよ。その心臓も形だけさ、記念品にでもしてくれよ」
ヴァイパーは立ち止まり、引きずられて行くコンテナを見送る。コンテナの中からは愛の声が響いていたが、引きずられるコンテナの騒音にかき消されヴァイパーへは聞こえていなかった。
「またな・・・・」
コンテナはゆっくりと格納庫の床を離れ、格納庫から姿を消していく。ヴァイパーはコンテナを見送ると同時に床へと倒れ込む。
「もう少しだけ動けよ・・」
ヴァイパーは床を這い、格納庫内の飛行機へと向かう。ヴァイパーは飛行機の車輪へと寄り掛かり握り締めたままだった愛の刀を見つめた。
「悪いな少し付き合ってくれよ」
ヴァイパーは飛行機へ触れ、ゆっくりと目を閉じた・・・・・
愛はコンテナの壁へ額を押し付け倒れ込んだ。このコンテナがトリギオンから飛び立っていることを、すでに愛自身も気付いていた。愛の手の中で熱を失っていくヴァイパーの心臓。
「私はまた・・・・」
愛は通信機を取り出し電源を入れた。トリギオンへ潜入為、愛は通信機の電源を切っていた。通信機に表示される戦況。
『ハウンズ第三小隊・・・包刃 愛を除き全滅・・・・』
愛の手から落ち転がる通信機、外から聞こえる戦場の音。しかし、愛にとって今は無音の世界だった。時が止まったように唖然とする愛。
「そんな・・」
その時、コンテナは大きく揺れた。愛はすぐにコンテナを運んでいる飛行機が撃墜されたことに気付いた。愛は傾いたコンテナの中を転がり、壁へと全身を打ち付けられた。傾いたコンテナへ体を任せ、愛は真っ暗なコンテナの中へと入り込む光の隙間へと目を向けた。
「酷い最後だ・・・、何も守れず、何も出来なかった」
愛は耳についているイヤリングを外し、光の方へ向けた。月の形をしたイヤリングが光を浴びて輝く。
「ひどい姿を見せたな、どうやら私は同じ所には行けそうにないよ」
愛はイヤリングをしっかりと握り締め胸元へ手を置いた。
「もういいや・・・・」
コンテナは大きな音をたて地面へとぶつかった・・・
~To Ⅳ Unsurpassed~
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここから1話で一つずつ戦いが終っていくかと思います。
残りは四話、最後までお付き合いくだされば何よりかと。