第五章 Start to(Curse)Ⅲ
今回もよろしくお願い致します。
久々に投稿ペースが速い><。
~第五章 Start to(Curse)Ⅲ~
トリギオン内部
愛は最後の刀へと手を伸ばした。
「もう最後みたいね」
「五月蝿いんだよ、オバさん」
愛は愛用の長刀を勢いよく引き抜き、鞘を投げた…‥
トリギオンへ侵入したヴァイパーと愛は二手に別れ、船首を目指した。愛の意思で愛が正面から船首を目指し、ヴァイパーは隠密に船首を目指した。愛が船首を目指し、敵兵を切り裂き通路進んでいると、巨大な鎌が通路の壁を切り裂き愛を襲った。壁は斜めに切り裂かれ、崩れ落ちた。
「なんだいこの小娘は、これじゃ暇潰しにもならな…‥」
壁の奥から現れたアピースの軍服を着たピンク色の髪の女へ愛は一目散に斬りかかる。愛は自身の重量を最大まで増やし、女へ刀を振り落とす。
「重い一撃ね」
愛の一撃を女は両手で鎌を支え受け止めた。愛はすぐに重量を減らし体勢を変え、刀を振るう。予想外の一撃を女はギリギリでかわした。長くの伸びたピンク色の髪の一束が地面へと落ちた。
「今の動き、能力者か。ならこっちも容赦しないよ」
女は鎌の柄の先から伸びた鎖を自身へ引き寄せた。鎖の先には棺桶が繋がれていた。女は棺桶の蓋を蹴り飛ばして開けた。棺桶の中には様々な刃物が乱雑しまわれていた。
「自分の命の奪われた相手の名前くらい知りたいでしょ、私の名はテルミナ。そしてこれからあなたが相手するのは刃物そのものよ」
棺桶にしまわれていた刃物達が空へ浮かび上がる。包丁、ナイフ、刀、槍、斧・・・様々な武器がテルミナを囲む。
「悪いけどこの子達は人を傷つけるのが大好きなの、だから楽に死なせられないわ」
テルミナを囲む刃物達が一斉に愛へ向かう。愛は愛用の長刀を腰の鞘へ収め、背中の2本の刀へ手を伸ばした。
「妖刀 双蝶華」
愛は両手に刀を握り、テルミナのもとへ切り込んだ・・・
「動くなよ、じいさん」
トリギオンの司令室で部下へ指示を出していたマルクトロスは後頭部に冷たい感触を感じた。司令室にいる部下は誰一人、侵入者に気付くことなく自身の仕事をこなし続ける。
「貴様、どうやってここに」
ヴァイパーはマルクトロスへ拳銃を突きつけたまま答えた。
「それは教えられないな。いつもの俺ならすぐにお前の頭を吹き飛ばしていた、でも今回はそうもいかない。降伏して軍を退かせろ、そして二度とエグルガルムに手を出すな」
マルクトロスは笑っていた。
「断る」
ヴァイパーは銃口をマルクトロスの右足に向け発砲した。マルクトロスは右足を撃ち抜かれ倒れ込む。
「皆さん、注目ください」
司令室に銃声と共にヴァイパーの声が響いた。周囲にいた兵士や操縦者などの視線がヴァイパーのもとに集まる。
「全員武器を置け、でないと大将の頭が吹き飛ぶ」
ヴァイパーはマルクトロスの額へと銃口をつけた。周囲の兵士達は言われるがまま武器を地面へと投げ捨てる。
「このじいさんと違って聞き分けが良くていい。オペレーター、今すぐ全軍に撤退の指令をだせ」
オペレーターは躊躇しながらもヴァイパーが引き金にかかる指に力を入れようとするのを見ると、通信機のマイクを口元へ近づけた。
「撤退の指令など出すな!!」
司令室内にマルクトロスの怒鳴り声が響いた。
「若造が撃ちたければ撃つがよい。撃てぬのなら、その銃を引け」
マルクトロスはヴァイパーを真っ直ぐに睨みつけながら言った。圧倒的な威圧感と、説得力がこの男が大国の軍師であることをヴァイパーへ改めて実感させた。
「撃ってみろ、若造。引き金が重いのなら力を貸すぞ」
ヴァイパーは周囲を見渡す。動揺していた部下達は落ち着いた様子で、ヴァイパーを見つめている。
「俺はすぐに引き金を引くべきだったみたいだな」
「そのことに気付けただけ、貴様は賢い」
その時、トリギオンを激しい揺れが襲った。ヴァイパーはマルクトロスへ銃口を向けたまま、トリギオンの司令室に映し出される戦場の様子を見た。
「どういうことだよ・・・」
そこには戦場を包囲するアステリオス軍の艦隊の姿があった。
愛とテルミナの周辺には砕けた無数の刃物が転がっていた。愛は今までに四本の妖刀を犠牲にテルミナの操る刃物達の半数以上を破壊していた。しかし、現状は圧倒的に愛が不利であった。テルミナにとって周囲の刃物達は補助でしかなく、彼女の本当の強さは鎌を使った攻撃だった。長いリーチの鎌と棺桶を切り離し先端に剣のついた鎖のコンビネーション。さらにテルミナ自身の戦闘センスの良さ、愛が致命傷を与えられる間合いのギリギリで必ず踏みとどまる判断力。
「あんたは十分強いよ、変則的な攻撃に、周囲も良く見えている。特に攻撃の変則性は私に次の一手を読ませない。それが私の能力を徹底的に封じている」
テルミナの能力は一度触れたものを遠隔的に操作すること。刃物しか使わないのは彼女自身の美学によるものであり、本来は拳銃なども操作できる。彼女の能力は遠隔操作、操作するのは彼女自身であり当然、変則的な愛の攻撃に対して彼女自身で判断し操作するしかない。常に間合いを詰めようとする愛の先方はテルミナの能力に対しては最良の策であった。
「追い詰めた」
愛は飛んでくる斧をかわし、鎌を弾き、鎖の間をすり抜けテルミナの懐へ入り込んだ。愛は迷わずテルミナへ一閃を放つ。
「捕まえた」
愛は後方に悪寒を感じた。しかし、愛の反応は間に合わなかった。テルミナは鎖を操作し、愛の片足に巻きつかせた。愛はバランスを崩した。
「一発でのびるなよ」
テルミナの拳が愛の頬を直撃した。テルミナは続けて鎌の柄で愛を殴り飛ばす。愛の体は浮かび上がる。愛は体重を減らし、自身の体を浮かせた。テルミナが鎖を引くより早く、愛の刀がテルミナの左肩を貫いた。
「痛いんだよ」
テルミナは鎖を掴み愛を地面へと叩きつけ、さらに思いっきり壁へと叩きつける。愛はとっさに鎖を切り裂き、壁へと足から着地した。そこへ棺桶が飛んでくる。愛は棺桶に潰され壁を突き破った。
「まだ死んでいないんでしょ、早く出できなよ」
愛は突き破った壁に寄りかかり、身を隠していた。愛の体はテルミナが思っている以上に重症だった。砕けた棺桶の破片が腹部を貫通していた。愛は破片を引き抜いた。傷口は小さいが、出血が激しい。着物を切り裂き止血するが、出血は収まることはない。
「はぁ・・・・はぁ・・・・」
テルミナの足音が愛に迫る。愛は自身の軍服の膨らみを見て、桜家に渡されたもののことを思い出す。愛は軍服から小さな円柱状の容器を取り出した。
「何が危なくなったら使えだ」
テルミナが崩れた壁に迫った時、愛が姿を現した。
「さぁ後半戦を始めようか」
テルミナの言葉にゆっくりと愛が閉じていた目を開く。
「何でお前がその目を!!」
愛の右目には赤い光が灯っていた・・・・・・・・・
~つづく~
最後まで読んでいただきありがとうございます。
愛の久々の登場でした。遂に愛にも新しい力が、今後この力がどう影響するかは・・・。どんどん書くぞ!!
連休中に作者のプロフィールなどを一身します。たぶん・・・
私自身もそろそろはっきりせねば!!!
興味のある方は見てみてください。
次回もよろしくお願い致します。