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Acht;untitled  作者: 鳴谷駿
第五章 命灯
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第五章 Mad Impulse and FirstEnd

今回もよろしくお願い致します。

~第五章 Mad Impulse and FirstEnd~

 愛の右目に魔眼が宿ると同時に、愛の拍動が激しくなった。全身を何かが駆け抜ける、全身の細胞が震え、血液が熱い。酷く喉が渇く、全身が痙攣を始め、腹部の傷口が激しく出血を始めた。全身が激しい痛みを感じ、意識を失いかけた時、心臓が大きく拍動した。愛は静かに立ち上がり刀を握り締めた。

「さぁ後半戦を始めようか」

崩れた壁の向こうから声が聞こえた、愛はゆっくりと目を開く。

「何でお前がその目を!!」

愛の右目には赤い光が灯っていた。今までにないほどに軽い体、腹部の傷口は閉じ、意識もはっきりとしている。愛はテルミナから視線を外し、斜め上を見上げた。左右での視界がずれる、右目で見る世界はまるでスローモーションのようだった。

「いい気分だ」

愛は左目を閉じ、赤い光を灯す右目でテルミナを捕らえた。テルミナは愛の右目に睨まれた時、全身に悪寒を感じた。それは今まで戦っていた者とは、全く別の殺気がテルミナを襲う。テルミナはすぐに周囲の刃物を愛へ飛ばした。愛は体の力を抜き、最小限の動きでテルミナの攻撃をかわした。

「終わりか?」

愛の言葉にテルミナはすかさず能力を使おうとした。その時、愛は刀を投げた。愛の投げた刀は刃物達をすり抜け、テルミナの右胸に刺さった。テルミナが痛みを感じた瞬間、すでに投げつけられた刀の柄を愛は握っていた。愛はテルミナに刺さった刀を振り上げる。テルミナの血液が傷口から吹き出る。テルミナは何とか鎌を握り締め、振るおうとする。しかし、すでにテルミナの左腕は体と繋がっていなかった。

「化け物が・・・」

テルミナの鮮血が降り注ぐ中、愛はテルミナの両足を切り落とし、腹部を突き刺し、高く持ち上げた。かろうじて意識を保つテルミナが真っ赤に染まった愛を見下ろしていた。

「あんたはもう戻れない」

愛は怪しく笑い、テルミナから刀を抜き首を切り落とした。

「・・・・・・・・・・・」

愛は肩の力を抜き、血だまりの中央に立ち尽くしていた。その時、愛のいた部屋へアルカナスの兵士達が入ってきた。

「侵入者をはっけ・・・」

愛はすぐさまに敵兵に向かい、真っ二つに切り裂いた。

「なんだこいつは・・・・」



ノークは突然現れたアステリス艦隊による攻撃で動揺していた。隣にいるエスナも何も言わずただ戦場を見つめていた。

「ジークフリードへの損傷拡大、地上の各部隊との通信も・・・」

ジークフリードの司令室は混乱状態だった。誰もが勝利を確信した時、増援からの強襲を受けたのだ。

「アステリオス艦隊は対光学兵器用のシールドを展開、ジークフリードの主力兵器の殆ど通用しません」

ノークは対応に追われ、ついにエスナへと目を向けた。

「ごめんなさい、私にも全く分からないの・・・」

ノークはエスナの唖然とした姿を見て、彼女が本当に何も知らないことをすぐに理解した。その時、司令室へ緊急の通信が入った。

「こちらはステラス・クルネス、負傷した兵士の回収をお願いしたい」

通信機から流れる言葉に全員が驚き、静まり返った。通信機から流れる声は間違えなくステラス本人のものであるのは、その場にいた全員が気付いていた。ノークはすぐに通信機を手に取った。

「ステラスなの!!」

「ノークか、無事でいて良かった。通信の通り負傷兵の回収を頼む」

ノークは突然のことに涙がこぼれ落ちそうになった。それでもノークは堪え答えた。

「分かったわ。すぐに兵を向かわせる。あなたは大丈夫なの?」

「大丈夫だ。場所はジークフリードのすぐ下だ、目印としてαを飛ばしておく。一人はリオルで、もう一人はアルカナス兵だ」

ステラスの言葉に司令室全体が耳を疑った。

「どういうことなの?ステラス」

「私達は今を生き抜くだけでは駄目だ、この先の未来へ繋げなくては」

ノークはただ頷き答えを返した。

「わかったわ」

「ノーク、私はこんな真っ直ぐな子供が欲しかった」

ノークは体が弱く、子供を産むことが出来ないことは多くの者が知っていた。またステラス自身の体も多くの傷と改造で十分な生殖能力を維持できていなかった。

「そうね、実は私もさっき同じことを思ったの」

「そうか、それは良かった。行って来るよ」

ノークの通信機を持つ腕は震えていた。

「行ってらっしゃい、待っているから」

二人の通信を聞いていたベガとミラは堪えきれなくなった涙を流し、鼻水をすすっていた。

「ありがとう」



ステラスは通信機の電源を切った。

「行くのか?」

「もちろんだ、私には守るべき者がいるからな。君達は誰だ?」

「アルカナス軍アピース隊長、セルフィア・ジュノン」

幻想の道化師アンティック・イマジネイション、アーニュ・ワーリュヌス」

セルフィア達はステラスとフェアの姿を見つけ、様子を窺っていた。二人が到着した時、ちょうどステラスがフェアのチャクラムを自身の腕を犠牲に止めた所だった。すぐに助けに行こうとするセルフィアをアーニュは落ち着いて止めた。アーニュはステラスという男がどんな男か知っていた。そして、ステラスから放たれる殺気は悪意を帯びていなかった。

「すごい組み合わせだ。流石にこの二人を相手にする余裕は、今の私にはないな」

「あたし達に敵意がないのは分かっているのだろ」

ステラスは微かに笑った。

「この子を迎えに来たのか?」

セルフィアは自身の拳銃に込められた弾丸を一発抜き、ステラスへ投げた。

「そいつに渡してくれ」

ステラスは弾丸を受け取った。その時、ステラスは暗闇に包まれた。

「この弾丸は能力を消すのか」

ステラスは手探りで弾丸をフェアの軍服のポケットの中へ入れた。

「察しが早いな、私は今からこの戦いを止め行く。あんたは軍を引かせてくれ」

セルフィアの言葉にステラスは首を横へ振った。

「それは私の仕事だ」

「あんたはこんな所で死ぬべき人間じゃない、この戦いはあんたを守る為に起きた戦いだ。犠牲になった命を無駄にするのか」

「私は死ぬ為に戦場に行くのではない」

セルフィアはステラスのもとへ近づき胸倉を掴んだ。

「絶対死ぬな、あんたはそいつの命を救った責任がある。しっかりその責任を果たせ」

ステラスは見えない目でセルフィアを見続けた。

「何故、見えなくなってから見たい者が増えるのだろう」

ステラスの言葉に僅かにセルフィアの手の力が緩んだ、ステラスはセルフィアの腕を掴んだ。するとセルフィアの体に電流が流れ、セルフィアは意識を失った。

「アーニュだったかな、この二人を頼む。君達はすぐに戦場を離れてくれ、小型の飛行艇を用意させる。それともしよければ、ノークも一緒に連れて行ってくれないか?」

アーニュは何も言わずにセルフィアに近づき抱き上げた。

「どいつもこいつも私に頼む、それも最悪のタイミングでだ。断れる訳ないだろ」

「すまない」

アーニュはステラスの左腕に触れ、傷口の時間を止めた。

「ステラス・クルネス、名前覚えておくよ」

「光栄だよ、時の女神」

ステラスは銀色の玉に囲まれ、空へと浮かび上がった・・・・・


                 ~つづく~


最後まで読んでいただきありがとうございました。

終わりに向けて少しずつ進み始めました。第五章、長い物語ですがお気に召さばお付き合いください。


連休中にもう少し話を進めておきたいと思っております。

次回もよろしくお願い致します。

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