表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Acht;untitled  作者: 鳴谷駿
最終章 untitled
93/103

最終章 Ⅷ Hyazinthe

今回もよろしくお願いします。

今回はこの物語当初から考えていた話です。

書けば書くほどこの物語はバッド・エンドへ向かっているようにしか思えない・・



~最終章 Ⅷ Hyazinthe~

 『試験体047』これが俺の最初の名前だった。『多重能力開発計画プロジェクト・ヒアシノシス』これが俺の受けた実験の名前だった。人為的な多重能力者の開発。それがこの研究の目標であった。この世界に一人で複数の能力を使う者は確認されていなかった。その為、幾つかの国がこの研究に着手していた。俺はその研究機関の中に一つで産まれた?いや、造られたのかもしれない。

俺達は番号という名を与えられ、十にも及ばない年齢から能力の強化、戦闘訓練を受けてきた。そして、十分な戦闘力、知識、Bクラス以上の能力を得た時、俺達は必ず一つの実験を受ける。『ヒアシノシス』それは濃い紫色をした球状の物体を体に埋め込まれるのだ。ヒアシノシスとは人工的に造られた能力の核であり、直径数センチの小さな球であった。俺にヒアシノシスが埋め込まれるまでに、24人がこの実験を受けていた。俺達には感情らしい感情がなかった。理由は分らない、自ら感情を捨てたのかも知れない、実験の後遺症なのかもしれない、でもヒアシノシスを埋め込まれることが(さいご)であることは気付いていた。俺の前に埋め込まれた24人、全員が破棄された。ヒアシノシス、人工的に造られたナノマシンの集合体であり、ヒアシノシスの持つ能力は相手の能力を殺すこと。ヒアシノシスがもたらす能力は常に一つでありながら、形は様々であった。ある者は物理的な武器へ、ある者は自身を化け物へ変え、ある者はただの球へと化した。ヒアシノシスの能力は使用者を蝕んだ、早い者は一度の発動で命を落とし、遅い者でも二桁以上の発動には至らなかった。

俺はついに25人目の被験者となった。研究者達に囲まれ、真っ白な部屋のベッドの上に横たわりその時を待つ。勿論、恐怖などなかった。ただ一つ死というものを間近に感じた。


四季の放った弾丸はリゼリの目の前で弾丸によって止められた。

「箱美芽隊長、やめてください」

四季はすぐに声の主がルイであることに気付いた。四季がリゼリから目を逸らし、ルイの方を見ると案の定、ルイの銃口は四季へ向けられていた。

「確かルイ・シュータスだったかな」

ルイは四季へ銃口を向けたまま答えた。

「名前、憶えてくれていたのですね」

四季はルイの言葉を聞いて鼻で笑い、再びリゼリの方へ視線を戻す。すると四季の目の前を一発の弾丸が通りすぎた。

「もう一度言います。箱美芽隊長、やめてください」

「こいつはどの道もう長くない、ここで殺してやるのが元上司としての優しさだよ」

四季は引き金へと力を入れた。それと同時に四季の握っていた拳銃が宙を舞い、地面へと落ち転がった。

「リゼリ隊長、ここは私に任せてジークフリードへ戻ってください」

リゼリは激痛に耐え立ち上がろうとする。四季は周囲に浮ぶ火器から新たな拳銃を選び、リゼリへ向かう。

「ちっ!!!」

四季の目の前へルイが割り込む。ルイは四季の目の前へ銃口を向け、引き金を引く。四季は難なく弾丸をかわし、ルイへ蹴りを放とうした。しかし、四季の蹴りが当たる前にルイの拳が四季の頬当たった。四季は頬を殴られ、ルイから距離をとった。四季は血液の混じった唾を吐き出した。

「箱美芽隊長、今の私ならあなたを殺せます」

ルイの言葉に四季は苦笑し、ルイと初めて目を合わせた。

限界突破(オーバー・リミット)か、だが素の能力が・・・・・」

ルイは四季が話し終わる前に弾丸を放った。四季はとっさに弾丸をかわす。ルイは腰に付けていた小さな袋の中へ手を入れた。ルイが手を引き抜くと、そこにはマシンガンが握られていた。明らかに箱の容積より大きな物が袋の中から現れたのだ。


ルイがエスナと別れ、病院の前に停まっていた車の助手席には銀色のケースが置かれていた。銀色のケースを開けると中には小さな袋と一組の手袋が入れられていた。ルイは中にあった説明書に目を通した。それは任意の武器を取り出すことの出来るエグルガルムの新兵器の試作品であることが分った。ルイは自身の手へ手袋をつけ、袋の中へと手を入れた。するとルイがイメージした通り拳銃が袋の中から現れた。ルイは力を手にしたことより、リゼリと同じ力を得たことへ喜びを感じていた。


ルイは四季に向けてマシンガンを放った。四季は迫り来る無数の弾丸をルイと同様にマシンガンを使い迎え撃った。互いの弾丸がぶつかり合い地面へと落ちていく。最後の弾丸は互いにぶつかり、軌道を変え二人の首元をかすめた。

「私の射撃能力は私自身の能力によって底上げされている。だから弾丸を弾丸で迎撃する程度のことも難なく出来る。だが・・」

四季が再び言葉を放つ前にルイは両手に拳銃を握り、弾丸を放っていた。四季は弾丸をかわそうとした。しかし、放たれた四発の弾丸はまるで四季がどう動くか知っていたように四季に向かって来た。二発の弾丸を受け四季は吹き飛び地面へと倒れ込んだ。

ルイは拳銃を捨てリゼリへ向かう。

「隊長、大丈夫ですか?」

ルイの声に反応してリゼリは顔を上げた。ルイはリゼリの顔を見て言葉を失った。左目から流れる真っ黒な涙、黒く染まった左目。血の気なく蒼白した顔に浮かび上がる真っ黒な血管達。

「そんな・・・・」

「ルイか・・・・、がはっ」

リゼリは再び大きく咽、口を押さえて手から黒い血液が流れ落ちる。

「隊長・・・・」

「少し力を使い過ぎただけだ、心配いらない」

ルイはすぐにリゼリの状況が今まで最悪であることに気付いた。侵食系能力による対価、規格外の能力がもたらす対価も、また規格外であるのは間違えない。

「すまない、肩を貸してもらっていいか」

リゼリはルイの肩を借り何とか立ち上がった。その姿に力がなく本当に立つことだけが限界であることはすぐに分った。

「ありがとう、ルイ・・・・」

その時、上空を巨大な炎が通り過ぎた。炎は槍のような形をしており、ジークフリードへ真っ直ぐに向かった。炎の槍はジークフリードのシールドを突き破り、ジークフリードに突き刺さった。炎は大きく広がり始める。

「何て攻撃、本当に一人の能力者によるものなの・・・」

ルイはただ唖然とその光景を見ていた。

「あいつが・・・」

すでにルイとリゼリには桜家達の死は知らされていた。そして、ユウの死も・・・。

「あいつを殺さなくては・・ぐぁ!!!!」

リゼリはルイを突き飛ばした。そして、リゼリの体から真っ黒な血液が噴出す。

「隊長・・・・・」

「どけ!!!!」

ルイの目の前を弾丸が通り過ぎ、リゼリの体を弾丸が撃ち抜く。どの弾丸も確実に急所を撃ち抜いていた。リゼリは頭を撃ち抜かれても、倒れることもなく立ち続ける。リゼリから噴出した黒い血液が大きな血だまりを作り、ゆっくりとリゼリの体へと上っていく。その様子を四季は睨むように見ていた。四季は一発だけルイの弾丸を受けていた。本来ならば確実に三発は受けていた弾丸を四季は一発で済ませていた。弾丸は四季のわき腹を貫通していた。四季は何とか応急手当を済ませ、痛み止めを打っていた。ルイは憮然と立ち尽くしていた。黒い血液はリゼリを包み込み、真っ黒な球体へと化した。四季は対戦車ライフルを構え、黒い球体へ向ける。

「やめて!!!」

ルイは無意識のうちに対戦車ライフルを構える四季へ銃口を向けていた。

「そいつはもう死んでる、まだ苦しめたいのか!!」

四季の言葉にルイの手が震える。ルイにも今のリゼリの状態がどのようなものか分っていた。それでもルイには四季の行動を見過ごせなかった。四季はルイの動揺を感じとり引き金を引いた。大口径の弾丸が黒い球へ迫る。

その時、黒い球から真っ黒な液体が噴出し四季へ向かう。液体は弾丸を飲みこみ四季へ向かう、四季は液体をかわそうとするが、液体は曲がり四季を飲み込み押し飛ばした。四季の体は液体に押され液体と共に廃ビルの中へと吹き飛ばされる。そして、吹き飛ばされた廃ビルから無数の黒い棘が飛び出した。廃ビル全体が黒い棘に突き抜かれ海栗のようになった。廃ビルを貫いた棘が黒い液体へと変わり、廃ビルが崩壊を始める。

「ルイ、もう心配はいらない」

ルイは黒い球体の中からリゼリの声を聞いた。ルイはすぐに黒い球へ目を向ける。

「隊長・・・・・」

 

                           ~つづく~


最後まで読んでくださりありがとうございます。

一言だけ

一度、転がり始めた石は、ただしたへと向かう・・・・・


そんな物語になってしましそうです。

今後ともよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ