最終章 Ⅶ Dieses Spiel ein Ritter
今回もよろしくお願いします。
物語りも投稿もラストスパートで頑張りますのでお付き合いください。
~最終章 Ⅶ Dieses Spiel ein Ritter~
ヴァイパーはトリギオン中の格納庫の中央で立ち止まった。広く長方形の格納庫には二十を超える飛行機が並んでいた。
「これで何となるな」
ヴァイパーの視線の先が僅かに歪んだように見えた。ヴァイパーは格納庫の中に流れ込む殺気を感じ、真っ直ぐに格納庫の扉を睨んだ。厚い装甲で出来た扉に一閃が走る。扉が斜めに切り裂かれ倒れ、切り裂かれた扉の奥に光る赤い目。
「もう逃げるのは終わりだ。俺は今からお前を殺してやるよ」
愛はゆっくりと格納庫へと入った。愛の着ていた着物は返り血で真っ赤に染まっており、刀からは血液が滴っていた。
「俺はお前のこと嫌いじゃなかったぜ」
ヴァイパーは戦闘服のポケットから小さな棒を取り出した。それは銀色の棒だった。ヴァイパーはそれを真っ直ぐに愛へ向ける。
「不治の槍」
ヴァイパーの握っていた銀色の棒は細長く形を変えていく。それは銀色でシンプルな槍だった。銀色の長く真っ直ぐな柄の先に、銀色の槍頭があった。
「俺の能力は金属練成、俗に言う錬金術師ってやつだよ。でも俺の練成は普通の奴とは違う。この槍は俺が作った全く新しい金属で作られている。この金属は無数のナノマシンの集合体だ。このナノマシン達はウイルスだ。体内に侵入したウイルス達は細胞を殺し、決して自己の治癒させない」
ヴァイパーは左腕に槍を、右腕に銃身の極端に短いショットガンを握っていた。愛はヴァイパーを睨みつけたままゆっくりと動き出した。床と刀の先が擦れ、火花を出しながら少しずつ速度を上げていく。ヴァイパーは愛に向けてショットガンを放った。このショットガンは散弾性に特化した改造が施されていた。弾丸は細かく散乱し愛へと向かう。愛は一瞬で近づく速度を上げた。弾が散乱し完全に愛の行く手を阻む前に懐へと入り込もうとする。近づく愛へ向けてヴァイパーは真っ直ぐに槍を突く。濃く光る愛の右目、愛の体が不自然に動き槍をかわす。二人が一瞬すれ違う。
ヴァイパーの持つ槍の先から血液が流れ落ちていく・・・・。
「いてぇ・・・」
切り裂かれたのは愛でなくヴァイパーの腕だった。傷は決して深くはなかった。しかし、間合いという最大の優位を持ったヴァイパーの初撃は愛に防がれ、更に反撃までも許すという最悪の結果で終えていた。
「本当に強いな、間違えなく俺より早い」
愛はふらふらと揺れるように立ちながら、ヴァイパーを睨み続けていた。
「なぁそんな力って必要なのかよ。自分を犠牲にして、痛めつけて、心を殺してまで・・・。世の中にはいくらでも強い奴がいる。俺が勝てない奴なんて山ほどさ・・・・」
愛はヴァイパーの話が終るのを待つことなく切りかかる。ヴァイパーはショットガンと槍を使い愛の攻撃をいなす。
「俺にも自分の命より大切なモノが沢山ある、だから俺は今も戦っている。じゃぁ今のお前は何で戦っている?」
ヴァイパーの言葉に愛の動きが微かに鈍った。ヴァイパーはショットガンを投げ捨て愛の頬を殴り飛ばした。愛は能力を使い重量を増やし、ヴァイパーの拳を堪えた。頬で止まったままの拳、愛の口から流れる血液。
「聞こえてるじゃねぇか」
ヴァイパーはゆっくりと拳を引いた。愛はそのまま立ち尽くしていた。
「俺が今から戦うのはお前じゃない、包刃、お前も一緒に戦うんだぜ」
ヴァイパーは一歩大きく後へと跳んだ。一本の長い槍を両手で掴む、一本の槍は二本へと分かれる。二本の槍を両手に握り締めヴァイパーは、左右の槍を前後に分けて構えた。
「ウオォォォォ!!!!!」
ヴァイパーは雄叫びと共に愛へと向かった・・・・
アステリオス軍の艦隊の20%近くがフォークトの攻撃に沈められていた。それでもギレーヌは顔色一つ変えることなくただ母艦から戦場を観戦していた。ギレーヌは母艦の中央に位置する豪華な部屋で優雅に液晶に映し出される戦場の映像を見ている。戦況は圧倒的な有利であった。アルカナス軍は指揮官を失い混乱状態、エグルガルムの母船ジークフリードも確実に消耗していた。その時、ギレーヌは液晶に映った銀色の光に注目した。
「来たか・・・・」
ステラスはαによって造った銀色の円盤の上に乗り、廃都市の上空まで浮び上がった。目の前に並ぶアステリオス軍の艦隊、彼はこれから一人でこの艦隊と戦うのである。
「私も軍人だな、体が熱い。この戦場の空気を心地好く感じてしまっている」
ステラスはゆっくりと目を閉じる。彼の頭の中へ流れ込む戦場のすべての情報達、放たれる砲撃の軌道、艦隊の正確な位置、すべての情報を彼が支配する。
「ステラス、聞こえる。ノークよ、ジークフリードのメインシステムYをすべてあなたの補助に回します。そして、私も共に戦います」
「それではジークフリードの防御システムはどうなる」
ノークの声に割り込むように元気な声が響いた。それはベガとミラのものだった。
「ステラス様、私達に任せてください。必ずノーク様はお守りしますから!!」
ステラスは微かに笑った。
「頼んだよ、ベガ、ミラ。僕の大切な人達を守ってくれ。ノーク、バルムンクを」
ジークフリード上空に輝く銀色の球体が小さな球体へと変化し、ステラスのもとへと向かう。
「ノーク、アステリオスの艦隊へ向けて回線を開いてくれ」
ステラスの周囲に無数の銀色の球が浮ぶ。それはまるで小さな銀河ようだった。
「アステリオス艦隊に告ぐ、今すぐにこの空域から離脱しないのなら君達を排除する」
アステリオスからの応答はシンプルだった。全艦隊からステラスへ砲撃が集中した。砲撃が放たれると同時にステラスを囲む銀色の球から光が放たれ砲撃を迎撃する。
「いけ」
ステラスの周囲に浮ぶ銀色の球から艦隊へ光が向かう。しかし、光は艦隊に当たることなく湾曲し、艦隊から逸れて行った。
「それなりの準備はしているようだな、だがそれがどうした」
ステラスを周囲に浮ぶ銀色の球が鋭い棘のように形を変えていく。
「行け」
銀色の棘が一斉に艦隊へと向かう、艦隊は砲撃で銀色の棘達を迎撃する。しかし、ステラスによって操作された棘達は砲撃をかわし、艦隊へ近づく。銀色の棘達は群れのようになりアステリオスの軍艦へ降り注ぐ、軍艦は一瞬で飲み込まれ破壊される。銀色の巨大な棘の群れが次々にアステリオスの軍艦を沈めていく。たった一人の男は一人で艦隊に立ち向かい圧倒する。これが世界最強の能力者の一人の力だった。
銀色の銀河の中心に輝く白き英雄は言った。
「俺は必ず守ってみせる・・・・」
~つづく~
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話は上手く行けば今夜にでも投稿出来るはず!!!
最後までよろしくお願いします><。