最終章 Ⅵ Future Thoughts
今回もよろしくお願いします。
久しぶりにこんなに早いペースで投稿しました。
まだまだ行くぞーーー!!!
~最終章 Ⅵ Future Thoughts~
俺は始めての多重能力者へとなった。俺は生き抜いたのだ、今まで誰も出来なかったことをやり遂げた。『俺は生きている』俺はあの時、始めて自分が生きていることを認識した。そう『命』を感じた。だがそれが俺をより深く深く苦しめることへとなった。
俺は毎日のように戦った。それも仲間と、命をかけた殺し合いを・・・。終ることのない殺し合い、かつての仲間、いや仲間と言えるほどの仲ではなかった。でも俺は確かに命を奪い続けた。自身の命を感じ、生きることを知ってから俺は『命』を奪い始めた。
俺は自分が生きる為に、多くの命を奪った。日に日に深くなる足元の血だまり、それはもう深い穴のようになっていた・・・
「隊長・・・・・」
真っ黒な球の中から現れたのは間違えなくリゼリだった。だがその姿はすでに人のものとは異なっていた。真っ黒な目、背中から生えた枝の様な細い翼、両腕は真っ黒に染まり、指は鋭く尖っていた。まるで悪魔のような姿だった。
「ルイ、君はもう退避してくれ。心配はいらない、こんな姿だがとても気分がいい」
ルイは頷くことしか出来なかった。
「行って来るよ・・・・」
リゼリの枝の様な翼が不気味な音をたて広がり羽ばたいた。リゼリの体が地面から浮びあがる。ルイは静かにその姿を見つめ続けていた。
「リゼリ隊長!!!」
リゼリは真っ黒な目でルイを見つめた。
「どうした?」
真っ黒なリゼリの目がルイの言葉を詰まらせる。伝えたいことはもう決まっているのに、ここで伝えなければもう・・・・
「戻ってきますか?」
リゼリは優しく笑った。きっとその姿は他の者が見たら間違えなく、違った意味にとられたであろう。ルイの口から出た言葉は本当に彼女が伝えたかったものとは違っていた。
「もちろんだよ」
リゼリは空へと上がり、翼を羽ばたかせ飛んでいく。リゼリがちょうど四季が埋もれたビルの上を通過した時、崩れたビルの中から無数の砲撃がリゼリへと向かった。リゼリは真っ黒な腕を振るい、黒い波動のようなモノを放った。波動はすべてを飲み込み崩れたビルにぶつかると同時に周囲を飲み込み廃都市に直径数メートルのクレーターを作った。リゼリは一撃だけ反撃すると、四季の生死を確認することもなく飛び去る。
「もう私には興味がないと・・・」
四季はクレーターから少し離れたビルの屋上からリゼリが飛び去るのを眺めていた。
「あれはもう人間じゃないな・・・・、まだ私にようがあるのか?」
四季の後には拳銃を構えたルイがいた。
「動かないでください」
「もう私と戦う理由はないだろ、私もお前には興味がな・・・」
ルイは迷わず発砲した。弾丸は四季の胸元の服をかすめた。四季は隠し持っていた拳銃を抜きルイへ向けた。
「舐めるなよ」
四季は驚いた。ルイはすでに四季の懐に入り込み拳銃を胸元へ突き付けていた。
「お前、死ぬつもりか」
「あなたは私の大切な人を傷つけた。決して許さない」
ルイが引き金を引こうとした時、ルイは激痛のあまり拳銃を落とす。ルイは頭を押さえたまま地面へと倒れ込んだ。
「いだ・・・い、いたぁ・・・」
四季は確実に運に助けられた。すでに能力を解除していた四季に、ゼロ距離からの弾丸をかわす術はなかった。
「限界突破の対価か、能力だけではなく身体能力の制限も外したのか」
ルイは歪む視界の中で四季を見つめた。ルイの両目から血の涙が流れ始めていた。
「今すぐ限界突破をやめろ。そうしなければ死ぬよ」
ルイは痛みを堪え立ち上がる。
「嫌です、それじゃ私はあなたに負けたことになりますから」
「勝てるつもりなのか?もうさっきみたないチャンスはないよ」
二人の視線が真っ直ぐに交わる。
「相手してやるよ、ルイ・シュータス」
ノークとエスナは戦場を見つめ続けていた。特にノークはステラスの姿を見つめ続けていた。エスナはすでに現状を理解し始めていた。軍部の裏切り、反逆が行われているのだ。アステリオスという大国を一人の小娘によって治められていることをよく思わない者が沢山いるのは知っていた。だから力を集め、反乱を抑制していた。考えが甘かった。第一小隊、いや箱美芽四季の損失がこんな結果を産むとは・・・。エスナはただ唇を噛み締め、戦場を見つめ続けることしか出来なかった。
その時、司令室のドアが開いた。特に不自然でない出来事に誰も入り口へ注意を向けることはなかった。
「ノーク・クルネスはいるか?」
司令室全員の視線がアーニュへと集まった。兵士の何人かはすでに銃口をアーニュへ向けていた。アーニュは両腕を上げ敵意がないことを現す。
「私がノークです」
ノークはエスナの隣から一歩前へ出た。アーニュはノークの姿を見て、軽く頷いていた。
「私に何の用ですか?アーニュ・ワーリュヌス、いや名も無き者No.3、時の魔女」
アーニュの顔が険しく変化した。
「名も無きの者番号まで知っているとはね。ちなみにステラスは私を時の女神と呼んだよ」
「あなたを魔女と呼んだのは謝らせてもらいます。いったい貴女ほどの方が何故こんな所に?」
「別に謝る程のことじゃないよ。頼まれたからだよ、ステラスに。あいつがあんたを連れて戦場を離れろって言ったのさ」
ノークはすぐにアーニュの言った言葉が真実であることを理解した。ステラスが私をここから避難させることは容易に考えられた。むしろもっと早く彼自身から言われるとノークは考えていたからだ。
「嫌だと言ったら、あなたはどうしますか?」
ノークの問いにアーニュは瞬時に答えた。
「力ずくで連れて行く、あの男と交わした約束を破る気はない」
ノークは周囲を見つめ決断を下した。
「ここに私がいればステラスの足手まといになるかもしれません。Yを彼に託した今、私に出来ることはない。ただし条件があります、この人も一緒に連れて行ってください」
ノークはエスナの手を握り締め引いた。
「アステリオスのお姫様か、私はあんたさえ連れて行ければいい。一人くらい増えようと気にしないよ」
エスナはノークの腕を振り払った。
「私は逃げる訳にはいかない。ここで見届けな・・・」
ノークはエスナの顔を平手打ちした。エスナは突然の事に動揺し、横へ顔を向けたまま固まっていた。
「あなたがここで見届けることに意味はあるの?」
ノークがエスナに向けて言ったのは一言だった。それはきっとノーク自身への問いでもあったのかも知れなかった。
「無い、何も無いの・・・・」
エスナの目から涙が溢れ出す。ノークはもう一度、エスナの手を握り締めた。
「こんな所で死んでは駄目、今は信じて。そして、生き抜くの」
エスナは涙を拭き取りノークの手を握り返した。
「私も連れて行ってください」
ヅバイは廃ビルの壁に寄りかかりながらステラスの戦いを見ていた。
「かっこいいな・・・・」
「お前もかっこよかったよ」
ヅバイはゆっくりと声のもとへ顔を向けた。そこにはジャスの姿があった。ジャスの横には氷で造られた狼がいた。ジャスはこの狼に跨り戦場の中からヅバイを探し出した。
「そうですか?負けてしまいましたよ」
ヅバイは皮肉を言うように笑った。ジャスはヅバイに近づき抱きしめた。
「ちゃんと私は生きているよ、お前があたしを守ったんだよ」
ヅバイの目からは涙が流れ落ち始めた。その時、ヅバイは空に真っ黒な翼を見た。
「リゼリ・・・・・、死ぬなよ」
ギレーヌは依然と観戦を続けていた。ステラスによって艦隊は3分の2まで減らされていた。それでもギレーヌは表情一つ変えず観戦を続けていた。
「やはり能力者を殺せるのは能力者か」
ギレーヌは通信機を手に取った。
「第二世代を使え、もう飽きたよ。終らせよう」
~つづく~
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次話も今日中には投稿できる!!はず><。。
次回もよろしくお願い致します。